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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年11月2日(水)13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事

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記者の質問に答える形で、(1)TPP承認案と関連法案の国会審議、(2)日本銀行の物価上昇率目標達成時期の先送り、(3)賃上げ、(4)日ロ関係、(5)ミャンマーでの経済活動、(6)パリ協定とCOP22、(7)米国大統領選挙、(8)電通の過労自殺問題、などについて発言があった。

Q: TPPの承認案と関連法案の国会審議について伺いたい。本日午後に衆議院特別委員会での採決が予定されていたが、昨夜、山本有二 農林水産大臣が、前回の強行採決に関する発言に加え、「冗談を言ったらクビになりそうになった」と発言したことで、野党の強い反発を受け、採決が見送られることとなった。これらの相次ぐ失言についてどう思われるか。また、採決が先送りになったことについての所感を伺いたい。

小林: 従来から申し上げている通り、米国(の新しい大統領)がドナルド・トランプ氏かヒラリー・クリントン氏かは別として、あるいはバラク・オバマ大統領のレームダック・セッション(での実施法案成立)の確率も高くない状況で、日本が先に承認することが一つの力になって、米国を一定程度動かせるとの論理に立てば、今回、とにかく可及的速やかに議案を国会で承認することを念じてきたので、一閣僚の極めて軽率な発言は、国益やグローバルな経済状況をも左右することであり、時間的に少なくとも何日かを損失するのは由々しき問題であると思っている。

Q: TPPの国会審議について、これまで長期間に渡る審議を行ってきたが、山本農水相の問題や輸入米をめぐる不透明な取引など、本質的な議論がされていないという声もあるが、その点についての所感を伺いたい。

小林: 基本的に政局に引きずり込むことは国会の常なので、TPPに限った問題ではないかもしれない。12か国が(TPPに)加盟して、RCEPあるいは日中韓(の議論をし)、そのような意味で本当のグローバルな経済を志向している一方で、BrexitのようにEUからの離脱(を選択)する国が見られる。また、米国が今後どうなるか(不透明であり)、日本は資源もない中で、農業という重要な産業、あるいは政治的にも重要な部分について、それらを含めたトータルな議論や基本的な戦略に関する議論があまりにないことは、情けないと思う。

Q: 日本銀行は、昨日の金融政策決定会合で、物価上昇率2%の目標達成時期の見通しを2018年度頃に先送りした。これにより、黒田東彦総裁の任期中の達成は断念することになったが、受け止めを伺いたい。また、現在のモメンタムで、果たして2018年度頃の達成は可能なのか。代表幹事の見解を伺いたい。

小林: 2013年3月に黒田氏が日本銀行総裁に就任してから、非常に積極果敢で、サプライズ戦法という形で、為替を(1ドル=)80円から120円まで円安に誘導した。少なくとも、経済的な意味では、海外で稼いだ換算益(が増え)、また貿易がやりやすい形になって、かつて六重苦と言われていたもの(の一つ)がいち早く(解消され)、極めて強い円高が解消された。その段階のサプライズな戦略、非常に大胆な緩和は、明らかに効果があったと思う。(生鮮食品を除く)消費者物価上昇率は、2013年から2014年に向けて2.6%と順調に上がっていったが、そこからかなり息切れして、最近では7か月連続でマイナス、今回の見通しでは、生鮮食品を除いた消費者物価上昇率見通しが2016年度は▲0.1%の予想まで来ている。

 三次元緩和という、量的、質的、マイナス金利とこれまでの歴史にない手法を使っても、雇用など一部の経済指標はかなり良くなっているが、GDPや消費、物価がピクリともしない。9月に総括的な検証をされて、一部哲学的な部分もあったかもしれないが、再度の仕掛けについてはマーケットと個々に対話するより、一定程度の長期的な戦略に切り替えていった。マイナス金利をより深堀りしなかったことは(評価したい)。この場に及んでは、(アベノミクス)第一の矢、第二の矢、とりわけ第一の矢はやり尽くして、いまや第三の矢は言われて久しいが、本質的な意味でのイノベーション(が重要で)、海外あるいは発展途上国の経済や原油価格に相当影響されるとはいえ、そういったレベルではなく、今は(金融緩和は)待って様子を見ようという判断を下されたことは、大いに結構な手立てではなかったかと思っている。

