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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年9月29日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)TPP、(2)新三本の矢、(3)実体経済と対策、(4)安全保障関連法、(5)民間の投資、(6)改正労働者派遣法施行、(7)企業統治問題などについて発言があった。

Q: TPP協定交渉の閣僚会合が明日からアメリカで開かれる予定である。今回の会合に対する展望、期待感を伺いたい。

小林: ハワイ・マウイ島の時は、かなり強い期待感があった。ニュージーランドの乳製品・知的財産(の保護期間が)12年か8年か5年かというところでデッドロックに乗り上げたということを考えると、今回、最終的に閣僚(会合での)決着を目指して頑張っている中で、また新たにメキシコ、カナダが入ったかたちでの原産地規則、自動車関係(の議題)が入ってきた。今ごろになってなぜ入ってきたのかという部分があるかもしれない。それに知的財産と、乳製品+αということで、状況はあまり変わっていないようである。ここまでくると、甘利明TPP担当大臣は「最後のチャンス」と覚悟を決めているようだし、オバマ大統領もかなりご自身で動かれている状況を考えると、6対4か、7対3なのか。私自身は楽観的なので非常に期待できるのではないか(と思う)。

成長戦略にクリアなものがたくさん無い中で、TPPは時間軸として、いつ、どう効いてくるか、定量的にどのくらいの、金額ベースで効果があるのかというのは、宮沢洋一経済産業大臣も述べられているようにまだきちんと計算できる段階ではないかもしれないが、成長戦略の大きな要だと思うので、大いに期待したいと思っている。

Q: 先日、自由民主党の総裁選が行われ、安倍晋三総裁の再選が決定した。その後の記者会見では、「三本の矢」に次ぐ、「新三本の矢」を発表した。具体性に欠けるとの批判もあるようだが、このことについて代表幹事の所見を伺いたい。

小林: 安全保障関連法案は、国会で長い時間をかけながら、議論と言えるかどうかは別にして、最終決着が付いた。ここでもう一度、経済への回帰、安倍政権はまた経済をメインにやっていくというメッセージは大いに歓迎する。しかし、まだ(政権発足から)3年経たないうちに三本の矢が放たれて、第一の矢としての金融緩和、第二の矢としての財政出動、第三の矢としての成長戦略(があった)。今回は、また矢を放つというよりはターゲット、目標ではないか。定量的な、具体性をベースにしたメッセージと言うより、政策論のディテールを言っているのではなくして、国民に向かって政治的メッセージを与えた目標値だと見れば、そんなに変な感じはしない。そのような意味で、名目GDP 600兆円を2020年以降に目指していこうという目標である。あれを「矢」というからおかしくなるのであって、三本目の成長戦略の矢を放って、そのターゲットが600兆円とみれば、前々から内閣府の試算にもあるように、3+α(%)の名目成長率であり、2+α(%)の実質成長率というベースで計算していけば、名目は少なくとも600兆円になる訳で、何も変わっていない。まさに「By means of 第三の矢」によって、ターゲットとして600兆円を考える限りは、何も変わっていないターゲットである。

成長戦略を旨とするには、今、残念ながら潜在成長率、いわゆるトレンド成長率が0.5%あるいはそれ以下ではないかという計算結果がある。それ(経済成長要因)は、三つにブレークダウンできて、一つは投資であり、一つは労働参加率であり、もう一つは新規製品を生むようなクリエイティブなイノベーションである。官民対話という形で10月半ばから議論をするであろう民間の投資をどう喚起していくか。未来に向かって成長を先取りするためにどういうところに民間はお金を投資していくのか。老齢化した人々も(含めて)一億総活性化するという意味で労働力たり得るためには、高齢者も女性も若年層も、いかに労働参加率を上げて労働生産性を上げるか。それに加えてイノベーション、特にICT、IT、ロボット、あるいはドイツのインダストリー4.0的なリアルの経済をより効率よくするためのインターネットやセンサーなどを使って、より生産性を上げる。これらを目一杯取り組んで、ターゲットとして「600兆円」が可能かどうか、という目標だと認識している。難しいかどうかは別として、政治的メッセージをおそらく政府は(われわれに)投げているのではないか。

