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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2016年2月2日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭に小林喜光代表幹事より、直近の所感を述べた後、記者の質問に答える形で、(1)甘利明氏の閣僚辞任によるアベノミクスへの影響、(2)日本銀行によるマイナス金利付き量的・質的金融緩和、(3)設備投資と賃上げ、(4)同一労働・同一賃金、(5)TPPへの期待、(6)震災復興、(7)政治献金、などについて発言があった。

小林喜光代表幹事によるコメント

ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に参加して、先週の月曜日から通常業務に戻った。ダボス会議は一言でいえば、第四次産業革命(がテーマ)だった。クラウス・シュワブ氏は、非常に短期間で時代がものすごく変革する中で、必ずしもテクノロジーが変わるだけでなく、テクノロジーをベースにして社会全体のシステム、構造、格差といったいろいろな問題も良いにつけ悪いにつけ変革する(と述べていた)。それに対して経営もアカデミアも政治も相当な対応をしていかなければならないというのが最大のテーマで、『The Fourth Industrial Revolution』という本もまとめているが、それ(本の内容)がトピックスだったかと思う。世界中が今、ある層の人々がそれらのことに対して、いかに競争優位性を持っていくかを、国全体でとらえているところもあり、産業界は成長戦略と絡ませて、いかに勝ち抜いていくか(という議論)を目の当たりにしたことが一つのポイントだった。欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が3月の(追加)緩和を示唆したことで日本では1,000円ほど日経平均株価が上がり、中国(経済)のシュリンクも話題になり、原油価格も(1バレル)30ドルを切ったが、大方、みんな慌てていなかったのが最も印象的だった。「いろいろあるさ」というような(捉え方だと)受け取っている。それだけ世の中のいろいろなことがあまりに変化しているので、一つひとつを捕まえてあまりショートタームで議論しても、結果がすぐ変わってしまうこともあるのかもしれない。経営に関するセッションで、ショートターミズムとロングターミズム、クォーター(四半期)ごとに決算してROEが重要という人と、長期戦略でやるべきだという人が(同じ)CEO同士で議論されていたのは面白かった。

 甘利氏について一言申し上げておく。2013年1月9日だったと思うが、(第二次)安倍政権で最初の経済財政諮問会議があって、その時にちょうど甘利氏がスタートを切られて、僕の右には東芝の佐々木則夫氏、東京大学大学院経済学研究科教授の伊藤元重氏、日本総合研究所理事長の高橋進氏が座っていた。ちょうど3年が経って、ある意味感慨深い。甘利氏はよく頑張られたというのが率直な感想だ。

Q: 甘利氏の辞任の問題について、アベノミクスの司令塔・TPPの交渉役だっただけに、アベノミクスそのものへの影響もあるのではないかと勘繰る向きもある。「政治とカネ」という形で辞任したことに対する率直な受け止めと、石原新大臣に対する期待があれば伺いたい。

小林: 甘利氏が継続されたとしても、アベノミクスは当然修正していくだろうし、状況によって変わってくるというのは当たり前のことである。TPPも含め、今後詰めていけばどうみても結果はポジティブになっていくというところで、ご本人は無念だとは思う。しかし、100人に余るチームで戦ってきているわけで、甘利氏がおられないとしても大きな変更があるとは思えない。あくまで安倍首相の下でのレジームであり、選ばれた石原新大臣も(それを)継承するという表明もされている。当然、今までの延長線上での変更はあるだろうと思うが、大きな変化はないと思う。

Q: 甘利氏の動きに呼応したのかは分からないが、日銀は先週末、金融緩和を継続した上でのマイナス金利の導入を決めた。年明け以降の世界経済の混乱が日本に影響することを回避するのが狙いとのことで、その後、円安・株価の持ち直しの動きも出ている。追加緩和という形ではなさそうだが、こうした日銀の姿勢・対応についてどう評価するか伺いたい。

小林: 世界では、アメリカは金利を上げて出口を模索している段階であり、ヨーロッパは相変わらず、もちろんECBが金利を下げるという技を持ちながら、また3月に何らかの緩和をやるとドラギ総裁が言っているようだ。日本は、デフレが長期化する中、何らかの手を打たなければならないということで、3年前の4月に大きな、ドラスティックな量的な緩和(量的・質的金融緩和の導入)をやった。質的な緩和も一部昨年やって、最後は、今まで経験したことのない、三次元的に捉えた量と質と金利(マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入)だ、と。そう意味で一つの軸を増やして、今後の対策の自由度を高め、なおかつマイナス0.1%というあたりで、三段階に分けて様子を見始めた中、少なくとも2~3日の間の反応は、円安へ相当急激に動いて、株価も一定程度上がった。今日あたりはだいぶ安定してきている。今後どうなるかは分からないが、やはり金融系の手が打てるところで時間を稼いでもらっている間に、われわれ産業界が本当の意味の成長戦略をいかに早く、結実するような手を打っていくべきか。そういう時期だという捉え方をしている。

