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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年11月15日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)ドナルド・トランプ次期米大統領、(2)柏崎刈羽原発の共同運営と原発再稼働、(3)賃上げ、(4)日露経済協力、などについて発言があった。

Q: ドナルド・トランプ次期米大統領について、経済政策の内容が少しずつ出てきたが、選挙戦で掲げていた政策から、現実路線に修正してきているようにも見える。勝利宣言以降、どのように見ているか。

小林: もう少し見ないとなかなか分からないが、勝利宣言自体も(選挙戦の最中の言動からは)だいぶ変わっており、一緒にやろうというトーンになってスタートを切った。人事も、右も左もバランスを取り、議会も意識しつつ国政をしていくと思う。私は、彼を実業家というよりはむしろ商売人と見ている。理念はしっかりしたものを持ちつつ、状況に対して極めて速く(反応し)、なおかつ判断を変えることにあまり大きな抵抗を感じない、そのような商売人ではないかと見ている。ある意味で、新しい風が吹いてきた。人によっては「黒船」だという人もいて、肩肘張って対応しなければうまくいかないのではないかとの見方もある。マーケットを見ていると、(次期大統領が決まった)当日はびっくりして円高・株安に走ったが、ここ数日の反応は、人事も含めて、新ウォール・ストリートというか、新商業資本主義といった人たちを重用しそうな感じもあ(り、株価も為替も安定してきてい)る。(法人税を)15%まで引き下げるかは別として、所得税、法人税もドラスティックに引き下げ、インフラへの投資をしっかりやっていく(という政策を掲げている)。この辺り見ると、経済として、長期的にどうなるか、財政の問題等は別の話だが、(次期大統領が)トランプ氏になった当初、マーケットはネガティブに見ていたものが、ここ数日を見る限りは、逆に明るい期待感を持っているような流れかなと(思う)。為替も1ドル=108円まで来ているので、そろそろ飽和すると思うが、そんなにネガティブな見方をマーケットもしていない。TPP(不参加)あるいはメキシコとの(国境に造るという)壁など、選挙民を裏切るほどの大きな方向転換はしないだろう。TPPに対しては非常に残念な状況だが、徐々に微修正しつつ経済の活性化には期待できると思う。

Q: 株・為替について、今後、長期的にどう推移すると見ているか。また、現在は円安・株高と好調に振れているが、懸念されていることはあるか。

小林: 一般論からすれば、アングロサクソンなり、欧米の人たちが戦い取った民主主義(デモクラシー)と、第二次世界大戦あるいは大恐慌から学んだように、世界はグローバル化の方向に行くべきではなかろうか、特に経済はグローバル化の方向で活性化するだろう(と歴史は進んできた)。ベルリンの壁(が崩壊した)1989年までは、共産主義か資本主義かというイデオロギーをメインに政治があった。その中で、共産主義は比較的効率が悪いと多くの国が(考え)、結果としては資本主義(をとった)。それが、修正資本主義から金融資本主義の方向に徐々に変わっていくが、基本的には、自由経済でありグローバル化であって、世界は統合に向かっていく。COP21では、196カ国がテーブルについて議論をして、世界全体でCO2を減らすという一つの方向を決めた。意見が違うとはいえ、グローバル化かつ統合の方向に向かっている中で、ここへきて、Brexitも含め、今後、イタリア、フランス、ドイツなど欧州各国が、トランプ現象やサンダース現象に刺激を受けて、アンチ・グローバリズム、民族主義的な動き(に向かうことを危惧している)。Brexitの余波というより、欧州までトランプ現象がトリガーになって、誰が考えても経済的には良いであろう今までのグローバル化の流れが停滞し、民族主義的で、保護主義的な経済に戻ってしまうことに、一般論としての危惧はある。商売人であるトランプ氏は、状況を見ながら(政策を修正するだろうが)、TPPに対しては、いろいろな団体もあることだろうし、なかなかOKは出さないかもしれない。二国間(協定)や、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)に刺激されて、米国が何らかの形で違った交渉をして、大きな団体(協定)に入ってくることは十分に考えられると思う。人事も含め、最終的に判断するのはまだ早い。

