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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年12月15日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)軽減税率、(2)米国の利上げ、(3)ASEAN経済共同体(AEC)、(4)消費者物価指数(CPI)2%上昇達成の阻害要因、(5)今年の漢字などについて発言があった。

Q: 消費税の軽減税率について、先週末、与党は適用対象を加工食品まで拡大し、軽減額を1兆円規模とすることで決着したが、その財源については先送りされた。自民党内部からは「同時並行に協議すべきだったのではないか」との批判の声も上がったが、対象の拡大と財源の先送りについての受け止めを伺いたい。

小林:  われわれは常に同じ主張をしてきた。当然、経済成長と人々の生活の質の向上(Well-being)と(を目指すが)、そうはいっても今の世代だけが良ければいいというのはいかがなものか。これだけ財政が、1,000兆円も超えた借金を持っている国家として、2020年度までにプライマリーバランス(PB:基礎的財政収支)の赤字を少なくとも解消しようという(目標の)中で、両方、財政再建もしっかりと(進めることを)、忘れては困るというのがわれわれの主張である。今回、基本的には消費税率を2017年4月から上げることをベースに考えて、社会保障と税の一体改革を望んでいたが、結果として、政策議論というより政局が重んじられている。まず、一部のアイテムについて軽減をして、最終的には、どこからお金を出すかという議論が先送りされたことは決して良いこととは思わない。これも政治のいろいろな思惑があってのことではあると思う。相変わらずのことという印象である。

Q: 経済同友会でも、財政健全化に向けて歳入改革と歳出削減、両方に取り組むべきだと主張しており、特に社会保障改革を重視してきたかと思うが、歳出削減について、政府には一向に目に見える動きがない。このことについて、どのように考えているか。

小林:  消費税に関して、昨年度に発表した提言『財政再建は待ったなし~次世代にツケを残すな~』(2024年度までに消費税率17%、社会保障費増は毎年5,000億円に抑制等を求めているもの)がある。(消費税率は)17%でも足りない(かもしれず)、20%くらいの消費税率にならないと、なかなかPB(の黒字化)どころか、(債務残高)全体を下げる計算にまったくならないという結果になる(可能性もある)。出ずるを制して、入るをよりプロモートしていく。景気が浮揚して、税収が増えるという方向だけに期待しているのは、やはりバランスが欠けている政策のようには思う。

Q: 政府が今夏に行った試算でも、2020年度のPB黒字化には名目成長率が3.3%であってもまだ6.2兆円足りない。2020年度のPB黒字化について、どのように見ているか。

小林:  当然、それと連動して600兆円(のGDP目標)があるわけで、名目(成長率)は、計算上3.5%くらい必要だろう。本当はCPIが2%だとしたら、実質(成長率)も1.5~2%くらいを十分に期待しないとできない。現状、今の実力は、確かにデフレから脱却をしつつあるが、まだ完全に確信が得られる段階ではない。そのような非常に微妙な段階に差し掛かっていて、7-9月期のGDPの2次速報でぎりぎり実質(成長率)が1%くらいである。この先、安定的にCPIが1%くらいだとしたら、実質成長率が2.5%、名目成長率を3.5%くらいに持っていくには、まだまだかなりの非連続な努力、非連続なことをやらなければいけない。
 設備投資や賃金アップは、非常に重要なファクターではあるが、それだけではとてもまだまだである。好循環ができたところに、全体を底上げするような成長戦略というか、イノベーションというか、ここがまだ目の中に入っていない段階である。先ほどの(質問で触れられた)実質2%超、名目3%超をベースにした内閣府の試算でも、かなりの出ずるを制してもマイナス6兆円ということで、決して易しいことではないというのが、われわれの認識である。もっと規制緩和と同時に出ずるを制することをやらないと、もともと、(内閣府が)この6月に出した財政のまとめとして、そもそも、毎年の社会保障費の自然増を5,000億円に留めることでさえかなり難しい。
 (2018年度の中間)目標として、PBをGDPの約1%のマイナスに留めるということは、(GDPが)500兆円だとして、その1%、2018年度にはマイナス5兆円くらいにしないといけないわけである。それを行うとちょうど2020年度にPBがゼロになるカーブが描ける。今の使い方(歳出)ではマイナス6兆円(さえ難しい)。算数としては、相当無理があるというのは相変わらずの状況だと思う。

