代表幹事の発言

小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

冒頭挨拶の後、記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)TPP交渉、(2)最低賃金引き上げ、(3)戦時賠償問題、(4)中国経済、(5)子供版NISA、(6)人口減少問題、(7)一票の格差問題、などについて発言があった。

小林:参議院でも安保法制の審議がスタートし、「合区」(公職選挙法改正案)も可決された。いろいろな動きがこの夏の8、9月にかけて(行われ)、日本の将来を最終的に決めていく。同友会で今、2020年以降の日本について議論をしている。2020年までに財政再建があり、(東京)オリンピック・パラリンピックが開催され、少子・高齢化や地球環境の問題等(への対応)も含めると、ちょうど2020年は一つの大きなポイントになる。それまでにわれわれは経済人として、どのような形で準備をしていくのか。その準備がうまくいった暁には、世界に誇れる「Japan2.0」として、経済・社会・政治状況、安全保障の問題も含め、戦後をある意味で引きずりつつ、経済的にもリアルな社会、重さのある経済をベースにした製造業を中心とした産業から、2020年以降はもっとバーチャルな、サイバーを加味したリアルとのハイブリッド経済に転換するだろう。(現在は)極めて激しい革命期にある。ローマ革命の時代から、(渦中にある)市民が認識をしないまま革命は起こっていく。今の日本、あるいは世界は、まさにその中に入りつつあるとの認識を持って、われわれも日々、自らの業務を果たし、意見を述べていく。そのような時期に来ていると考えている。

Q: TPPの首席交渉官会合が終了し、28日から閣僚会合が始まる。改めて考えを伺いたい。

小林: (知的財産分野で)薬の特許の切れる時期が10年か5年かなど、比較的難しい問題が残っているが、歴史的な意味を持つトップ交渉であり、私は楽観的に考えている。良い形で収束していくことを期待しており、世界経済・日本経済の今後における発展の大きなトリガーになるだろうという認識は変わらない。

Q: 2015年度の最低賃金の引き上げについて、本日、厚生労働省の中央最低賃金審議会の小委員会が協議を行っており、安倍総理も最低賃金の大幅な引き上げに力を尽くすと、経済財政諮問会議で発言されている。経済界にとっては賃金の上昇につながるが、どのように考えているか。

小林: どのくらいの(最低賃金上昇)幅になるかが重要になると思う。全体として経済が徐々に上向いてきており、物価も上昇している中で、(最低賃金引き上げの)最適値があると思うが、最低賃金の引き上げについては、日本経済全体から見てポジティブに捉えている。当然、個々の企業にとってはコストアップになるが、今後も企業努力をしていくということで吸収できると思う。

Q: 戦時中の中国人労働について、三菱マテリアルが賠償と謝罪をするということが発表された。日本政府としては、戦時賠償は終わったとしている。今回の問題は各社ごとに対応すればよいのか。または、経済界としてスタンスを示した方が良いのかお伺いしたい。

小林: 三菱マテリアルの件については、(元アメリカ人捕虜に)謝罪をしたが、金銭は伴っていない。中国や韓国については、今後も要望はあるかと思うが、基本的には、個社の対応ということで、国家として決着はついている問題だと認識している。三菱マテリアルのアメリカの件については、少なくとも、謝罪をしたということであり、今後、金銭を伴う賠償を受け入れるかは別として、個社の問題だと思う。

Q: 中国人元労働者について、三菱マテリアルは謝罪と賠償をするのか。

小林: その情報は確認していないので、基本的には状況を確認しないとお返事できない。

Q: 先般、中国のGDPが発表され、1-3月、4-6月と7%成長で、横ばいだった。しかし、株価が不安定な値動きをしたり、個々の経済指標も弱めな数字が出たりするなど、中国経済の先行きを懸念する声も出てきている。中国と取引のある東南アジアの国々の成長についても、今後これまで通りに続くという保証もない。中国経済について、先行きも含め、どのようなお考えをお持ちか伺いたい。

小林: 上海(総合指数)は、(前週末に比べ)7月27日の終値で8.48%、本日も(先程チェックした時点では)4%以上、下落している。消費の一部は安定しているようだが、金融系のお金の流れなどが影響した結果、GDPが大きく出ている側面がある。GDPの最終数値は7.0%だが、電気や物流の状況を見ると、輸出加工型の経済活動は変調しつつあると言えるのではないか。この1~2年で2.5倍近く値上がりした株価は、政府のてこ入れで安定しているように見えた時期もあったが、急激に3500を下回る局面もあり、それほど楽観的には見ていない。

Q: 現在、NISA(少額投資非課税制度)が活況だと言われている。来年には、子供版NISA(未成年者少額投資非課税制度)も始まる。代表幹事自身の本制度に対する関心、興味について伺いたい。