株価・為替について、マーケットに直接関与していない人、日々関与している人も含め、多くの人は、(次期大統領が)トランプ氏になったらBrexitと同じでまず円高になり、リスクから遠ざかりたいがために円を買い、株価も下がるだろうというのが一般的な予測だと思うが、一日にして覆った。(当初の見通しを)間違えた人間が何を言ってもあまり迫力がないので、何とも言い難いが、短期的には今の状況を見ると、そう大幅な円高になるとも思えない。株価も一度下がったが、徐々に上がってきている。マーケットは歓迎していると見る限り、当座は為替が1ドル=108~110円くらいで動きながら、株価も日本の場合は18,000円くらいをうかがって、来年に向かって調整が進むのだと思う。長期的に言えば、少なくとも選挙中はドル安政策をとるとの方針を述べられているわけで、緩和政策に出てくるだろうと考えると、日本にとっては円高の可能性も十分残っている。事業をやっている身では、1ドル=90円~100円をうかがう時期から比べると、少し安心しているのが今の状況である。

Q: 安倍首相とトランプ氏の会談に期待することは。また、イギリスのメイ首相が、講演で「Brexitに加え、世界は変わった」と述べている。今回のトランプ氏の勝利で世界は変わったと言えるか、認識をお伺いしたい。

小林: 戦後70年、グローバリズムで世の中が統合の方向にきたが、アングロサクソンや西欧の人々が、移民や肌の色が異なる人に対して、負担感が増してきた(と表明する事態が起きている)。あるいは、寛容で、多様化していく世界だったのが、「ちょっと待て」「自分たちは損をしていないか」と分断されてしまった。アメリカが分断された。非常に言い方は難しいが、皆が一緒に仲良くしよう、それが結果として人類にとって良いのだというポリティカル・コレクトネスによって、人類の知性が進んできた。ところが、そこに極めて反知性派というか、「そうではない」「特に経済的に、自分のところが良くないとしようがないのでは」という人達がずいぶんと増えた。世界が変わったというか、変わる兆しが、ある意味では危険だ。

経済同友会でJapan 2.0と言ったのは、このままずるずると(これまでの)延長線上でいったら、日本の経済はもうどうにもならないと(いう危機感からだ)。相当ドラスティックな(変革が必要で)、メインはイノベーションをベースにして、ネット社会でどうバーチャルな経済を使うかが解だと思っており、われわれは今後も議論をしていく。それとは違った世界、テクノロジーは明らかに、インターネットやバーチャルなどがどんどん進んでいくのに、人間の人生はたった60年ほどで断続的に途絶えてしまう。文明は2000年(間にわたり)蓄積していくが、個々の人間の知性は、60~80歳ほどで死んでしまうとゼロになり、全然進歩しない。そこが心配だ。

反グローバリズムや、かなり民族主義的な動き(が起きているが)、それを誘発したのがインターネットである。ヒエラルキー的に、情報を持っていた人が勝つ時代ではなくなった。誰でも情報にアクセスでき、誰でもコミュニケートできる。そういうネットワーク社会における新しい時代の方向が、もし、変に閉じた閉鎖系に戻り、分散してしまって、集合体や全体を考えずに個が先走ってしまう、個のエゴが蒸し返される(ようになれば)、時代のベクトルが全く逆さになる。オバマ大統領は「チェンジ」と言ったが、トランプ次期大統領が「リターン」しなければよいが。彼が言っていることはかなりリターンであり、白人のノスタルジーというか、そこが怖い。最も先鋭的なアングロサクソンが、今の文明の歴史をかなりリードしてきたのに、違う方向にリードしないでほしいと思う。

安倍首相とトランプ氏の会談は、せめて日本の防衛は、(他国と比べて)相対的にも(米軍駐留費用に)お金をつかっているし、これ以上、人件費まで出すことになれば、アメリカを日本人が傭兵として雇うのかという状況になってしまう。一緒にしっかりと安全を保っていこうと(いうことと)、TPPは(参加しないとトランプ氏が)選挙民に約束したので仕方がないが、新しい経済協定は必要だと(いうこと)。それはトランプ氏も十分認識されていると思うが、この2点だけは言ってほしい。

Q: 東京電力の柏崎刈羽原発について、今日の東京電力改革・1F問題委員会で、現状のままで収益を改善することが難しいため、共同運営の提案があった。柏崎刈羽原発の共同運営案に対する意見と、再稼働はどうあるべきかについて伺いたい。

小林: 東京電力改革・1F問題委員会で伊藤邦雄委員長がレビューされ、あれ以上でもあれ以外でもないため、私からのコメントはない。

2年前に閣議決定された(『エネルギー基本計画』に基づき、昨年資源エネルギー庁で決定した『長期エネルギー需給見通し』に記載された)エネルギーミックスは、原子力と自然エネルギーと石炭火力との比率(について)、原子力を20~22%、自然エネルギーを20%以上(にする)という中で、経済性を考え、開発も含めて具体的にどう進めていくのかがあまりクリアでない。

