ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年4月12日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

記者の質問に答える形で、(1)景況感、(2)官民対話、(3)パナマ文書、(4)G20財務相・中央銀行総裁会合、(5)セブン&アイ・ホールディングス人事、(6)1-3月期GDP見通しなどについて発言があった。

Q: 内閣府が2月の機械受注統計を発表した。民間企業の受注額は前月比で9.2%の減、3カ月ぶりのマイナスとなった。前月にあった鉄鋼業での大型投資による影響が大きいと思われるが、自動車や電気機械などがマイナスになっていることが気になる。また本日、為替相場は一服しているが、円高が急激に進んでいる。足元の経済情勢について見解を伺いたい。

小林: いま細かいことを言う時期でもないような気がするが、大きな基調としてはアメリカの利上げがなかなかスムーズにいかない世界状況の中で、リスクオフで日本円が若干強くなっているのは否めない事実だと思う。株(価)についても、正月早々は18,000~22,000円を期待していた人がほとんどだった中で、負の方向へ動いていることは事実であるが、これ以上下がるような感じもない。このあたりの小康状態で様子を見るのではないか。

 それよりもパナマペーパーなどで、習近平国家主席の家族周辺や、イギリス首相の父母が取りざたされ、政治の主導者が国家への裏切り行為(を行うの)は大きな問題に(なる)。ロシアも含めて。それが特にイギリスの場合はEUからの離脱の方向になっていくようなリスク、あるいは習近平氏まわりで情報を遮断してしまうような国家、もろもろそちらの大きなリスクがむしろ心配で、マーケットのゲームにあまり一喜一憂する必要は、基本的にない気がする。

 中東のイランやサウジアラビアの関係、あるいはアメリカの大統領選(挙)のようなダイナミックなものが、うっかりすると我々の予想外の方向に進むことによって、大きな、ネガティブな経済効果がないことをむしろ祈っている。当面、たとえば(GDPの)1-3(月期)予想が0.8%から0.6%になったからといって、消費税を8%から10%にするのを止めようなどというのはいかがなものかと思う。今回の機械受注(額)が下がっているのも、鉄に限らず全体が様子見(だと考える)。それが中国の恒常的な影響なのか、非常にテンポラリーな状況なのか、もう少し見ないといけない。マイナス金利もしかり。そのような日々の動きは注意するに値し、重要なのだが、最近の世界の動きを見ていると、もっと大きな事件に近いことが起こらなければいいなというのが最近の思いである。

Q: 本日、官民対話が行われる。テーマは「第4次産業革命とイノベーション」と聞いているが、代表幹事がどのような発言をされる予定か伺いたい。また、本日が(同対話の)一区切りとなるようだが、労働組合が会議のメンバーから外されたことも含め、所感を伺いたい。

小林: 参議院議員選挙を控えて、一億総活躍国民会議も5月に(「ニッポン一億総活躍プラン」を)まとめ、産業競争力会議、経済財政諮問会議でも骨太の方針をまとめる。それに関連して官民対話も第5回目が開催されるのだろう。最初に第4次産業革命的な話から入って、ITをベースにした新しい経済や成長戦略、イノベーション(が主要な論点と予想する)。特に、アカデミアと官と民のオープンイノベーション、あるいはコラボレーションも含めての議論になると思うが、まだ会議が行われていないので、何を言うかは言えない。

 少なくとも、第4次産業革命とイノベーション、教育、あるいは規制改革も含めてトータルな(議論になるだろう)。いままで第一の矢、第二の矢、第三の矢という基本の三本の矢の成長戦略は、ちょうどアベノミクスがスタートして3年が経ち、もともと金融は時間稼ぎ、財政出動もその補完といった形で、グローバルな大きな段差以外は為替も80円から120円となったように、大きな効果があったと思う。だが、ここにきていつまでもそういう状況が続かず、世界情勢によって大きく変動する中で、本当に足腰の強い日本経済を構築するためには、サービス業、あるいは従来の産業も含めた新陳代謝(の促進が必要である)。もっと言えば、基本にあるのはITとバイオサイエンスという21世紀的な2つのテクノロジーをどう組み込んでいくかというグローバルコンペティションに、日本がどのように参戦していくかが成長戦略の基本だと思う。サービス業の生産性アップも含めて(考える必要がある)。これはITやインターネットをどう上手く使い、シェアリングエコノミーと称されているものも含め、日本がもしプラットフォーマーとして最も主導的に先導できないなら、どちらかというとドイツ式、IoT的にセンサーを使ったモノとインターネットの融合が日本の強みではなかろうか。こう言われて久しいが、その具体化への議論が今回の第5回の官民対話のメインになると思う。

