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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年7月4日(月) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)バングラデシュ人質事件、(2)OECD租税委員会、(3)英国のEU離脱、(4)成長戦略、(5)創業家と経営陣の対立などについて発言があった。

Q: 先週末バングラデシュで発生したテロ事件で日本人7名が犠牲となった。2013年にはアルジェリアで日揮のプラントが襲われ10名が亡くなった。企業のグローバル化の中で、日本企業がターゲットとなってきている状況も否めない。企業のテロ対策について所見を伺いたい。

小林: 長年の課題の一つだと思う。色々な事象が起こる中で、いつも起こった後はそれなりの対策をするが、比較的忘れてしまいやすいことの一つだ。企業のアクティビティはますますグローバル化して、かつてのような大都会での経済活動というより、むしろ今後は、バングラデシュを含め、アジア、アフリカといった新しいフロンティアを求めた経済活動が増えていく中で、行くのを止めるわけにはいかない。派遣された社員なり、社員のテロに対する防御策をどのようにしていくかということにならざるを得ない。

これは外務省からの情報をいかに的確に社員に伝えていくかなど、基本的なところを見直していく以外に特効薬はなさそうだ。夜、繁華街に行くなというのもなかなか難しい話である。今は外国人が集まるようなところは避けるなど、細かいマニュアル化をして対応する。それ以上の大きな解決策はないということだと思う。非常に残念なことだ。

バングラデシュはダッカに限らず、今後、日本のODA(政府開発援助)、JICA(国際協力機構)を含めて、ますます経済活動を発展させるために日本がコミットして助けていこうという気運の中、このような事件が起きたことは甚だ残念である。バングラデシュの20歳代の若者があのようなアクションに出たことは、ある意味では、予想以上にIS(イスラム国)のSNS等を介した教宣活動、若者に対する悪い方向への宣伝が(影響を及ぼしている)。特にネットを通じての情報(の流れ)は阻止できないがために、なかなか解決策が取りづらい。これは個々の企業と同時に、(現地に)進出している各企業間の情報のやりとり、とりわけ外務省の正確な情報をいかに伝え合うかがポイントになると思う。

Q: 先週、京都で開かれたOECDの会合(租税委員会)において、各国が課税逃れに対して、規制あるいは取り組みを強化していこうということで意見が一致した。背景にはパナマ文書問題などがある。規制や取り組みが強化されることで、企業側としては、各国の思惑によって二重課税や三重課税がされるのではないかという懸念が高まっているという声もある。受け止めについてお伺いしたい。

小林: 基本的に、煩雑な手続きがない限り、各企業にとって、そういった(規制や取り組みの強化という)形で所得を(国)外にアンフェアに持っていくというのは、国(家)から見たら当然の措置だと思う。二重課税の問題は、OECDを含めた多国間で知恵を出せば必ずしも恐れる問題ではないと思う。

Q: 英国のEU離脱(が国民投票で決定して)から10日近く経った。株式市場はかなり戻ってきているが、世界経済は不透明感が強まっている。この問題をどのように捉えたらよいのか、また今後の経済状況についてどういった展開になると見ているかお伺いしたい。

小林: リーマン・ショックでは、明らかに疑心暗鬼になって流動性がなくなり、どこが原因なのか非常にはっきりしない部分もあり、徐々に(経済が)シュリンクしていった。ストンと落ちてそれから一向に立ち上がらず、徐々に悪くなった。経済、金融のクラッシュであり、住宅問題がベースにあった。

今回は、経済的状況というより、かなり政治的な、国民投票という形での(作用が大きい)。経済サイドから見ると外的要因であり、理由が非常にクリアである。最初、(日本時間の6月)24日の朝方8時頃は残留だと思っていたが、10時頃から雲行きが怪しくなり、11時頃になると、ほとんど残留だと思っていたのが離脱へという(流れの)中で、ショッキングな事実として受け止められ、(1ドル)99円まで円が強くなったり、株価も1,200円下がった。外から車をぶつけられたような状況で、原因は明確なので、1週間も経たずして(徐々に回復してきた)。今日も(1ドル)102円程で、株価もかなり戻ってきているので、リーマン・ショックとは相当違う気がする。まだまだ(英国がEUを離脱するのは)2年、5年というオーダーで、決してよい影響はないだろうが、少なくとも一つのフェーズは終わった。時間のかかる中で、経済には陰に陽になんらかの影響はあるだろう。

