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2016年度通常総会、理事会後記者会見発言要旨

日時 2016年4月28日(木)17:00~17:30
出席者 小林 喜光 代表幹事
小林 栄三 副代表幹事(退任)
大八木 成男 副代表幹事(新任)
木川 眞 副代表幹事(新任)
佐藤 義雄 副代表幹事(新任)

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小林栄三副代表幹事より退任のあいさつ、次いで、大八木成男、木川眞、佐藤義雄各副代表幹事から新任のあいさつがあった。

その後、記者からの質問に答える形で、小林喜光代表幹事から(1)安倍政権に対するスタンス、(2)日銀金融政策、(3)消費増税、(4)昨今の経済状況、について発言があった。

退任あいさつ

小林(栄): 4年間の副代表幹事を終えて、今回退任する。この間いろいろとご支援をいただきありがとうございました。委員長などをやらせていただき、通算7年になる。私自身、さまざまな経済団体に顔を出しているが、同友会はまっすぐで、(議論を)深堀りし、しかも実践的というのが特徴だった。いろいろな事象に対して本当に真摯な議論ができたことは、自分自身にとっても勉強になり、張り合いのあるものであった。昨今の日本、世界の環境はまだまだ厳しい。不透明感が漂っている環境の中で、小林代表幹事以下、これからも同友会が果たす役割は非常に大きいだろうと思う。同じ小林姓として、小林喜光代表幹事を「兄」と表現してきたが、ぜひ兄には、理路整然と、きちっとしたロジックの上で新しい手を打つべく、同友会でますます力を発揮して、すばらしい提言をどんどんやっていただきたい。引き続き、私自身は幹事としていろいろなところで支援ができればと思う。本当に4年間どうもありがとうございました。

新任あいさつ

大八木: 私自身、民間企業の代表としての経験はあるが、同友会のような社会、政治、あるいは世界の根本から変化を捉え、いろいろなことを提言していくという、ある意味では思想的・哲学的なことについてはあまり経験が無い。思い切って勉強して、どこまで小林代表幹事を支援できるかは不安に思うところもあるが、人生のまとめとしてこういう時期があってもいいと思う。(小林代表幹事のことは)若かりし頃から存じ上げており、哲学者である。そういう人間の魅力にひかれて、大いにみなさんで盛り上げながら(活動していく)。社会に対しては、行動も含め少しでも貢献できるように自分を締めくくりたい。小林代表幹事からは、短期的な資産に思いを巡らすのではなく、超長期の中で社会、経済、市場のあるべき姿を考えると(いうテーマをいただいた)。これについて1年間(プロジェクトチームの委員長を)やっているが、たいへん難しい。本日いらっしゃるみなさま方からいろいろなご示唆をいただきながら、長期の観点から物事を考え、発信していきたい。どうぞよろしくお願いいたします。

木川: 私もこういう経済団体の、こうした職に就くのは初めてだ。経歴も、金融関連からサービス業(を経てきた)。しかも役務のサービス業ということで、いわゆるメーカー的な発想力というのは十分に発揮できない状況だが、新しい産業界におけるサービス産業化という流れの中で、われわれが少しでもお役に立てることができればよいと思っている。私自身、同友会では政治改革委員会(の委員長を2015年度から務めている)。私の会社は政治とは関わらないことを徹しているが、会社ということではなく、一個人としてのスタンスを明確にしながらお役に立ちたいという思いだ。代表幹事の方針のもとに、それをサポートできる領域としては、国をどうするかという大きなテーマがある。なによりも今の社会構造の中では、世代間の格差が大きくなっている。この社会をどう変革していくかという時に、政治のみならず、産業界として変化を支えるという役割をぜひ果たしたい。そのために何が発信できるかをよく考え、やってみたい。精一杯勉強をしながら務めていきたいと思っているので、ぜひ、よろしくお願いいたします。

