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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年9月15日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)安保関連法案・防衛産業への影響、(2)消費税率10%の負担軽減策、(3)中国経済、(4)アメリカの利上げが実施された場合の影響、(5)法人実効税率の引き下げに伴う賃上げ、(6)本社機能の一部地方移転、(7)外国人留学生の雇用における入管法の規制、などについて発言があった。

Q: 安保関連法案(安全保障関連法案)について、政府与党は、今週中に委員会で採決、本会議で可決というシナリオを描いているようだが、一方で、議論が尽くされていないという意見もある。あらためて安保関連法案についての所見を伺いたい。

小林: 防衛、「国を守る」ということは、複雑であり、かつ精緻でなければならない大変な議題である。「議論し尽くされた」といえるフェーズを期待することがかなり難しい制度だと思う。強行採決的なことはやってほしくはないが、どこかでけりをつけて、何らかの形でスタートを切らざるを得ないのが実際のところであろう。一方で、議論が足りない(という)のであれば、民主主義の原則である部分までは決め、その後、どのような形でタガをはめる(条件・制約等をつける)かを、国会の場できちんと議論を進めるべきだ。例え一部の法案が通ったとしても、今後も議論を尽くしていくこと(が必要)ではないか。
また、国会の議論を見ていて気になることは、非常に古典的な(想定のもとの)議論ばかりであるということである。バーチャル戦争の時代、インターネットあるいはバーチャル・セキュリティーも含めて、ものすごく高度に発達した防衛技術というものをベースに、国家間の防衛がいまや(世界では)進められているので、そのような専門性も含めた形の議論が必要ではないか。いつまでも刀や鉄砲を持って戦場に赴く(過去の戦闘の形だけを想定した)議論ばかりで(あるが、現実は変化している。これを分かっていない点が)寂しい。

Q: マイナンバーカードを使って、食費にかかる消費税率2%分を後で給付(還付)することとする「日本版軽減税率制度」とも言われている財務省案について、政府与党内で議論されているが、これについて所見を伺いたい。

小林: 自民党内でも侃侃諤諤の議論をされていると聞いているが、マイナンバー制度そのものについては早期導入が望ましい。マイナンバーという手法も、まだ完全に切論されているとは言い難いが、当制度をプロモートするという意味では、一つのツールというかトリガーとしては面白いのではないか。ただ、返し方を含めて、例えば(年間の食費)20万円が最大として、あとで4千円がポンと返ってくるという仕掛けをするならば、軽減税率的ないわゆる従来議論されている手法も考えられる。われわれ(経済同友会)としては少なくとも消費税率10%までは、あまり複雑でコストのかかる方法では、逆進性に対する効果も含め、大きな効果が期待できないと思われ、もっと先(10%を超えた税率になった場合)の議論ではないかという主張をしてきている。自・公の約束事を含めて、(消費税率を)8%から10%に上げる時にやらざるを得ないのであれば、それも一つの方法かと思う。

Q: 中国経済、特に上海を中心に(株式)市場が乱高下を繰り返している。本日の日本銀行の金融政策決定会合においても、新興国経済の減速を背景に海外経済の判断を引き下げるということであった。世界経済について現状および今後についてどう考えているか。

小林: 昨日も経済同友会で経済情勢調査会の会合があり、様々な業種の方々と情報交換をした。(中国に関し)製造業は相当落ち込んでいるという認識がある。特に鉄鋼や化学などのコモディティー系は供給過剰で、価格も下がっている。当然、原油価格、鉄鉱石、石炭の価格も下がっている。生産量も価格も落ち込んでいるため、トータルな生産額としてだいぶ落ち込んでいる。一方で、サービスや金融は決して落ちておらず、元気さを保っている。業種による差が顕著にあり、(業種の中でも)一部が元気な場合もあるため、なかなかクリアには言えない。
(中国は)第一次産業が9.1%、第二次産業が42%前半前後、第三次産業が46~47%の中で、製造業がこれだけ落ち込んで、李克強指数が明らかにマイナスになっている。その中で昨年と同じ7%の成長率を維持できるかという点に関しては、疑問を持っている。「ニューノーマル(新常態)」というが、個人的に「ニューアブノーマル」ではないかと感じており、そのくらいの変曲点に来ている兆しがある。日本も輸出の二割は中国に依存しているため、内需の喚起もしていかないと、来年にかけての世界経済も日本経済も安穏としていられない。それに加え、希望的観測としては石油価格など下がるものもあるが、総需要も価格も下がる中で、消費者物価指数(CPI)で2%の上昇を達成することは簡単ではない。また、米国の金利がもし0.25%引き上げられ、BRICs経済が落ち込むようなことがあると、世界経済はあまり簡単ではない状況になってくる。従って、何をしていけばよいのか、各企業も備えていく時期にある。

