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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年3月15日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭に小林喜光代表幹事より、直近の所感を述べた後、記者の質問に答える形で、(1)明日の春闘集中回答に向けて、(2)日本銀行の金融緩和策、(3)財政出動の必要性、(4)日本の家電事業等の行方、などについて発言があった。

小林喜光代表幹事によるコメント

 先週10日(木)から11日(金)にかけて、震災5年が経ち、被災地が今どのような状況なのか自身の目で見ようと、宮城県南部を視察した。まだ震災の復興は(進んでおらず)、大変なことだというのが大いなる実感だ。クロマツを使っての防風林等がようやく緒についたところで、高台への移転を含めて、まだ形にはなっていない。ハードウェアについては、既に26兆円、今後6.5兆円という予算をつけており、現地も懸命に頑張っている。

 経済同友会も2011年10月からIPPO IPPO NIPPONプロジェクトを立ち上げ、(会員所属企業や会員など広く寄附を募り、)主に専門高校と大学の一部に対して実習機材等を寄贈してきた。東北の明日を担う若者を支援しようという思いからで、これまでの支援総額は約21億円に上る。しかし、5年10期を一つの区切りとして、この9月末をもってこうした形での支援は一旦終了させる。地方創生の観点も含めて、今後どのような方向で、長期的に経済同友会としてコミットしていくかを端緒に、議論をスタートさせた。東北には、中堅・中小の、きわめて光る技術を持った企業も多々ある。今後は、そうした企業と経済同友会に所属する個々の企業がどのようにしてコラボレーションしていくか、ビジネス・マッチング(のようなことなど)はしていくとして、加えて人の派遣や、様々な教育の場をつくることなどを検討していく。いずれにしても、今後も東北に対して「創造的復興」という形でコミットしていくというのが経済同友会の大きな覚悟だという認識を一にする3月11日(開催の全国経済同友会東日本大震災追悼シンポジウム)であった。

Q: 明日は自動車や電機などを中心とした大手企業による春闘の集中回答日である。1月の機械受注が先日発表され、前月比15%増という高い水準を示した。しかし、化学工業や製品製造業、電気機械が落ち込んでいることが気がかりだ。春闘の回答について、これまでの業績の結果だけでなく、次期の見通しをも占うものだと思うが、代表幹事としてどのような点に注目するか伺いたい。

小林: 機械受注の状況は業種によって異なる。鉄などはだいぶ余っているし、確かに化学も下がっている。ただしシーズナリティという部分もあるので、あまりここへ来て急に冷えているという認識は持っていない。昨年に比べて要求額も比較的弱めになっているとはいえ、3年連続ベースアップということは間違いなく、そちらの方向にいくだろう。これも業種によるが、非常に顕著にすぐ良くなる業種と、素材のようにどちらかというとゆっくり良くなる業種もある。個別企業で見ると、化学業界などでは相対的に今年のベースアップの方が数値的に高い要求も出ているのが現実だと思う。来年はどうなるかというレベル、あるいは来年どころか輸出入(先)が中国を中心にだいぶシュリンクしている中で、ベースアップという判断がつきかねるところはボーナス等の一時金でなんとか絶対量は同じにするなど、経営者それぞれにお考えがあるだろうと思う。この1月からの円高株安で大きくシュリンクすることはないだろうと思っている。

Q: 本日、日本銀行は金融政策決定会合を開き、追加の金融緩和を見送った。先週10日に欧州中央銀行(ECB)は理事会で3カ月連続となる追加緩和策を決定しており、日米の動向が注目されていた中でのこの見送り判断について、どのようにお考えか。 

小林: 量的、質的、金利の、三次元的パラメータを一挙に緩和の方向にしてから、ちょうど今日で1カ月くらいである。日本銀行も言われているようにもう少し長期的に見ていかなければいけない。中国あるいはECBのマリオ・ドラギ総裁の対応により、結果としてむしろユーロが強くなるなど、まだマーケットが落ち着いていない中で、これ以上手を打っても仕方がないということだと思う。そのような意味では、賢明な判断だったのではないかと思っている。そうはいってもまだ(年間)80兆円(のマネタリーベースと長期国債保有額の増加)やマイナス金利は続く。

Q: 日銀のマイナス金利が導入されて今日で1カ月となる。確かに、効果を長期的に見ていかないといけない政策だと思うが、この1カ月をみて、政策効果は期待できるものか。それとも、足元がこの環境では、実体経済あるいは企業の設備投資を後押しするところまでは見えないものなのか、伺いたい。