佐藤: 同友会での活動歴はそれほど長い方ではないが、2014年度は金融問題委員会の委員長として『地方創生に向けた地域金融機関の機能強化』という提言をまとめた。2015年度から財政・税制改革委員会の委員長を務めている。代表幹事はサステナブルな社会の実現をと常々言われているが、サステナビリティということで考えると、一番に皆さんの頭に浮かぶのは財政問題が非常に大きな要素だと思う。同友会としても、これまで財政問題についてはいろいろと意見を発信してきた。岡本圀衞 前・財政・税制改革委員会委員長の提言で財政問題についての同友会の考えをまとめているので(『財政再建は待ったなし~次世代にツケを残すな~』2015年1月21日)、私は委員長として、9年ぶりになるが、税制に焦点を当てた委員会運営・提言をやっていきたい。歳入と歳出のバランスをどうとるかという財政問題への算術的な視点は大事なのだが、税制は人と企業の行動を変えていく面も大きい。難しい問題だが、女性や子育て世代、高齢者がいきいきと働ける社会を実現するための税制、あるいは若者が将来に希望を持てるような自助努力を支援する税制、日本の立地競争力や日本企業の競争力が高まるような税制など、どれもこれも大変な問題である。しっかり勉強をして、よい提言をまとめていきたい。どうぞよろしくお願いいたします。

質疑応答

Q: 日本銀行が本日の金融政策決定会合で、物価安定目標の達成時期を半年程度先送りした。2017年度中となると、黒田総裁の任期中達成も危ぶまれてくる。デフレ脱却を掲げるアベノミクスそのものの成否に関わってくると思うが、現段階で、安倍政権の政策に対する代表幹事の評価をお聞かせください。

小林(喜): 一般的な話で言えば、最初、安倍政権が2012年12月にスタートした段階での3本の矢、「金融緩和」「財政出動」「成長戦略」というのは間違っていなかった。現にその効果として円安になり、大企業を中心に、為替の換算益も含めて収益は(改善し)、長いあいだ円高で苦しんだインダストリーは相当よい方向に行った。それが中小(企業)へトリクルダウンしていくだろうというロジックだ。一部はその現象も出始めているが、そうはいっても日本だけで経済は動くわけではなく、グローバルに(動いている)。とりわけ、リーマンショックの後に救ってくれたというか、(中国は)60兆円近くの財政出動をして、BRICsを中心に経済を活性化した。その大きな影響でポジティブに動き、その後、為替もよい方向に続いてきたわけだが、ここへきてアメリカ経済も含めクエスチョンが付きつつある。(アベノミクスは)基本的な手法としては今も正しい方向をたどっていると思うが、今後のドライブ次第では、今までよかったものがとんでもない方向に行ってしまう。今、クリティカルなところに来ている。デフレ脱却をベースに2%の(物価安定)目標をCPI(で見てきたが)、油価が下がったところを除いたコアコアCPIでさえ0.7%というのは(達成にはまだ遠い)。せめて(コアコアCPIで)2%くらいを目標とするのが当然だと思う。今後、あまりリジッド(厳格)に、CPIで2.0%という目標をいつまでもぶら下げて、結局はできないことを言っているという部分は、もう少しフレキシブルにやったほうがよい。

Q: 「とんでもない方向に行くのでは」と、先行きに不透明感が広がっているとの指摘があったが、「とんでもない方向」とはどのようなことか。

小林(喜): マイナス金利はかなり新しいトライアルだ。今まで人類の歴史が始まって以来、とりわけ日本は、時間に対して金利を掛けるのは「まあ、そのようなものか」というのが普通の経済だった。昔のイスラムの(ように)、金利は神のものであるから掛けてはいけないという時代に戻っていくのか、ものすごく変曲点に来ている。そこまでついに人類は来てしまったのだろうか。予想もできない方向性である。逆に一部だけ、不動産だけがバブリーな状況にあるということも含め、ものすごくフレキシブルな対応が求められる時代が来ている。もっといえば、我々のようにモノをつくっているメーカーからみると、何も変わっていないのに1日で円が2円も強くなったり、1日で株が800円~1,000円も変わったりする。最近はその揺れで儲けている人がいるというのは、まっとうな社会とは思えない。そういう段階に人類が入ってしまった。

Q: 本日の日銀金融政策決定会合では、現状の金融緩和策を維持するという決定があった。株は1日で800円近く動き、2円円高に進んだ。こうした地合いで、マーケットも追加緩和への期待感があっただけに、現状維持に対してこうした反応が出ている。今の経済情勢で金融政策を維持したことに対する受け止めは。また、マーケットの反応をどう見ているか。マイナス金利を導入した後、量・質・金利の三次元の金融緩和政策を日銀は続けているが、景気の横ばい感は続いている。そもそも金融政策を深堀していくことで景気の底上げは可能なのか。もしくは金融政策だけでは限界が見えているのか。