われわれ経済人から見ると、実際に潜在成長率が0.5%以下の中で内部留保が350兆円と政府からは民間はお金を使わないように一部はみえるだろうが、海外へのM&A投資は半期で7、8兆円と過去最高で、保険会社も含めて海外に展開している。明らかに日本の将来に対して人口減やエネルギーコストなど様々なファクターがあり、日本で投資するよりも海外展開が商機という機運の業界もあるだろう。必ずしも経営者のマインドがシュリンクしている(縮んでいる)とは思えない。重要なのは、日本に投資しても将来があるということを日本の経営者が納得できる場を作ることが、政治の一番のポイントになると思う。

新しい三本の矢というより、より明確にした三本目の成長戦略という矢によって三つのターゲット、分かりやすい政治的メッセージとしての強い経済、600兆円を達成するために、1.8の出生率、それと社会保障、とりわけ介護離職がないようにするという(目標としての)ターゲットだと思う。安全保障への議論が終わった後の政治的メッセージや次へのフェーズチェンジへのメッセージととらえるべきではないか。その中で、われわれ民間(企業)としてどれだけ女性、老齢化した人材を一億総活性化のために(活用できるか)。そもそも人手不足の中で供給律速になっている経済をどれだけ目いっぱい使っていくか。いままで円高、デフレの流れの中で海外に目を向けていたものを、ようやく国内にどういう形で目を向けていくのか(というフェーズになった)。世界情勢(を鑑みて)も、気が付けばどうやら中国は怪しげ、ドイツもインダストリー4.0といいながらフォルクスワーゲンのような会社もある。「結構、日本はいいじゃないか」「日本はいまから面白いことが起こるかな」と経営者マインドが変わっていくことに、いろいろと議論し日本のために考えていくフェーズになっているのかもしれない。

Q: 日経平均株価が17,000円を割るような状況で、マーケットやアナリストなどからは、政府の緊急経済対策や日本銀行の追加金融緩和を求める声が出ている。このようなカンフル剤のような対策が必要であるか、所見を伺いたい。

小林: (企業の)内部留保がおよそ350兆円にまで積み上がっている中で、(追加金融緩和のような)カンフル剤を打ち続けたら慢性疾患をさらに加速するようなものである。なぜ日経平均株価が17,000円を割っているかの要因を解析するのは難しいが、上海(市場)の株価下落あたりから何となくおかしい雰囲気になってきた。中国に限らず、ブラジルも含めたフラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨)の問題もあり、米国の利上げが行われないにもかかわらず、世界のGDP予測が下方に修正される状況になっている中で、いたずらに日本だけがカンフル剤を打っても、個人的には大きな効果は得られないと考える。むしろ、(出口戦略で正常に)戻す時に大変なエネルギーが必要となってくるため、もう少し様子を見る必要があると思う。

Q: 日経平均株価が17,000円を割ったように、世界の株式市場は下方トレンドになっていると思われる。これはマーケットの調整なのか、実体経済が変調の兆しにあるのか、どちらと捉えるか。

小林: 難しい問題だが、中国の場合は一部に変曲点に来ているという見方もできる。フォルクスワーゲンを含む自動車業界等には一時的なアクシデントが起こったが、ヒステリックに反応するのは早計である。完全に経済の局面が転換しているというほどの印象はない。米国には利上げの動きもあり、雇用も物価も比較的安定的に推移している。大慌てするような時期ではないが、(経済は)相当弱めにきている。日本に関しては、円安よりもエネルギーコストが低下した効果が大きく、コアコアのCPIはむしろ上昇している。ここは慎重に判断すべきであり、日本の実体経済が悪化しているという状況ではない。ただし、将来、中国経済が停滞することになると、(輸出のうち対中国が)15~20%を依存している日本経済は何らかの対応を迫られるということはあるかと思う。思ったよりは株価が下がっているが、常に過剰に反応するのが株価(というもの)ではないか。

