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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年3月29日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)消費増税、(2)朝鮮学校への補助金、(3)日本銀行の金融緩和から3年、(4)民進党発足、(5)春闘、(6)安全保障関連法施行、(7)代表幹事イスラエル訪問などについて発言があった。

Q: 消費増税問題について伺いたい。先日、国際金融経済分析会合で海外の経済学者から消費増税の先送りが提言された。一部、首相自身が先送りの方針を固めたという報道もあり、流れができつつあるともとれる。一方で、首相は国会答弁ではリーマンショック級・大震災級の経済変動がなければこのまま計画通り増税をすると宣言を続けている。今の時点で先送りをすれば、増税のタイミングが難しいと思われる。日本は今度のサミットで議長国であるが、先日のG20では世界的に需要が低迷しているという認識で一致している。今回、増税すると決めてしまえば、議長国自ら消費意欲を減退させるような政策を実行するということで、反発を呼ぶかもしれないといわれている。代表幹事に消費増税の是非について見解を伺いたい。

小林: 最初に考えなければならないのは、ここ数年のレベルで考えるか、国家百年の計で考えるかだ。次の世代、その次の世代までの日本経済を考えるのか、常に「今日さえよければ」という政治をするのかという政治哲学の問題。あるいは国民自体が、何を欲しているのかという問題だと思う。何回か申し上げているが、ヨーロッパ、例えばイギリスは消費税率20%というオーダー(である)。EUはフラット税制で法人税、付加価値税、所得税も似たような比率であるが、それで政権が潰れることはなかなかない。日本の場合は、大平正芳首相の時も、橋本龍太郎首相の時も、政権が、あるいは選挙で大敗を喫する。今回も事実として、消費税率(5%から8%への引き上げ)をトリガーとして(2005年基準価格実質・季節調整済年率で)310兆円強くらいあった個人消費が、300兆円強まで下がってしまい、上がってこない。今年2月(の家計調査の二人以上世帯の実質消費支出)もうるう年を換算すると(前年比)マイナスであり、6カ月連続で消費が下がってきている。ある意味では日本国民の特殊性というか、デフレが長い間続いたために、消費税に対して極めてセンシティビティが高い国民になってしまったという言い方もあるかもしれない。

 一方ではそういう状況の中で、中国で開催したG20、今回のG7も含め、国際的には財政出動が必要だろうという、「今日、明日をなんとかする」という方向性である。(G7伊勢志摩サミットは)日本が議長国である。確かにリーマンショックとか大変な世界恐慌にならない限り(消費税率を)上げると(首相が)おっしゃったのも事実だが、税収がそれによって下がってしまったらあまり意味をなさないというのも事実。一方では、国家百年の計ということを長い間議論し、社会保障と税の一体改革という形でスタートを切って、(国・地方の基礎的財政収支の赤字対GDP比は)2010年比で(縮小し)2015年(はマイナス)3.2~3.3%(であり)、プライマリーバランス(の目標)を一応クリアした。その延長線上で2020年はプライマリーバランスゼロというのは、かなりの政治的な命題であり、国際的な約束であるというひとつの重いターゲットだ。それは、内閣府の試算によれば(経済成長率は)名目3.4~3.5%、実質2.5%くらいで、それでも今回の予算の32兆円にあまる社会保障を、毎年、自然増的に5,000億円くらい上げていくというベースで計算しても、まだプライマリーバランスが7兆円くらいマイナスというのも事実だ。一方、目安として2018年にはGDPの約1%、5兆円位までマイナスにすると昨年の骨太の方針2015には書かれている。