小林:もともとNISAそのものをやろうと思ったが、結局やっていないのは、自分たちのような(経営に携わる)立場の人間からすると、インサイダー取引(に抵触するのではないか)という懸念があるからだ。これはNISAに限った話ではなく、他の株式投資であっても、(株式会社三菱ケミカルホールディングス取締役社長に就任した)2007年から全く取引をやめている。

また、(子供版NISAの年間投資上限金額が)80万、(NISAで現行)100万という単位では、規模が小さすぎるのではないか。親から子、子から孫という流れで、非課税で教育資金等の贈与ができるというのはよいが、そもそも資産がないと贈与ができないわけで、ある意味、不平等ではないかと感じないこともない。自身がやるかやらないかで言えば、煩雑さもあるので、(子供版NISAは)やらないと思う。

横尾: (額については、立場によって感じ方に差があるかもしれないが、)貯蓄から投資へという方向感の中で、証券市場の活性化のためNISAが導入されたことには、大変意義があったと思う。これを機会に、より多くの人がNISAを活用していってくれたらと思う。

小林: まさに株式市場の活性化の側面では、NISAは大いに結果を出したと思う。(日本人は)ドイツ人と似ていて、貯め込むのが好きだ。(株式)市場で会社を育てようとするよりも、貯蓄に流れてしまう。そうした(日本人の)メンタリティを変えていく役割を果たしたのではないか。

Q: 先日、経団連の榊原会長から、今後の人口減少を見据え、日本型の移民受け入れの仕組みを産業界でしっかりと制度設計し、政府に提言していく旨の発言があった(2015年7月23日の経団連夏季フォーラムにて)。経済同友会も提言を行っているが、今後の外国人材の受け入れについて意見を伺いたい。

小林: 人口減少という長期的な流れの中で、日本型の移民をどう考えていくか。短期的には、すでに一部(の業界で)雇用がタイトになってしまっている。時間軸を考えると、二種類(の手法を)考えていく必要がある。フランスなどは2.0を超えるまでに出生率を回復させており、人口減少に歯止めをかけるという手法もある。(移民の受け入れと出生率の回復という)二つの手法を具体的に考えながら進めていかなければならず、どちらか片方ではできない。

移民という言葉は一部から誤解を招く恐れもあり、(言葉を換えて言うならば)外国人の移入については、テンポラリーなのか長期的・永久的なのかを含め、日本版グリーンカードやワークパーミット(労働許可証)などいろいろな手法を議論してきた。そもそも移民に強い期待を抱くか(どうかについて)、国民的な議論がかなり必要だと思う。労働者側、経営者側でも意見が異なるであろうし、移民(受け入れ)で簡単に物事が解決するというわけではない。国民的議論を喚起するのが今の時期(に行うべきこと)だと思う。日本人に伝統的文化としてある(抵抗の少ない)フランス的な(出生率引き上げという)手法と、(移民受け入れという)二つの手法、さらに時間を考え、納得性のある政策にしていかなければなかなか動かないだろう。

Q: 一票の格差の件について、長谷川前代表幹事はかねてから力を込めて発言されており、今回制度上ひとつの決着をみたわけだが、それについての受け止めを伺いたい。ただ、そうはいいながらもまだ3倍近くの格差があるということ、また合区に関しては地方を中心に賛否もあったようだが、そういったことも含めてお伺いしたい。

小林: 参議院で以前は格差が5倍を超えていて、今は2.97倍と(なるわけだが)、まだ2倍以下にすべきという方向の中で、数値を見る限り、公明党が主張しているような、もう一段踏み込んだ方向に決着させるのが最終的には必要だと思う。しかし、今回こういった形で自民党の一部の欠席はあったにせよ、10増10減の合区が可決されたということは、ひとつの進歩であろう。ただ、これで終わりということではなくて、次も大いに議論してほしい。

Q: 合区については、賛否があるようだが。

小林: どの地方自治体をもって代表とするか(といった問題はあるが)、判決によれば地域をもってリジットに考える必要はないといっている。そういう意味では、70年来、憲政史上初めてのトライをし、合区という形で可決したことは、ひとつの相当な進歩だと思う。自民党の中では、(合区に伴う障害を)埋め合わせる手法があったのだろうが、これまで全く動かなかった。そのような中、公明党の主張に自民党が乗れれば理想だったが、(今回可決された形は)ひとつの大きな進歩だと思う。

Q: 移民の議論について、同友会として、何か提言はあるか。

小林: 人口問題委員会を設置しており、オリックスの井上社長が委員長を務めている。ここで、移民に限らず、少子化対策、グリーンカードを含めた議論を開始したところである。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)

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