ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年6月14日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

記者の質問に答える形で、(1)イギリスのEU離脱問題、(2)舛添要一東京都知事の政治資金問題、(3)政治と経済の関係、(4)経済政策、(5)参議院選挙、(6)夏季セミナーなどについて発言があった。

Q: イギリスの欧州連合(EU)離脱問題についてお聞きしたい。23日の国民投票を前にして、世論調査では離脱支持が残留支持を上回った。先週から市場はかなり動揺している。日本でも、東京株式市場は円高株安が進んで、今日は16,000円を割り込んだ。日本にとって優良な投資先であるイギリスが離脱した場合の、日本に与える影響、および今の円高株安が進む市場の動きについてどうお考えか。

小林: Brexit(イギリスのEU離脱)を議論する前に、EUは28ヵ国が糾合し、大きくなっていく流れできていたが、ベクトルが逆方向になった。グローバル化やリージョナル化といわれているのとは逆の方向であり、(米国の)トランプ現象にしても(そうだ)。世界は経済的にはグローバルに(なり)、株主資本主義の中で株主のためのリターンをどれだけ得るか(が重要視される)。国家というより、グローバル・アクティビティを最も効率よくやるという方向に向かっている。

一方、政治というか、個々の人間の考え方は、ある意味ではナショナリスティックになってきた。「政治と経済は車の両輪」といわれた時代とは違って、方向性が逆になってきている。政治はもちろん国(という単位)なので、極めてナショナリスティックであり、単体損益で見るしかない。一方、企業は連結決算で見る。

特にこういう時代になると、若い人たちの間ではエスタブリッシュメントか、ノンエスタブリッシュメントかといった見方も出てきているだろう。21世紀半ばに向かって、世界が順調に平和や統合の方向に行くのではないという政治リスクが、方々に見受けられる。ISがその典型例だ。そういう現象の中で(社会を)どうとらえるか。Brexitやアメリカ大統領選挙も、似たような人々の心の状況の中で起こっている。

昨日今日と、マーケットは大きなリスクと見て、(日経平均)株価はあっという間に15,000円台に落ちてきた。この前(2015年)の英国議会の下院総選挙にしても、予想とはだいぶ違った結果になっていた。離脱派が(残留派を)大きく上回っているのか、Lottery(賭けの確率)だと60数%が離脱はないとする結果もある。(国民投票結果がどうなるかの)予測はなかなか難しい。いずれにしても大変なリスクがあるのは間違いない。日本にとっても、日本の企業が1,000社以上、それに付随する会社も関連して(累積で)10兆円以上の投資をしているので、当然、大変な影響がある。

ただ、(離脱が決定した場合、)どう離脱するかは今後の交渉だろう。離脱するという交渉だけでも2~3年かかるかもしれず、新たに通商交渉、関税をどうするかといったEPAのような話をすると7~8年かかるという話もある。急激にどうなるかというわけではなく、大きな歴史の流れの中でどう考えていくのか。栄光あるグレート・ブリテンの誇りと、EUの官僚政治という構図もあるようなので、複雑な方向を辿っていくのではないか。経済的には間違いなく、(Brexitは)政治のリスクとして捉えるべきで、大きなリスクだと思う。加えて、アメリカの大統領選挙がどうなるかによって経済状況は(影響を受けるので)、リーマン・ショックといったレベルの話ではない。かつての金融リスクより、政治リスクが来ているのではないか。複雑な方向に社会、世界が動いているという認識で経済を見ていく一つの例ではないかと思っている。

Q: マーケットの動きについてはどうお考えか。

小林: こういうものはとにかく微分形で儲ける人がいっぱいいる。とにかく(状況が)変わった時に空売りしたり、買いに転じたりして儲けている。本当の経済効果は一切何も生まないのだろうが、そこでお金が偏在する。それでリスク(をとって)大損する人もいるだろうが、今はそのような現象(である)。文字通りの過剰反応というより、これを使って経済的な(利益を)得ようとする人、マネーゲームをやっている人が多い。常にこのようなことが起こっているというのが今のマーケット状況ではないか。