Q: 安保関連法案そのものに対する考え方を伺いたい。

小林: 安全保障には、まず憲法という大きな枠組みがある。この70年間、状況は相当変化した。自衛隊もこれまで具体的な形で一定の役割を果たしている。しかし、近隣諸国の動向に目を向ければ、今後も現状のままでいいとは思わない。米国との安全保障条約もこれまで変革してきた。さらに、時代は相当な情報戦となってきている。このような状況を踏まえ、コラボレーションなど何らかの対策を打つ必要があり、今国会でこのような対策について議論しているという認識である。どのような事象においても「議論をし尽くした」と言うのはおおよそ難しい。先ほど申し上げたとおり、民主主義の原則に則って、ある時点で結論を出すということではないかと思う。

Q: 安保関連法案が成立した場合、自衛隊の役割が高まり、それによって防衛産業に期待される役割も強まると思う。安保関連法案の経済的な効果、防衛産業に対する影響についてどのように考えているか。

小林: 防衛産業については、これまで関わりが薄く、深い議論を行っていないため、定量的な話はできない。しかし、防衛産業やその周辺産業、素材産業も含め、これらがどう活性化するかという議論の前に、むしろ、COCOM(対共産圏輸出統制委員会)の設置以来、厳格にコントロールしていると思うが、どのような形で敵対する領域に情報や物が流れないようにブロックできるかがポイントであって、積極的に防衛産業をプロモートするといったことを私自身は考えていない。

Q: 経団連はこの度、武器や防衛装備品の輸出を「国家戦略として推進していくべきだ」という提言を発表したが、こうした考え方とは路線を異にするという理解でよいか。

小林: 私自身は防衛産業としてプロモートするという思いには至っていないということである。

Q: 世界経済全体を見渡すと、新興国には米国の金融緩和によって相当額のマネーが入り、景気を下支えした面もあると思われる。米国が利上げとなった場合、日本経済、(日本)企業に対する影響はどの程度及ぶとお考えか。

小林: これは、中国(経済)との関連性でもなかなか不透明だと思う。原則的にいえば、向こう(米国)は金利が上がるわけだから、日本の円は安くなる。お金もどちらかというと、BRICsあるいはフラジャイル・ファイブの国々から、米国に吸い取られてしまう。こうした中で、新興国に進出している日本企業のリスクはもちろん増える。日本の為替がどこまで安くなるかについては読みが難しい。120~130円/ドルまでは十分吸収可能かと考える。それよりも、新興国の経済、特にアジアが悪くなることによって、日本企業のリスクが増える方が気になる。
ただ、米国は失業率も改善され活性化されている中で、このまま(ゼロ金利を)放っておくのもいかがなものかと考える人もたくさんいる。最近の報道では、(米国の利上げ可能性が)ちょうど五分五分かといわれているのは、そのような思いからではないか。米国の金利を今、中国(経済)が不透明な状況で、無理をして上げる必要もなかろうという意見もあるだろう。明後日になればはっきりすることなので、待った方がよいのではないか。

Q: 消費税率10%への引き上げについては経済三団体が足並みをそろえていたが、今回、経団連・榊原会長は軽減税率(還付)制度について「一定の理解を示す」とし、日商は、事務負担のことを考えるとなかなか軽減(還付)措置について手を挙げられない状況である。経済同友会はどのような立場か。