もう一つは米国の「トランプ現象」で、11月の選挙結果によって相当局面が変わっていくのではないか。そこまでは(為替、株価も)上がったり下がったりがあるだろうが、もし「トランプ現象」が単なる現象ではなく事実となれば、もう一段の大きな経済的な影響、あるいはより大きな政治的な影響が出てくるのだろう。経済もかなり影響を受けるということで、そういう時代が来たと言わざるを得ない。

(英国のEU離脱については)この1週間~10日、あちこちから感想を聞かれているが、そうドタバタしないで、経済人としては今後の成り行きをしっかりとロングタームで考えていくフェーズにあるのではなかろうか。これをもって、財政出動がかなり必要になるとか、(金融)緩和するのが必然だという論調も多いが、本当にそうなのだろうか。それよりも、我々が主張してきたように、本当の意味での成長戦略、経済の本当の実力をつけることに思いを馳せなければならない。このようなことばかりが起こる時代なので、そのたびにアクションを取っていたら、お金がいくらあっても足りず、次世代、さらにその次の世代にどんどん借財を移していくだけの話ではなかろうかという気がする。

Q: 成長戦略についてお聞きしたい。(代表幹事は)金融政策や財政出動は効果が限られている面もあるため、成長戦略に取り組むべきだと主張されてきた。2015年度の法人税収が6年ぶりに減少し、成長戦略に使えるお金が減少傾向にある中で、何を、どのように進めていくべきか。たとえば規制緩和など、お金を使わない成長戦略をこういう局面の中でしていくべきか。

小林: マネタリーベース(の残高)が400兆円超えたという中で自ずと限界があり、これだけの債務を持った国家として、予算の裏付けの無いお金の使い方、未だに赤字国債発行というメンタリティはいつまでも続かないだろう。そうすると、成長戦略(に取り組む必要がある)。

成長戦略というのは知恵だけでもどうにもならない。知恵だけでいくなら、今まででとっくに(達成まで)いっているだろう。やはり規制を取り外すところについて、いかに効率よいシステムをつくっていくかだ。とりわけ労働法制で三つの主な改革のうち、(高度プロフェッショナル制度を含む)労働基準法の改正、プロフェッショナルの働き方の変更、自由度をもっと付与するなり(といったことが必要だ)。および、紛争の解決方法、予見可能性を持った労働紛争の解決等を含めた労働の流動化(が重要だ)。これは企業側にも問題があるが、どんどん新陳代謝を活性化するための労働の流動化は、まだ道半ばかと思う。

一部に反対する(勢力があるような)難しい問題に手を付けなければ、成長戦略、経済の活性化(はできないだろう)。ゾンビ企業のようなものが相当残り、過当競争のなかでお互い消耗しきっている今の日本の経済状況(を変えていくには)、必ずしもデフレ脱却だけでなく、ある程度は経済合理性をベースにして新しい産業を興すと同時に、今までの効率の悪い産業をどううまく畳んでいくか(を考えるべきである)。その基本はやはり労働法制だと思う。ここをどう賢く、日本流に改革していくかがまず一つかと(思う)。

あとは、散々言われているが、一団体だけで行っている研究開発をビッグプロジェクトとして産官学で行う。特に新しい経済的な開発行為というのは、国内の中でも集合して取り組む。分散して、自分自身がいいもの見つけてそれで儲けようという時代は終わっているような気がする。例えばリチウムイオンバッテリーは、一頃は何十社、何百社もが関与し、同じことをまったく別々に研究開発する(ことが起きていた)。こういう非効率性は、官なり学がある程度の橋渡し効果を考えながら、国としてより効率性を上げる(ことが必要である)。