Q: 今週、FRB(米連邦準備制度理事会)がFOMC(米連邦公開市場委員会)を開く予定で、そこでの利上げが確実視されている。米国経済は好調だが、仮に利上げするに至った場合の新興国経済への影響、ひいては日本経済への影響についての見解を伺いたい。

小林:  現在の株価にもFOMCの(利上げされる見込みの)金利がすでに織り込まれているか不明確であるが、おそらくやるのだろうと(ということが)一部織り込まれていると思う。昨日ドバイ原油のスポット価格は1バレル33ドルまで下がったが、今日は36ドルまで戻した。ニューヨーク市場はそこそこ値上がりを続けているが、日本の場合、日経平均があっという間に18,700円くらいに下がって、昨日は(一時)600円くらい下がり、だいぶリスクオフというか、様子見をしているのだろうという印象だ。実態として、(利上げを)スタートするということは、将来に向かって非常によい方向だと思う。
 ブラジルや中国、東南アジア諸国などのエマージング・カントリーにとっては、個々の国によっても事情は異なってくるとは思うが、そもそも資金が逃げていってしまうという懸念がある。特に産油国や資源国がこの苦しい中で、ますます強く(利上げの影響も)効いてくるのではないか。マーケットもそこに非常に大きな懸念を抱いていると思う。そうはいっても0.25%程度であれば、そろそろそちら(利上げ)の方向に持っていかないと、ずるずるとまったく逃げ場なしの状況が続いてしまう。ここが勝負時だと思う。いずれにしても、良かろうが悪かろうが、一度やらなければいけない。いわゆるエマージング・カントリーにはいろいろな手を打って頑張ってもらいたいとしかいいようがない。
 為替も、ここ直近だと原油価格の影響もあったのか円高に振れたが、長期的に見れば125~130円をうかがう方向だろう。原油も安く、為替もかなりステイブル(安定的)な中、日本の経済は、他の国と比べれば今後、まだポテンシャル(潜在力)はある。GDPで見る限り、米国も3%台(の成長)に戻し、ヨーロッパが意外に安定している。ギリシャは相変わらずだが、スペインは相当戻ってきている。うっかりすると、日本よりも高い成長をしている。この辺りを含めて、先行きは非常に難しいが、FRBの利上げは大いに歓迎、と申し上げたい。

Q: 悲観的ではなく、注視している、という理解でよいか。

小林:  その通りだ。もともと利上げをしなくても、むしろ原油価格が下がり、中国(の経済成長)が少なくともシュリンクしている。もちろんサービスやIT分野などにおいて急速に経済構造が変わってきているとはいえ、まだ50%近くを製造業が占めている中、明らかに「李克強指数」的なものは下がってきている。日本では「爆買い」の影響が大きく報じられているが、モノに対する「爆食い」がかなり落ち着き、結果原油は安くなり、銅などの非鉄金属はきわめて価格が下がって、それが今、資源国経済を痛めているという構図だ。米国の利上げもさることながら、むしろ、原油なり資源の方向とモノをベースとした中国経済、こちらの方が大きなファクターではないかと思う。国営の大手企業を整理・統合するといった計画もあるようだが、それが現実になるにはまだ時間がかかるのではないかと思っている。

Q: 軽減税率の線引きについて外食は対象外、持ち帰り食品は対象となる。また、新聞も軽減税率の対象として検討されている。これらについて伺いたい。

小林:  インボイス(の導入)や益税(問題の解決策)に関して、これまで経済同友会は主張してきたが、これ(軽減税率自体)は政治で決まったことであるから、今さらそれについて繰り返しても仕方がない。現実に具体的なアクションとして何が混乱を招かないかという視点で言えば、外食については非常に高い料亭のようなところも含めるという部分も結構議論になったと聞いている。それのみならず、外食は今までの感覚でいうと贅沢だったかもしれないが、80歳を超えた老人などを含む一人住まいの人などの外食がカウントされていない(軽減されない)というのは、何となくすっきりしない部分がある。形としては、テイクアウト以外はそこに(店内)に座って食べるというのは外食に入って、持って帰るのであれば(外食に)入らないというのであれば、それほど混乱しないで区別できるのではないかとは思う。
 (新聞については、)ヨーロッパではかなりの部分、知識というか基本的・デイリーな情報ということに対しての思いがあって、(軽減税率を)やってきたのだろう。反対ということを言うよりは、そのくらいメディアというのは大切だということだろう。

