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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年11月17日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭に小林喜光代表幹事より、直近の所感を述べた後、記者の質問に答える形で、(1)テロの影響、(2)GDPマイナス成長、(3)補正予算、(4)設備投資および賃上げ、(5)政治献金、(6)中国のオーバーサプライ、などについて発言があった。

小林喜光代表幹事によるコメント

最近のテロについて、かつてアラブ(諸国)・イスラエル戦争、二千年来の戦いがいまだに続いていて、一向に解決の目途が立たない。まして、今やヨーロッパ全土、アメリカも含めて、全世界に伝播してしまっている。このあたりが、最近の私にとっての一番の社会の変化の感想であり、どうしたものかと思う。

質疑応答

Q: フランス・パリで発生した同時多発テロに関連して、昨日、株価は大きく下落したが、本日、東京株式市場では買い戻しが起きている。ニューヨーク、香港、台湾の市場も上昇はしたが、今回のテロが発生したことで、マクロ経済的にはどのような懸念、影響があるとお考えか。

小林: 今、大きなコンサーン(懸念)があるとすれば、やはり中国がどれくらいで収まるかということである。地球儀全体に拡散したテロ、IS(イスラミック・ステート)、当然シリアをどうしていくかという問題と絡めて、かなり長期化するであろう(と思う)が、経済的に大きなインパクトがあるとはマーケットは思っていないということではないか。

Q: 7-9月期のGDPが2四半期連続のマイナス成長となった。実質で前期比0.2%減、年率換算だと0.8%減だが、これの受け止めと、見通し等を伺いたい。

小林: 1-3月期は在庫がかなり溜め込まれて、(年率換算でプラス)4.6%だった。その意味で、1-3月期は相当、在庫によって一見評価が高く見え、プラスに上振れして、4-6月期はそのあおりを受けて、マイナス(成長となった)。今期もプラスマイナスゼロあたりだろうという意味で、年率換算でマイナス0.8%というのはちょっと大きめかもしれないが、在庫が減ったことによるファクターも大きい。今回の2四半期連続マイナス(成長)は、大きなインパクトではないと思うし、中身を見ると、消費なり、実質賃金は上昇しており、住宅にも明らかな上昇がある。結果として、設備投資がなかなか喚起されていないというか、これが本当に中国の7、8月の大きなゆれによって少し慎重になったのかどうか。あるいは経営者のマインドが、だいぶ良くなったとはいえ、まだ最終判断、計画レベルから比べても、設備投資は明らかに遅々として進まない状況が今回の数値をもたらしたのだろう。しかし、10-12月期については、マーケットは(年率)プラス1.0%近辺の予想をしている。おそらく年度あるいはカレンダーイヤーを通して、最終的には、プラス1.0%に届くかは別にしてプラスのところに収まる。ここで慌てて、景気が後ずさりするとか、リセッション(景気後退)とかのレベルではまったくない。むしろ、ぬくぬくと、ゆっくりと時間をかけて温まっていくとの見方に変わりはないと思う。むしろ、問題は、長期的に見てOECD(が発表した日本)の潜在成長率が0.4%になっているところを上げていくにはどうしたら良いか。これが今の大きな課題である。資本の投下、あるいは労働参加、イノベーション。この三つのファクターを着実に上げていくというのが筋だと思うし、ここで大慌てして景気対策なり、財政出動なりで大きなお金を使う段階ではないと思う。以前から述べているように、一部、企業にボールは投げられている訳で、企業サイドから出来得る賃金に対してどう考えるか、あるいは新しい事業(をどう考えるか)。今回APECでも日本から中国を中心としたオーバーサプライの問題(が話題になると思う)が、特に従来型の産業で世界を苦しめている訳で、従来のものに投資するのではなく、新しいものなり、むしろ修理・安全・レジリエンス(強靭化)に関連したものに投資するか、もっとじっと耐えながら研究開発にどれだけ資源を投入するか。非常に直近で言えば、すぐ効果の出そうな観光的なものにいくとか、そういったものをきめ細かくやっていく段階ではなかろうかと思う。

Q: 本日、東芝が子会社の米ウエスチングハウス・エレクトリック(WH)の減損を事業ごとに発表した。東芝の言い分では、WH全体では減損の必要がなく、東芝の連結で見ても減損の必要がなかったというように見えるが、今回は事業ごとの減損を発表しているということで、東芝の情報開示のあり方をどのように見ているか。