Q: 舛添要一東京都知事について、リオ五輪の後で判断をするというような話もある中で、このような一連の動きについてどう見ているか。

小林: この問題が発覚してからほとんど問題外(と思っており)、あまり関心もないが、ついついテレビを見てしまう。あまりにもばかげている。そもそも人間性を疑ってしまう。よくぞここまでしぶとく食い下がっているなと、不思議でならない。リオ五輪だけ行かせてほしいというのは情けない。そのような信用度がない人がなぜリオ五輪に行かなければならないのかというのは当たり前の反応だと思う。本人のご判断で、普通は辞めるべきことだと思う。

Q: 舛添要一東京都知事の問題についてあまりにもばかげているとおっしゃったが、一件一件は細かいものの積み重ねという気がする。本当に悪なのか、これほどまでに批判される理由があるのかと思うこともあるが、どういったところが批判されるべきだとお考えか。

小林: いろいろな人がいろいろな世界(に身を置き)、業種なり立場なり(がある)。政治家は政治家、サラリーマンはサラリーマン、教師は教師ということで、だいぶその辺は違うと思う。政治資金(規正法)はもともとがザル法である。ザル法でやっているから、不適切であるが適法、あるいは法律的には問題ないと(なり)、こういう辺り(が批判されるべき理由である)。そもそも、その議論がばかばかしく、しらける。ザル法がいけないということに帰着する。

もう一つは、誰が考えても倫理的(な問題)というか、このようなものにまで公的なお金を使うというのは、法律以前の問題である。「それはいくらなんでも」(と思われる支出に)公的なものを使うかということを、議論する気にもならないというか、ナンセンスという思いだ。

Q: やはりこの一連の出来事、あるいは説明は、辞任に値するとお考えか。

小林: そう思う。そもそも信用をベースにした「政(まつりごと)」をやる人が政治を司る。これだけ都民に信用できないと思われてしまったら、政治はなかなか政治にならない。一度失墜した権威というのは(回復するのは難しい)。都議の発言にあったが、あまりにせこい話なので、わかりやすすぎてもっと信用が失墜してしまう。個々の人格の問題である。このような人が政治をしても信用できないのではないかというところがある。それは法律論などの埒外で、個々の人格の問題と捉えると、なぜここまで(都知事という職に)こだわるのか、政治はそんなに楽しいのか、頑張れるのか私には不思議でならない。(私自身は)政治をわからない人間の一人なので、(今回の事態は)非常にわかりづらい。

Q: イギリスのEU離脱の国民投票についてお聞きしたい。シリアなどの難民問題が背景にあり、離脱の問題が根底にある限り、イギリスに限らずEUへ日本企業が投資するリスクが付きまとってくる印象がある。日本企業にとって、今後、イギリスや欧州で投資、企業活動をするうえでどう向き合うべきか。

小林: イギリスに限らず移民の問題は今後も大きな(問題で)、中東あるいはアフリカからの移民は、当面の解決は不可能で、おそらく続いていくだろう。フランスもドイツも含め、比較的ナショナリスティックな動きや極右の台頭など(があり)、そう簡単に払拭できるリスクではない。一方で、アメリカのリスクが少ないかというと、11月(の大統領選)まで見えない。中国は中国なりのリスクがあり、アジアも安定しているとは言い難い。

日本も含めて、企業というのはそれぞれのナショナルリスクのランキングをつけて投資の稟議を諮る。これは従前も行っており、ヨーロッパは安定的だとして投資判断をしてきたのを、リスク評価を変更しながら新しい投資を考えていくのであって、やり方は今までと変わらないと思う。

いずれにしても、かつて金融危機というのがあったが、今後は政治リスク危機というのを相当に考えていかなければならない時代かもしれない。かつて、経済と政治が美しく(機能し)車の両輪で国のためにという時代がずっとあったが、グローバル化することによって、各企業は明らかに株主を見て経営をする(ようになっている)。特に外国人株主が3~5割になると、国家があってはじめて自分の企業があるというよりは、まず企業は株主を見て、資本効率のいい設計をどうするかということになる。(私自身が)もともと長年思っていることは、単体損益(で考えるの)が国家であって、連結損益(で考えるの)が企業で、立場が全然違う。その中でオーバーラップしたところで一緒にやるというのが政治と経済の今後の進め方ではないかと思う。

