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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年9月1日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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冒頭挨拶の後、記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)東京オリンピックの公式エンブレム使用中止、(2)東芝の有価証券報告書の提出日延長、(3)中国経済、(4)経済対策、(5)就職活動日程、(6)東芝の社外取締役就任、(7)日本の組織のガバナンスなどについて発言があった。

Q: 2020年の東京オリンピックの公式エンブレムについて、大会組織委員会は使用を中止する方針を固めた。このことに対する代表幹事の所感を伺いたい。

小林: もともと疑惑をもたれていたが、選考する前にオープンにチェックすることが必要だった。企業の場合は、調査会社を利用して登録商標などをチェックする。オリンピックの場合は、個別のチェックよりも、もっとオープンな場で、みなさんにそれぞれの知見を聞くことも必要ではなかったかと思う。新国立競技場も含めて、国民が疑惑や不安を持つような状況が続いているのは、横尾敬介副代表幹事・専務理事は新国立競技場整備計画経緯検証委員会で(委員として)チェックを行っているが、これが構造的なところからきているのか、たまたまなのかということも含めて、今後、(疑惑や不安を)より少なくするための対応も必要ではないだろうか。日本年金機構の問題にしても、最近こういったことが多すぎる。ある意味で東芝もそうなのかもしれないが、なんとなく社会全体がたるんでいるのではないかという気がする。

Q: エンブレムの使用中止は、今後、どのような影響を与えるとお考えか。

小林: もう民間(企業)の一部はあのエンブレムで宣伝を始めているので、その影響はもちろんあるが、そうはいっても、まだ4年はあるわけで、それほど大きなダメージはない(と考えている)。むしろ、新国立競技場もそうだが、早くゼロベースに戻って、みんなに歓迎される手法で進めていけばいいのではないか。

Q: 東芝の問題について、小林代表幹事は既に社外取締役への就任が固まっているが、有価証券報告書の提出期限である8月31日を守れなかったことなど、日本を代表する企業がこのような事態に陥ったことを、どのように捉えているか。所見を伺いたい。

小林: 9月末の取締役会で選任される予定であり、まだ決まっているわけではないので、代表幹事の立場として一般論で申し上げたい。8月30日に財務のすべての結果をまとめて会計監査人に提出することも含めて、スケジューリングが本当に(できていたのか)。もともと巨大な企業、組織で、海外の場合は作業に時間がかかるのはわかるわけなので、スケジュールと結果に対する緊張感が、なんとなく理解できないというのが今の感想である。東芝のDNAがいつどのように突然変異が起こったのか。それも含めて、相当な覚悟で東芝は変革の方向に舵を切らないと、漂流する危険性を感じる。

Q: 本日も東証株価が一時450円以上も下落した。直接の引き金は中国の製造業の景況感悪化と言われているが、チャイナショックということも含めて、実体経済の現状と先行きについてどのように捉えているか。

小林: 前回(7月28日)の会見では、(中国経済は)そう楽観視できる状況にはないと回答した。明らかに様々な指標が下がってきており、(GDP成長率は)7.0%を死守するとはいえ、電気使用量や物流の状況を見ると、李克強ファクター、因子は明らかに低下していきている。また(景気の先行きを示す)7月の新規受注指数が49.9となっている。先週には一旦回復の兆しが見えたようにも思ったが、ここ当面は非常に神経質な動きをしていくのではないかと思う。
また、(政府が17日に発表した)日本の4~6月期のマイナス(成長)も含めて、これでリーマンショック以上のことがすぐに起こるとは想像できない。もう少し推移を見ないと、どうなるかについては(判断が)難しい局面にあるのではないか。米国のファンドなど、(こうした不安定な状況を)うまく利用しているケースもあるだろうし、インターネットを介したバーチャルな取引も活発で、(株価などが)実態とかけ離れた動きをする側面もある。したがって、我々があまり神経質になるのもかえってよくないのではないかと思う。

