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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年2月16日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)10-12月期GDPマイナス成長、(2)日銀マイナス金利政策導入、(3)財政出動、(4)来年の消費増税、(5)企業関係の政策減税、(6)放送による表現の自由、(7)昨今の株式市場、などについて発言があった。

Q: 昨日、10-12月期のGDP速報が発表されたが、結果は再びマイナス成長となった。特に個人消費がいつまで経っても伸びない状況がある。企業・消費マインドともに、どうも波に乗り切れていないとの感覚はあるか。

小林: この3年1、2カ月で、株高と円安という形で追い風を受けて、企業も具体的に良い結果を出せているが、やはり外的要因が以前にも増して非常に大きなファクターになっているため、その辺が(伸びない理由として)一つあるだろう。ただ企業マインドとしては、設備投資は比較的プラスで1.4%増だ。基本的には(個人)消費がなかなか喚起されていない。GDPにおける比率の60%以上を占める消費、これが喚起されないのはなぜか。(経済の)好循環として、(賃上げは)二回まわしている。今回、三回目の賃上げ(を実施し)、設備投資(も行うこと)で好循環(につなげる)と(政府は)言っている。確かにそれも大きなファクターだが、一つ考えておかなければいけないことは、単純に消費といっても、従来のコンベンショナルな生鮮食料品や、日々の生活に必要な自分の体をメンテナンスするための消費は当然あるだろうが、新しい家財道具や、高級な時計などの身の回りのものを新しく買うとか、大きいものでは住宅(の購入)などは、今の人口レベル・年齢構成からすると、かなり買い込むものは買い込んでしまった(ように思える)。飽和している部分をどう見るかをあまりに軽視しているような気がする。実態としてモノとして消費する部分と、同じ可処分所得でもエンターテインメントやアミューズメント、もっと言えばインターネットのゲームなどの支出を本当に捕捉しているのか。尺度、物差しについて捕捉しているか、そろそろ考えていかなければならない。経済状況や人々の志向が変化している中で、(GDPは)かつて軍需的な意味の国家の基本を測定するメジャーであり、後進国であればリニアに一致しているかと思うが、人々の志向、効用が必ずしも一対一対応していない時代には、どのようなものを測ればいいのかを、考えざるを得ないような気もする。一本調子にGDPが常にリニアに増えていくのは(難しい)。季節性も考慮して計算しているとはいえ、かつてのように数%伸びている時には少々の摂動があっても、そんなにプラスにもマイナスにも揺れなかっただろうが、潜在成長率が0%台の中で、外的要因で揺れてしまうようになっている。個人的には、このようなものには一喜一憂しないで、むしろ長期的に(見るべきであると思う)。もちろん借金が1,000兆円もあるからGDPが伸びることも非常に重要なことではあるが、これ(GDP)だけに偏って、急に景気が良い悪いと判断する方が、むしろ悪い方向に導くのではないかと言う気さえする。

Q: 本日、日銀のマイナス金利がスタートした。足元をみると、昨日は株が1,000円高となるなど乱高下という状況で、予測できない状態が続いている。あらためて日銀のマイナス金利政策に期待すること、懸念することの両面から見解を伺いたい。

小林: ある意味で、本当に未体験ゾーンに入った。今まで二次元的に、量と質の緩和という方法でやってきて、それが飽和してきたかどうかは別だが、新しい次元、三次元的にやる自由度を確保し、今後の対応の幅を広げたという意味では評価できると思う。

 ただ、問題はこれが極めてサプライズで行われたことだ。マイナス金利に対応していないコンピューターもあったと聞くが、例えば機械的にアルゴリズムで株を売買するプログラムにも対応していないものがあったのではないか。その意味では、むしろ(マイナス面での)可能性も含めて、しっかりと説明をしながら、「現在の経済状況では、自由度としての三次元目(マイナス金利)をやりたい」という方向性が分かれば、こんなにも混乱せずに済んだのではないか。

 本日から、実態としての金利がマイナスになり、段々と学習を重ねてどういう方向に向かうのか、今から検証に入っていく、ということかと思う。こうした未体験ゾーンの場合には、すぐに「失敗した」「成功した」というのは、時期尚早ではないかという気がする。明らかに金融系の人から怨嗟の声が聞こえてはくるが、ECB(欧州中央銀行)やスイス、スウェーデン、デンマークなどでもやっているので、それほど“奇策”というわけではないと思う。昨日今日あたりもまた比較的戻してきているので、様子を見る、ということではなかろうか。