小林: おっしゃるとおりではないだろうか。摂動が多い中で、政策効果がきれいに見えてこない。ヨーロッパ、中国、新興国の経済状況、ヨーロッパ金利引き下げ(などさまざまな要因)が入ってきて、安定的な中でどういう方向でマイナス金利の効果が出てくるかを見るには、摂動が多すぎる。ここでまたドタバタして上げる、下げる、戻すというのは、いくらなんでも時期尚早であろう。いずれにしろ、金融緩和だけでなんとかなる、財政出動でなんとかなるというより、実質的な成長戦略をどれだけ手取りするか、それに対してどれだけ忍耐強くきちんと築いていくかという時期に来ている。成長戦略とは何なのかと言われると、時間軸と共にいろいろな議論があると思う。ありとあらゆる短期的な手も打たなければならないし、長期的な(観点では)AI、ロボティクス、IoT、第四次産業革命に備える部分もある。研究開発に対する投資をどれだけ促進させるか、従来言っている古典的な刺激策など、いろいろ組み合わせてやる以外にない。

Q: 古典的な刺激策とは、この局面ではどうか。

小林: とりあえず、予算を成立させるということだ。その後は様子を見ながら。「古典的な」というのは、人々の心の岩盤も含め、規制緩和、いろいろな障害となっていたものを外していくという作業以外にない。「経営者の心の岩盤をぶち壊そう」という我々のスローガンは、グローバルな戦いの中で本当に成長して勝ち抜いていくという意味では、新しいテーマにどんどん挑戦するということと同時に、今までの既存の事業を破壊的に止めていくか、つぶしていくかだ。それをプロモートするには、労働法制を含め、もう少し社会としてアクティビティを上げる、転換を速める施策をやりながら、そういう環境をつくってもらったら、企業はもっと積極的に変化していく、という心の動きも必要だと思う。

Q: 一億総活躍を含め次の財政出動を伴う動きが見られると思うが、これについてどのように考えているか。やめた方がいいのか、それとも必要なものは行うべきか。また、それに伴う財政再建のペースダウンの可能性について伺いたい。

小林: 財政の出動、日本の場合は消費、消費税の問題、それと財政健全化の問題と、言ってみれば三体問題から四体問題になっている。物理の法則でもそう簡単に解けないレベルで、今どうこう言える段階ではない。とりあえずは予算を96兆円も使うわけで、そこをまず執行して、それから状況を見ながら、あるいは世界の状況も見ながらどうしていくのかということになるだろう。中国の今回の新しい政策、あるいはヨーロッパの今回の金融政策に限らず、今後のイギリスのEUからの離脱(の可能性)も含めた状況、アメリカの大統領選の影響、あるいはシリアの今回の和解など、様々な世界情勢の中で、5月には伊勢志摩サミットがある。おそらくいろいろなアクションが相当まとまってくると見ておく方が(いいだろう)。今ここでまたすぐに補正(予算)というのはあり得ない。4、5月辺りの政治的アクションを期待するが、どちらに行くかはもう少し見てみないと、これだけいろいろ揺れている中で(判断できない)。マーケットは落ち着きつつあるだろうが、政治的な状況がどうなるかも含めて(みる必要がある)。そういう意味では伊勢志摩サミットあたりが大きなクリティカルな時期になるのではないかと思う。

 素材産業を見ているとそれほど悪い感じはしない。財政(出動)についても、古典的な公共投資がいいのか、公共投資をしても労働者がいないというサプライサイドの問題もまだ残っている。そういう意味では働き手をどうするか、あるいは当然人口問題を含め保育の問題(もある)。迂遠なようで時間がかかるようだが、単純古典的な財政出動というより、もう少し内部的なサプライサイドの充実と、消費がここ約1年以上、非常にフラットなまま推移している辺りをどう喚起するのか。これを両面で、状況を的確に整理して、皆にそこをしっかりと知らしめて、納得した形でお金を使ってもらいたい。

Q: 春闘について伺いたい。今年、(大手企業の)組合側は、中小企業を含めた底上げを一つの理由として、ベアの要求水準を下げてきた。2014年、2015年の賃上げの水準をみると、確かに中小企業との賃金格差が広がっている。賃金格差の是正について、どのようにお考えか。

小林: こちらが上がらないから、あちらを下げるというのはある意味では寂しいことで、こっちを上げて、あっちも上げたいというのが、正直な思いである。その辺の戦略というか、連合も含めて、なるべく格差がなく均一であるに越したことはないが、やはり本質的には、(利益を上げている)いいところは上げて、それに引きずられながら(全体として)上がるというのが、素直な見方だと思う。

