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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年8月30日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)景気見通し、(2)空売りファンド、(3)中国経済、(4)日本銀行の金融政策、(5)税制改正、などについて発言があった。

Q: 景気の見通しについて、4-6月期のGDP速報値は年率換算で0.2%増とほぼ横ばいであった。株式市場も一進一退の動きが続いている。為替も、8月後半に一時1ドル100円を切るなど、相変わらず円高基調が続いていると感じている。これから年末に向けて、景気がどう動いていくか、代表幹事の所感を伺いたい。

小林:昨日、本会の経済情勢調査会で、景気の現状について、各業界のトップと意見交換を行った。大きな基調として、世界経済はそれほど悪くないというのが一つの集約された見解だが、国内を中心に消費はなかなか厳しい。本日発表された7月の家計調査では、(1世帯あたりの)消費支出が実質で前年同月比0.5%減と、5か月連続で下がっている。前月比では回復という結果にはなっているが、小売系はここ数か月苦戦しており、GDPもほぼフラットである。
(景気の見通しとして、)急激には上昇しないが、かといって後退(局面)に入るという兆しは全くない。むしろグローバルに見ると、欧州も常に0.4~0.5%と非常に安定して推移している。英国はポンド安によるプラスの効果、ドイツやギリシャも比較的安定している。米国も雇用含め安定して推移している。中国もオーバーサプライ問題(の解消)には数年かかるだろうが、鉄鉱石や原料炭などの原料単価は上がってきているので、在庫を精査しないと何とも言えないが、悪い方向には行っていないと考える。
今後どうなるか、(為替については現状)1ドル100~102円程度、米国で9月に利上げがあるかないかで状況は変わるだろうし、(9月になくても)年内に一度くらいはあるかもしれず、当座は(米国の)利上げによって、若干円安方向には動くだろう。一方、米国が、利上げによって景気を含めリスクが増えるとなれば、円高の方向に動くだろうし、何ともその辺りは読みづらいというのが現実だと思っている。そもそも為替の最適点がどの辺りか(を決めるのは)なかなか難しいが、企業経営にとってはあまり動かない方がありがたい。この秋口は、大きな落ち込みもなく進んでいくのではないかと思う。

Q: 最大の景気のリスク要因は為替と認識されているのか。

小林:為替にはかなり敏感に反応していると思う。

Q: 8月に入ってから伊藤忠商事やサイバーダインがレポートを出すなど、米国の空売りファンドが本格的に上陸してきたと見られている。空売りファンドの存在について、今後日本に広がってくるか、企業経営にどのような影響を与えるか、経営者がどのように考えていくのか、所感を伺いたい。

小林:今に始まったことではなく、ちょっとした政治的な動きやBrexitなどでも(生じ得る現象だ)。空売りファンドに限らず、金融業界の一部は(株価が)動くことで金を儲けるので、そのような部分は当然ある。そのターゲットになるかならないかというよりは、リスクをかけてビジネスをしている中で、どれだけ説明責任を果たせるかという対応はあっても、それを止めるわけにもいかない。そのようなことがあるというベースで、どれだけきちんとした説明ができるかという透明性をいつも持っている以外は、対応のしようがない。

Q: 透明性を持って、きちんとした経営をしていれば、大きなリスクにはならないとの考えか。

小林:そう思うしかない。

Q: 中国経済の状況について、過剰生産の解決に向けた動きも出てきているが、実際に国有企業が動いても、それ以外の民間、特に鉄鋼企業などに動きがないのではという懸念もある。中国経済の状況、日本と中国の関係が昨年よりも微妙になっているが、この辺りを踏まえて、経済的にはどのような状況にあるのかお伺いしたい。

小林:7月31日~8月3日、中国ミッションで北京を訪れた。大きな目的は三つだった。一つは、政治関係者と、政治と経済全体について話すことで、唐家セン中日友好協会会長にお会いした。(二つ目は、)若手の経営者、とりわけネット・ビジネスを行っている方々にお会いし、その意識を伺うこと。(三つ目は、)常振明 中国中信集団有限公司(CITIC)董事長はじめ、銀行を含む大手企業と会話をすることである。

