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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年5月17日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭に小林喜光代表幹事より、直近の所感を述べた後、記者の質問に答える形で、(1)消費増税、(2)三菱自動車の燃費偽装問題、(3)財政出動、(4)イスラエルへの代表幹事ミッションなどについて発言があった。

小林喜光代表幹事によるコメント

5月の連休に、代表幹事ミッションとしてイスラエルを訪問した。今年度、海外には代表幹事ミッションとしてイスラエル、中国、米国・ワシントンの訪問を予定している。今回は第1弾として「スタートアップ・ネーション」と言われる(イスラエルを訪れた)。彼ら(イスラエル人)に言わせればそろそろ「スケールアップ・ネーション」とのことだが、ITとバイオ(技術)の極めて先進的な基礎研究から、何か新しいものを生むという体質を持った特殊な興味深い国家である。第4次産業革命のベーシックなところでは、例えば、日本ではプログラミング教育を2020年から取り入れることが検討されているが、イスラエルでは2000年から高校の必修科目になっている。

ノーベル平和賞を受賞した92歳のシモン・ペレス元大統領ともお会いできることになり、その人生哲学を聞いた。常に前を見ることが若さを保つことだ(と述べられていた)。もともとホロコースト、アウシュヴィッツ(強制収容所)でのユダヤ人の虐殺が行われたその頃から始まり、新しい国家をつくって、ヘブライ語を(公用語として)復活させ、本当にゼロから、今日のサイバーセキュリティの雄として世界に名高い知的なレベルでの国家をつくり上げている。周囲の、ある意味ではアラブの敵国に囲まれ、(建国から)今日まで68年を生きのびてきた。そのすさまじい経験を語っていただいた。自分の存在というものを常に見つめて国家を考え、新しいテクノロジーを生んでいくことは、われわれにとって大いなる勉強にもなった。総括として、志賀俊之氏(副代表幹事・日産自動車副会長)、橋本孝之氏(新産業革命と社会的インパクト委員会委員長・日本アイ・ビー・エム副会長)、大八木成男氏(副代表幹事・帝人取締役会長)らとご一緒し、ROE経営や新しいイノベーション、30~50年後の日本をどうするかと話す中で、今や日本も“Boys be ambitious”というより“Executives be ambitious”だと。政・官もさることながら、民ももっと大いなるチャレンジをすべきではないかという思いをもって帰ってきた。

主だった(視察)場所は、自動運転(技術を研究する)モービルアイ という会社で、ここでは一つのレンズによるレーン変更や自動的にブレーキをかける技術を、自動車会社と共同で先端的な研究開発を行っている。また、チェック・ポイント社というサイバーセキュリティ開発会社の社長を訪問した。ザ・タイムという会社には、犬の体にICチップを埋め込み、行動をすべてビッグデータに溜め込んで、異常があればフィードバックをかけるといった、最終的には人間に応用できるような(技術を研究している会社もあった)。日本でも産業競争力会議でさまざまに議論してきたようなことを具体化した若い企業を見ることができた。また、ルーベン・リブリン大統領含め、首相府次官や経済省事務次官にもお会いした。やはり0(ゼロ)から1(イチ)を生むエコシステムが確立されている(と感じた)。日本も謙虚に勉強すべきものがたくさんあった。ちなみに、イスラエルの消費税率は17%である。

Q: 消費税について、一部報道では来年4月の増税を見送ると出ている。国会では、安倍首相もG7サミットでの議論も踏まえて判断すると発言している。一方、足下の景気をみると、民間予測では明日発表の1-3月期のGDPはプラスだが小幅、景気は弱含んでいるという実感がある。この経済の地合いで、予定通り消費増税すべきか、お考えを伺いしたい。

小林: 民間予測では、うるう年の要因を除くと(1-3月期の)GDPはマイナスではないかという結果も出ている。2015年度そのものが、0.7%も(いくか)いかないかではないか。GDPで見れば、相変わらず停滞した状況にあるのは間違いない。一方、雇用など他のファンダメンタルズの中で、例えば、少なくとも民間企業の儲けはアベノミクスの金融緩和政策による円安の影響で、最近でこそ10円ほど円高になっているが、(1ドル)80円台の時代に比べればまだ108~109円というレベルだ。たしかに2016年度は2015年度より伸びが少なくなっているとはいえ、法人税、所得税といった税収も含め伸びている。

 私が誤解を恐れずに主張しているのは、色々なものを見ないと、GDPだけでは(経済状況を)見誤るのではないかということである。GDPはインターネット系、バーチャルな世界での商売を完全に捉えているわけではなく、国民消費そのものも本当に正確に捕捉できているのか、日銀や政府も見直しに入っていると聞いている。当会でも、GDPそのものが(実体経済を)正しく把握できているのか、検証していく。