 そういうものを導入するためは、労働法制的にどうすれば企業の新陳代謝ができるのか、規制緩和は自動運転を(実現)するについても、従前の制度からどういう形で早めに民主導の経済を確立できるかなど(を考えていかなければならない)。今までの延長線上ではないような社会を想定して、規制緩和をしつつ、あるいは民主導の新しいイノベーションをオープンで、どうフラットに新しいものを出していくか、そういった議論だと思う。ここが日本の将来のかなりの重要なところを占めていくだろう。

 金融や財政は所与の束縛条件の中にあるため、やはりフロンティアの開発(が)、イノベーションという言葉より(重要だ)。今や地球の中でフロンティアというとアフリカがあるかもしれないが、それも限界に近づいてきている。インターネットではモノを運ぶ時間(財貨の取引や、情報のやり取り)もコンマ何秒(で済み)、Fintechというのはまさに時間もゼロ、距離もゼロの中でビジネスがグローバルに行われる。かつてのような、重いモノを鉄道や飛行機で運ぶ経済学から、時間が限りなくゼロに近づいて、重さも全くゼロの経済学への移行というように捉えれば、まだまだ明るい日本、世界、あるいは人類の未来が待っているという見方で物事を捉えていきたいと思う。

Q: 官民対話自体の総括について伺いたい。

小林: 政労使(会議)というのは、基本のスタンスは(賃金の)ベースアップで、良い循環に移行していきたい(というものであった)。アベノミクス2~3年の効果として、日本で稼いだか海外で稼いだかは別として、連結決算でみる限り、日本の大企業を中心に非常にパフォーマンスが良かった。これをどう還元するか。直接的な還元という意味では当然、給料か設備投資ということになる。まず給料の部分を(討論)するのが政労使(会議)だったように感じる。それは2年間しっかりとやった。それから、国内への設備投資を喚起するための官民対話。こういう順番でやってきて、なおかつ官民対話でもベースアップについての要望をしたということで(機能したので)、連合を外すというような見方は、私は特にしていない。

 そういうなかで重要なのは、今まではなんとか、3年間で24兆円という名目GDPを上げた。単純計算すると年間8兆円上げたわけである。(目標達成期間の2020年までには)あと5年間あるので、今の調子ですべて上手くいけば40兆円上がるはずだから、540兆円くらいになるだろう。プラス、研究開発(費)が入ると15兆円(上振れするわけ)だから、このままの調子でいけば555兆円は決して難しいところではない。あと45兆円をどうするのか。先ほど述べた新しい成長戦略でかなりもっていかないとそう簡単に届かない。それも、従前の設備投資ということは、おそらく各企業体をみると簡単にディシジョン(決定)はできない。むしろ海外に展開をするなり、違う新しい事業、それもかつてのような大きなものに大規模に投資するような内容ではなくなるような気がする。そこのところの議論が大いに必要である。必要なのは「今が良ければいい」というものの考え方ではない。次の世代、また次の世代に通ずるような新しい投資が必要ではないか。

 官民対話としては、政労使(会議)でまずベースアップを具体的なものとして掴んで、循環の2回目の回転をし、3回目の回転は設備投資とともに賃上げを一緒に考えた。(だが、)どうも設備投資もそう単純なものではないと、官民対話で先ほど述べたようなアイテムについて議論する。それも、従来のような専門家のみならず、色々な人の意見を聞きながら官邸が進めてきたということは、理解がわかりやすい形で始まったと思う。より国民の理解を得るように、政府あるいはメディアも含めて、今後ますます(説明が)重要になってくるのではないか。情報そのものを国民として正確に捉えるというのが重要な状況になりつつある。

Q: パナマ文書について伺いたい。政治家と企業家は分けて考える必要があるかもしれないが、例えば、アイスランドのグンロイグソン首相は既に辞任し、イギリスのキャメロン首相も、最初は親族の名前がリストに掲載されているのを否定していた。代表幹事は、政治家と企業経営者とは別と考えるか。日本の企業、特に一部報道にあった、かつて経済同友会で活躍された方も名前が出ているが、違法でなければよいとお考えか。

小林: 基本的に国家と個人という問題をどのように考えるかということだと思う。経済同友会に所属している方の企業名がネットにも出ているようだが、誤解してはいけないのは、実際にビジネスを行っている会社も結構ある。貿易や船での運送などは、現地に人がいて、ビジネスをしているので登録してある。必ずしも、タックスヘイブンだけではないのがひとつ。