 その辺りの大半が矛盾であって、いま消費税率を2%上げて、先ほどの経済成長で7兆円。一方ではプライマリーバランス黒字化というターゲットをおいているわけである。今回はもう(上げなくて)いいんだ、将来の世代については成り行きでなんとかなるだろう(という考えは)、プライマリーバランスなんて消費税を上げなければ完全にギブアップということの表明でもある。そういう意味で、借財が国債発行額30数兆円もある中で、借金が減るどころか、金利だけでなくもっと増えていくという状況が(ある)。2020年どころか、労働人口がもっと減っていく中で、2025年はもっとミゼラブル(悲劇的)。今はセルフファンディングというか、国民の(個人の金融)資産が1700兆円あり相殺されているという論理もあり、何とか救われて、金利のアップで国債が暴落することはないと一般的には思うことはできるかもしれない。2020年まではよいとしても、2025年あたりにとんでもないクラッシュが(起こるかもしれず)、日本経済自体がクラッシュする先鞭をつけてしまうということをどう考えるか。これだけ強力な安倍政権でさえ消費税を上げられないとなると、今後、もう日本では消費税率は8%でフィックス(固定)してしまうとすれば、当たり前だが、今までの約束通り(消費税率を)10%に上げて、一方で上げた分をよいタイミングで財政出動し、10兆円といわず使って活性化する。そうしないと消費税が永遠に上げられないというのがむしろ怖い。上げてなおかつカウンターメジャー(対抗措置)をやり、消費を冷やさないような手を打ち、財政的には当面きついが、少なくとも10%に上げるというそっち(の手)を残した方がよいような気がする。10%に上げます、(それで)いつ財政出動するか(だが、)あまり早くやっては消費税を上げなくてもよかったのではないかということもあるので、スパイク(一時のピーク)がすてんと下がってしまうようなことをなるべく少なくするために、一定程度の財政出動をとりあえずやって、変に(個人消費が)下がらないようにしながら10%はやらないと、永遠にできなくなるほうが怖い。そういうのが個人的な考えだ。そういうことも模索して欲しい。世界経済が悪いといっても、ここへきて少しは落ち着きを取り戻している。世界でなんでも財政出動すればよいというわけではなかろう。まだまだ選択肢はいっぱいある。これだけ複雑系なので、今すぐに決めなくても、伊勢志摩サミットが終わったあたりでよいのではないかと思う。

Q: 今日、政府が、朝鮮学校への補助金について透明性を確保するよう求める通知を自治体に対して出した。文部科学大臣は補助金の自粛や減額ではないと説明しているが、教育機関へのこうした措置はかなり異例と思われる。おそらくこの時期から判断するに、北朝鮮の核実験やミサイル発射に対応する措置だと思われるが、代表幹事の見解を伺いたい。

小林: 詳細を把握していないので、具体的になんとも言い難い。当然、北朝鮮への一つのカウンターメジャーをいろいろと今やっているわけで、それは必要だ。一方で、グローバルな意味で教育は機会均等であるべき。その原理原則を申し上げるしかない。

Q: 4月4日で日本銀行の黒田東彦総裁が大規模な金融緩和を決めて丸3年を迎える。この間、円安に進み、株高も進んだが、今年の年明けから株価も下落して円高方向にも進んでいる。この日本銀行の大規模な金融緩和政策に対する代表幹事の評価を伺いたい。

小林: もともと金融や財政というのは成長戦略を手取りするための時間稼ぎというか、その刺激剤として当然使っているわけで、財政出動であろうがみなテンポラリーな世界である。とりあえず元気づけるための注射を打つわけだ。金融緩和も一種の麻薬的注射なのか、健康体に戻す注射なのかという分かれ目というのはもちろんある。健康体に戻すべくいろいろな注射を打ったというのが(アベノミクス)第一の矢、第二の矢だと思う。極めて急速に健康体に戻りつつあるという意味で、アベノミクス第一の矢、第二の矢は明確に成功したと思う。ところがアベノミクス全体を包含して考えると、第三の矢という成長戦略は、アベノミクスだろうが何であろうが、成長やイノベーションというのは時間がかかる。