 こうした21世紀的経済の中では、これ(GDP)プラス、さまざまなファンダメンタルズもあわせて見ていかないと正確に見ることができないのではないか。ただいたずらに、GDPがちょっとプラスやマイナスになったからというだけでは評価できない経済状況にあるのではないか。こうした中、国民にとって消費があまり喚起されていない。これまで10兆円なりの財政を出動してきたわけだが、どのような結果になったかという検証はあまりされていない。どこにお金を投じたらどうなるかといった検証もされていない。その辺りをもう少し具体的に、今日がよければ、あるいは3ヵ月、1年がよければよいというのではなく、スパンをせめて5年か10年に広げて見ていくべきだ。

 これだけ強力な安倍政権で消費税を上げないとなれば、今後どのような政権になっても、上げる政権はないだろう。これだけ税と社会保障の一体改革というのが盛んに議論されて、社会保障に関連する支出がどんどん増えていく中、健康保険などの社会保険料は何となくずるずる上がっているのに国民は気がついていない。一方で、消費税に対しては非常にヒステリックになってしまっている。ヨーロッパ諸国は20%程度、イスラエルも17%である。国民に「国が潰れたら大変なことになる」という認識がもう少し共有されているような気がする。

 まさに団塊の世代が70歳になろうという時代に、どれだけのお金を用意しなければならないか。日本の債務が1千数百兆円にまで膨らんでいるというあたりを理解すれば、(消費税率を)8%から10%へというのは最終的に(国民は)分かってくれるのだという政治の方が好ましいと思う。伊勢志摩サミットで結論を出すという安倍首相のプラスの判断に期待したい。

 これは国家百年の計の思いで国民も覚悟を決めないと、本当に(日本が)破たんしてしまうという危機感である。よく言われる例えだが、ぬるま湯に浸かった「茹でガエル現象」を呈している。(当事者には、)最後自分が茹であがって死んでしまうという認識がない。徐々に風呂の温度が上がっていって、最後は死んでしまうというのが今の日本の状況ではないか。茹でガエル状況から一度は飛び出す勇気がほしいという気がする。それが次の世代、またその次の世代にとってどのような意味があるかを、もう少し国民は考えるべきだ。

Q: 三菱自動車について、燃費偽装問題に端を発する経営問題が、日産自動車との大型再編に結びついて発展という展開になっている。同じ三菱グループの企業トップとして、今回の燃費偽装の問題をどう考えるか。また、日産の傘下に入ることについて受け止めを伺いたい。

小林: 確かに(会長を務める三菱ケミカルホールディングスは)三菱グループではあるが、資本関係があるわけでもないし、スリーダイヤを共有しているという関係だけなので、もう少し一般的な話として言わせていただきたい。

 企業のコンプライアンスというのを色んな局面で私なりに(考えているが)、コンプライアンス(違反)と事故、製造業でいう事故も含めて、これを本当にゼロにするというのは実感として難しい。常に日々の戦いである。文化あるいはブランドは一日にして崩壊するが、つくり上げていくのに時間がかかる。変えるということにいかに時間がかかるか、これに尽きると思う。

 三菱自動車はおそらくその努力を相対的に怠っていたのだろう。やはり事故やコンプライアンス問題というのは常にトップが(主導する)。ボトムアップというよりこれこそがトップダウンで、とにかく悪いことはやってはいけないという当たり前のことを、あるいはとにかく安全第一だという当たり前のことを言い続けるというのが、経営者の最低限やるべきことだと思う。それでもうっかり間違って、かなり個人の(問題に帰する)ようなコンプライアンス問題というのはあるが、会社全体が腐ってしまう危機感をもたないと、なかなか健全な状況がつくれない。それでさえ、事故というのはうっかりすると起こってしまう。その危機感が三菱自動車には欠如していたと言わざるを得ない。

 日産の(傘下に入ることについては)経営戦略上の問題である。一般論で言えば日本の産業は、どんな産業もそうであるが、もっと集約化していくべきだと思う。化学産業にいたっては乱立気味、過当競争と言われて久しいが、そういう中でいかに各企業がコアのものに力を入れて、儲からないものは捨てていくというのを当たり前にする。同時に、欧米と比べるともう少しスケールの小さい(産業については)、自動車は日本の中では産業としてグローバルに強いが、それでもまだ8社以上ある中で、もう少しコンソリデーション(統合)というか、一緒になって(世界販売台数)1,000万台という辺りを目指すというのは、一つの戦略だと思うので、それについては大いに前向きに評価したい。

Q: 安倍首相は欧州訪問にて、世界経済の停滞を打破するために財政出動に対する理解を(各国首相に)求めており、伊勢志摩サミットでもそういった方向で報告すると予想される。仮に、財政出動と消費増税の先送りをセットでやるとしたら、野党が主張するようにアベノミクスの4年間とは何だったのかということになる。いかなる外的要因があったとしても、消費増税を先送りし財政出動をしないとこの国の経済が上手くいかないのであれば、自らの失敗を認めることになり、苦しいのではないかと思うが、いかにお考えか。

小林: 金融緩和は量と質と金利の三次元である。アベノミクスの一つの具現化した姿というのは、金融と財政と成長を三次元的に取り組んだ点である。当初は財政で10兆円、結果としてどこに消えたかは検証する必要があるが、財政と金融で相当に円安に導いたのは大成功であった。そうでないと、この20年間の停滞のままで、恐らくもっと産業は傷ついたと思う。そういう意味で、アメリカでも少し(景気が)悪くなると為替に反応して、日本が少し動こうとすると抑えようとする。やはり、為替というのは大企業、産業にとっては重要なので、明らかにやるべきことをやったと思う。財政についても、必要なものはそれなりの効果が出ている。