また、石油と化学の業界団体である中国石油和化学工業連合会(CPCIF)の李寿生会長とお会いし、鉄や化学、セメントのオーバーサプライ問題について伺った。まず、オーバーサプライ問題について、鉄であれば12億~13億トンくらいのキャパシティがあっても、実際は8億トンしか内部で消費されておらず、4億トンくらいはアイドリングしている。化学でも、コモディティ系と呼ばれる繊維原料など、大量消費される素材の中の素材のような原料系がある。原油を加工してナフサにし、ナフサからコモディティ・ケミカルを作る。ケミカルでも、ものによるが大体3割程度のオーバーサプライである。(中国は)第13次5カ年計画が今年からスタートし、国は、お金を使ってキャパシティを減らしていこうという政策を打っている。それによる一番大きな問題は雇用で、これをお金でなんとか解決しようというのが国の政策で、地方や民間の企業も多く、それがゾンビ(企業)化しているわけでもあるが、少し(景況が)良くなればまたつくる。

国も決して安易には考えていないと思うが、唐家セン氏も3~5年かけて正常化していきたいと述べており、GDP的には6.5%くらいで平衡状態になるのが新しい第13次5カ年計画の基本的な目安かと思う。昨日の(経済情勢調査会での)情報では、ここにきて原料炭(価格)も急に上がっており、鉄鉱石(価格)も上がってきている。あるいはポリエステル原料やアクリロニトリルなど、繊維原料も比較的市況が良くなっている。そうなるとまたすぐにつくり始めるので、長期的には分からないが、方向としては、明らかに国が率先してオーバーサプライに対応することが第13次5カ年計画の一つだと言える。我々は、そのような前提の下で、中国への進出や撤退を考えていくべきである。

もう一つ、今回の訪中の最大の目的は、若手、とりわけインターネットのビジネスが、いま中国でどうなっているか(を知ることであった)。消費について、第3次産業化が非常に速いスピードで進んでいる中で、「『プラス・インターネット』から『インターネット・プラス』へ」という言葉で説明された。「ビジネスにインターネットやバーチャルを使ったサービスを加える」という時代を終え、すべてがインターネット・ベースでのビジネスとなり、業態を越え、業種そのものがボーダーレスになる、と明確に述べていた。米国でいう「インダストリアル・インターネット」、独でいう「インダストリー4.0」、日本でいう第4次産業革命や「ソサエティ5.0」と殆ど同じか、むしろ(それ以上である)。

ちょうど北京に行っていた8月1日、滴滴出行(Didi Chuxing/ディディ・チューシン)がウーバー・チャイナを買収した。そのくらい激しく動いているのがインターネットの社会で、アリババや二番手のJDドット・コム(京東商城)を運営する京東集団はとりわけ激しい。今回のミッションで京東集団のCEOと話したが、2014年に米ナスダック市場に上場、2004年の創業からたったの12年で、12万人の社員と7兆円の売上を持つeコマースの会社に成長した。一日に200人も採用しており、「毎日リクルートしている」と述べていた。日本のような一括採用とは全く違い、通年採用などというレベルを完全に超越しており、非常に新鮮さを感じた。

中国のインターネット人口は6億人程度、日本は6,000万人くらいだそうである。日本の10倍のマーケットがあり、国内全体が、実物取引や店頭取引よりインターネット取引の方向に動いている。必ずしもインターネット(会社)の経営者だけでなく、銀行の方も言っていたが、越境eコマースに移行している。化粧品やトイレタリー、電化製品など、商品の安全性の高さから日本に爆買いに来て、税がかかるようになって高価な買い物が減ったという現象もあるが、一方で、日本に来なくても電子取引で買えるため急激に爆発し始めているという現象がある。

シェアリング・エコノミーについて、日本でも自家用車を使ったシェアリングのモビリティ・サービスや民泊が議論されているが、中国では先述のようにウーバー・チャイナを滴滴出行が買収するなど、そこ(シェアリング・エコノミー)が爆発的に伸びている。三番手、四番手の企業のCEOが言っていたが、(中国には)レギュレーション(規則)があるようでない。日本の場合は、規制があるからできないので規制を緩和してからという順番だが、中国の若手経営者はスピード感と心意気、勇気が一番重要だと明快に言っていた。以前、私がビジネスで台湾人と議論をしていた際、監獄の塀の上を速く歩けば中には落ちないだろうと(言っていた)。競争の激しい中で勝ち抜くには、それ以上にアイディアを出してとにかくやってみる、という精神構造(が必要である)。これには、迫力が違うとかなり感銘を受けた。