Q: 経路は巡り巡ってだと思うが、企業心理の改善や企業の賃上げ、設備投資への前向きな姿勢を、日本銀行としては望んでいるようである。マイナス金利が直接的に賃金交渉に、労働側でいうプラスに働く、経営側でいうベアを上向きにする、ベアへの慎重さを少し和らげるなど、そのあたりの賃上げへの波及効果をどう捉えるか。

小林: 黒田東彦日本銀行総裁も言われているように、リスクへの先手を打ったというのが正しいのではないかと思う。あのままいくと、うっかりすると株価も16,000円台半ば、下手をすると15,000円台になるのではないかという勢いで迫っていた。円(相場)も(1ドル)115円近くまでいく、そのあたりがクリティカルで何らかの手を打つだろう、と言われていた。そういう意味で、底なし的な不安感というのを払しょくする意味では、相当意味があったとは思う。それによる賃上げあるいは設備投資というのは、まだ(マイナス金利が導入されて)数日であるからにわかには言えない。積算したサード・クォーターもそんなに結果は悪くない。(マイナス金利の影響で賃上げ・設備投資を)すぐするとか、しないとかという判断を経営がするとは思えないので、もう少し様子を見ないと何ともそのあたりははっきりとは言えないと思う。設備投資とて、中国は鉄が3~4割のオーバーサプライ、化学でも繊維原料などのコモディティ系では3~4割のオーバーサプライで、輸出に方向を変えている中で、そういった分野、あるいは石油精製において、原油価格が下がった形で、帳簿上、かなりのマイナスができている。原油価格が下がったことによる大きな影響や中国の影響などは、業種によって相当違うのではないかと思う。常にそうだが、一律に上がる、あるいは全体が上がるということはむしろあまり期待できない。ただ今回の新日鉄住金が日新製鋼を(完全)子会社化するという流れを見ても、オーバーサプライやグローバルな戦いの中で、日本の産業が相当変革をしなければならない。石油精製も石油化学、他の産業も機械、電機、デジタル系の電機を含め、今年は相当動くという感じはする。

Q: 先々週、安倍晋三首相が施政方針演説で、「同一労働・同一賃金」の実現を目指すと表明したが、いろいろな捉え方があると思う。日本の労働市場に対する代表幹事の考えも踏まえ、同一労働・同一賃金の考え方をどのように捉えているか、あるいは、政府の施政方針演説についてどのような意見をお持ちか。

小林: 同一労働・同一賃金は、考えてみれば当たり前のことで、人間が働いて、同じ質と量を提供すれば、その見返りとしての賃金が同一と言うことは、当たり前のことである。しかし、何を持って同一とするかが難しい。いわゆる雇用形態によって(賃金が)違う中で、あるいは、特に日本の文化の中で、とにかく終身雇用で入ってもらって、何のジョブ・ディスクリプションもない中で、いったい何をもって同一と測るのか。雇用形態がそもそもどのようになっているのかをきちんと解析して、評価する手法を確立することが先なのかなと。言葉としての同一労働・同一賃金は、はっきり言ってそうあるべきだし当たり前のことだと思う。しかし、今の日本の雇用体系、雇用政策の中で、それを実のあるものとするためには、いろいろな定義から評価方法も含めて、議論すべき時が来た、ということをみんなが認識したということが、非常な進歩ではないか。日本の文化にかかわることなので、経営者も相当本気で考えていかなければならない。方向としては大賛成である。同一労働・同一賃金をやることにより、みんなが活性化し、社会がフェアになるためには、経営者としても、どのように関与していくか。経営者として考えることは、当然の責務だと思う。

Q: 同一労働の同一と言うのを、質で見るのか時間で見るのか。

小林: 基本的には先程のジョブ・ディスクリプションとなると、最終的な理想形としては時間ではなく質で見るべきである。ものすごく単純労働の場合は、質というか、やはりやった量だと思う。時間は当然、長時間労働という意味で、一方では規制すべきことである。