Q: 中国経済の不安定な状況はいつごろまで続きそうか、どの程度のスパンで考えているかを伺いたい。

小林: 経済状況を表す諸因子が、この秋口から冬にかけて悪化していくようであれば問題は深刻だが、復調する兆しが見えてくるのであれば(不安定な状況は)長期的に続くものでもないと思う。
中国(経済)で一番問題となっているのは、リーマンショック後に50~60兆円規模の財政出動をした結果、一見、世界経済を救ったのだが、重化学工業、特に製鉄や石油化学のプラントが立ち上がって、世界の需要に対して生産量が1.3倍にも達するような供給過剰の状況となっていることだ。こうした状況をどう早急に是正していくかを一番のポイントとして見るべきだと思う。石油化学の分野で言えば、供給過剰の状況は2、3年前から続いており、ここに来て急に(状況が)悪化するというのは変な話だ。(天津の)火災など、プラントに対する安全などがトリガーになって、「気」が下がっているという部分がある。こうした面も含め、もう少し注視していく必要があると思う。

Q: 景気の状況が中国経済の影響でぶれている中で、追加の財政支援、経済対策が必要ではないかという声があるが、これについてどのように考えるか。

小林: 今の段階では、これだけ財政の健全化を図らなければならない中で、次から次にそういったこと(財政支援など)をやるよりも、もう少し本質的な成長戦略の検証が要る。(平成26年度補正予算で、)各自治体が(プレミアム)商品券を発行している。次はもう少し設備投資や賃金アップ、あるいは新しいイノベーション、それが5年、10年先ではなく短期的に効いてくるような手立てにもう少し知恵を絞るべきである。
財政出動をするか、(金融)緩和をするかという繰り返しをやっても単なる注射であって、本質的な健全なる経済活動をプロモートすることには決してならない。これだけ(財政支援などを)やったので、今は与えられた所与の条件の中で、経営者を含め、どれだけ経済を活性化する手立てがあるのかというのを深く考えなければならない。こうしたことの繰り返しでは、将来的には破綻に向かっていってしまうと思う。

Q: 経団連の方針で8月からの就職活動になり、現場はかなり混乱しているようだ。学生にとっても、本来は学業に専念するために就職活動期間を短くする目的だったが、結果的には長くなった。留学から戻った学生や帰国子女の対応、3年生のインターンが夏場に実施できなくなったなどの問題が出てきている。経済同友会はどのようにみているか。

小林: 経済同友会の検証はまだであるが、どういった状況であったのか、アンケート(結果)や議論のデータをまとめる必要がある。
いま私が聞いている、あるいは三菱ケミカルホールディングスの現状というのは、8月に(採用活動を)遅らせたメリット・デメリットあると思うが(それについて申し上げたい)。留学生は7月頃に(日本に)帰ってくるので、8月というのはよかったのではないか。(採用活動の開始時期を)遅らせたために、卒業論文・研究論文がより濃密、クリアになり、理科系をふくめ技術系はとくに良い方向(に進んだ)だろうといっている。デメリットは、結果として学生にも企業にもたいへんな労力、エネルギーを使わせていることだ。
もともと早めにスタートした中小・中堅(企業)、外資系の会社、経団連に所属していない会社では、早期に内定を出したあとで学生が採用を拒否するという問題が出てきている。そもそも7月中に65%~70%(内定が)決まってしまうのは異常である。それは外資(系企業)、中小(・中堅企業)だけでなく、抜け駆けしている大企業(があるからだ)。社会的責任を常に標榜している人たちが抜け駆けをするというのは許してはいけない。
さまざまな問題があるので、10月頃を目途に整理して、通年採用、あるいは春・秋の二期に分けるなど(を検討すべきだ)。フレキシビリティ、あるいはダイバーシティという時代なので、あまりにも(固定化した)4月入社のための学生を取るというのは、自分自身は理解できない。40年前、自分は12月2日に入社した。人事に電話をして「海外から帰ったのだが、あなたのところに就職したいから会わせてくれ」と言ったら、ちゃんと就職させてくれる会社もあった。いつもリジットにだめだということは昔からなく、今でもそうだと思う。学生ももっと他力本願ではなく自分から(就職活動を)やっていく(ことが重要である)。会社の方も、いい人材だったら採用する(はずである)。そこのところが、社会通念としてみんなが逆に固まってしまっているのではないか。
もともと経団連は政府から言われて(いた経緯もあり)、もちろん(経団連としての)発意があったのだろうが、経済同友会は前から8月(開始の採用活動)ということや、通年採用をやるべきだということを主張している。結果が一部出たところで大いに見直しなり、あるいはこのまま続けていくなりの議論をしたらいい。