Q: 政治と経済の関係は、合致する領域で上手く関係性を築いていけば良いという趣旨のご発言だったと理解するが、その観点からすると、日本という国をどのようにみるか。

小林: 一企業として捉えると、大企業では、海外の売上高が7~8割といった会社はたくさんある。非常に円が安くなり、海外での儲けが換算益としてたくさん出たから、経常利益が大きくなって30%も増えた。実際は、海外の売り上げで連結決算をしているからよいのであって、日本のGDPが増えなくても、個々の会社はそれなりの経常利益を上げる。GNIといった形で捉えると、少しは配当金や海外への投資のリターンが日本で受けられるが、投資先の国家に税金を払うことになる。まず、そこが基本的に違う。かつてのように、日本国の企業は日本国だけのために働いていた、あるいはそこで利益を得たという状況からは、明らかに差異が生じている。これが出発点である。

その限りにおいては、日本に本社を置く企業として、二重課税の問題はあるかもしれないが、税金はほとんど日本国に払う。強く生き延びて株主から高い評価を得るためには、どこで一番儲けられるかということを考えると、残念ながら、(たとえば)いわゆるコモディティ系の投資はもう日本ではできない。しっかりしたテクノロジーだったらアジアに行くなり、アメリカに行くなり、あるいは資源の安いところに行くなりといった見方をする。モノの経済もグローバル化すると、国内の単独決算は一部分でしかなく、会社にもよるが半分以下(だろう)。それが日本国に寄与する。

もっと言えば、グローバル企業になれば、一番税金の安いところに全部(集中する)。そういうタックスのオプティマイゼーション(最適化)をやっている。今までの(ように)単に利益を上げればよいのではなく、最も税金が安いのはどこかということで(ビジネスを)やる。アメリカのグローバル企業はみなそれをやっている。そこで明らかに国と企業というのは乖離している。今回の三菱東京UFJ銀行のプライマリー・ディーラー(国債市場特別参加者)の返上も、かつては国家と金融は一体化していたが、一つの問題提起にはなったと思う。それが良いか悪いかは別にして、株主、企業体としての単独行動は、必ずしも(国家と)一対一の対応はしていない時代がきていることだと思う。

Q: 三菱東京UFJ銀行がプライマリー・ディーラーの資格返上を検討している件について。資格を与えられている22社から三菱東京UFJ銀行が抜けても、それだけでは大きな影響はないと思うのか、何かの象徴ととらえるか。

小林: 実際のインパクトは、これで留まっていれば実態として影響は少ないと言われている。これがトリガーとなって(何かが起こる)ということも、おそらくないと思う。1銀行としての判断というレベルで当面は見ているのではないか。三菱UFJフィナンシャル・グループとしては、(国債市場特別参加者の中に)証券会社が入っているので。

Q: 政治危機リスクについて、個別の国で金融政策と財政政策を総動員して手を打っても限界がある。あるいはG7各国で協調しても限界がある。そのような中で、個別の国の経済政策はどのような方向性を取ればよいか。

小林: 基本的には国民が決めること。国民の知能程度が決めることではないか。非常に難しい問題だと思う。知能程度というか感性というか。自分のことばかり考えるか、国のことを考えるのか、世界のことを考えるのか。国は、それぞれの国民のレベルによって決まる気がする。

Q: 明日から日銀の政策決定会合が始まる。新しい政策手段や金融緩和を進めるなど、このような時にどのような対応を取るべきか。

小林: 色々な細かい対応はするとは思うが、基本的なところは、三次元的な緩和とういう形で出尽くしている。我々がフォーカスすべきは、この国をどのような形で成長させるかである。モノについては、海外に事業を展開する会社が多くなった中で、IoTやバーチャルな世界でロボットをどう応用するか、介護・医療にどのように応用するか、あるいは人工知能など、この国の中で技術を育てることを徹底して深めるべきだ。とにかく新しいものを生み出し、それを極めて生産性を高めるシステムをつくること以外に日本が生きる道はない。