Q: 明後日、TPP署名式がニュージーランドであるが、これで発効に向けて一歩前進となる。あらためて、受け止めと日本経済に対する影響について伺いたい。

小林: TPPは非常に大きな成果だと思う。今振り返ると、安倍政権が発足してすぐ、2013年2月に(首相が)アメリカに行かれた。あの当時の世論はたしか、「安倍首相はTPP加盟を宣言したり、話してくるのかどうか」というのが一般的な意見だった。あれ以来、急速に(話が進み)、12カ国目ということで遅まきながら交渉に参加した。ここまでのチームプレーと同時に、甘利氏の強いリーダーシップとフロマン米通商代表との劇的なネゴシエーションで、ここまでもってこられた。ある意味では短期間でよくぞここまで12カ国をまとめたというのが一つの印象だ。

日本は資源もなく、今までは人が加工して生きてきた国。今後農業も含め、マーケットは縮小するとはいえ、拡大をガンガンするとは考えられない日本の場合は、アジアの同胞、パンパシフィックで、世界でモノのやり取りをしてマーケットを広げるのが一般論からしてもよい方向だと思う。特に工業関係、製造業的な部分、第二次産業、第三次産業も含め相当期待できる。政府の予測でも10~15兆円(の経済効果があり)、2025年、2030年に向けて期待できる。農業とて、より効率化して、小さいところで一人ひとりが小さいものを作るというより、大きな集約した形を模索できるだろう。また、日本の芸術品に近い農産物を、オランダ、イスラエルのように産業化することへの加速にもつながる。はっきり言ってTPPは日本にとって死活問題であるととらえている。

Q: 工業分野では、自動車の関税撤廃が20~30年後など、業界でみるとなかなか動きが進まない。特定の業界や、動きに期待を寄せているなど、具体的なイメージはお持ちか。

小林: 自動車の場合は、部品関係が原産地的な見方を広く捉えるようになっている。単なる関税だけではなく、ソフトウェアや知的財産なり、各国が同じ土俵で非関税的な部分の障壁を同等にすることが、今後の貿易を進める上では大きな意味がある。関税についても、時間の制限は、もちろん米を含め農産物は特殊に縛っているし、他は基本的には時間の差はあっても2025年のオーダーになればほとんどが撤廃になる。特にここはというのは(無い)。化学産業は最初から関税は低いし、それによって商売のハンディキャップがあった部分は少ない。むしろ、こちらから輸出するなり、特に知的財産をうまくトランスファーするという意味では、TPPは非常にクリティカルである。

Q: 部品の話が出たが、一昨日、トヨタ自動車では愛知製鋼の部品が欠品し、サプライチェーンに非常に大きな影響があった。一つの部品メーカーで供給が止まると完成品ができなくなってしまうという状況がある。過去に中越地震の時もあったが、日本産業の脆弱さについてどう思われるか。

小林: 中越地震もそうであるし、3.11(東日本大震災)でも相当に乱れた。サプライチェーン、いわゆるBCP(Business Continuity Planning; 事業継続計画)をものすごくみんな認識した。例えば、東日本でつくっていたものを西日本でもつくろうなど、相当、動きはあったが、やはりだんだんとコストの問題で同じようなものを二つの場所でつくるのは止めて集中し、またこうしたことが起こるとBCPが問題になる。繰り返しているような気がする。日本の脆弱性というより、各企業がどこまでコストを犠牲にしてBCPを準備するか、そういう問題だと思う。逆にいえば、準備をしなくて、トータルで1カ月止まったコストを考えても、そのサプライチェーンの予備をつくっていくことの方がコストが高いのであれば、(二つの場所で)つくらないという経済的な判断もあるのではないかと思う。

Q: マイナス金利で、銀行は資金があるので一部投機や空売りに力を入れるのではないかという指摘もある。設備投資の需要がなければ企業は銀行から借りないと思うが、これだけ緩和をして製造業を中心に貸し出す環境を整えていることに、果たして効果はあるのか。

小林: マネタリーベースでは350兆円も溜まって(いるが)、マネーストックはそれほど伸びていない。だぶついていることは事実である。使わなくて日銀の当座預金や現金が増えている。それが一つのプレッシャー効果にはなっている。次の手として、金利を下げることで(銀行に資金を)置いておいても意味がないので使うプレッシャーをかけている。そのアナウンスメント効果は非常に大きい。しかし、実体経済として、設備投資せよといっても中国が3割ものオーバーサプライの状況の中で鉄鋼が設備投資をするはずがない。そういったところに期待しているのではなく、株価を上げ、円安に誘導し、その間に企業がトランスフォームして、より付加価値の高い方に転換する時間を稼いでくれているという見方をしたい。では、すぐにそれで設備投資や賃上げ、とそれほど経営者は単純ではない。