Q: ASEAN経済共同体(AEC)が今年末にも発足する予定である。欧州連合ほど固い地域連合ではないだろうが何か期待することがあれば伺いたい。

小林:  中国もさることながらASEANは日本から見ると距離的に近い。経済学者は「経済のインパクトは距離に逆比例する(距離が短いほどインパクトが大きい)」と述べている。ヨーロッパが中国との経済的な関係をプロモートしようが、これだけ距離が近い日本というのは観光も含め、非常に大きなインパクトがあった。距離の近いASEANが、人口もトータルすると6億の民を持った(経済圏として)一つの領域に統合していく方向が今回できたというのは、非常に喜ばしいことだと思う。TPPも一定程度方向が固まり、批准を待っているところとはいえ、少なくとも方向性は明確に皆で賛同できている。
 ここにASEAN(経済共同体)ができて、RCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership:東アジア地域包括的経済連携)やFTAAP(Free Trade Area of the Asia-Pacific:アジア太平洋自由貿易圏)などそういう方向のメガFTAという方向に持っていく第一歩である。今年の暮れに発足されるというのは大いに結構である。
 そもそもTPPと掛け持ちしている国が4カ国ある。そういったところにまた活躍してもらえればもっと大きくなっていくのではないか。

Q: 石油価格が下がり、為替も安定していて、日本の製造業にとっては良い環境だ。しかし、石油価格が下がることは、(CPI)2%目標の先送りにつながる。成長戦略についても石油価格が下がることは良いことだが、阻害要因をあらためて考えると、成長戦略を妨げるものとして、どのようなものがあるとお考えか。

小林:  そもそも、GDPの定義に関して、ちょっとした時間の違いと統計そのものの見方の違いで、マイナスからプラスに符号が変わる(というのはいかがなものか)。(2015年)7‐9月期のGDPが(1次速報値)マイナス0.8%から、(2次速報値)プラス1.0%になった。設備投資もサプライサイドでみるかデマンドサイドで見るかを含めて、マイナス1.3%が、プラス0.6%に変わっている。統計そのものが非常に振れている中での議論が、本当に的確なのか。そもそも正確な観察ができているのか。ここが一つのキーになる。またCPI2%(の目標)を定義したが、こんなに石油が下がった中で、そこ(CPI2%)にこだわっているのではなく、石油は特殊要因で下がったので、それ(石油)を除けば、CPIは1%くらい(の上昇率になるの)では。そこは、フレキシブルに見ないと。(CPIが)2%ではないから日銀が約束を破ったのではないかというのには、僕は与しない。例えば、(2020年ごろの目標である名目GDP)600兆円も(GDP算出基準を改定し、)研究開発費を来年から入れて、15兆円プラスにするといった、途中でゲームの基本が変わるようなことがあっても、それはフレキシブルに対応するべきだ。むしろエネルギー、石油を除いて(物価上昇率を算出し)、本当にデフレなのかどうかを議論した方が正しいのではないか。石油は極めて不連続な部分なので、今後反対に石油の値段が上昇した際も、そのインフレをどのように見るかという問題も残るが。現状では石油を除いたところも並行して見ながら、どうもって行くかと(いうことが大切だ)。その中で成長戦略にとって阻害要因になっているものは何かということは、僕はやっぱり、人々の心であり、経営者の心の岩盤がかなりのファクターだと思う。
 例えば、化学工業はものすごくたくさんのプロダクトを持っている。日本だと何万社もあるというのが事実だが、一方でアメリカでは、デュポンがダウと一緒になる。アクティビストに非常にプレッシャーを感じていて、まさに株主によって動かされる資本主義(である)。それの象徴的なものだと思うが、10兆円以上の会社があっという間に出来上がる。(企業は)シナジー効果、コストダウンができると、アナリスト、アクティビスト、株主から称賛される。そして株価が上がる。こうしたことができるのは、簡単に労働者を削減できるからだ。労働が流動的で、例えば(企業が合併等で)一緒になり、二つの会社が同じところ(事業)を持っていた場合に、すぐに解雇ができる。これはヨーロッパなどではできるが、日本では文化的にも難しい。そこで一部停滞している面もある。規制改革や人々の心の問題である。あるいは経営者のマインドセットが、「自分が少々飯が食えればよいだろう」(ということがあるのではないか)。とにかくグローバルに勝ち抜いていって、でっかいものを目指そうという機運より、小さい畑で俺の飯はうまいぞと言って、皆で村八分にならないでやっていく。これが続いているのではないか。ただ、このようなグローバルな戦いになってくると、そろそろ限界がくる。それは、鉄(鉄鋼メーカー)もメガバンクも(再編を)やってきた。他の産業ももう少しコンソリデーション(統合)というか、集約して、より効率を良くする作業をやらないと(いけない)。
 今のままで、ちょっと儲かったからといって古いもの・コモディティへの設備投資はあり得ない。新しい投資をするのであれば、イノベーティブな新しいテーマがないとやりようがない。そうすると更新投資あるいは修理がメインになっていく、というのでは明日がない。儲かった分を、すぐ還元しようといって給料を上げるでは、サステナブル、長期的な戦略ではないと思う。
 もっともぶっ壊すものを政治だけに依存するのではなくて、われわれ経営者も国民も、もっと自分の心をぶっ壊していかないと、グローバルに戦える国家にはならない気がする。