Q: 8月採用をベースにして、抜け駆けや早く(採用活動を)始めることを止めるということか。

小林: それが一番よい方法だと思う。それ以外に、どういった形で4月から入社する人たちを8月にがっちり決めるかという方法と、ツートラックで違う方法を選ばせるようなことをやらないと(いけない)。
海外に留学したり社会を見て戻ってきた人に対して自由度を与える、あるいは2~3年勤めたが自分に合っていない、違う会社に行きたいという人に対しても、もう少し自由度を与えた方がよい。大学院に1年ほど通い、研究しているよりも会社に入りたいという人に対しても自由度を与える。なおかつ企業にそれほど大きな(採用活動に要する)労力を与えない(方法)があると思う。そういうことをフレキシブルに考えたらよい。女性の登用、ワークライフバランスがこれだけ声高に言われている中で、新規採用についても、もっと自由度を増やした方がよいのではないかと思う。

Q: まもなく来年の採用がスタートしてしまうが。

小林: 基本的には8月(採用開始)という形を次の年も(継続しなければ)時間的には無理だろう。そのあと、また変更することはできる。いま(採用時期を)戻すと言ってもそれは不可能だろう。

Q: もう一年は現行のままということか。

小林: 実際問題としては、ここですぐ戻すということはできないだろう。もう1年は、基本的には時間軸からして(8月開始の採用活動を)せざるをえない。(1年で変更してしまっては)もっと混乱を招くのではないか。

Q: 東芝での社外取締役を務めるにあたり改めて抱負をお聞かせ願いたい。

小林: (東芝の次期社外取締役として)ある新聞にインタビューに応じたという記事が出ていたが、私は決してインタビューになど応じた覚えはない。いずれにせよ、9月末に(東芝の新体制が)決まったところでそれなりの抱負を述べることになるとは思う。今の段階で言えることを簡単に述べさせていただく。(社外取締役への就任について、東芝から)非常に強く要望されて、まず(自分の)会社と相談し、また、経済同友会では専務理事・常務理事と相談した。日本を代表する会社がガバナンスでこれだけ問題をおこし、せっかく立ち上がったコーポレートガバナンス・コードあるいはスチュワードシップ・コードといった日本企業の新たなガバナンスに対する信頼が瓦解するのは、「行動する経済同友会」として見るにしのびないと思った。一経営者として、たまたまそういう形で打診され、やらざるを得ないと判断した。東芝がどこで突然変異を起こしてDNAがおかしくなったのかはわからないが、それをいかにもう一度従前の正しいDNAに戻すべきかを考える必要がある。刷新委員会では、(組織の)形は改めてきれいにしている。そこに魂を入れることは、結構大変な作業だと思う。時間が十分残されているかどうかは自信がないが、日本の株式会社あるいは日本のマーケットの信用を回復するため、逃げるわけにはいかないという心境だ。

Q: 東芝の件およびオリンピックの件、これとつなげるわけではないが、これだけ国内の耳目を集めるファクターが続くとジャパンブランドのイメージダウンにつながるのではないかという危惧が感じられるが、これに対しての見解を伺いたい。

小林: 日本はガバナンスが進んでいると、少なくとも我々(経営者)は自覚していたつもりだが、意外とプリミティブなところというか、基本的なところでまだ齟齬があるというのは残念である。(日本年金機構のデータ流出問題の)サイバーセキュリティーもそうだが、厚生労働省も含め、非常にプリミティブなレベルで対応が遅れて、基本的なガバナンスができていないように見受けられる。これは(日本の)外に対して恥ずかしいことだし、日本はたるんできたなという感覚を持っている。もう少ししっかりと(ガバナンスに)魂を入れていかないと、大変なことになるのではないか。社会秩序を保つ上での一種の正義、あるいは生命として生きていくための基本的な大事な部分を失うといった現象が複数出てきているというのは由々しき問題である。