 21世紀になって、ただ設備投資をしてモノをつくればいいというのは先進国ではあり得えない。新興国が追い上げてきて、エレクトロニクス、特にコンシューマーエレクトロニクス(産業)の姿、日本の姿を見れば明快だ。あるいは鉄や化学といったコモディティ系が中国でものすごくオーバーサプライになっている中で、そもそもの経済成長がもっとサービス業やネットの世界を膨らませていかなければ、とても成長ののびしろがない。そういう状況の中で今、アベノミクスの成長のトライアルをしている。こういう状況下であるから、この程度の注射を打ったら、これ以上打つと今度は変にアダプト(順応)というか、麻薬的な作用が若干出てきてしまう。ここは我慢をしながら、いかに成長を手取りするかだ。もう3年も経って一向に成長をしないというわけではなくて、水面下では色々な形ができつつある。あまり焦って、極めて一時的な作業ばかりをするというより、もう少し長期的なレンジでものを見ていかないと(ならない)。外の(短期の動きに対する)一喜一憂が多すぎるのではないかと(思う)。

 アベノミクスの構造的なものは間違っていないと思う。いつも言うように、6重苦の(一つであった)為替という(要素が、)80円から120円に(円安が進んだことに)よる、海外で稼いだ金の換算益、あるいは輸出競争力がものすごく強くなったというのも含めて、この3年間、過去最高益を大企業系は謳歌できた。それをどう次に展開をするかということで海外のM&A、あるいは国内での研究開発等々を含めて仕込んでいるわけなので、それが顕在化するには、5年か10年かかるという捉え方をしないといけない。一方、サービス業の生産性向上について、いろんな規制改革を含め手を打っていて、それはあるスピード感でできている。一番そのトリガーになったのは為替だ。金融緩和によって円を安くしたというのは大きなファクトである。アメリカ大統領選がどうなるかは別として、日本としてはTPPをここまで基本的にアグリー(合意)したというのは大きな前進で、EUとのEPA含めてそのルート、方向性は見えてきた。かつてはそれに乗らないという時代もあった。12番目に遅ればせながら交渉に参加して、3年間できちんと全体のアグリーにもってきたというのは一つ(の成果である)。それと法人税。法人税だけが(企業の)コストではなく、社会保障費含めて社会保険のエクスペンス(費用)というのはどんどん増えているので全体を見なければいけないが、少なくとも法人税も下がる方向に来た。TPPと比べると遅いのは労働法制で、三つのうちまだ一つしか通っていない。COP21でCO2の問題はある程度方向性は見えた。それと、神様のご加護で油(の価格)が下がったというのは、日本は一番資源がない国なので、そういうところは運が良かった。

 この3年間、非常にいい方向に来ているので、ここで国民も含めてもう少し我慢して、本当のところの成長戦略をきちんとやっていく時期だと思う。ここで変に財政出動をしてもいいことはない。あまりにテンポラリーである。今の時代だから50年、100年の計を見て、欧米で進んでいる第4次産業革命や人工知能というものすごく新しい革命的な状況、テクノロジーをどう取り込んでいくのか、社会変革をどうしていくのか(を考えるべきだ)。あるいはIoT的なものを今までの産業にどう取り入れていくのか、かつての重さのあった経済にどれだけヴァーチャルな経済をうまくハイブリッド化していくかという、非常に長い作業の始まりである。今日だけよければということにこだわるのは(いかがなものか)。政治も含め、国民も含め、冷静に長期的にものを見た方がいいのではないかというのが私の考えである。

Q: 政治のことでお聞きしたい。今週の日曜日に民進党が発足した。野党としての民進党、あるいは民進党も含んだ野党に期待することをお聞かせいただきたい。

小林: それを言う前に、名前が「民進党」というのが(気になっている)。「民主進歩党」ならわかるが、民進党だと台湾・蔡英文主席の(政党の)名前が浮かんでしまう。名前を公募したというが、やはりトップダウンで決めてほしかった。もう一つ英語(標記)だが、Democratic Innovation Partyと最初は言っていたが、いつのまにかThe Democratic Partyになってしまった。自民党がLiberal Democratic Partyなので、では(民進党は)Liberalではないのか。そういった誤解をされないのかなと(いう気持ちだ)。