Q: 春闘について、二年連続でベアが実現しても、なかなか消費が回らないという現状の中、先日の自民党大会で安倍晋三内閣総理大臣が経済界に対して、三年目の賃上げを強く求めた。アベノミクスとしても、賃上げへの依存というか、他に手詰まり感があるため、賃上げに対する期待が相当強まっているという印象がある。アベノミクスの選択肢が狭まっている、賃上げに依存しているような現状について、どのようにお考えか。

小林: (選択肢が)狭まっているというより、明らかに企業のパフォーマンスは、間違いなくこの三年間、円安がメインのトリガーだと思うが、結果が良かった。これを還元する好循環という形で、三年目、若干(要求の)額が下がったとは言え、(賃金は)相当上がってきている。エビデンスとして言えるのは、消費税率が5%から8%に上がったのがトリガーかは別として、いろいろなファクターをすべてノーマライズ(正規化)してみると、2010年の消費を100とするとここ一年半は95くらいになっている。給料が上がっても、そのお金が直接消費に回っていないというのも事実である。ここをどのように喚起できるのか。また、失業率は減ったが、非正規の人たちが増えているために、実質的にはそれほど上がっていない。全体をミックスして、どうしてこれほど(消費が)フラットなのか、デマンドサイドをしっかりと解析しなければならない。一方で、人手不足、特に建設や介護の現場では、逆に働き手のサプライがうまく機能していない。サプライの機能がどうなっていくのか。また、給料が全体として上がっているのに、なかなか消費が活性化しないのは、将来に対する不安などから(消費でなく)貯金に回っている、ということがないわけではない。ここをもっと精緻に整理しなければならない。内閣府のデータなどを基にして、皆が納得できるエビデンスをベースに、どのようにしたら良いか議論をしたい、というのが正直な思いだ。なかなか全体像がつかめていないのが事実だ。きちんとしたデータやエビデンスベースの議論をしないで、いたずらに、なんとなく感覚的に言うのは危険というのが最近の思いだ。ただ給料を上げれば、消費が喚起できるほど単純ではないと思っている。しかし、三年間これだけエンジョイした企業の収益は、当然ステークホルダーに還元する。そして全体が活性化して、良いサイクルにするというのは、マクロで言えば、それが正しいことだと思う。

Q: 本日、東芝の白物家電が中国(企業)に売却されるという報道があった。20年前、30年前は日本の家電は世界のトップを走っていたが、この間、何が起こって、どうしてここまでだめになってしまったのか。これからの方向性と、「日本の家電」というカテゴリーがなくなってしまうのかを含めて伺いたい。

小林: コンシューマーエレクトロニクスは、2000年初頭の15~16年前まで、日本のソニー、パナソニックは超優良会社だった。シャープがあり、三洋電機があり、三菱電機、日立、東芝もみなコンシューマーエレクトロニクスに進出した。三菱電機だけはあまり進出せず、メディアが「なんでやらないのか」とコテンパンに書いた時代だった。そのくらい日本は研究開発も含め(隆盛していた)。最初は半導体。国家がまとまって半導体の研究開発を1980年くらいから始めた。それからLED、液晶テレビ。液晶テレビのテクノロジーはほとんどシャープを中心にしぶとく立ち上げた。テクノロジーベースでは、ほとんど日本がお金をかけて技術を立ち上げ、商品化した。それは太陽電池、DVD、LED、液晶もそうだった。半導体の時代は10年ほどはもった。

 しかし、アナログからデジタルに移行することですべてがモジュール化し、部品を買ってきて組み立てればいいという時代が2005~2010年に急激に興った。その辺りで為替の問題もあり、台湾、韓国などが台頭してきた。とりわけサムスン、LG、あるいは台湾。最大のポイントはデジタル化だと思う。インテグラルの時代からモジュール化し、アナログがデジタル化したことで、誰でも部品とつくり方、工場を手に入れればつくれてしまう。それに加え(日本企業は)為替のダメージを受けた。今述べた商品群、半導体から始まり、光ディスク、液晶テレビは今後も(日本がトップを走るということは)あり得ない。だからシャープにしろ、東芝にしろ、中国なり台湾に売却する。

 ただ、日本は半導体のテクノロジーをまだかなり持っているので IoT、AI、ロボティクス時代のハードウェアという意味ではまだまだ(分がある)。コンシューマーエレクトロニクスとは言わないが、インフラとしてのエレクトロニクスは、今後も日本が戦える強いフィールドだと思っている。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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