 政治家であろうが企業体であろうが、法律に抵触しなければよいというのを狙うのは、とりわけ企業人は余ったお金や汚いお金を持っている人がやるかもしれない。政治家にとってそういったことは裏切りだと思うし、企業人も基本的に人間として、国民として、できればそのようなことは、いくら法律に違反していないとしてもなるべく(やるべきではないと思う)。

 僕はお金がないからそのようなことは考えたこともないが。お金がたくさんあると、そのようなことを考えるのも分からなくもない。本質的には少々税金を払ってでも、国家に存在して、それなりの利益を得て、生かしてもらっているので、(自分の)国のために税金を払うのが普通の考えだと思う。

Q: 政治家の課税逃れを仲介していた金融機関について、どのようにお考えか。また、14日から20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開催される。世界経済を押し上げるための財政出動や課税逃れについて議論されると思われるが、G20に対し、経済界として希望することは何か。

小林: 経済原理でいえば、それぞれのファンクションを詰めていくという意味では、ファイザー社が結果として、アメリカ政府による規制措置発表を受けてすぐにM&Aを中止するくらい、利益を中心に動く資本主義、マーケット至上主義を否定はできない。永遠の成長をベースにした商業金融資本主義のもとであれば、(租税回避を)やることそのものをとがめる世界ではなくて、個々の経営者なり、倫理の問題だと思う。倫理をまったく無視して収益だけを求めることを法律的にとがめられないのは仕方がない。

 人間とは「心・技・体」で、相撲でもスポーツでも戦いにおいて「心・技・体」を見る。「心」は心、社会性。三方よしでいえば、世間。(要するに)環境問題やCSRの意識は絶対に持っていなければならない。「技」はテクノロジー。相撲で言えば業師である。企業なり国家でいえばイノベーション。新しい価値を創造するテクノロジーを生み出す、そのような仕掛けをつくる能力である。それと、金を儲ける「体」の能力である。人間は体だけ大きければよいのではなく、「体」と「心」と「技」のバランスが取れている(必要がある)。企業体もROE8%を目指すのもいいが、ただひたすら儲けるだけが会社ではないので、仕掛けやビジネスモデル、テクノロジー、イノベーションを生むというファンクションもある。もう一つは地球環境。将来、水(不足)やCO2(増加)が地球を大変なことにおとしめることをわかっているなら、それ(の解決)に寄与するような対応をする。CSR、コンプライアンス、コーポレート・ガバナンスも、全体系として優秀であるかどうかという見方をするが、それと同じではないか。儲けの軸だけでやっていけば、おそらくエンロンのように破滅する。やはり全体バランスがあるからこそ、全体のサステナビリティがあり、人間もバランスのとれた尊敬される個体として見られる。企業も国家も同様である。そういう意味で、儲けだけを追い求めるのも好きにやればいいとは思うが、いかがなものかと思う。

 G20については財政出動がメイン(の議題)になるかと思う。議論は多くされているが、最終的に消費税は引き上げて、なおかつ必要であれば財政出動も行う。ここで引き上げないと、永遠に日本は8%でフィックスされてしまう。その方がよほど、社会保障なり将来の長期持続性を考えると不幸な国家になってしまうのではないか。必ずしもデフレマインドだけでなく、日本人のメンタリティというか、直接的な物価(の上昇)には変に痛税感があり、一方では、社会保険料や違うところで取られているのにそれは気づかないというか、痛税感、税を取られている感覚が無い。この辺の感性がヨーロッパ人と違うのではないか。この部分も含めて、早く(そのマインドを)払拭して、社会保障にお金がかかるということを(認識する必要がある)。現在、(債務残高)1,000兆円からまだ借金が増えている現実を、もっとみんなが共有しなければいけないと思う。

Q: セブン&アイ・ホールディングスの人事を巡る問題について伺いたい。ひとつの企業統治の課題を示した格好かと思う。鈴木敏文会長が指名・報酬委員会や社外取締役の理解を得られない中で人事案を出し、結果的に否決されて退場する結果となった。今回の人事をめぐる混乱ともいえる事態に対する所見と、鈴木会長の退任に関する所見について伺いたい。