Q: 東芝の経営問題、エンブレム、新国立競技場の問題等、課題が山積する中で、11月には日本郵政の上場もある。日本のよりよい経済社会構築に向けて、2015年度下期はどのような活動を展開していく考えか。今週、経済同友会は沖縄を訪問するが。

小林: 経済同友会として提言を行うことが一つの活動であるが、行動する同友会として、政治、経済について仲間(会員)とさらに議論を深めて役割を果たしていきたい。奇策があるわけではない。もっと深く考えて議論し、できることは行動に移し、発信していくことに尽きる。当然、わが身を振り返り、日々、緊張感を持っていくことが必要だ。企業はいくら利益を上げていても、コンプライアンスの問題や事故によって倒産する可能性がある。このような緊張感を会員同士が互いに共有することも本会の一つの役割ではないか。
先般は岩手に行き、今週は沖縄と軽井沢に行く。地方創生も今年度の大きな課題である。経済同友会としては、経済・地方の活性化に重点を置いて議論したい。

Q: 景気に対する指摘があったが、経済対策として、直近ではどのようなことができるのか伺いたい。政府に対しては法人税減税などがあると思うが。

小林: 法人税減税はめどが立ってきているが、早期に20%、少なくともイコールフッティングは25%だろうと言い続けている。最も即効性があったのは円安である。1ドル80円が120円になったことは、少なくとも大企業に大きな可能性を開いてくれた。六重苦(円高・法人税率・TPP協定等・労働規制・地球環境CO2・エネルギー)の中で、産業構造の転換が社会としてできるような新陳代謝を良くするための労働法制、農業も含めグローバルな戦いに向けたTPP協定の推進による経済の活性化、環境に大きな負荷をかけないこと等を主張してきた。今回の原発再稼働により、エネルギーコストが少し下がることで、すべての産業がそれなりのメリットを得られる。
経済同友会は「縮原発」を主張している。日本の経済を考えれば、当面は建設した原発については安全性がきちんと確認できた段階で稼働していく(必要がある)。しかし30年、50年後は、現状より(原発比率を)はるかに少なくし、自然エネルギーである太陽光、地熱、風力にむしろ早く転換すべきである。為替(円安)をしっかりと保っていくとともに、原油コストが下がっているのをうまく利用しつつ、ユーティリティコストも下げ、エネルギーコストを安く抑えることが、経済には即効性がある。
5年先を考えると、法人税も減税され、TPP協定もうまくいけば来年あたりに批准する。現在少し遅れている労働法制も一定程度は進むだろう。CO2も原子力を利用したエネルギーミックスで、2030年までに2013年度比26%の削減ができるだろう。4、5年前の停滞の時代に比べれば、かなり絵は描けてきている。
かなりの部分は(国ではなく)民間にボールが投げられている。甘利明経済再生担当大臣が投資を促進させようとしているのはよく分かる。企業は長期的な視点でどこに投資をしていくか。今年、海外に対するM&Aで、すでに7兆円を使っている。今後も海外への投資は必然的に増えていくだろう。GDPでなく GNIで測る必要がある。 有価証券の配当金等、海外で稼いだお金を海外で再投資するとともに、日本に持ち帰り、高度な研究開発に投資するといったサイクルが出てきている。
では、中小企業や地方はどうか。商品券的なもの(を配るばらまき的なもの)には限界がある。石破茂地方創生大臣が取り組んでいるように、地方が自分の頭で(考え、)自分の強みを経済の中に組み込み儲けていく仕組みにする。(中小企業も含め)こういうメンタリティをいかに早く共有するか。あらゆる特効薬は効き目も短く、もう終わっている気がする。一人ひとりが効率よく生産性を上げ、儲ける力を育てていく仕組みにしないと、全体の底上げは難しい。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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