小林(喜): 金融政策は完全にサチってしまった(飽和してしまった)。為替に対してはよかったが、みなが為替を下げる、自国の通貨を安くしようという競争も、アメリカが先日のG20で為替の下げ競争をやめようというところまで来た。最初に下げた国は少しよい思いをしたが、残ったのはアメリカだけで、アメリカのドルが強くなって経済が悪くなったからやめてくれと言う。財政もこういう(状態の)中で、日本はそれほどの自由度がない。金融はほとんどサチってしまっていたのか、大きな効果は無い。金は十分に余っており、みなが使うのは不動産かなにかで、新しい投資というのに対してあまり目立った形で動いていない。このあたりでちょっと(金融緩和政策を)止めてみたらどうかという意味で(現状維持と決定し、)止まった。今回、6割以上のマーケットの人たちは、もっとマイナス(金利)を大きくしようということに期待感があったが、それをやらなかったために今日のような動揺した結果になったのだろう。

だが、まだ(マイナス金利政策を)始めて2か月だ。マイナス金利という新しい、初体験ゾーンに入った中で、一体どういう方向になるのかを見極める段階にいるので、数値を上げようが下げようが、質的に大きなことをしたのだから、静かに見ているという時期だと思う。今回ステイという(決定をした)ことは、正しい判断だと思う。

Q: マーケットの過剰反応については。

小林(喜): いつも言われているが、21世紀はあまりにマネーゲーム化している。だが、人間の本性としてやりたい人がやるしかないので、資本主義社会である限りは、そのマネーゲームをどう抑えていくかというのはなかなか手立てがない。一度知ってしまったことはやり続けるという人間の本性もあるので、マネーに対しての大きな食欲はどうにもならない。どう制御するかということだと思う。

Q: 代表幹事は就任前から安倍政権に対しては是々非々ということだったが、そのスタンスについては変わっていないか。現状で「是」、賛成の部分は六重苦の解消だと思うが、「非」の部分、成長戦略、第3の矢を含めてどうも怪しいと思っている部分がもしあるならお答えいただきたい。また、消費税について、「持続可能なSAITEKI社会」に向けて、選挙があろうとなかろうと増税は避けられないというのが同友会のスタンスだと思う。選挙の度に増税の機運がしぼむというような今までの延長線上ではなく、絶対に予定通り来年4月に10%だという考えにお変わりはないか。

小林(喜): 是々非々の「是」は、六重苦関連で言うと、金融緩和で為替はドラスティックに(変わった)。今は(1ドル)108円というレベルに来てしまったが、120円までもってきて、この3年間で(賃金の)ベースアップをかなりの会社ができるような状況になったというのは(評価している)。それとTPPを頑張り、合意に達した。国内に持ち帰って、アメリカを含め今後どうなるかという問題はあるにしろ、そういう動きをはっきりと手取りした。環境問題もCOP21で(パリ協定を)採択した。あと労働法制(改革)は、3つのうち1つ(である改正労働者派遣法)しかできていないが、動きだした。法人税についても20%台にもってきた。エネルギー問題については、油価が下がったのは政策的な問題ではないにしろ、(六重苦とされた課題が)6個ともかなりよい方向に来たというのは「是」であり、賞賛すべきことだ。

「非」は、先ほど述べた2%(の物価安定目標)にしても(そうなのだが)、今度の新しい3つの矢、ターゲットに対して、前向きにスローガンとして組み立てていく姿は良いが、本当の意味の成長戦略、規制緩和について、具体的に手取りするあたり(が未だである)。ストーリーは良いが、国としてその枠をどれだけ用意するかというのがまだ見えてこない。その辺りは「非」というよりは、我々は我々の責任のもとにやるべきことをやっていく。それと、規制を解くことによって新しい技術や事業を起こすという意味で、もっと積極的に政府に物申していくことは十分残っている。今日の所見でも述べたが、国家の品格、国家の価値は、ひたすら借金を返すためにGDPを上げていくというのはよくわかるのだが、それだけではないだろう。やはり、CO2を減らしたり、格差を是正したり、サステナブルな社会保障制度をきちんと構築するという部分も必要だ。新しい、日本らしいテクノロジーを創出することに対して、国としてどういう枠をつくっていくかを見ると、かなりの部分は「是」とはいえ、「非」の部分もある。