 それと同じように、この党は、やはり自民党に対峙する二大政党に(なることを)ものすごく期待したい党の割には、今からもっとクリアなメッセージを出してほしいなという思いだ。名前だけでも。中身もよく議論して、当然、非常に強い自民党、安倍政権がある中で、いきなり二大政党化するのもかなり無理があるだろうから、あるポイント、ポイントで、明らかに自民党よりよい政策を提言して(欲しい)。なんでもかんでも反対というのは、結果として、国民もよくみている。建設的なアンチテーゼを提案できる党であって、焦らないでしっかりとしたThe Democratic Partyを作ってほしい。

Q: 3月16日に春闘の集中回答日が終わった。評価は難しいところだが、3年連続ベアについて前向きな評価をする一方で、安倍首相も、欲を言えばもう少し(賃上げが)欲しいとおしゃっていた。消費が停滞している中で、賃上げが半分不十分だったという意味を込めてだと思う。消費の喚起、財政出動も必要だという論も大きくなっている中で、企業に投げられたボールは、賃上げの面においてはきちんと返せたという印象をお持ちか。それとも、先行き不透明なので、致し方ないとお考えか。

小林: 全体でいうとなかなか難しいが、業種によって同じベースアップでも、2013年、2014年、2015年でカーブが違うと思う。全体としては、確かに3年連続ベースアップができた。この10年、20年を考えると、今までは少なくとも、ベースアップよりは職の確保を、というのが連合を含め(大方の意見だったが)、ポジションだけは保持したいというところから、(ベースアップができたことは)明らかに政労使というか、政府が引っ張ったことと、やはり民がそれに応え、3年連続ベースアップをしたということは評価すべきだ。

 ただ業種によっては、2013年でかなり(ベアを)上げて、2014年、2015年と(伸び率が)下がる。あるいは2014年がもっとも(伸び率が)高く、2015年は半分くらいになった業種もある。ただ、6~7月、あるいは中小企業まで見てみないと何ともいえない。中心的なところで、昨年より(ベースアップ額が)半分くらいになったところもあるが、むしろ中心的な華々しい部分ではないところの動きもみないと総括できない。例えば、2013年、2014年がきれいに上がらなかったが、ようやくよくなったところもある。あるいは中小企業や中堅企業が、今後どのようになっていくか。それを見ないと全体としての評価はできない。

 そうは言っても、この3年間はきちんと対応したといえると思う。今年になってから色々な金融的不安定性によって(状況が変わり)、そうでなかりせば、株価がもし最低18,000円とか、20,000円を行ったり来たりくらいなら、もう少しいっただろうが、経営者のマインドはものすごく時間に対して敏感なので、仕方がないのではないかと思う。

Q: 本日、安全保障関連法が施行された。あらためて安保法制が日本経済に与える影響、メリットはどういうところにあるのか。また成立時の代表幹事のコメントの中で、政府側の説明が不十分であるため引き続き説明を求める指摘があったが、十分なされたと思っているか。この二点について伺いたい。

小林: 説明がなされたかについては、やはり(安全保障関連法は)非常に複雑な内容であり、細かいことについてなかなか説明が行き届いていないという印象がいまだにある。参議院選挙で、それをトリガーに野党も含めて大いに議論し、それをもって国民の判断あるいは国民の情報を増やすということが必要だと思う。その意味では、良いタイミングで参院選があるので、今度は国民的議論に移行して(欲しい)。安保法案は、国会で時間的にも明らかに長く審議した。あれ以上延ばしても仕方がない部分もある。集団的自衛権が明快に施行された中で、もっと国民に、自衛隊を含めて今後どうなっていくのかの説明をすべきであり、また国民自身ももっと知らないといけない。そのためには参院選は一つの良い機会になると思う。