遅ればせながら(パリ協定の締結に必要な文書を国連に提出し)、日本はCOP22に出席しているが、2013年度ベースで2030年度に26%削減するというのは、(実現に向けた)具体的な絵が(ない)。原発(の再稼働)がなくて、自然エネルギーのコストがどのくらいになり、(原発なしに)26%(削減)になるのか。もっと言えば、2050年までに、省エネも含めて現状から80%減らす(という目標をどう達成するのか)。そういう絵が(描けておらず)、個別にいいとこ取りをして整合性が取れていない。この政策そのものに、私は危惧、欺瞞性を感じる。

これをベースにして、どういう原子力政策をやるのか。(原子力については)サドンデスの意見も、継続の意見もあるだろう。せっかくここまで原子力政策を経済産業省主体で進めてきたが、安全対策の一部の抜かりによって津波や地震にやられてしまった。原子力(発電)を、今の段階で永遠にゼロ(にすること)が、日本にとって経済的にもCO2的にもよいのかどうか(考えるべきである)。

本会が「縮・原発」を主張しているように、(遠い将来において、原発を代替するエネルギーの開発が実現されれば)原子炉、ウランとプルトニウムのリサイクルも含めたシステムというのは、止めるべきである。ただ、安全を担保できるほどのソフトウェアができるのであれば(原発の開発を長期的に継続するという選択肢はある)。今、資源が何もなく、エネルギーコストが他国から比べて2倍もするような国で、経済活動をするということそのもの(に疑問がある)。成長戦略でいかにさまざまなアイテムを出したところで、あるいは(もし)TPPがうまくいったところで、エネルギーコストの高さはいかんともしがたい。製造業、特にエネルギー多消費型の産業は日本に投資できず、海外に行ってしまう。まして米国では法人税を15%(とする政策案が掲げられ)、トランプ新大統領の方針がどうなるかは分からないが、石炭やシェールガスなどカーボンベース(のエネルギー)を相当使うとなると、(日本の立地)競争力がますますなくなっていく。そういう位置付けで原発も考えなければいけない。この二つをベースにすれば、自ずとどうすればよいか、解が出てくると思う。

Q: 原発再稼働というのは、パリ協定で掲げた目標を達成するには欠かせないという認識だと思うが、そのときに政治はどのようにすればいいか。国民に対して説明責任があるとお考えか。

小林: 一般論として、政治的ないろいろな配慮を抜きにすれば、(安全性に関する)情報をお互い議論するオープンな場が(必要である)。この情報は定量的に説明するのがものすごく難しい。どうそれを分かりやすく(伝え)、国民に分かってもらうように(するかが問題だ)。少なくとも、自民党は原子力(発電所)を稼働させるという方針であるならば、説明の場を持ち、もっと納得性のあるケーススタディを外に向かって堂々と説明していただきたい。

Q: 近く、働き方改革実現会議が政府で開かれ、政権から経済界に賃上げ要請があると見られている。今の議論を見ていると、日本銀行の物価上昇率の目標を達成するために昨年を上回る賃上げ水準を求めてくるのではないかという見方が強い。個社の業績にはばらつきがある中で、経済界としてはどのように対応していくべきだとお考えか。また、三菱ケミカルホールディングスとしてどう対応するか、伺いたい。