中国では、ノーベル賞級(の研究開発)というのは容易には出てこない。0(ゼロ)から1(イチ)を創ることより、世界中の知見や新しい科学技術を取り入れ、1から100にもっていくスピード感は、日本の経営者は見習わなければならないし、若い人がそういうことをできるよう鼓舞するのは、我々のかなり重要な役割である。

5月にイスラエルを訪れたが、たった800万人しか人口がいない中で、サイエンスをベースに0から1を創ることに極めて長けた人たちである。一方、人口13億人の中国は世界中の知見を集めて1を100にもっていく。

そういう中で我々日本は、どこが強くて、どこで生き延びて、どこで差異化をして生きていけるのか、という問題提起を受けて帰ってきたという気がする。

中国経済の縮小が言われているが、それでも6~6.5%は成長している。GDP1,300兆円の6%というだけでも70~80兆円が毎年生まれており、インドネシアくらいの(規模の)経済が毎年誕生していることになる。今後ともども重要なポイントになるのではないかと思う。

横井裕 在中国日本国特命全権大使にお会いしたが、「ここに来る間でも道路が良くなったのを感じませんか」(と尋ねられた)。横井大使も5年ぶりに赴任されたとのことだった。ハードウェアの進展と同時に、あっという間にシェアリング・エコノミーや新しいバーチャルな世界を取り込んでいく中国の大いなる若さを感じた。

Q: 先の中国ミッションで、唐家セン氏が「『政冷経冷』になってはまずい」と発言されたと仄聞している。国内では中国を仮想敵国としているようなパフォーマンスも見られるが、今の発言からすると、中国経済と日本経済は切っても切れない関係にあり、自動車にしろ、サービス産業にしろ、(中国と)連携しなければならないと思う。今年、国内で日中韓首脳会談が開かれることもあり、政治に関して、中国とどのような関係を築いていくべきとお考えか。

小林:少なくとも経済では、(中国には)日本の10倍もの大きなマーケットがあり、大変熾烈な競争の中で勝ち抜いている経営者がいる。日本には製造業、サービス業を含め、テクノロジーだけでなく、今まで蓄積した様々なノウハウ(がある)。経済人から見れば、互いによいところを出し合って協力していくことが、今後も続けていかなければならない最大のポイントだろう。ただ、唐家セン氏が述べているように、政冷経熱とはいかず、車の両輪ではないが、(政治と経済には)相互に関連性がある。唐氏は、「なぜ経済界はもっと施政者(日本の政治家)に中国と上手くやるよう言わないのか」と言っていた。それぞれ不可分な関係性があるため、そう単純にはいかないと思うが、韓国(との関係)や今回の外相会談も含め、G20を控えて、中国側も一定程度の理解を示しつつある中で、非常に重要な時期にきていると思う。程永華駐日大使も、南沙諸島に関して程氏なりの意見を述べているが、このような問題は、フェイス・トウ・フェイスで話し合う機会をつくりながら(進めていくべきだろう)。私としては、どんどん誤解を増やしていくような関係だけはやめていただきたいということしか言える立場ではない。

Q: 日本銀行は、9月の金融政策決定会合で、金融政策について包括的な検証をするとしている。民間の立場から、これまでの日銀の金融政策について、どのように総括されるか。

小林:黒田東彦日本銀行総裁の米国ジャクソンホールでの講演では、量的緩和はもう十分でこれ以上すると飽和してしまうが、まだマイナス金利は可能性がある、との趣旨と受け止めた。超長期の社債が買われ、不動産は活性化しているという、ある意味では当たり前の現象は出ているが、基本的には、金融の真の機能が、マイナス(金利)という名の下に行われるとは、率直に言って思えない。