 (住宅)ローンの金利が下がったことで、借り換えが活況のようだ。こうしたメリットもあるわけで、不動産バブルが起こるかどうかは別として、お金を借りている人、特に中小企業を含め、金利が安いというのは決して悪いことではない。一つの活性化のツールであることには違いない。

Q: 「最悪の事態を回避する」ために日銀が先手を打った、という意味では効果があったという声もあるが、マイナス金利の先々の効果を考えた時に、企業心理の改善にどの程度つながっていくか、具体的にはこの状況下で企業が設備投資や賃上げに積極的になっていくのかを伺いたい。

小林: ここまでの結果として、1月29日のマイナス金利の発表から、実効的になる本日までの間、(効果があったのは)たった二日だけだった。1ドル=115円を一つの目安として、それを切る(円高になる)と何らかの手を打たなければならないという中で、それに近いところで手を打ったのだが、円安・株高となったのはたった二日間か三日間だけだった。

 もっとも、この間には、原油が、26ドル台にまで下がる、あるいはアメリカなり中国なりの問題もあった。アメリカもリセッション(景気後退)とまでは言わないが、調子が悪くなるのではないか、あるいはドイツ銀行が大丈夫か、といった噂も出て、これらが逆にトリガーとなり、瞬間的にみなが神経質になってリスクオフ、リスクから逃げた、というところは否めない。だが、結果として今は冷静になりつつあり、むしろマイナス金利の影響がポジティブに効いてくる時期になっているような気もする。

 そのくらい乱高下(の要素)がある今、すぐに春闘への影響、あるいは設備投資、賃上げへの影響はそれほど(ではないだろう)。経営としてはむしろ、鉄鋼や化学、コモディティ系など、一部中国の供給過剰で今後が見えなくなる、という実体経済の方が気がかりなのではないか。特に製造業としては、想像以上に原油価格が下がった中で、絶対的にポジティブな影響があるはずだ。一部の産業における中国の供給過剰解消には、少なくとも3~5年はかかるとみられる中、どういう手を打つのかという方が、実際の設備投資なり、賃上げに影響するのではないか。為替がどっちに向くかによっても変わるが、今ここで判断するときではないと思う。年度末まであと1カ月半ほどあるが、気になるのは3月末の肝心の決算の段階で、円や株がどうなっているのかということは、相当クリティカルになると思う。

Q: 現状、1ドル=110~115円くらいの為替水準にあり、円高圧力がかかっている状況だと思う。この為替水準は、特に製造業の経営者にとってクリティカルになり得る水準であるか。

小林: 2015年度の予算が大体118~125円くらい(の前提)で作られており、2016年度でも120円近傍の仮定が多い中で、気分としては、115円を切るのは、1円で数十億円、あるいは100億円近く(利益が)変わってしまう会社にとってみれば、少し強すぎるかと思う。まさに115円の壁を突っ切ったというのは、一つのメンタルの面では、やや円高の方向にきたという感じはある。

Q: 金融政策は、ほぼ出尽くした感があり、財政出動をやらなければいけないという声も一部にはある。13日に新東名高速道路(浜松いなさJCT~豊田東JCT)が開通し、御殿場から東京方面がツーウェイになった。国会情勢を見ていると、閣僚や議員の問題はあるが、原油価格が安いことにはいろいろなメリットがある。財政出動を要請する声があることに対して、どのようにお考えか。

小林: まだそういう段階ではない。金融や財政は十分にやってもらったので、どれだけ実体経済をより強くしていくのか、という季節に入っている。なかなか時間は掛かっている。だからと言って、金融の手もここまで打ってくると、もっとマイナス金利を増やす、量的緩和をやるといったところで、その効果は三年前と比べて桁違いに少なくなっている。財政(健全化)の今後を考えれば、これだけ補正予算をやっており、十分だと思う。むしろやるべきは、(規制)緩和や雇用の流動性も含め、いかに(民間企業の)新陳代謝をしやすくしていくかである。これをやらない限り、いつまで経っても産業構造も含め、変わらない。ここは我慢してでも、そういうことをやる時期にきている。これはほとんど民間の問題で、民間が自分自身の活力を上げてリスクに賭けるかという心意気があるかどうかだ。変に安全の方向に行っているのであれば、財政であろうが金融であろうが、どんなことをしたっておおよそ効果がない。副作用の方がよほど重くなって、治癒しかねるほどの重病になってしまう気がする。どんなに辛かろうが、誤った注射はしない方が良い。

Q: 民間の活力というとIoTやロボットがあり、それは日本の底力だと思うが、年度末を控え、来年の消費税の引き上げを見据えると、時間的余裕がない。何か目に見える形で手を打つ、知恵を出す必要があるのではないか。