小林: 経済界としては、統一的にどうかということは本質的には言えない。個社の業績によっても違う。(ベースアップ)2%が高いのか低いのかも含め、個社の判断によると思う。三菱ケミカルホールディングスも国の縮図のようなもので、石油化学のコモディティ系の(ような)、中国やインドにやられてしまったインダストリーも持っている。また、薬やヘルスケア(の事業)も持っている。あるいは産業ガスのようにきわめて安定した事業も持っているし、機能商品という付加価値の高い比較的安定して儲かっている事業もある。2017年4月にケミカル(を扱う3社)が統合するが、各社業績によって給料が異なり、当然ながらボーナスも変わってくる。一つのホールディンググループでさえ、ダメなところは減額する。一般的に言うと、ケミカル(を扱う業界)の中でも良いところと悪いところがあり、(当社)ホールディングの中でもしっかり頑張っているところと苦しいところもある。個々の差はあるが、今まで苦しかったのがリストラをして良くなったところには、今まで我慢した分、かなり上げたいと思うし、安定して良かったところはその比率くらいでいいだろうというように思う。この辺りについては、あまりジェネラルに言うことはできない。「一律何%」というような世界ではない。組合といろいろ議論して、ここ数年調子が悪かったが、頑張ったのでちょっと(上げようとすることもある)。それをベースアップにするのか、頑張ったから一律3万円くらい特別金を出そうかという世界である。したがって、ベースアップ2%と言われても素直に「はい」と言えるような世界ではない。われわれは株主のためにも働いているが、やはり従業員(が大切)である。従業員がその気になって一緒にやってくれているという思いは、日本の経営者のほとんどが持っていると思う。(経営者が従業員を)搾取するというのは冗談ではない。社長も従業員のなれの果てであるから、日本の場合は(経営者と従業員は)敵対関係ではない。とにかくグローバルに勝つためにみんな必死に働いて、経営もがんばっている。しかし、エネルギーコストにしてもいろいろなハンディキャップを強いられているから、グローバルにいかなければならない。海外で稼いだお金を日本に持ってきて、日本の従業員の給料を上げるということも実はかなりある。労働分配率がだんだん下がってきているというが、儲けの部分はほとんど海外から持ってきていたり、分母は大きいが日本で稼いでいなかったりということもある。したがって、(賃上げの水準については)そんなに単純には言えない。

Q: 経済財政諮問会議など政府系の会議体では、将来の物価が上がるという見通しで賃上げを求める声もある。フォーワードルッキング的な、物価上昇率をあて込んで賃金を上げるというロジックについてはどうお考えか。

小林: それはロジックというより思いである。だから思いを取るか、ニワトリとタマゴのようにどちらを先に取るかというところがある。今回見ていると給料は結構上がっているが、消費は全く上がっておらず、むしろ下がって冷えている。まずはその原因を考えるべきだという気がする。やはり将来への不安が原因なのではないか。将来が安定していればお金もたくさん使う。ある程度(お金を)貯めておかなければ、入院した時どうなってしまうのだろう、年金ももらえず、病院に入ったところで社会保険料も減るとなれば、誰だって溜め込んでしまう。好循環を考えると、私たち(経営者)も給料を上げたいともちろん思っているが、ROEというところで挟まれる。人件費はかなりの比率を占めているため、特に海外の株主からは厳しく見られる。したがって、これも最適化の問題で、ちょうど良い具合でやっていく必要がある。米国がどうだったかは別として、変に格差が生じ、白人の低所得労働者が(既存のエスタブリッシュメントへの反発という)こういった形の反逆をするということも含めて、持続可能な経営、あるいは持続可能な社会経済システムをつくるという意味では、もちろん給料を上げ、もっと活性化して将来物価上昇率が2%になるということを見越してやるという思いも分かる。しかしロジックとしては、今まで3~4年、結構(給料を)上げたけれども、それと全く相関性がなく物価が下がっている。あるいは消費性向が下がっている。それがなぜなのかというと、将来への不安だろうし、国民自体が将来の日本経済に自信を持てない。そうであれば、将来はもうちょっと明るくなるという絵を描いたり、具体的なアクションを取ったり、アイテムはまだたくさんあると思う。

Q: 日露経済協力をめぐる協議で、ロシア側担当を務めているウリュカエフ経済発展相が収賄の容疑で身柄を拘束された。12月にはプーチン大統領が日本を訪問し、日露首脳会談が予定されているが、日ロ経済協力に影響が出るかどうか伺いたい。

小林: 最終的にはプーチン大統領が取り仕切るので、なるべく影響が出ないことを期待したい。しかし、(日露首脳会談の)1カ月を前にしてトップが突然拘束されるというのは、基本的な方針は変わらないだろうが、事務的な手続きについては若干遅れるのではないか。残念なことだ。事務方にとっては大変なことだと思う。むしろ、プーチン大統領のビヘイビアをトランプ米国次期大統領が握るかもしれないということの方が、大きな影響が出るのではないか。従前のサイバーセキュリティなどロシアの政策に、オバマ政権は強い意思を示してきたが、トランプ次期大統領とは相性が良いのか、政策も融和的で合いそうだと見る声もある。そうなると非常に良い方向の可能性もあるし、逆に米露が親密になることで、日本への四島返還が、彼らにとって重要な切り札にならなくなってしまうこともある。経済発展相の拘束というより、プーチン大統領とトランプ次期大統領が電話会談をした結果を見なければ分からないが、その影響の方が大きいのではないか。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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