小林: 経済同友会の会見なので、東芝の広報に聞いていただければと思う。いずれにしても、情報開示を含め、適時開示は当然やるべきである。今後ともそういう方向でやっていただければと思う。常にオープンにやるべきだと思う。

Q: 昨日、自由民主党の農林部会で米・牛・豚については、赤字が出たら補てんしてほしいと酪農農家から出た。ただ、すでに報道されている通り、かつて6兆円の農業対策予算をつぎ込んだが、あまり効果が出なかった。TPP協定が大筋合意され、今後、農業対策として特に補正予算をつぎ込んでいくことになるかと思うが、経済同友会は農業改革に関してかなり提言してきた立場として、これについてどのようにお考えか。

小林: まだ精査していない状況で、個別には申し上げることができない。しかし、基本的にはTPPをトリガーにして強い農業をどう構築するかという(ことだ)。単に弱い者を補完する、助けるというのはあり得ない。6兆円的な発想は、かつての結果に出ている。そういう意味では、いかに強い農業(にしていくかである)。TPPというのは結果として、通商上の自由を確保して、強い者が勝ち、弱い者が負けるというのが基本である。それは農業だけではなく、どんな産業もそうである。弱い者を助けることがまったくゼロという訳ではないにせよ、目線は強い者をいかにすれば強く、あるいは今まで普通の者をいかにして強く、TPPの締結の後、勝っていけるかというスコープでやってほしい。あまり個別の問題は答えられない。

Q: 臨時国会が開催されない公算が大きくなっている。それに加えて通常国会が1月4日に前倒しして開催されるのではないかと言われている。もし補正予算が組まれるのであれば、そういったスケジュールに影響を与えるということも考えられる。経済界としても、そのあたりのスケジュールに関心があるところではないかと思うが、国会の動きをどのように見ているか。

小林: G20やAPEC等の国際的な会議に首相が出席することは、国益にとって最も重要なことである。今までを見ると国会をかなりメインにやってきた流れが一応あったかもしれない。今回、そういう意味で安保法(案審議で)国会が延びたことが最大の原因かと思うが、こういう形で外との会議への出席を優先したのはやむを得ないということを考えれば、1月4日という大変に異例な日から始まることについて、特に異論はない。参議院選までを含めたいろいろな状況を踏まえて決めていかれることだと思う。

Q: GDPが昨日発表になり、甘利明経済再生担当大臣が会見で課題は企業の設備投資というようにポイントを絞って説明されていた。先ほど代表幹事は、従来のものに投資していくのではなく、新しいもの、修理・修繕、安全、研究開発等に投資していくべきだという考えを示したが、それを増やしていくためには何が課題という認識か。環境整備なのか、甘利大臣が述べるようにデフレマインドから脱していないことが原因なのか、見解を伺いたい。

小林: 事実関係として、内部留保が354兆円、現預金が185兆円という中で、これをもう少し精緻に解析しなければならないと思う。バランスシート上の利益剰余金というのは結局、海外のM&Aをやることによって有価証券が増えた。それを打ち消すために増えているということもある。それに2014年度中に11兆円の現預金も増えている。そういった中で、会社そのものは、大企業の場合はある程度、日本全体としても、リーマン・ショックから売り上げを含めて大きくなっている。大きくなると運転資金も増える。その中でどれだけ余ったのかということをもう少し精緻に解析して、賃金あるいは設備投資に実際にどれくらい回せるのか(を解析する必要がある。)世の中、いろいろ定性的におっしゃるが、もう少しそこを数値的に解析したい。お互い同じデータベースで議論しようというのが一つ。二つ目は、先ほど述べた投資と潜在成長率を上げるべく取り組む三つの重要なファクターの中で、イノベーションについては、十分に日本は大企業ベースではお金を使って、20年先、30年先に対して手を打っていると思う。R&Dに対して国の3倍~4倍のお金をつぎ込んでいるわけだから、明らかに国よりは民間の方がお金を使っている。今、議論しているのはあまりにもショート・サイテッド(近視眼的)である。そもそも2~3年で結果が出るというのは、ものすごく限られた領域、例えば観光などであり、これは大いにやれば結構である。カーボンファイバーや自動運転、あるいは特殊な材料など、どれも20~30年、事実として、それが産業になるにはかかる。確率も2割、3割あれば良い確率で、10個取り組んで1個成功すれば良いというのがイノベーション、研究開発である。今企業が元気がないとは思わない。明らかに経営者は、次の世代、次の社会のため、サステナブルな会社を作っていくために取り組んでいると思う。人的な部分の教育もある程度取り組んできている。やはり残念なのは、今までやってきたコモディティ系や一般的にある産業をただ大きくするというのは、本質的には日本ではもう出来ない。付加価値が高いわけでもないし、過当競争をますます誘発してお互いが駄目になるようなものに、お金が余ったからとつぎ込めるはずがない。自ずとつぎ込むのは人的なものか、いわゆる研究開発か、あるいはものすごく可能性のある新規事業(である)。しかし、先ほど述べたように、イノベーションというと打ち出の小槌のようにひと頃流行ったが、そのようなものは10年、20年のオーダーである。むしろdifferentiation、どう差異化して少し味を付けて売るかとか、消費者へ持っていくか、ということであれば、数年で出てくる。いかに頑張ってもなかなか良いもの、良い結果はそう簡単に出ないというところで経営側は苦しんでいる。しかし、そうはいっても長い間研究開発なり、人的資源に投入してきたものが、徐々には出てくるだろう。