あまり一喜一憂して、「今日が良ければ」というショートターミズムというか、微分形で儲ける人たちはよいが、モノや新しい価値をつくる世界の人たちは、地道な長い闘いの中でどれだけ忍耐強くやるかということ(が大切)だ。金融・財政のプロにそれなりの対応をしてもらうことは重要だが、もっと重要なことは、生産、サービスに関わっている大多数の人たちが、本当の意味で生産性を上げられる新しい仕掛けやモノ(を生み出すこと)。あるいはバーチャルな世界で新しいイノベーションを創出すること。言い尽くされたことだが、この時間軸はロングタームである。これにどれだけ耐え、国民や地方が本気になってそれぞれが生産性を上げることが出来るかで国の力が決まってくるのではないか。

Q: 来週、参院選が公示され、7月10日に選挙が行われる。経済同友会は参院選をどういう観点でみているか。

小林: 争点となっているのは経済の成長だが、それよりやはり社会保障。今後、出ずるをどのような形で制するかを、ぜひ議論してほしい。非常に残念なのが、民進党が、赤字国債を発行し消費税(の増税を)やらないと最初から言ってしまったことで、(これでは)争点にならない。自民党も6月1日にああいった形で決断し、2日には閣議決定した。消費税増税は2019年10月まで延ばすが、赤字国債は発行しないと自民党の選挙公約には書いてある。だが、骨太の方針には書いていない。国民全体が、極めて直接的な痛みであると誤解している消費税。次の、あるいはその次の世代のポケットに手を突っ込んでいることに対して、争点にならないことそのものが残念である。(税収として)入ってくるものが少ないのだから、出るのをどうやって縮めるかという議論がどうして起こらないのか。今回の参議院選はそういったところをしっかりと議論すべきだ。

Q: 秋に大型の補正(予算)をやると首相は発言し、それを期待しているところもあるようだが。

小林: きちんと出ずるを制するロングタームは、スケジュールがないと(できない)。ただただ、ずるずると使って垂れ流して、砂漠に水を撒くような世界になってしまう。お金を使うところ、いわゆるツボはどこなのかを、もう少し政治に限らず、官も(議論すべきだ)。今まで散々(財政出動してきた)エビデンスがあるのだから、例えば、若い(世代)、子どもを産んで育てる世代(を対象)にやるとお金を使ってくれる。老人世代は我慢も必要で、そうした形で財政を使っていくかという議論は必要だと思う。秋にはそういった議論がでてくると思うが、出ずるを制するロングレンジの(考えと)、この国はどうしていくのかという議論が、防衛(に関する議論)と共にほしい。

Q: 2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、グローバル化の象徴だと思う。そこに向けて色々なことを考えていかないといけないが、あまり政治も経済も見えないようだが。

小林: 経済同友会の夏季セミナーは、SAITEKI社会(について議論する)。要するに、GDPを増やす軸、新しいイノベーションを構築する軸、そして社会保障、格差是正、人々の幸せ、環境問題(といったサステナビリティ)の軸という、この三次元でどう捉えていくかの問題が一つある。個々の議論はもちろん、どうすればGDPは増えるのか、どうすれば新しいイノベーション・エコシステムがつくれるのか、どうすれば格差に対応できるのかという議論もある。その全体が国家の方向であり、国家の品格だと思う。

そういった議論と同時に、(ロングタームで物事を考えるには)2020年では短い。やはり戦後(を起点に考えると)、政治というものは国家百年の計だとしたら、去年で70年が過ぎ、あと30年(で戦後100年が経つ)。(今から)5年くらい、オリンピックまでがちょうどよい区切りであるから、2020年までに我々は準備をし、2021年からの日本を「Japan 2.0」と定義して、その設計をやろうではないか。そういう思いで、2020年までは、東京オリンピック・パラリンピック(があり)、あるいは2019年10月に消費税を2%上げるならば、かなり設計はしやすいだろう。一番大変なのは2021年からである。そちらを設計しておかないと、あっという間だ。子どもが生まれてから5歳になるまでの間に、(社会が)とんでもないことにならないように議論しようと思っている。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。