 世の中で今までのような専守防衛は日本にしかなかったわけで、経済的メリットがあったかなかったかは、なかなか難しいと思う。武器を輸出するのかしないのかは若干経済と絡むが、国を守るという視点からは、中国の尖閣(諸島)の問題、南シナ海、東シナ海の問題、北朝鮮の問題を含めれば、集団的自衛権の必要性も含め、やはり70年来続いた憲法をこのまま守り続けるのか、変えていくのかは当然議論すべきである。(憲法改正していないのは)日本くらいで、1945年以降でみても、他の国は少なくて5、6回、20回以上改正している国もある。日本には素晴らしい憲法があるから変えなかったという考えがあるかもしれない。しかしそうはいっても、当時はインターネットもなかったが、これだけシステム化し、防衛は、サイバーセキュリティーと同時にサイバーディフェンス、それも日本国だけではできず、かなりネットワークで防衛していくという時代にそぐわない(点が出てきている)のも事実である。こうしたことも含め、自分の命を守るというレベルの感性を、日本人はある意味幸せすぎて(危機感を)失った部分もないわけではない。中東やヨーロッパのような地続きの世界では、理不尽にも人が攻めてくる、というのが2000年来の世界の歴史である。人間はそんなに美しくない、すぐに悪いことをする人もいる、それはせめてブロックする、というのは当たり前のことだと思う。これも含めて考え直す良い機会ではないか。

Q: 消費税率引き上げについて、客観的に見て現在の経済情勢が本当に先送りを検討すべき状況にあるのか、代表幹事の見解を伺いたい。また、引き上げを行う場合の財政出動について、消費の低迷に構造的な問題もあるとすれば、引き上げに対する反動だけではなく、財政出動して本当に効果があるのかどうか。例えば10兆円、15兆円でも投入すれば、消費の停滞なくして引き上げができるのか、このことについても考えを伺いたい。

小林: 統計的に見ると、GDPの6割を占めている消費の動きが、消費税を引き上げることによって、日本の場合はここ2年間で310兆円強が300兆円強となり、全然上がらなくなってしまった。半年くらいで戻るのではないかと思っていたものがなかなか上がらない。デフレ状況で、日本人はモノを買う時に重税を取られると感じる国民である。所得税で黙って取られたり(徴収されたり)、社会保険料が少し上がってもピンとこない。ところが、毎日の(買い物が)5~10円くらい上がることにはとてもセンシティブな部分がある。消費税率を(8%に)引き上げる時に補正予算で3~5兆円程度を投入したが、その(効果の)検証ができていない。投入してから一体どう上がったのか。投入して何のレスポンスもなかったということは、そこを勉強して、そういう(効果が期待できない)ところへの補正(予算)や財政出動は止める。一つの例だが、かつてのような公共投資的なものを(やるとしても)、労働者不足でサプライができていない中に入れてもうまく使えない。そうであれば、次(世代)の研究開発や人々の健康に資するヘルスケア、予防医学などに投入すればフィードバックが上がってくるのではないか。あるいはロボティクスや、高度なサービスの生産性を上げるITに補助を入れるなど、同じ財政出動でも質的に変えないとあまり意味が無い。明らかに(経済が下降している)トレンドはあったが、だからといって2%の消費税率(引き上げ)を止めておくという選択肢しかないという状況ではないような気がする。たまたまこの3か月、金融では(情勢が)荒れてしまってシュリンクしているし、世界には今日がよければ良いという人が多いから、財政的には豊かなところもあるので、そのようなところは(財政出動を)やればいい。日本はどう見てもセルフファンディングというより、民は1,700兆円の金を持っているけれども、国は借金をしている。これも分かれ目である。同じ日本の中で相殺すれば十分な金があり、ギリシャとは違うとの議論もあるが、そうはいってもプライマリーバランスがマイナスという状況をまだまだ続けられるはずがない。社会保障も結局はできなくなる。では、出るを制するということで、社会保障費を減らせるかといえば、政治的にもっと厳しい。先ほどの防衛と同じように、国民が(消費税引き上げに)納得できるように教宣活動なり、数値でもっとロジカルに(示す必要がある)。要するに、消費税率の2%(引き上げ)は国家予算に3~5兆円くらいの貢献をするが、所得税や法人税(の改革)はどのように効いてきているのか。あるいは社会保険料をどれだけ取り上げているのか。そのような軽重関係、オーダー・オブ・マグニチュードをもう少し正確に議論して、国民も分かっていかないといけない。結局、消費税を引き上げられないのは、引き上げると選挙で負けてしまうからであり、このようなことをやっている国民も悪い。そこも考えなければいけない。