Q: 先般、参議院にて可決された安全保障関連法案について、すでに代表幹事コメント『安全保障関連法案の成立について』を発表しているが、あらためて国民の理解が進んでいない中で成立したことについての所見を伺いたい。

小林: 安倍首相も国連の会議でPKO等について演説されているが、米中首脳会談の内容から推察しても、中国はタフな国であり、以前から指摘されているように、北朝鮮の核ミサイルの問題もある。戦後70年が経過し、時代状況が変わってきた中で、現実的に国を守るための基本的な議論ができなかったことは大変残念だった。これだけの(審議)時間を掛けても、与党・野党とも同じ議論しかできないのが日本の実力だとすれば、民主主義はどこかで決着しなければならないため、(最終的に)投票によって決めたこと自体は、仕方がなかったと考える。

むしろ、今後はまだグレーゾーンの議論がたくさん残っていると思う。最終的にある局面が起こった場合には、国会が(自衛隊派遣の可否を)判断して進むということは残っている。これで(安保関連法案が可決されて)終わりではなく、今からこそ、与党はきちんと個々の具体的事象について国民に説明していく必要があるだろう。また、国会周辺で(安保関連法案に反対する)デモに参加した人々が、国民の声を代表するならば、次回の参議院選挙でそういう結果が出てくるであろうし、反対の人は、次の参議院選で表現すればよいのではないか。それが民主主義だと思う。

Q: 投資をどのようにして増やしていくか。経済回帰となると、また経済界に対して官邸・首相から様々な要望が出されるのではないか。官民対話において、生産性を上げるために投資をしていくという話になっても、国内では難しいのではないか。だからこそ海外企業をM&Aしている。どのような分野で投資をしていくのかについて、アイデアをお持ちであれば伺いたい。

小林: (どのような分野に投資をしていくのかは)われわれにとっても一番悩ましい問題である。政労使という形でいかに給料を上げていくかの議論も、まだ終わったわけではない。それに加えて、官民対話という形で投資(の話)が入ってくる。その中でかなり大きな骨格は、今年6月に発表された成長戦略(「『日本再興戦略』改訂2015」)に明示されているように、IoTやロボット、自動運転、新エネルギーなど、リアル経済とバーチャル経済のハイブリッド系へ投資することである。より単純にいえば、日本が相対的に相当立ち遅れているマイナンバー、ICTの分野へ投資をすることで、新たな、将来の日本の活性化を考えるというのが、まず出てくる問題だと思う。

一方で、いたずらにどの分野でもICT化を進めればよいという話ではない。ITで新しい素材が出てくるかといえば、話はそう簡単ではない。例えばサービス業であったり、あるいは機械産業であればセンサーを使った仕掛け・システムを作るなど、業種によっては海外に進出しなくとも、国内レベルでかなり対応ができるのではないか。

新規商品(分野)に対する投資と、メンテナンスに対する投資を分けて考えたとき、日本の製造業はこれまでメンテナンスがメインだった。新規の部分は、M&Aで海外展開していくような例が非常に多く、予防医学を含めたヘルスケアソリューション、あるいは創薬など、国内での新規投資の可能性はあるが、日本の経済を動かすほどの大きなインパクトを持つ成長戦略になり得るのかといえば、そう簡単には期待できない。

時間軸を考えると、すぐに結果がでるものではないが、大いなる期待感を抱いているのは、やはりIT投資であり、特にサービス業における効率化である。しかし、よほど考えて投資をしていかないと、結果儲かったのはIT関連業界だけで、全体の産業としては生産性が上がっていないような投資では、まったく意味がない。

すぐ結果が出るものとしては、メンテナンス投資や安全対策投資などが挙げられるのではないか。例えば、中国・天津で起きた大爆発などについても、日本(の企業)も他人事と考えず、この機にあらためて対策を練るといった投資のことだ。あるいは、需要が大きい分だけ、観光産業など(への投資に)は即効性がある。