小林: 民間企業もある程度のお金は持っているため、研究開発や人的投資、従前の設備投資でない何らかの投資など、いくらでもそれぞれ(の企業)が知恵を持っているのではないか。今、問われるべきは、こちら(民間企業)である。中小企業、大企業も含めて、他力本願ではなく、自立した日本企業の経営者(でなければならない)。どうすればいいのかというのは、極めてメンタル、質の問題である。量の季節は終わっている。

Q: 安倍晋三首相の周辺からも、来年度の消費増税を先送りすべきとの話が出ている。やはり景気が悪くなった場合に、消費増税の先送りという選択肢はあり得るだろうか。

小林: 最後は政治が決めることだと思う。ヨーロッパでは、所得税、消費税、法人税は、かなりフラットな、似たようなパーセント(税率)であり、みんながそれを納得している。相対的にみて日本の消費税率が明らかに低い。それでいて、(低い消費税率を)少し上げると、ものすごく過敏に反応して、消費が抑えられてしまう。こうした国民性を考えないと(いけないのではないか)。

 経済同友会では(歳出削減とあわせて)消費税率は少なくとも17%(に上げるべきと主張している)。場合によっては20%程度に上げていかないと、財政の健全化に対して、今後、次の世代以降に、大いなる負荷をかけてしまう。しかし、(消費税率)5%から8%、8%から10%への議論を見ていると、過敏に反応してしまう。これについてもう少し議論した方が良いのではないか。それをあまりにも無視して、ただ上げるというわけにもいかない気がする。

 気が付いてみると、日本政府の借財が非常に大きく、かなり法人税率が高い。団体(法人)に対して厳しいが、個々に対しては甘いのではないか。消費税や一部所得税など含めて。それが選挙と直結するかは別として、どうしても個人に甘い政治体制、国家といえるのではないか。ヨーロッパのような、まずは国が成り立たなければ個人も成り立たないという考えは、教育(の違い)なのか。アメリカも含め、そのようなものの考え方を比較的持っており、一定程度(の税金を)取られるのは当たり前で、それで国家が良くなれば、自分にフィードバックがある。全体として、将来に対して面倒をみてもらえれば良い、というふうに考えるのか。小さいころからの社会教育あるいは政治教育(の問題)なのか。受験勉強はよくやるため、算数などはよくできるが、国家論、歴史観や社会観なども含め、自己責任というものをもう少し考える、そのような教育も必要ではないか。そう単純なことではなく、消費税を題材にして始めた民族論、文化論か比較文化論かもしれないが、根の深い部分があり、日本で消費税率を上げていくのは難しいと最近感じている。(国民に増税の必要性をよく理解させないまま)無理やり消費税率を上げて(経済が)縮小すると、全体がダメになることもあるので、そこの微妙なバランスを見て政治に(判断)していただきたい。一方で1,000兆円の借財を持っているため、解を見つけるのは難しいと思う。

 8%から10%への引き上げが有るか無いかについて、今は何とも言えない。

Q: 企業に対する税制について質問したい。いわゆる政策減税が、昨年度については1兆2,000億円に上ったことが朝日新聞社の調べで分かった。民主党政権時代の2倍に膨れ上がっており、しかもその恩恵の6割が資本金100億円超の大企業だった。一方、法人実効税率も20%台に下げることも決まった。安倍政権からは、大企業に対する減税が大きい割に賃上げに結び付いていないという指摘もあるが、税制のバランスについて見解を伺いたい。

小林: 経済同友会はこれまで、租税特別(措置法を含む法人関係の各種税制優遇について)、一部バイアスのかかった(政策効果が)不透明の部分は止めて(縮小・廃止して)いこうと主張している。法人税率を下げるのに対応して、どういう税制にすべきかについてはいろいろな議論がある。政策減税だけに議論を収束させると、研究開発税制(による減税)が比率的には高い。今から日本が本当に強い成長を手に入れるためには、単純な設備投資というよりは、研究開発と人的投資にお金をつぎ込んで、リスクに賭けていかなければいけない。研究開発税制というのは租特、政策減税的なものではなく、例えば30%、25%減など本則に入れ(恒久化す)るべきものであって、そもそも政策減税的な分類の中にある方がおかしいと主張している。先ほども1兆2,000億円(の政策減税と質問にあったが)、大企業だけでなく、中小(企業)にもいろいろな減税策、(法人税率を)15%にするなどの特例が結構ある。租特、政策減税が増えた、法人税率も下がっているじゃないか(という指摘もあるが)、外形(標準課税)もあるし、繰延税金資産等々も含めると、一部、増税になっている会社がかなりある。これ(政策減税額)だけ2倍になっているというのは誤解を招くので、全体の税体系、特に法人に関する部分をもう少し整理して議論すべきだ。