小林: 経済同友会として、委員会や正副委員長会議で決めているわけではないので、スタンスを明快にしているわけではない。自・公であのような形の約束をしているのは、より具体的にみれば、のぞましいのは(消費税率)10%までは、ややこしい、コストのかかることは止めておいた方がいいというのが基本的なスタンスだ。もしやるとすれば、マイナンバー制度をプロモートする中で、ハードウェアを配るコストはかかるが、(10%超の引き上げ時に実行してもそのコストが)消えるわけではないので、試験的にやる動きが一つ考えられる。だいたい1億2,000万人の(還付額が)4,000円だと5,000億円程度(かかる)。トータルの還付のコストと、ハードウェアが数百億円かかる。一方、(消費税を)1%上げれば2.5兆円(の税収増)だろうか。どこかでやらなければならないとしたら、一つの議論の中でやる分にはよいのではなかろうか、と言うレベルである。

Q: 前提としてあるのは、消費税率が10%のままでは将来(立ち行かなくなるという危機感か)。

小林: 10%から12%、14%、17%と上げていかないと、間違いなく国家の財政が破たんするという算数は、小学生でも分かると思う。安保関連もさることながら、このあたりの社会保障関係をもっとエネルギーをもって議論して欲しい。
プライマリーバランスを2020年に黒字化すること、それとて物価の2%(上昇)もさることながら、GDPの成長率が名目3.0+、実質2.0+という中の仮定でさえ6兆円ほど足りない。この事実をどうしてもっと前にだして議論しないのか。相変わらずすぐ忘れる傾向があるのではないか。消費税は誰だって取りたくないだろうが、取らないと国が破たんするというのは明快な事実だ。

Q: 消費税率を上げていくためには、軽減税率(や還付策)も仕方ないということか。

小林: 2017年4月(の10%への引き上げ)に間に合うかどうかも本質的には分からない。マイナンバー導入と、消費税率を上げる手立てをいろいろ議論し考えるのは大いに結構だと思う。10%だからとまだ放っておいて14%に上げるときにやる、というよりは、(現時点から)大いに議論したらよい。
(この案は)財務省の若手が提案した方法らしいが、一つの面白い提案として議論したらよいという意味では賛成だ。

Q: (消費税率)10%までに何らかの軽減策が必要という前提で考えると、還付策がよいのか、あるいは軽減税率がよいのか。

小林: ハードウェアが間に合わないという理由で(軽減策を)やらないとなるのは危険であり、何らかの形で進めた方がよい。例えば、(年間)20万円が食品(購入額)なり外食(消費)の最大として、(負担軽減額が)4千円(としている)。これでは還付あるいはバウチャー券を配った方がよいのではないかという議論があるかもしれない。トランジェントな(一時的な)やり方や、間に合わない場合には1年程度の措置についての議論はあるだろう。 軽減税率という形では、逆進性を含めて、それが正しい方法かということ(が課題)だ。「日本版」(という語句)を上に付けて中間領域を模索している点は面白いと思う。

Q: 還付の戻しは食品が主なのだが、他に広げることについて、例えば本・新聞などはどう考えるか。

小林: 本はジャンルがあるかもしれない。新聞も微妙なところではあるが、情報を国民に正確に伝えるツールについては、議論の一つとしてしかるべきだ。人間はパンのみで生きるわけではない。情報などいろいろ要る。しかし、(軽減税率の対象分野については)しっかりとした哲学をベースに議論しなければならない。砂糖に群がるアリのようではまずいだろう。

Q: 法人税実効税率について、経団連は20%台に引き下げるべきとの提言を出した。その一方で、賃上げの話が出てくるのではないかと思う。実現の見通しと、来年の賃上げについて、景気の現状を踏まえて意見を伺いたい。