感覚的あるいは抽象的に考えていてもしょうがない。一つひとつ具体的かつ定量的に、どのような効果があって、どのくらいの経済的インパクトがあるのか、あるいは労働力がどのくらい増えると、どのような経済効果が出てくるのかも含めて、今後の官民対話というのは、そうしたものを一個一個拾い上げて、各社の取り組んでいる詳細の成長戦略について議論していく。あるいはすべての業種に対してそれぞれデータをしっかりとまとめていく(べきではないか)。経済同友会としても、どのような形で国家の成長戦略に寄与しつつ、各企業の連結決算、海外(企業)のM&Aまで含め、全体最適を図っていくのか、議論を進めていきたい。

アベノミクス・フェーズ2の第一の矢と言われる、(GDPを名目で)600兆円という数字は、とんでもない、はっきりいってあり得ない数値だと思う。政治的メッセージとしか思えないが、それ(目標)に向かって、一つ一つ精緻に、政府に任せないで、われわれも個々に議論していくことが大切だと思う。3+α(%)の名目GDP成長率(が前提)なので、とてもコミットできるような数字ではない。アメリカでさえ、そんなに簡単に行くかはわからないような数字だ。

Q: 明日、改正労働者派遣法が施行されるが、今回の施行に際してどのような期待をしているか。

小林: 改正(労働者派遣法)もさることながら、やはり残念なのは、臨時国会で取り上げられることになるとは思うが、「高度プロフェッショナル(制度)」を含む労働基準法(改正案)が継続審議という結果となったことだ。雇用の金銭解雇を含む三つのパッケージができて初めて雇用の流動性が高まり、労働者もフレキシブルな働き方が実現できる。

(今回の施行により)派遣労働の自由度が上がり、派遣労働者の選択余地が増え、さらに労働者自身の教育の場が与えられたという意味で、労働法制(改革)の大きな第一歩が始まったという認識である。

Q: 明日、東芝(の臨時株主)総会を予定しているが、経済界から小林代表幹事が社外取締役に入ると聞いている。東芝と共通するような企業統治問題が、フォルクスワーゲンでも起こっているが、東芝の問題と関連付けて見解を伺いたい。

小林: フォルクスワーゲンの件については調査が始まったばかりで確かなことは言えないが、新聞情報によると、10年前から(今回の問題が)始まっていたという。(それが本当なら)開発担当の取締役が関与していたことは間違いないだろうし、経営トップの関与により長い間、背任行為を続けていたということかと思う。やはりあのフォルクスワーゲン、あのドイツが、とショックだ。

われわれは、(ドイツは)サステナビリティ分野では10年以上前から(世界で)一番進んでいる領域だと思っていた。そのような風土、国家の中で、(競争環境としては)日本のハイブリッド、電気自動車が強い中で、アメリカなりでマーケットシェアを高めるために、窒素酸化物を多く放出するディーゼルでも触媒によって(排出を)減らせるだろうという戦略はあったにせよ、全体のキャンペーンとして経済優先でシェアを増やそうとすることが先に来て、ああいった方向にいってしまった。しかも1,100万台という大変な数量が放置されているというのは、まさに他山の石とすべきことである。

経営陣は一見するとガバナンスのしっかりとしているドイツ企業、東芝も2003年ごろから委員会設置会社であるように、形はオープンにしたが、結果として器は作っても魂は入らないことが起こってしまった。最後はやはり人であり、いかに社長以下をチェックする機能が必要かという思いは深い。

Q: 昨日、経団連の榊原会長が企業献金を引き続き促していくという方針を明らかにした。企業献金の必要性についてどのように考えるか。

小林: もともと経済同友会は、個人献金はどうあれ、企業献金はやめておこうという考えでずっときている。基本的にはそういう考えは継承している。私も経団連に加盟している会社(の経営者)でもあるので、経団連のおやりになることを聞きはするが、こういったものは完全に各業界、各社の考えることではないか。各社の方針・思いによって献金するかしないかは決めることであるという思いでいる。

Q: お金で政策を買うという批判については。

小林: それは何とも言えない。経団連は経団連としてお考えになって、各社に(方針を示したのであり、)別にあっせん方式ではない。「自民党(の政策評価)はこういう点数ですからどうですか」というスタイル。あとは受けるほう(各社、各業界)の考えで決めるべきことだと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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