端的に言えば、もう金融(緩和)や財政出動の段階ではなく、我々経営者の問題である。企業がもっとしっかりと儲ける構造を、どれだけ短期間に手の内にするかという段階に入っている。国民も含め、あまり性急に金融や政治に、こうしてくれ、ああしてくれと要望するより、我々(経営者)が本当に強い自分自身たり得るにはどうしたらよいかを、もっと本気で考えるべきだというのが、正直な想いだ。手練手管で少し儲かっても続かない。持続可能性というキーワードの下に、本当の意味の実力をつける時期が今なのだと思う。

Q: 黒田総裁が就任して約3年半金融緩和を行い、功罪あったと思う。当初は政権交代と重なる形で、円安・株高のアベノミクス路線の先陣を切る形で進んできた。今は市場の動きも停滞しているが、評価できるところを伺いたい。

小林:民主党政権の際、このままでは六重苦で日本はダメになるとの危機感を持っていた。為替、通商交渉、法人税、環境対応、エネルギーコスト・資源問題、労働法制の6つだ。それが、為替は(金融)緩和によって(円安に振れ)、大企業など海外で活躍しそこで儲けたものは換算益が大きく影響した。(1ドル)80円が120円になれば、5割くらい上がってしまうので、この利益は大きかった。これに従って株(価)が上がり、全体が活性化した。それが1~2年で、GDPも消費も上向いた。それは(政権交代から)1年半くらい(の間のことだ)。大きなサプライズと刺激は大成功だったが、それをただ続けるのは意味がない。引くところは引かなければならない時期が、いま来ている。それこそがTPP、法人税(率引き下げ)であり、特に労働市場をフレキシブルにすることだ。これは今度の臨時国会でも大きな争点になるだろうが、働き方改革など規制を和らげる、構造改革をやる、働き方を変えるなど、明らかにその段階に入っている。ちょっとした刺激や緩和の季節は終わったと見ており、次の段階に大いにエネルギーを使ってほしい。

(金融緩和により市場の)お金の流れを良くし、時間を稼いだ。その間に本当の成長戦略をやろうと(いう意図だったのではないか)。成長戦略をやるにも、労働法制、規制緩和、構造改革をやらなくてはできないという時期にきている。政府もそういう認識だと思う。

Q: 「引くときには引かなければならない」との発言は、日銀が金融政策を検証した結果、マイナス金利に限界があるのであれば見直すべきだというお考えか。

小林:そう思うが、(マイナス金利政策の見直しはそう簡単には)やらないだろう。米国の(ジャクソンホールでの)黒田総裁の話では、もう少し様子を見ようということではないか。辛抱強く、政治も金融も、国民、経済人も、本当にやるべきことは構造の変革であり、産業の再編だ。産業自体がコモディティ系からサービス系へ、サービス系はいかに生産性を上げるか、あるいは「インターネット・プラス」や「インダストリー4.0」のようなものをどう進めていけばよいか。それに伴い、労働法制をどれだけフレキシブルに転換できるか、全て関連している。そういう中で、80兆円の量的緩和を減らせとは言わないし、マイナス(金利政策)をやめろとは言わないが、これ以上深みに入るのはやめてほしいと思う。

Q: 9月から、与党で来年度の税制改正に向けた議論が始まる。今回は、消費増税が先送りになり、研究開発税制と所得税制が中心になると思われる。税制改正に向けた要望を伺いたい。

小林:労働法制とも関わるが、103万・130万円の壁はぜひ議論してほしい。研究開発については、7-9月期(の2次速報値)からGDP(の算出)に加えられ、年間で15兆円ほどGDPが増えることになる。日本の根幹の経済発展の要素であるので、ぜひ、税制的には考慮いただきたい。また、消費税がきちんと2019年10月に(10%へ引き上げ)できるべく、どのように全体の税制を考えていけばよいかを議論してほしい。

Q: 配偶者控除の見直しについて、業種によると思うが、企業側から見てどのくらいのインパクトがあるか。

小林:女性が働きやすくなる。103万・130万円の壁を意識せず働けるようになるのは、非常にポジティブ(なことだ)。定量的に言うのは難しいが、メンタル面で、働くことに対する推奨としてはよい方向だと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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