小林: イコール・フッティングといわれて久しいが、OECDあるいはアジアの同胞(の税率)は25%程度であるので、決してむやみな要求ではない。むしろ、下げることによって、コンペンセート(埋め合わせ)する課税ベースの拡大というのは、何をもってやるか。そのアイテムについては団体によっても違うだろう。われわれの主張は、外形標準課税を含め、幅広く、租特(租税特別措置)の見直しなど、今までやってきたことの延長線上で、(法人税実効税率を)下げた分のコンペンセーションを議論すべきだ。
あくまでイコール・フッティング(の考え方に立脚する)。世界の常識は20%台半ばが最低のところだと思う。イギリスなどは20%以下(まで削減する方針)だ。法人税率は下げる一方で、消費税率は上げていく。そういう(世界潮流の)中で捉えれば、消費税率10%は何があっても(実現すべきで)、手法はどうあれ10%(への引き上げを)やめたということはあり得ない。

Q: 賃上げが二年間実施されているからこそ、物価上昇率2%も実現できるのではないかという正論もあると思うのだが、消費者サイドからすると、もはやいっぱいいっぱいではないかという気もするが。

小林: 原油(価格)も下がり、物価も急激には上がらないだろう。為替も(1ドル)120円~130円あたりでは大きなプレッシャーにはならない。むしろ、給料が上がるのかということが大きな問題だ。企業収益について、完全に為替がフラットになっており、2013年、2014年で儲けた部分が既になくなっている。そのような中で、中国(経済の混乱)があり、アメリカの利上げがある(かもしれない)ということを捉えると、来年あたりに企業収益の増収増益を期待するほうが(予測が)おかしくなるのではないか。ただ、来年はまだ勢いがあるので、賃金アップは若干、期待できるとは思う。

Q: 昨日の会合(全国経済同友会地方行財政改革推進会議分権改革委員会)で、石破茂地方創生担当大臣から地方の人口減少の対策として、企業本社機能の一部移転をという話があったが、代表幹事の考えを伺いたい。

小林: 一部の企業は当然(地方への移転を)やっている。本社機能そのもの、全体を移さなければいけないということについては、30人程度の企業と、大きな企業との議論を一緒にはできない。大きな企業は、従前から例えば、コンビナートなどを集約して地方へ行っている(移転している)なども含めて考えなければいけない。一つのアイデアとして、地方活性化の方向としてはよい。昨日は、(オフィス減税および雇用促進税制で)9,000万円から1億円の減税になると(石破大臣は)述べていた。必ずしも東京にいる必要はないなど、大きなハンディキャップを背負わない会社は積極的にやった(地方移転した)らよいと思う。これは、タックスヘイブンのような、本社を名義上(地方に)移してタックスを減らすというのとは話が全く違う。道義的な問題が何もないわけだし、国内の問題であり、大いに結構だ。ただ、経済同友会としてそれをプロモートしたり、全体として「こうやりましょう」というところにはまだ至らない。

Q: あらゆる業界が人手不足の中、どうやって労働人口を増やすかについて移民政策などがある。外国人留学生の二割くらいしか日本で就職しない原因の一つに、入管での在留資格がある。企業が採用したい、学生も就職したいと相思相愛になっても、学んだ専攻と、入社してからの業務内容の一致が厳しく求められるなど、入管法のところで規制が厳しいようだ。外国人留学生の雇用拡大ということについてどうお考えか。

小林: 自社(三菱ケミカルホールディングス)にもシンガポールやインドなどアジアの方がいる。日本に留学して、日本のことを相当勉強してから就職する人もいれば、シンガポールやインドで勉強した人が新たに日本にきて就職する(ケースもある)。就職する前から、いろいろな情報交換や奨学金なりを手当てして増やしている。
外国人に働いてもらう手法は、日本にいる留学生、(あるいは)海外にいる学生を連れてくるということと、M&Aをした海外子会社の従業員を日本に連れてくるという三つの類型があると思う。職種によるのかもしれないが、今の日本では税関なり(入国管理局)で大きな障害になっているとは聞いていない。
いずれにしろ、グループの中に一番(外国人材を)取り込めるのは、M&Aで子会社化した海外(企業)の従業員を、日本で再教育したり、日本の文化を知ってもらう、どう一緒に勉強するかだ。そこにいるトップマネジメントに日本のボードになってもらうことなどから、(外国人材の取り込みを)するのが一番早い。その次が、どうフレッシュマンに入社してもらうかという順番だと思っている。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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