Q: 昨日の日本銀行の展望レポートに、「春闘に注目している」との記述があった。政府や日本銀行から賃上げの期待が高まっていると思うが、所感を伺いたい。一方で、2016年度の中間決算の発表が本格化しているが、4年振りに純利益が減少する見込みの中で、どのような姿勢で春闘に臨むかについても伺いたい。

小林: 元々、春闘(における交渉)は労使で決めるのが当然だったが、この3年間、政労使という政治のテコ入れによって、異例の形がある意味ではトリガーになり、好循環という形で表れ、結果としてこれは良い方向だったと思う。論理的には、リーマン・ショック後は景気悪化の結果として労働分配率が上がったが、それ以降はどんどん下がってきており、そのような数値を見れば、定期昇給を含めたトータルな賃金アップの上げ代はまだ十分考える余地がある。為替が1ドル=120円だったものが、7月頃から1ドル=100~103円程度になっている中で、少なくとも今年の上期は、相対的には収益が落ちていることは間違いない。(今年)後半、米国の大統領選挙も含め(先行きが)不透明とはいえ、今の経済全体の状況は決して悪い方向にいっていないという感覚を持っている。今後、労使で議論をし、それこそ大変な赤字の企業もあるため、全体のマインドとして好循環を通じてより物価も高まり、経済が活性化するという方向でいく(であろう)とはいえ、個別の問題であることを忘れてはならない。

Q: 政府は、デフレ脱却に向けて今年も企業に賃上げを強く求めており、2%を超える賃上げを数値目標として出してほしいとの声もある。こうした動きについて所感を伺いたい。

小林: 2%のベースアップというのは、現状の企業の平均的なパフォーマンスからすると、大きな目標だと思う。個々の企業の業績はばらついており、具合の悪い業種、企業がある。同じ業種であっても比較的パフォーマンスのいい企業も(悪い企業も)ある。最終的には平均値として集計されるが、余力のある企業は2%どころかもっと賃上げすればいいし、そうでない企業はベースアップなんてもってのほかというのは当然である。業種や企業を代表する立場ではないが、平均値として相当高い目標だと感じる。一概に上げるというのは難しい。業種によっては、大変なところも絶好調なところもあるので、一律に2%ベースアップというのはあり得ない。

Q: 来月、ロシアのプーチン大統領が首脳会談で訪日する。世耕弘成 ロシア経済分野協力担当大臣も会談のため、明日ロシアに出発する。領土交渉と並行して経済面での協力について話し合われる予定である。資源開発の検討等が挙がっているが、経済界として期待する部分を伺いたい。

小林: エネルギー問題は重要な部分を占めている。従来の延長線上と同時に、ロシアが主張している北からの送電などを含めて、非常に良い機会であるので、領土問題とどのように絡めていくのかは交渉の当事者たちのテクニックもあるかと思う。経済界としては、これを一つのトリガーにして、電気のコスト面の実現可能性も含めて、日ロの互助関係を定量的に見直す良い機会だと思う。

Q: 現在、ミャンマーのアウン・サン・スーチー国家顧問が来日しているが、ミャンマーでの経済活動について所感を伺いたい。

小林: ミャンマーの経済状況は、インフラ周りからスタートする協力の仕方から入っていくと思うので、インフラ系の企業が積極的に協力していくことが望ましい。私(三菱ケミカルホールディングス)のようなケミカル業界(のミャンマーとのビジネス)は、インフラが整った後の段階(に本格化するの)だと思う。

Q: 温暖化対策について、パリ協定が今月4日に発効し、7日から第22回気候変動枠組条約締約国会議(COP22)が開催される。日本は国連が示した締結の締め切りに間に合わず、第一回のパリ協定締約国会議にはオブザーバー参加となるが、最初から議論に入れないことでどのような懸念があるか。

