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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年5月31日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、消費増税延期について発言があった。

Q: 先週閉幕した主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)で、安倍晋三首相が現在の経済状況はリーマンショック前に似ている、世界経済は危機に陥る大きなリスクに直面しているとの景気認識を示し、消費増税先送りの可能性が強まっている。これまで小林代表幹事が示されてきた景気認識とずれがあるようにみえるが、代表幹事の現在の景気認識と、安倍首相の景気認識に対する考えを伺いたい。

小林: 産業にもよるが、素材系のパフォーマンスはフラットで悪くなっていると思っていたが、案外がっちりしている。それがまず具体的なエビデンスだ。中国は確かに、毎月(GDP成長率が前年同期比で)7.0%、6.9%、6.8%と、0.1%ずつ下がっていくという状況から脱却し上がっていくとは、とてもいえる状況ではないと思う。だが、大きな危機に面しているという状況でもない。オーバーサプライ状況も、伊勢志摩サミットで鉄鋼を中心に素材は何とか解決するように要望はしているが、本当の悪いところはだいぶつまびらかになった。相当な対応も打たれているので、急激に悪くなるような状況ではない。現に、アメリカが先週、利上げの可能性を示唆している。FRB(による決定)が6月になるか、先になるかは別として、そういうことが言の葉に乗ること自体が(良い兆候だ)。悪い方向であればそういうことはなく、アメリカの景気はまあまま良いだろう。ヨーロッパについては、GDPも0.4%~0.5%近傍で、すごくうまくコントロールされているなというくらい安定している。一番悪いのは日本だ。悪いといっても日本はマイナス成長ではない(とはいえ)、政府が目指している実質成長率2.0%以上、名目成長率3.0%以上はいかないだろう。今期も0.8%かそれ以下、名目成長率も2.5%くらいだろうと言われている。そのようなレベルで、来年もし高い確率で消費増税を延期するのであれば、駆け込み需要も起こらないので、2016年は0.8%(程度で)、1.0%もいかないだろうという予測も出ている。相対的にものすごい危機が来るという状況ではないが、政府が2020年のプライマリーバランス黒字化を目指すところで、内閣府なり財務省が試算した実質成長率2%以上、名目成長率3%以上で計算しても6.5兆円の赤字が残る。これを成長戦略でどうするかというところまでは、なかなか難しい。2016~2018年がうまくいっても、実質成長率1~2%、名目成長率2~3%くらいだろう。その意味で、もう一つの活性化をしないとなかなか厳しい状況というのが現在の景気認識である。

 伊勢志摩サミットで、コモディティ価格が(2014年以降)55%下がっているからリーマンショック前に近いとの発言があったと聞いているが、そこの部分だけをとれば確かに(そうなのだろう)。リーマンショックの方がもっと急に悪くなった。(今回は)少し時間をかけながら55%も油価が下がったというが、ある意味では経済的にプラス効果を与えた。新興国、資源に依存した国家にとっては大変なシュリンクをもたらしたが、資源を持たない日本にとっては、産業にもよるが、結果としてよい方向だった。こういう捉え方をすると、経済を測るためには、最低でも5~10個のパラメータを見て全体で評価するのが一般的だと思うので、1つの指標だけをとってリーマンショックに近いというのはなかなかわかりづらい。GDPなど他(の指標)を比べると、リーマンショック時はGDPがマイナス5~6%ほど下がったが、今は決してそのような状況ではないし、金融危機でもない。総合的に見るとそこが違うと思う。

Q: 各国首脳も、安倍首相の景気認識については色々な認め方がなされている。消費増税を先送りするために、サミットという各国首脳が集まっている場を政治利用したという見方もできると思うが、その点に関してはいかがか。