Q: 消費税を上げた場合、何らかの手を打たなければならないだろう。例えば経済財政諮問会議の「ブラックフライデー」の実施など、観光のプレミアの話が出ている。また、財源がなければ消費税でなく炭素税や環境税でといった話もある。政治家は、最後は選挙に勝ちたい、オリンピックを平穏に迎えたいということもある。消費増税を先送りしなければ、何らかの手を打たなければならないと思うが、具体的な考えを伺いたい。

小林: やはり、消費増税を実施し、一定程度の財政出動、財政補助を長期的な視点でやる。最初はおそらく消費は下がるかもしれないが、そこはお互い我慢をしないといけない。いつも思っているのは長期停滞論。ローレンス・サマーズ元米財務長官が主張するセキュラー・スタグネーション(長期停滞)がある。どうも若い人はモノにこだわらなくなってきている。であれば、ゲームやサービスなどをどう喚起するか、という方向にシフトしていかなければダメなのではないか。今までと全く同じようにGDPがただ上がればよい(わけではなく)、2100年にはGDP1,000兆円になる、という絵は描けないだろう。100年の計と言わず、50年の計、あるいは2050年までの計をしっかりと描いて、その中でどうするべきかという政治哲学を持たないとならない。この国をどうするかという哲学があまりにない。そのような政治家を選ばないのは国民も悪い。国民自体が(日本の将来像を)持っていないかもしれない。これが問題である。この国を一体どうするのか、2050年にはどういう国にするのか。(それを踏まえて)今は我慢するのか、高齢者が増える中でいつまでも働いてもらうためにはヘルスケアをどうしていくのか。こういう中で考えなければならない問題である。単視眼はやめたほうがよいとしか言えない。

Q: 経済同友会はイスラエルに訪問するが、どういう目的なのか。

小林: スラエルはご存じのように、マイクロソフト、Googleでも皆、研究所を持っている。アラブ(諸国)に囲まれ、約400万(1980年)の人口が今は約800万人で、教育と研究開発で生きているような人たちである。ボストンに上場するために皆がアイデアを出している。一番端的なのはノーベル賞受賞者のうち23%がユダヤ人であるが、人口は(世界)70億人中1,400万人弱で、全世界の人口の0.2%しかいない。0.2%の民族が20%のノーベル賞もらうというのは100倍の確率である。あるところの国では当然、誰ももらっていない。イスラエルは何もない中で、常に中東の中でアラブに囲まれて、教育と研究の先駆けとしてやっていかないと生きていけないのである。2000年来離散した民が、1948年に世界中から集まり、イスラエルという国を造り、ヘブライ語を復活させた。そういう強い民族である。「自分は何か」「イスラエルという国は何か」という問いかけをしながら生きている人たちだ。われわれ産業界もイノベーションといえばイスラエルである。ぜひ経済同友会として行ってみたい。自身も40数年前にイスラエルに一年間留学していた。その後も3、4回行っており、ユダヤ人のある意味の凄さ、ある意味の嫌らしさを知っている。それを皆さんと共有できればと思っている。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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