アベノミクスが3本の矢を放って、1本目の矢、金融政策というのは明後日、3日もすればマーケットで結果が出る。(2本目の矢の)財政出動も数カ月から1年で出てくるだろう。しかし3本目の成長戦略というのは、早くて観光は見事に出たが、それでも二~三年はかかった。他の新しい開発は、5~10年かかるとしたら、もうひと我慢(が必要である)。

どこが最大のネックになるかだが、経営者のマインドとみんなおっしゃるが、そんなに冷えていないように感じる。なぜなら海外へのM&Aは何十兆円も行っている。国内への設備投資は精緻な数字ではないが60~70兆円で、かなりの部分は海外へ投資している。企業経営は少なくとも10年、20年のオーダーでものを考えて社長は動くのであるから、ここ1年よければいいなんていうレベルではない。

そんなに悲観することはないので少し忍耐である。あまり大慌てして景気対策して、それでどんどん借金がたまっていく。ある本に(よれば)GDPは“Gross Debt Product”と書いてあるが、借金して活性化しても仕方がない。

Q: 今月末に昨年分の政治資金収支報告書が公表される予定である。自由民主党が与党に復帰してから自由民主党に対する献金は増加傾向にある。あらためて経済同友会として、企業献金のあり方についての立場を聞かせていただきたい。

小林: もともと(個人献金を促進し、企業や団体からは)、しっかりとした政策集団に献金(政党から独立した政党シンクタンクへの寄附)をやっていくというのが経済同友会の基本的な考えである。今はそういった政策集団がある意味なくなってしまった。(企業献金は)個々の企業、個々の個人の考え方という(ことではあるが)、基本スタンスは相変わらず同じで、そのような形で今も進めている。

Q: 補正予算の関係で、今日の甘利大臣の会見で、景気刺激策になるようなものをやろうという発言があった。おそらく低所得者向け、消費を喚起するものであると思うが、今回補正でやることについて、どのように受け止めているか。

小林: 大企業は雇用全体の3割くらい、7割方は中小(企業に勤務している)。正規と非正規でいえば、非正規が4割という状況の中で、消費を喚起するという効果は、むしろ確かに低所得者層に回せば、それなりのバックはあるだろう、という意味合いで言われていると思う。それに対して特に反論はない。それもやり、大企業には、もうちょっとお金を使えというのも分からないわけではない。

Q: 政治家、特に官邸の設備投資や賃上げの要請は、短期的な成果や数字が欲しいからではないか。代表幹事は、設備投資はイノベーションという観点で長期的にみる必要であると述べられたが、短期的に上げられる目に見える成果といえば賃金しかないのではないか。いずれにしても、閣僚に理解してもらえるように説明しないと、すぐに結果を求められるきらいがある。こうした傾向を含め、どのようにお考えか。

小林: 常々思っていることだが、政治が短期的になるのは今の時代は仕方のないことである。選挙民に理解してもらう、あるいは選挙民から圧倒的な支持を得なければならない。そうなると、次の参院選、衆院選をターゲットにしながら、それなりのものを出していかなければならない。