小林: それなりの政治的なパフォーマンスが要るだろうし、(サミット)議長国あるいはコーディネーターとしては、シナリオを色々お描きになって、全体をあのような形で非常に玉虫色で(取りまとめられた)。ドイツに対しても、イギリスに対しても、あるいはフランスの首脳が(持ち)帰っても、自分の国でそれぞれが謗られないような(構成になっており)、シェルパが優秀なのか、非常にうまい文章だと思った。日本(が提案したこと)も、金融、財政、構造改革あるいは成長戦略の中で、各国が財政状況に応じて財政健全化を担保できる状況では、それぞれの方法でそれぞれの手を打つと書いてある。きわめて玉虫色で、それぞれの首脳が自国に帰って、それなりのことを言っても、謗られない文章になっているのではないかと思う。

Q: 安倍首相は、与党幹部に消費税増税を2年半先送りする考えを伝えている。代表幹事はこれまで、来年4月に予定通り増税すべきで、先送りはポピュリズムの側面もあり、国民は消費税のこととなるとヒステリックになるとも述べられている。今回の安倍首相の判断と、それを容認している与党の対応についてどうご覧になっているか。

小林: 政治の世界については、私の情報は非常に限られているため、何とも言い難い。経済界にいる人間として「算数」を評価すると、結局、1年半延ばし、2年半延ばし、トータルで4年延ばした。前々から言っているが、やはり日本国民は消費税(増税に対して)7割近くが延期に賛成している。そういうなかでの政治判断だと思う。

 それはそれとして、現実の日本経済を今後、消費税(増税)を延期させて(税率)8%のままでやっていくのに、2020年にプライマリーバランスを黒字化するという目標は下ろさないで、どうすれば計算が合うのかということを早急にシミュレーションなり、具体的な考え方を整理すべきだ。

 金融、財政をどうやるのかということと同時に、むしろ構造改革や成長戦略で(どのように対応してくのか)。今回も数日後に閣議決定される骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針/経済財政諮問会議)、日本再興戦略(産業競争力会議)、あるいは規制改革会議、まち・ひと・しごと創生会議、一億総活躍国民会議、地方創生特区(国家戦略特区諮問会議)、総合科学技術・イノベーション会議など(複数の会議体がある)。色々あるのでオーバーラップもしているが、これらの整合性が本当に取れているのか。特に財政、あるいは成長戦略を含めてもう一回見直して、いかに国民にわかりやすく提示すべきなのか(を考えるべきだ)。私が一番気になるのは、あれだけ前向きな経済成長を前提として、なおかつ消費税を10%に上げるというベースでも、まだ2020年の(プライマリーバランス)黒字化というのは(難しいことだ)。非常にオプティミスティックなベースでさえそう簡単ではない中、今度(消費増税を延期することで)毎年4~5兆円の消費増税(分の財源)を減らす。こういう中での計算が、どういう形ならプライマリーバランスが黒字化するかというシミュレーションをぜひやるべきである。

 やはり結果としては、社会保障の部分で相当痛みを伴う改革をしない限り、なかなか算数が合わないはずである。この辺をきれいに整理して、色々なケースがあるがこういう形で頑張ろうということを国民に納得させる、少なくとも説明する責任はあるだろう。

 我々民間も、成長戦略なり規制改革に対する要望というのは明確に、もっと具体的に動き始める時期である。とりわけ第4次産業革命というが、単に数字の足し算、羅列だけでなく、具体的にアクションをとるには、産官学金労言のステークホルダー全体がその気になって動かないと、政治でスローガンだけ言っても動くはずがない。具体的なエビデンスベース、計算ベースできちんと議論をして、それぞれのステークホルダーがどういうアクションをとるかというところまで落とし込んでPDCAを回していかないと、この国はスローガンだけ掲げて少し悪くなるとやめるという繰り返しを何十年と続けている。我々は、決定は決定として受け止めざるを得ない立場だが、アクションをどうしたらいいのかという時期に入りつつあると思う。参議院選挙が近いのでそこで民意を問うということで、衆参同日(選挙)である必要はないと思う。国民自身ももう少し情報を自分から取りにいって、もっと覚悟を決めた方がいいと思う。