Q: 時間を稼ぐという意味では、日銀は物価上昇2%の目標を下げた。時間をどのくらいみればよいか。

小林: 目標は下げないが時間を下げた。(当初からは)2年くらい下げている。(考え方は)二つあると思う。時間をずらして期待効果をずっともたせるか、油(原油価格)がこんなに下がってしまったから。生鮮食料品と油価はフラジャイル(不安定)でしょっちゅう上がったり下がったりするボラタイルな値段なので、それを除いた、いわゆるコアコアなら前年比1%近くに達している。途中でルールを変えるのもおかしな話だが、何が一番大切なのかということをもう少し議論し、いつまでも最初の定義にこだわるのももったいないかなという気がする。

Q: 3.11まであと1カ月で5年を迎える。復興状況、産業について出てきた問題に対して、経済界はどのように解決に向かっていくか。また、地方自治体の動きをどのように見ているか。

小林: (被災)三県と言っても、県によって相当状況は違う。(事故を起こした)原子力発電所を持っている福島では、東京電力の福島第一原子力発電所もだいぶ落ち着いてきて、(汚染)水の問題も解決してきているとはいえ、5年経った割には、廃炉のプロセスも1年以上遅れている。福島はいまだにほとんどリカバー(回復)していないと捉えるのが正しいのではないか。他(県)に関してもまだら模様だろうが、この5カ年で相当戻って(復興して)きている場所もあると思う。

経済同友会は、積算で20数億(円)を、特に(被災県の)高等専門学校、職業学校の生徒たちに(学習機材などの提供を通じて)援助するIPPO IPPO NIPPON(プロジェクト)という活動をやってきた。この5年を区切りに9月でクローズする。新たにどういう形で東北三県を中心にした地域と、地方創生・地方分権含め(た問題に向き合うか)、特に震災復興委員会が今(提言を)まとめている段階であり、あまり今日は詳しいことはいえないが、間違いなく、このまま終わったということではなく、地方活性化の一環としてどう捉えていくかというフェーズに入っている。

Q: それ(提言)は、3月11日前後で発表されるのか。

小林: そうだ。

Q: 甘利氏の件に関して、今回、法律の解釈とは別だが、献金の在り方が問われたのではないか。純粋にその人を応援するために献金をするか、見返りを求めるかというのは、当事者の心の中でしかうかがい知れない、解釈が難しいところがある。献金とは何なのだろうか、というのが多くの国民が感じたことかと思う。「あるべき献金の姿」があるのか、あるとすればどのようなことか、代表幹事のお考えを伺いたい。

小林: 1994年に(政治資金規正法の改正とあわせて)政党助成法ができ、企業献金そのものに対する考え方ははっきりしている。理想的には、投票権をもっている個人ベースで、個々の応援者に対してサポートするというのは自然の成り行きだ。政治献金そのものについて(どうあるべきかを)、今、私がスパッと答えるのは難しい。申し上げたいのは、その辺こそ与野党含め議論し直す時ではないか。甘利氏がああいう形になった原因として、政治家として取り巻く環境に対して、一部、深く考えなかったというか、応援者を受け入れないとなかなか選挙というものはうまくいかないとおっしゃっていた。社会風土も含めた形で変えていくには、相当リジッド(厳格)な法律、リジッドな取り決めをしないとグレーゾーンがどんどん広がってしまう。今回に限らず、安倍政権になってもう(閣僚辞任は)四人目になる。ルールをしっかりして、最終的な罰則を明確にしておけばこんなことは(起こらないのではないか)。むしろ政治家そのものが犠牲者ということもある。もう一度しっかり議論したほうが良いのではないか。政治家が安心して仕事ができる仕掛けはどうなのか、という視点で見るべきだと思う。

Q: 日銀のマイナス金利に関連し、今週に入って債券マーケットで国債が買われている。長期金利は0.05%と、金利の動向が見たことのない景色になっている。株・為替を見ると居心地の良い数字に戻ってきた気がするが、金利の動向はどう見ているか。

小林: 定期預金と普通預金の金利の差がなくなってしまうなど、それは、様子をみないと。麻生太郎財務大臣も述べているように、金融機関をモニターしながらエビデンスを重ねていかないと、初めての経験であるから。そうは言っても、デンマーク、スウェーデン、スイスは経験があり、ECBもやっていることなので、その辺りの情報もより精緻に解析しながら、全体最適をはかる覚悟でいらっしゃると思う。

以上


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