以前と違い、かなりの部分で民(間)を入れ、官邸主導で民と進めるというスタイルになっている。語るスペースはいくらでも民に与えられている。かつてはよくわからないまま国会だけでやっていた。(今は)逆に、国会は何をしているのかという方が問題なのかもしれない。官邸は民と話をして、民が主体的に決めたのだというスタイル(をとること)は、トリッキーだがうまい(やり方だと)と思う。

 それと消費税。消費税は先ほどの持続可能な日本社会を考えたら、絶対に、提言(2014年度財政・税制改革委員会『財政再建は待ったなし~次世代にツケを残すな~』2015年1月21日)にあるように、どういう形で上げるにしろ17%、場合によってはそれ以上を目指していかなければならないのに、いまだに8%から10%にいかない。3年4カ月続いている強力な安倍政権でさえできないとなったら、おそらく日本は永遠に消費税を上げられない。借財だけが溜まっていき、内閣府の試算をみれば明らかなように、2020年にプライマリーバランスゼロというほとんど不可能近い数値に対してなかなかギブアップしない。その辺りのフレキシビリティがない。2%の物価上昇も、これだけ社会がグローバルにBRICsが落ち、アメリカでさえそう簡単にいかないなかで、ターゲットを下さない。強い精神構造なのか、きわめて原理主義的なのかは分からないが、もっとフレキシブルに状況に合わせても国民は理解してくれると思う。消費税は当然、上げる方向で、ただしそれを補完する財政の助けをやる。とにかく始めるのだという意思を(示し)、1%ごとに(税率を上げていく)ということも含めて(考えるべきだ)。震災があった、国民のかなりの部分が反対だということでポピュリズムの一種のように(消費増税を)やめるというのはいかがなものかと思う。

アベノミクスは失敗ではない。やるべきことはあの方向しか最初はなかった。今からだと思う。

Q: 東芝の不正会計が起き、最近では三菱自動車の燃費改ざん問題も起きた。非常に伝統ある企業がそういうことを起こしている。本日の所見のなかでもM&Aについてはまだ選択と集中が進んでいないという話もあった。改めて昨今の日本企業、特に製造業のあり方について伺いたい。

小林(喜): 9年ほど前、2007年12月21日に鹿島のコンビナートで当社のプラントが火災を起こし、協力会社の従業員4名がお亡くなりになられた。その後、2008年に黒崎でも事故が続いた。製造業に関わらず、法令順守、コンプライアンスと安全は、(企業が)存続するためのすべてである。ROEやテクノロジーなどいろいろ言っても、コンプライアンスと安全を無視した経営は、最初から存在する価値がない。このようにトップが思い、それをいかに下に伝えるかだ。だが、(なかなか)伝わらない。ものすごく時間がかかる。文化を変えるにはどれだけエネルギーが要るかというのは(身にしみて感じている)。あれ以来9年(が経ち)、今たまたま事故が無いのか、かなり変わってきたのかはわからないが、経営者というのはいつも「これで大丈夫なのか」「従業員は本当に分かってくれているのか」と自問自答しながら、常に教育をして、自分を含めて緊張感をもっていなければならない。それが組織だ。だが一部、病弊というよりは老朽化した古い伝統を持ち続けると、自分自身の疲労度、腐った部分がだんだん見えなくなる。今までのやり方を踏襲することで陥る危険は、三菱自動車や東芝だけではなく、常にある。今このように会見をしていても、自社の関連工場がいつ爆発事故を起こすか分からない。そういうものだ。だから、日々緊張感と、従業員との対話をもちながら、確率をどれだけ小さくするか。絶対的、100%というのは無い。そうやっていく以外にはない。

ただし、中国や他の国との安全、環境問題に対しては、四日市の公害問題などいろいろな経験をした日本の製造業は、世界的には(対策が)進んでいると思う。そういうものを技術外交として使っていくべきだ。非常に残念な事象が今いくつか起こっているが、各経営者はこれを他山の石としていくということだと思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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