まだまだやることはいくらでもある。単に規制改革というより、経営者のマインドセットを変えていく。もう少しオープンイノベーティブに一緒にやって、一定程度は速く物事を進めながら、儲けのところは自分でそれなりのビジネスモデルをつくる。オープンとクローズを上手く組み合わせたビジネスモデルを導入するなど、単に新しいものを見つけるというよりは仕掛けづくりを経営者はすべきだと思う。単純なモノづくりという時代は終わっている。

Q: バングラデシュでのテロに関連し、三菱ケミカルホールディングスではどのようなテロ対策を行っているのか。

小林: 例えば、出張する場合は、人事部が外務省からの指針と照らし合わせて、ここ(危険性が高い国・地域)に行く場合は当面(出張を)止めておくといったことをやっている。最初の関所は出張に対して認可を受ける段階であり、セーフティーに関して危ないところは出張禁止になる。数か月前であれば、ベルギーは(飛行機の)トランジットでさえ止めるようにした。出張であれば、そこ(人事)が第一の関所になる。

今のところ当社はダッカに工場はないので、具体的に言えるところはサウジアラビアなど石油化学の工場があるところだ。そういった地域でのIS対策は、宿舎から工場以外の余計なところに行かないなど、細かい規則の徹底はやっている。

Q: このようなテロ活動があると、国際貢献や企業のグローバル化は難しくなっていくと感じる。テロがあっても国際的な支援は続けていかなければならないと思うが、所感を伺いたい。

小林: 例えばバングラデシュは夜になると真っ暗になってしまうので、当社グループでは、2012年から13年にかけて、シリコン系の太陽電池の中でも非常に軽く、運びやすいフレキシブルタイプの太陽電池と蓄電池を持って行った。太陽の出ているときに蓄電池で電気を蓄え、夜に仕事や勉強ができるようなシステムを設置し、現地の家庭でそれなりに喜んでもらっている。

他にも、バングラデシュはプラスチックのゴミがたくさんあるので、そういったものをどう処理するかという技術を持って行ったりしている。アフリカもそうだが、どちらかというと採算は無いけれど、将来のことを考えた支援を具体的にやってきた。そういうことに対して、社員を鼓舞できなくなってしまうというのは残念だ。

Q: 国際貢献活動は、積極的には進みにくい状況にあるのか。

小林: 今のISなり、比較的イスラムの人たちが(多く)住んでいるような場所に関しては、状況として、(何の対策もとらずには)かわいい社員を送る訳にいかないということにはなるだろう。

Q: アルジェリアとバングラデシュで、このところ日本人が犠牲になるテロが相次いでいるが、これは以前からそうなのか、それともステージが変わったのか。認識をお伺いしたい。

小林: 基本的には、もともとはパレスチナから始まり、アラブ、イスラエル闘争をトリガーにしてヨーロッパに広がった。かつてはシリア、リビア、アルジェリアにしても、国を統治するかなり強い独裁者がいた。アラブの春で、エジプトを含めそのような人たちが追いやられ、ある意味では、民主的になる過程で分散してしまった。掌握する人たちがいなくなり、シリアのように政府が弱体化し、ISの大元であった反政府軍がかなり力を付けてきた。インターネット、SNSを利用して情報交換をする中で、今回のバングラデシュもそうだが、(テロを起こした)彼らは「十字軍を派遣した国」という捉え方をし、イスラムと反イスラムとの戦いが起こっている。そのような意味では、根になるものは全く同じであり、反シオニズム、反イスラエルという思想である。アラブの中でも、シーア派、スンニ派とで分裂した。

このような見方をすると変かもしれないが、かつて独裁者によって統一・統合されていたものが一部で分散化し、一方で、あるドグマ(教義)や「反○○」というものを共有化する組織ができた。ヨーロッパでさえ、EUという統合の方向が、格差(問題)なのか、かつての栄光(を取り戻すため)なのかは別として、分散化している。世界史の中で、政治はある時は統合され一つの方向に向かうが、あるものをトリガーにしてまた分散化してしまう。それがアラブの春なのか移民(問題)なのか、分散化した中で政治としては不安定になる。