安倍首相も世界を60カ国・地域以上飛び回っており、グローバルなセンスをお持ちだが、あくまで選挙民は日本人である。企業で言えば、単体損益、日本で儲けた分にしか興味がない。企業人は、今や半分くらいは外国人が投資家で、投資家の目をみて事業をやっているので、連結決算でよく、どこで稼いでもよい。本質的に拠って立つベースが違う。政治家がそうでないとは言わないが、企業人というのは、会社が30年で潰れては困る。50年、100年、200年企業を目指しながら、今儲けながら、次の手を打っていく必要がある。企業とは、そういう組織である。今さえよければいいという感覚ではいられない。

今や投資家もクォーター毎の決算高を見つつも、非財務面で将来、どのような知的財産を持ち、どのような会社のコンセプトを持って戦っていくのか、相当長期的に見ている。拠って立つベースが違うので、政治家が非常にショート・サイテッドであるのは仕方がない。それを補完するのが官民(対話)ではないか。質問にあったように、一番手っ取り早いのは給料を上げることである。それを先ほど申し上げたように、もう少し定量的に、例えば今日の日経新聞に出ていたように、売上高経常利益率は6.6と、リーマン・ショック前の水準くらいまでに回復した中で、内部留保というより現預金、あるいは運転資金も含めて、どれくらいがリーズナブルであるか、全体ではなく、個々の企業が考えながら、上げられるだけ上げるというのが一応まっとうなやり方だと思う。

Q: 賃金を支払う力について、過去2年、軒並み賃上げし過去最高益をつけたという状況と、中国経済がどうなるのかよく分からないこと、さらに今年、来年の動向を見たときに、直観として、または三菱ケミカルホールディングスを例にしてもらってもよいが、内部留保をどう使うかは別として、業績の見通しと、支払い得る力は去年より増しているのか、劣り始めているのか。

小林: まだ増している。(賃金計算については)フォーミュラ(式)がある。自社はホールディングスだから各事業会社はそれぞれに(計算している)。自社のような一つの会社でさえ、五つの事業会社があればそれぞれに任せている。事業会社のパフォーマンスによって、同じグループでも給料はみんな違い、フォーミュラがある。

一番悩ましいのは、ベースアップという形でやるのか一時金か。今とりあえずはいいが、将来はかなり危ないという事業体については、ベースアップを派手にやるわけにいかなければ一時金でやる。それを組み合わせることになる。業種によるから一般論では言えないが、自社の中でも快調に飛ばしているところと足を引っ張っているところもあるわけで、それに合わせてやるしかない。

Q: 全体として先行き不安が増していて、ベアというよりは一時金に逃げようかなという企業があるのか。

小林: 一時金であろうが、「これはボーナス」「これはベア」とお金に名前書いて渡すわけではない。消費喚起については同じ効果ではないか。

Q: 同じでないという人も結構いるが。

小林: 僕は同じだと思う。それよりも今は飽食の時代で、自分の家には洗濯機から冷蔵庫まで何でもあるなかで、少々給料が上がったからと言って本当に(モノを)買うのか。シェアリング・エコノミーというものがどんどん出てきて、マンションの空き部屋をシェアしたり、自動車も自家用車をほとんど使わない人がそれをシェアしたり、そういうのがアメリカでは当たり前になりつつある。リニアに給料が上がれば消費するのか。この辺をもうちょっと解析したほうがよいのではないか。

私は21世紀というのは(消費について考察すると)、高齢者は今までのパターンで使うのだろうが、若者に使ってもらうにはモノではないと思う。ネットなりゲームなり、ネットを介した満足度、人の効用、ハピネスになっている。単に重さのあるものだけで評価する評価軸、メトリックが正しいのかというところに議論が来ている。