小林: リーダーシップとガバナンスをどうバランスを取るかという問題だと思う。鈴木敏文会長が、強いリーダーシップの下で日本流の新しい小売業を確立したという点で、極めてイノベーティブな創出者・創造者であったということは、誰も疑わないところだと思う。強いリーダーシップ、ワンマンシップによって結果として会社が良くなったが、(リーダーシップを)一定程度コントロールするために、社外取締役2人を置き、その反対を受けて退場したというのは、一種の民主主義的ガバナンスが効いたということではないか。ガバナンスが本当に多数決だけで良いのかということについては、少し(疑問も)残るし、鈴木会長がなぜ辞任されたのか、心象風景まではわからない。かなり強烈なリーダーシップの延長線上であのような形で人事を強引に仕掛けて、結果的には社外取締役2人を含む取締役会が否決したというのは、ある意味ではむしろ健康とみるべきではないか。あまりにも単純なガバナンスだと、会社を活性化したり、新たなクリエイティブな状況を作ったりできるのかという問題もある。強いリーダーシップの会社には非常に良いところもあり、実際80歳や90歳が社長で頑張っている人も僕の身近にもいっぱいいる。そういうリーダーシップも一部にはいるのだろうが、やはり(事態が)行きすぎたら今回のような形である決定をするというのは、そこは非常に真っ当な状況とみるべきではないか。ご本人も83歳と聞くが、人間80歳を過ぎたら、普通は辞めたらいいのかもしれない。自分も今年70歳になるが、70歳になったら辞めた方がいいかもしれない。そこは何とも言い難い。

 僕もある会社の社外取締役として悩んでいるが、ガバナンスとかリーダーシップについては、そんなに簡単なものではない。人間というのは難しい。最後は人間学だ。社外取締役が何人かいる中で、自分の意見だけを通すというものでもないだろう。どれだけ自分が価値を観測しているか、正確にものを見ているかというと、100%見ているはずがない。執行(側)は日々(会社で)生きているから、ある所はよくみているがある所はものすごく抜けているし、外からは一見きれいに見えるが全体のニュアンスはわからない。しかし、最後は神でもない自分が(自らの考えを)決めなければならない。部下の評価も全てそうだが、そこは常に謙虚になって自分に活かさないといけないと思う。

Q: 今週金曜日に中国の1-3月期GDPが発表される。かなり悪い数字との予測が出ているが、中国経済の状況をどうみているか。5月には日本の1-3月期GDPが発表されるが、影響がかなり出てくるのか、世界経済への影響についてもお伺いしたい。

小林: 中国は僕自身の事業をやっているなかで、コモディティケミカル、鉄もそうだが、リーマン・ショックが終わった後の2009年、中国は50兆~60兆円の投資をし、ある意味では牽引者として世界を救ってくれた。あの当時の中国は、どちらかというとモノに投資をした。まだサービスやインターネットが出てきていなかったので文字通り製鉄所を増やし、ケミカルのコモディティ系の工場をたくさんつくった。化学で言えば、ダウ・ケミカルやデュポン、BASFなど外国企業も来て、大変大きなプラントをつくった。テクノロジーも、中国だからまだ中学生や高校生(のようなもの)で、大学を卒業するまでには時間がかかると思ったが、あっという間に欧米がテクノロジーを教えてしまった。そういう意味で、予想以上に早く工場と技術が立ち上がった。

 2012年くらいから少しおかしいな(と感じはじめ)、2013年、2014年くらいになると3割くらいのオーバーサプライになってきた。それはコモディティのプロダクトがメインだったので、まだそれほど世界全体、あるいは日本からみた中国も大きな問題ではなかったが、それが現実のものとなって、すべてオーバー投資(の状態である)。サービス業にかなり急激に転換し、金融的にもいろいろな手を打ったが、ここまで現実のものになってしまうと、あと5年くらいはそれをシュリンクさせるというか、経済成長が追いつくまで待つのは(仕方がないだろう)。一部、国策会社が操業を停止したり、ゾンビ企業を撤退させると(いう方針も)上海マーケットで動きが出てきているが、トータルですぐ回復するとは到底思えない。早くて3年、遅いと5~10年かかるというなかで、世界経済を見るべきだと思う。日本も相当な影響を一部、連結的にも受けるだろうし、国内からの輸出入もかなり影響を受ける。1-3月期GDPは、予想は実質0.8%くらいの成長は(あるだろう)。それ以下になることはなかなか(可能性は)少ないと思う。むしろ、来年がどう動いていくか。いまはまだ余韻が残っているので、日本経済は実質的にはそう悪い方向にいっていないが、いま申し上げた意味でクリティカルな時期に来ているという気がする。だが、1-3月期GDPをみて2015年度(の成長率が)なんぼだから、消費税(率を上げるのは)止めるというのは、本当は変だ。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。