 ただし、前々から分かっているが、成長戦略はそんなに0(ゼロ)から1(イチ)のものがたくさん出るなら誰も苦労しない。1から10に、10から100にするのもそう簡単ではない21世紀になった中で、もともと成長に対する期待が大きすぎたと思う。個人的には、成長やイノベーションは10年のオーダーのアイテムだと思う。金融政策は一定程度成功した。されど、これ以上の注射をしても、患者にとって何の効果もないという飽和状態に徐々に来ている。財政はまだ一定程度残っていると思うが、ただ、どこを活性化するかという(論点がある)。それは子育て世代にどういった形で補助をするか、若い人をどう活性化するか、あるいは第4次産業革命的なIoT なり、ロボティクスなり、AIに対しての研究開発にどのようにお金を使うかという意味では、まだやり方は結構残っていると思う。

 ターゲットというのは世界が動いているため、常にムービングターゲットであるといえる。それについて失敗ではなく、この3年間は良い方向に動いたのだが、残念ながら経済はリニアに良くなることはないので、それを考えたこと自体が本当は間違いである。(経済は)上がったり下がったりする。全体がスパイラルで上がっていくのか、あるいはサインカーブ(正弦波)が少しは上がっていくのかという経済が普通である。リニアに上がっていくことは歴史的にもない。そういう意味で、(名目GDP)600兆円に向けて、上下しながら近づいていく。そういったセンスでものを見ないと、すぐに成功や失敗など(と判断するのは尚早であり)、そう単純なものではないと思う。決して失敗だとは思っていない。今から国民も事業サイドも含め、本気になってどれだけ成長戦略を具体化できるかに勝負はかかっていると思う。少しGDPが上下すること、あるいは何も出てこないことに過敏すぎては、従来のマインドセットの中に入って、結果はかえって悪くしてしまう気がする。ここは我慢の時だと思う。

Q: 成長戦略について。先程イスラエル・ミッションの話で、現地では、今までの議論が具体化された姿を見ることができたと言及された。今月まとまる成長戦略では、インダストリー4.0のような、新しい成長戦略を入れていくことになると思う。官民がどのように連携し、役割分担をしているかなど、イスラエルを見て日本が参考にするべきものがあったか。

小林: まさにそこがポイントで、エコシステムというのは、ワイツマン科学研究所やヘブライ大学、あるいは経産省や政治も含めて、一定の距離感があるとはいえ、一つの方向として新しいものをインキュベートしようというという(ことが共有されている)。0(ゼロ)から1(イチ)を創ること、国家そのものにそのようなベクトルがあり、国をつくった時から身に付いているという感じがある。産官学が一体であり、なおかつ、自分の場所をわきまえている。要するに、大学や研究所は基礎を行い、官省やインキュベーターはそこをどのように取り上げていくか。政治は、教育も含めてどのように場を提供すればよいかということが賢く回っているような気がする。

 日本の場合は、ものすごく裁量化してアカデミズムは学問に徹し、それに対するアプリケーションを考えてこなかった。しかしここ数年間の議論で、国の研究所は民とアカデミアを繋ごうと、成長戦略あるいは規制緩和の中で議論されている。もう少し時間がかかるが、方向としては、(イスラエルと)同じことを言うようになってきている。

 ただ、具体的にみんなが心を一にして、“Executives be ambitious”、もっとリスクに賭けようではないか。日々がリスク(と背中合わせ)な人たち、いつも敵に囲まれている人たちは、逆にアンビシャスになる。日本も、北朝鮮や中国などといろいろと考えていくと、それほど幸せな状況ではないのに、あまりにものんびりしすぎているのではないか。もっと自分の存在を賭けて、新たなものを創出するのだというくらいの根性があってもよいのではないか。単純に政治が悪いとか官が悪いとかではなく、民も悪い。もっと破壊するものは破壊して新しいものをクリエイトする、国家としての若さをどのように取り戻せばよいかということを、もっとみんなが考えるべきではないか。

 前回も話したが、ノーベル賞の20%をユダヤ人が受賞している。しかし、ユダヤ人は1,400万人であり、イスラエルには800万人しかいない。ユダヤ人は(全世界の人口の)0.2%しかいないのに、確率的には100倍受賞している。それはもともと優秀な民族だからなのか、あるいは教育でそのようになったのか。あるいは常に恵まれない環境にいるからこそ、生き抜くために必死に頑張っているのか。いろいろと要因はあると思うが、最後はやはり心の問題だと思う。受け身ではない。日本も、そういう若い人をつくっていかなければ明日はないと思う。

 (日本の)受験勉強も悪い。イスラエルの場合は8200部隊という(部隊があり、)中学や高校から真に優秀な生徒はサイバー・ソルジャーとして選抜される。単に有名大学を目指すというシステムだけではいつまでたってもだめだと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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