Q: 賃金は重さだと思うが。

小林: 札(紙幣)はビットコインではない。(だが)お金には重さがない。だからFin Techということになる。時代が転換点にきている中で、いつまでもGDPだけで悩むのは正しいのか、実態を反映しているのか。一人ひとりの生きることに対するパッション、効用、幸せに根付いていないと変な方向に行ってしまう気がする。発展途上国はリニアだから良い。GDPが上がることはすなわち、みんなが冷蔵庫を買え、良い家に住めるという時代だからそれはそれで良い。サチっている(飽和している)中で何を人々は求めているのか。格差社会の中で、底辺にいる人と上の方にいる人とはまったく違う行動体系をしていて、政治はどこに照準を合わせるかという部分も必要だから非常に複雑だ。
解はないが、少なくとも経営者は当然、社員に給料をたくさん払いたい(と思っているし)、私自身も給料をもっともらいたかった時代もある。日本人(の社長)のマインドは、アメリカの社長たちの十分の一しか(報酬を)もらっていない(にも関わらず)、1億円を超えると大騒ぎして開示する。それに比較して普通の人がアメリカの十分の一の給料かというとそういうわけではない。そのあたりの最適化の作業、共有化する情報をもっと広げていくのはメディアの力だと思う。ぜひよろしくお願いしたい。

Q: G20で安倍首相が過剰生産の件について問題提起をされた。中国としてもなかなか簡単に軌道修正はできないと思うが、代表幹事は打開策についてどう考えるか。

小林: これについて私は5年来悩んでいる。とにかく2~3年前から中国は危ない、オーバーサプライだと。自社も、とあるプロダクトで大損を被っている。円安というのは向こう(海外)の赤字が大きく効いてくる。海外で儲けていれば大きく効くし、マイナスだとマイナスが大きく効いてくる。中国はまだそこまでやらないだろうと思っていたら、リーマン・ショックの後、60兆円も使って、鉄など誰でもできそうなコモディティ系にお金を使った。鉄は1億トンも(国)外に出している。鉄冷えの様相を呈しつつある。ケミカル(業界)も、コモディティ系はものにもよるが3~5割オーバーサプライである。共産党の大きな会社、シノペック(中国石油化工集団公司)という中国で一番大きい化学・石油精製の会社は、どんと製造して一挙に世界を制覇しようと思ったのだろうが、彼らも大赤字になっている。今、(中国共産党が策定した)第13次5カ年計画のなかで、いろいろと手は打たれているが、中国の大企業がオーバーサプライに対して本気で対応してくれなければ困る。しかし、まだ「あなたたち(日本)が中国に輸出するから困っている。輸出だけやめてくれ。自分たちは今まで輸出していない。中国の爆食の部分は自分たちでつくる」と。いまだに成長率がまだ7%あるのだから、そのくらい製造してもよいというメンタリティは変わっていない。(過剰生産の打開策は)そんなに簡単ではない。私もこの前、中国の化学系の協会であるCPCIF(中国石油化学工業協会)と日本化学工業協会とで会合をもったが、オーバーサプライを訴えると、われわれが作っている分は中国のマーケット(の需要)に対してまだ100%に達していないと言ってくる。

一言でいえば、余りそういうもの(コモディティ製品)は作らない、付加価値の高い、重さのないものを作っていくしか、日本の生きのびる道はない。それには時間がかかるのだが、そう簡単には待ってくれないというのが、今の日本の経営者の一つの悩みだ。従前の事業、特に製造業はそういうところがある。それをどう速くトランスフォームしていくか。国内でもまだばかげた戦いをやっている。

Q: 先日、日中経済協会が李克強首相に会った。李克強氏は日本の経済界にも協力をお願いしたいと、ボールを投げ返すような発言があったがどのようなことができるか。

小林: 日本ができることは、CO2やGHG(温暖化ガス)の削減など、プロセステクノロジーをもっていくなどの手法しかない。プロダクションを効率良くしたら、もっと大量にできてしまうので。政治的な言葉と、実際の水面下の戦いは全然違う。

Q: 冒頭、フランスのテロについてマーケットにはあまり影響はないというご発言だったが、企業の活動にとっては長いスパンで影響してくると思うか。

小林: これだけ広範囲に(拡大している)。中東、シリア・イラク・イランのあたりだけに閉じ込められていればよいのだが、サウジアラビアを中心に産油国、もちろんイランもイラクも石油が出てくる中で、今後、資源に対しては大きなリスクはあると思う。もう一つ、ヨーロッパでのビジネスアクティビティという意味では、少しはシュリンクしてしまうかもしれない。観光面では日本に来る人が増えるかもしれないが、とにかくG20レベルで、お互いに協力し合ってやっていかなければならない。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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