小林: 中国・米国・インド・EUが(パリ協定に)あっという間に批准した中で、日本の場合は状況が難しいということもあったが、若干の遅れを取ってしまったことは残念だ。(日本の批准が)マラケシュで開催するCOP22に間に合わないことが致命的なダメージになるとは思わないが、それ以前にCOP21で(日本が提出した)「2030年までに2013年比26%の排出量削減」「2050年までに80%削減」といった目標の科学的根拠は、本当に深く議論されているのか。例えば、目標年の時点でのエネルギーミックスについて(政府は)、原子力20~22%程度、自然エネルギー22~24%程度としているが、原子力がこの割合で構成されるには、現在50基程度ある原発について、かなりの割合が運転され、かつその一部については40年寿命ではなく運転延長をしないと計算が合わない。柏崎刈羽原発も動かない、国内で現状3基しか動いていない中で、2030年、あるいは2020年くらいにどういった状況になるのか。原子力が本当に国民の判断として動かせない、(あるいは)動いたとしても10基程度であったとしたら、(その代替として)太陽光や風力などの自然エネルギー(の比率)をいつまでにどの程度上げなければいけないのか。それが本当にコスト的にフィージブル(実現可能)か。現在、原子力(の発電コスト)が約10円/kWh、太陽光発電は20円台といわれる中で、本当にそれが国民経済として許されることなのか。現実的な視点からを全て計算した上で、排出量削減(の目標を立てる)といったように、もう少ししっかり詰めないと、あまりに無責任だと思う。他の国の状況は知らないが、せめてサイエンスが極めて進んでいる日本として、きちんと正確に計算をして時間軸を決め、国民に問うた上で目標を立てるべきだ。あるいは、できないことがあれば、こういうことに研究開発費をもっと使うなど、そういったことがクリアになっているようでなっておらず、今のレベルでは到底達成できないにも関わらず、なんとなく目標を立ててしまっているように感じる。TPPも同様だが、こういった議論が全くないことが極めて残念であり、本当にこれで良いのかと思う。

 財政のサステナビリティも同様である。2020年度プライマリー・バランス黒字化というが、名目GDP3.5%、実質GDP2.5%成長で金利が3%以上という想定でも、まだプライマリー・バランスは5.5兆円の赤字になる計算をどう考えるのか。それに対して、今の実態としての名目GDPは2%もいっていない。ところが試算ベースでは名目GDP3.5%で、物価も(現在は)▲0.1%、金利もマイナス金利になっていて、その上、われわれに残された時間はたった4年しかないといったように(目標と現実が)乖離している。こういった(目標と現実が乖離している)状況が私には理解できない。国会、TPP、COPなど全てがそのように感じてしまう。与野党ともに、これらの課題に対して正確に議論しようとする日本であってほしい。

Q: 米国大統領選挙について、共和党候補のトランプ氏の支持率が巻き返し、民主党候補のクリントン氏との差が縮まっているが、所感を伺いたい。

小林: 米国大統領選挙の先行き不透明感から、株価が下がり、為替も(1ドル=)1円以上円高になっている。マーケットは楽しんでいるかのように過敏に反応し、そこで儲けている人もいる。今の流れでは、スイング・ステートを含めて、トランプ氏が少し勝つか負けるかということで、最終的にトランプ氏が大統領になるというところまでは来ていないと思う。

Q: 電通の女性新入社員の過労自殺について、政府は「働き方改革実現会議」の中で、長時間労働の是正を議論しているが、どのような対策が必要か。

小林: 企業文化として染みついたものなので、一朝一夕で解決できるような単純で安易な問題ではなく、極めて深い問題である。電通(の問題)は氷山の一角であって、電通のようにソフトウェアで競争の激しい産業だけでなく、製造業でも、長い時間働けば生産性が低くても、それなりの結果が出せるというように、相変わらず時間で稼いでいるところがある。

 一番残念なことは、そこまで頑張る人が自死を選んでしまうことだ。一度ループに入ると人間はなかなか抜け出せず、死を選んでしまうことがある。そのようなことにならないように、最低限のセーフティネットを考えつつ、日本の風潮を、時間より効率とフレキシブルに物事を考えるように切り替える必要がある。

 私自身も長時間働いており、自己反省もあるが、どうしようもない部分もある。そのくらい深刻な問題である。世界の競争に勝つためには、若いときのある時期は、時間を気にせずに働かなければいけないのも事実だ。全員が幸せに働き、遊び、土日もゆっくりと休養していて、中国、米国、インド、イスラエルとの戦いに勝てるのかという部分もないわけではない。非常に複雑な問題だ。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)

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