十字軍を派遣した団体、日本人も含め、アンチイスラムと捉えられる人たちを無差別に殺害する。なぜなら、「お前たちは十字軍を派遣した連中であり、空爆で我々を殺しているではないか」というロジックで来る。彼らから見れば、日本人は十字軍を派遣した側であり、「日本人だ」と叫んでも許してはくれない。その辺の認識はもっと明確に持つべきだ。状況は40年前も30年前も今も、基本的には変わっていないと思う。

Q: 危険度は上がっているのか。

小林: より無差別になり、アンチイスラムはみんなやられてしまうという意味では、危険度は上がっていると思う。かつてはハード・ターゲットとして油田を爆破したり、軍事態勢なり明確な場所をターゲットにしていた。今はソフト・ターゲットで、特にレストランなど人が集まるところを集中してやっている。それはデモンストレーション効果を狙っているからだ。根は同じといっても、非常に危険になっている。その上、ランダムなので全く予想もできない。

バングラデシュへの出張を禁ずると言い出したら(解決するわけではなく)、ヨーロッパへの出張などは、イスラエルに出張するよりもよっぽど怖いと思う(かもしれない)。今度のオリンピック・パラリンピック(開催地)であるブラジルへ行くのもすべてダメかというと、こういう論理もまた通じない。非常に難しい問題だ。

Q: 出光興産や大戸屋など、創業家と経営陣の対立するような事象が相次いでいる。社外取締役を増やしたり、欧米流の経営体制を取り入れた事により確執が表面化しているのではないかという見方もあるが、どうお考えか。

小林: 資本主義社会、商業資本主義の中で、株主がメインで、株主によって企業は成り立っているのだという考え方をとれば、やはり株主に報いるためにどれだけ資本効率を上げるかという方向に行くだろう。必ずしも企業は「私(わたくし)」のものではない。法人としての人格をもった一つの「公人」のはずだ。だから法人、コーポレートというのは決して私化できるようなものではなく、社会の公器である。なおかつ、それは株主に報いるためのアクションをとる集合体だと捉えれば、かつて自分がその創業家だったからというのは間違いなく通じないだろう。

考え方としては、株主として50%以上(の議決権)をもっていれば、株主の行為として当然それなりの権利を主張することだと思う。たまたま創業家が30%程度をもっていて、その意見を株主として行使することは、決して不思議ではないと思う。ただやはり、基本的な考え方というのは、会社というのは公器である、公のものであるという認識はもつべきだ。

Q: 創業家からすると、会社は自分のものであるという意識をなかなかぬぐいきれないのではないか。

小林: 人情としてそういうことではないか。ただ、株主のためだけの会社であってはいけないと思う。公器であり、なおかつ、従業員、社会、株主、お客さま、サプライヤーのためでもある。こういうふうに設計すべきだと思う。

Q: (出光興産の)株主総会で、社長以下、取締役選任議案に対する賛成率が50%台とかなり低い数字が出ている。(出光興産と昭和シェル石油)2社の統合に向けて、こういった環境下で進めていくのは厳しい状況だと思うが、どう向き合っていくべきだとみているか。

小林: 石油精製という(業界の)世界における競争力を重要視すれば、やはりコンソリデーション(整理統合)、集約して、世界的にある程度の競争力を持っていくというのは自然の流れだと思う。結局、稼ぐ力はそこにあり、新陳代謝というのはまさにそういうことだ。産業競争力というのは、国際的な状況の中でどれだけ力をつけるかということであれば、やはり集約というのは一つの手法だと思う。JXホールディングスが何回も合併を繰り返す中で、出光も例外ではなかったのだろうと思う。そこでアクションをとったが、それでもやはり反対する人がいる。これは株主が判断することで私が色々言うことではないが、一般論とすれば、今の石油精製、石油化学もそうだが、集約すべき(ものは集約し)、やめるべきはやめるべきだと思う。

三菱ケミカルホールディングスでは、エチレンクラッカーという1,000億円程の石油化学装置が元々4基あったのを、2.5基止めた。止めるか、一緒になるかしかない。その代わり、止めるためには他のことをやらなくてはいけない。他で食える(収益をあげられる)ものを早く探さなければいけない。熾烈な戦いの中で当然そういうアクションを取っているわけで、それに対して株主が判断をする、その一つだと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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