Q: 「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催)がまもなく発表になる。代表幹事にとっての今年の漢字は。

小林:  本当は「アイ」と言いたい。アイといっても、(「愛」という漢字ではなく)「AI(エーアイ:人工知能)」だが。
 あるとき、ネオンサインを見たら「AI(エーアイ)」と書いてあった。頭の中にAIと、IoTとロボティクスしかないので、面白い飲食店があるなと思ったら、隣で一緒に歩いていた人に「あれはAI(アイ)ですよ」と言われた。それで、わが人生はアイ(愛)を失って生きているなあと。これは冗談ですが。
 非常に気になっているのは、今回のCOP21でもTPPでも(例示できるように)、グローバリゼーションのなかで物事をテーブルについて決めるという、まさにデモクラシー(についてだ)。グローバルの中のデモクラシーが根付いてきているのではないか。イアン・ブレマー氏はG0(ゼロ)の時代といってリーダーのいない時代だと(指摘した)。あるいはG2、中国・アメリカかといったがどうもそうでもない。G20(が集まって)も、何も決めらないかもしれないけれども、(各国首脳が同じテーブル・)椅子についた。今回のCOP21では196カ国・地域がテーブルについて、何かを決めた。一定程度、自分自身はこうしますと(いうことをもって)集まった。島国等の水没しそうなところに対して1,000億ドル超出すことついても決まりつつある。これはやはり、すごく面白い。
 一方では、官民対話などに出席していると、民間と官、あるいは個と集合体の関係性が気になって仕方がない。「世界のなかの日本」という個と集合体、あるいはわれわれ経済団体は政府からみれば個であるが、それが政府などの集合体とどう関係性をもつか。
 (わたしの考える今年の漢字は)「個」だ。individual(個々の)、自分自身のidentity(独自性)はやはり、われわれ一人ひとりが持たないといけないのではないか。昨日(の会合で)はレゾンデートルという言葉を使ったが、自分の存在理由。なぜ生きているのか、なぜこの社会に存在し、自分は社会に対して何をしようとしているのか。一人ひとりがもっとしっかりしたものを持っていないと、全体として良い国にならないし、良い社会はつくれないだろう。「個よ、がんばれ」という意味で、個人の「個」(を挙げたい)。一般大衆的ではないので、(本日、発表イベントが行われる)京都で「個」はありえないだろうが、わたしは「個とはなんなのか」が非常に気になる。

Q: 日本の現状は個が確立しているという状況とは遠い気がするが、どう思われているか。

小林:  それこそが今、日本のもっとも弱いところだ。集合としてはそこそこ強い。戦前もベクトルとしては、ある方向性を見つけて皆が集合してやるという危険性を日本人は持っている。ヨーロッパ、イスラエルなどを見ていると、皆でまとまらずに一人ひとりが自分の意見もっている。それをやらないとグローバルには勝てないという認識を皆で持ち合わないと怖いという気がする。

Q: (米国の)利上げが今週だとすれば、イエレン議長は今までアラートをかなり発してきたうえでやることになる。一方で、もう少し新興国の準備ができてからでもよいのではないかという意見もある。時期についてどう思われるか。

小林:  遅きに失しているような気がする。慎重に慎重を重ねて、イエレン議長(が委員長を務めるFOMC)が評決をされるのだろう。今年の(もう少し)早めにやっておけば良かったのではという気もする。どちらにしろ(利上げを)するならば、ここまで熟して、アメリカ経済や失業(率)がだいぶ良くなった上で、満を持してやるという時期といえる。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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