Q: 消費増税を先送りした場合の懸念事項の一つとして、プライマリーバランスの黒字化(への影響)があると思うが、足元で日本経済にマイナスの影響が懸念されることはあるか。

小林: (消費増税を)先送りすることによって、消費者としては悪い方向にはいかない。ただ、そこまで日本経済は悪いのか、あるいは世界経済は悪いのかと(国民は思ってしまう)。そう安倍首相が言われることで、「やはり貯金しておいた方が良い」「社会保障も削られると老後の不安もあるので貯金しよう」というように、消費が逆回転する危険性はある。

Q: 安倍首相は、前回消費増税を先送りした際に、次は延期しないとまで断言されていた。安倍首相がこの状況で増税できなければ、永遠に増税できないのではないかといった疑問やあきらめのムードが、マーケットや霞が関にくすぶっているが、これについてはどのようにお考えか。

小林: 以前から言い続けているが、においとして、消費増税できないのではないかといった雰囲気がメディアの一部からも報道されている。(いまの安倍首相のように)これだけきちんと掌握して、強いリーダーシップをもって、なおかつ国民の支持率が高い政権は、そう簡単には出てこない。その政権が(消費税率を)上げられずに、もう4年も延ばしてしまったということは、他の政権ではおおよそ無理だと思うのは自然なアクションだと思う。

 「そんなに経済は悪いのか」と(国民が思ってしまう)。少なくとも首相がそうおっしゃっているので、それによるクエンチ効果というか、消費に対して「貯めておいた方がよい」という消極的な方向性をどう拭い去って、今から進んでいくかということ(があるだろう)。経済人はあまり気にしないでグローバルに事業をやっていくので、大きな影響はないと思う。衆議院と参議院の役割は違うはずだが、似たようなところもあるので、(夏に予定している)参議院選挙で国民の信を問うのも一つかと思う。

Q: 延期する期間が2年半となると、自民党総裁任期についての自民党党則を変えない限り、安倍首相以外の方が消費税を上げることになる。増税のタイミングを自身の任期外に設定することについては、そのようにお考えか。

小林: 党則を変え、安倍首相はご自身で(消費税率を)上げようとお考えなのではないか。そうでなければ無責任である。首相が何をお考えかを推察するなら、ご自身が(消費増税を)やろうとお考えだと思う。それを支持するかしないかは、最後は国民(の判断)である。

Q: 安倍首相の消費増税先送り理由として、世界経済の低迷があると思うが、本当のところはどのようなことが理由だとお考えか。

小林: まず選挙に勝つことだろうと思う。ここで余計なことをして消費が下がり、経済成長どころか、またデフレ状況になることを恐れたのではないか。我々が主張してきたのは、経済・財政の状況を見ると(消費税率を)17%や20%にしても(財政再建への)計算が合わない(という提言だ)。今回はせめて1%でも2%でも、とにかく上げるという方向を決めて、それによって冷却されてしまう経済に対しては、若者や生活の厳しい人たちの消費を喚起すべく、ツボを得た財政出動をすべきだ。(消費税率を)上げただけでは確かに(景気は)冷却してしまう。

 今まで散々、財政出動しているので、どこに(政策を)打ったものがどのような影響があったのか(検証するべきだ)。例えば、商品券など短期的なものは、どのような結果をもたらしたか。あるいはそこに打ったお金は、どのような形で(影響が)返ってきたのか。公共事業は一体どうだったのか。そのような解析はあまり聞いたことがない。エビデンスをしっかりとって、今回の補正予算ではどうするべきか(考えてほしい)。そのようなにおいがほとんど出てこない流れの中では、(財政出動をしても)あまり効果がないと思う。まずは消費税を上げて、ポイントを財政(出動)で補完するということが良いと思う。今回(消費税を)上げないで財政的な手を打つとしたら、少なくとも今までどこがどのように効いたかという結果をベースにやってほしい。