Q: 年明け以降、金融市場が不安定になっているが、この春闘はどうあるべきか。与える影響についてどう考えるか。

小林: 基本的には、各企業それぞれ(賃金の)計算方法がある。ほぼ3四半期が終わって、みな成績がよい。最後の四半期がどうなるかというのは、業種によってもフォーキャストが違うが、四分の三が終わっている。来期のこともあるが、普通は2015年度のパフォーマンスをベースにして夏のボーナスなりベースアップを決めていくので、今回のことで大幅に変わるとは思わない。気分の問題だけだろう。

Q: 先日、高市早苗総務大臣が国会において、政治的中立ではない放送をしたテレビ局については、電波を停止する可能性があるという内容の発言をしたが、一部には報道の自由を侵害するのではないかという批判もある。これについての見解を伺いたい。

小林: 表現の自由を守るというのは、世界の常識である。放送法第1条に明確に謳っているわけで、そういった個々の放送会社がしっかりと自主規制をし、自己規律を持ってやる、その自由というのは大いにしっかりと認めるべきだと思う。かつてもそうだったし、今後もその流れでやっていただきたいということに尽きる。表現の自由は人間にとって極めて重要なポイントだし、放送会社、メディア全体、あるいはわれわれ(一般人)であっても、言論に対して束縛なり恫喝を受ける(ことがない)というのは、人間の生きる基本であり、憲法でも保障されているわけで、(言論の自由は)極めて重要なポイントだと思う。

Q: 横尾専務理事に、昨今、ジェットコースターのような株式の流れだが、一言いただきたい。

横尾: ジェットコースターかどうかは人によって見方は違うかもしれないが、株式市場(の変動)そのものは、日本の場合は、特に外的要因、各国の状況もあり、日本だけの要因ではない。やはり株式市場のプレーヤー、実際に売買を行っている方々の7割から7割5分が外国人である。日本の株式市場の特徴だが、個人の株主部分が3割で、欧米に比べ逆の比率だ。個人が持っているほうが比較的値動きが小さく、外国人が主力のマーケットで、電子取引や高速取引が、そのうちの6割を占めているので、どうしても値動きが偏っていく。アルゴリズム等々、大体がみな同じようなシステムを使っているので、同じように設計すれば同じように傾いてしまうということもあり、何とも評価しにくい。外的要因も含めた要素が出てくると、ただでさえ動きやすいマーケットになっている。アナリストの中にもそういうことを言う方もいるが、規制外(にいる人)、ヘッジファンドをはじめとした金融の世界で、お金の量が捉えにくい人たちもやっているので、どうしても振れやすい状況になっている。証券界にいた身からすると、あるいは証券取引所の幹部の方々とマーケットが荒れたときにこうした議論をしてきたが、そういう要素が大きいという気がする。足元はばたばたしてきたが、しばらく様子をみないと分からない、というのが実態だ。リーマン・ショックの時もそうだが、株価は、天まで昇って雲の上まであがることもないし、地面を突き破って地獄まで行くこともない。別の意味で個人的に株価が下がって地獄を見る人もいるかもしれないが、そういうこともあるのが株価だ。

Q: マイナス金利について、現在の金融機関の貸し出し態度について企業側からどう見ているか、どういう変化が期待できるか。

小林: 具体的には、もう少し動いてみないと何とも(言えない)。貸し出しの態度というか、どこに投資していいのかアイテムが潤沢ではないのは一般論として事実なのだが、大企業が大きな勝負をするのに貸す場合と、中小(企業)に対してどういう形の貸し方をするかによっても違う。マイナス金利になったから即、大きく態度が変わるかどうかも含めて、まだ決定的なことは言えない段階だと思う。

Q: ヨーロッパのECB、スイスなどではマイナス金利が導入されそれほど奇策ではないとの発言はあったが、日本の金融機関は少し準備不足ではないかという気はするが。

小林: それはまさにそうだ。それで先ほど怨嗟の声が聞こえると述べたが、仕方のないことでもある。日銀はそういう方法を選んで、一つの手を打ったということだと思う。それ(マイナス金利)が日本経済全体にとってどうなるか(を予測すること)は、なかなか難しい。銀行にとっても当座は変曲点でいろいろな苦労があるかもしれないが、結果として、また日本経済が救われれば、それは銀行にも良い方向でフィードバックがかかるという見方を現状ではするしかないと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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