Q: 民進党は、アベノミクスが失敗したから(消費増税延期を)やるのだと主張しているが、アベノミクスは成功したと思うか、失敗したと思うか。

小林: 最初の金融緩和によって間違いなく円安になり、少なくとも大企業は(業績が上向いた)。まだ下(中小企業)にまでは染み込んでいないという見方もあるが、ようやく染み込み始めた段階だと思う。一時の財政の刺激は効果があったと思う。ただ、今、この段階でもっと金融緩和するのが正しいのか、まだ財政を出動するのが正しいのか。今、方向を変えれば、アベノミクスは今までは良かった(と思う)。

Q: 消費税の引き上げ予定は東京オリンピック・パラリンピック前年の2019年の夏過ぎとなり、その頃には景気も浮揚し、ツボを得た財政出動をするということかもしれないが、それまでの間、経済界に対してはさらなる賃上げと設備投資の要請が強まると思われるが、見解を伺いたい。

小林: そういう循環を当然要求してくるだろう。経済界も勿論、日本経済が良くなければ、いくらこのグローバルな時代、マーケットが半分以上は海外、あるいは投資家の3~5割が外国人(の時代)といえ、(拠点は)日本がベースになっているので、できる限りのベースアップ、賃上げは要請されると思うし、(企業としても)前向きに検討すると思う。ただ設備投資については、そう簡単に安請け合いはできない気がする。設備投資こそ企業戦略のすべてであり、国内に投資するのか海外に投資するのかということは、将来極めてクリティカルになる。したがって、一律に(国内で設備投資を)やりますという言い方は無責任だと私は思う。特にグローバル展開をしていく上で、どこに(投資を)打つのか。アジア、南米あるいは欧米に打つのか。素材でいえば原油がある地域に投資をするのか。日本におけるサービス業の一部、IT分野や医療分野でさえ、投資はグローバルな観点で行われるし、またその評価をするのは株主である。

Q: 消費増税が再延期されると、社会保障の歳出カットを実行しない限り見通しは厳しい一方、社会保障については既に世論の批判がある。政治の覚悟・決意というか、痛みを伴う改革をどうやっていくかがなかなか示されていない。この覚悟が足りないといわれる点について、どう向き合うべきとお考えか。

小林: 政治も覚悟が足りないが、国民も覚悟が足りないところが問題である。消費税も7割近くが(再延期に)大賛成と(報じられている)。消費税を上げる、あるいは痛みを伴うことをやると選挙で負けるのであれば、政治家は負けることはやらない。しかしこれだけ強い政権で、あれだけ願っていた長期政権なのだから、それは今後、痛みを伴う改革(をやってもらう必要がある)。消費税をやらないのであれば、やはり出ずるを制するしかないわけで、そこはしっかりと国民は見ていくべきだと思う。何をすればどうなるのか、全て連関しており、一方だけよければそれで終わりというわけではない。楽なことをやれば必ずや耐えるところを考えなくてはいけないわけだが、そういった説明があまりにない。定量的にきちんとした説明責任を果たしてもらいたい。そうでなければ日本は10年後、20年後、不幸な方向になってしまうだろうという危惧を我々は持っている。

Q: 世界経済に対する認識が、G7仙台財務大臣・中央銀行総裁会議と、伊勢志摩サミットとで大きく変わったようにみえる。他の国から見ると、日本の信認、誰の発言を信じたらいいのかと思われるのではないか。

小林: (大臣である)麻生氏より、(首相である)安倍氏を信じるしかない。麻生財務大臣も1日だけ怒ったかもしれないが、結構な変化だった。

Q: 世界経済の認識というのは、議長国としてある程度、統一見解をもつべきだと思うが。

小林: (伊勢志摩サミットで)コモディティ価格が55%下がったあの1点だけをプレゼンテーションしたことが、グローバル(社会)には色々書かれている。(フランス紙)Le Mondeやドイツの新聞などが、正しい見方のひとつだと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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