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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年7月7日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)川内原発再稼働に向けて、(2)ギリシャ情勢、(3)税制改正、(4)トヨタ自動車外国人役員逮捕、(5)安保法制、(6)夏季セミナーにおける議論、などについて発言があった。

Q: 本日(7月7日)、九州電力川内原発1号機に核燃料が装荷される予定であり、8月13日ごろに再稼働する見込みとなった。原発の再稼働については今なお世論に抵抗があると思うが、どう受け止めているか。

小林: 特にエネルギー多消費産業にとっては、エネルギーコストの高さは非常に致命的なポイントとなる。もともと六重苦と言われて久しいが、安倍政権になって2年半、まずアベノミクスの第一の矢、第二の矢によって円高という為替のハンディキャップは見事に取り外された。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定も(方向性が)見えてきた。労働法制も3本の法案のうち1本は衆議院を通過し、参議院で審議に入る。法人税率も25%に向かっての方向性も見えてきた。国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に向けての地球温暖化問題も、コストをどうするかは別として方向性がだいぶ前に進んできた。

そういった中で残るのは、電力コストと、資源が乏しい日本が資源の枯渇に対してどう立ち向かうかである。もともと海外から燃料や原料を輸入し、加工して輸出する産業が発展してきたわけであるが、その最大のポイントがエネルギーコストだった。そういった意味で、日本は震災前までは50%以上の原子力比率をベースにして、CO2も削減しつつ電力コストを下げようという目標を立てていたが、不幸にしてあのような大変な原発事故が起き、安全性をもう一度見直そうということとなった。安全について、100%というのは当然ないわけで、サイエンスにおいて必ず何らかの形で1万年に1回ぐらいの確率で揺らぎが出てしまうものである。

こうした認識の下で、原子力規制委員会がきわめて精緻に審査した結果としてOKが出たという点で、技術的には大丈夫だということになった。後は、万一の時の訓練などソフトウェアの部分を充実させつつ、スタートすることは正当なことだと思う。国の経済という視点から見て非常にポジティブに捉えて良いのではないか。徐々に新しく認可を受けた原発が再稼働され、2030年に最低20%程度の比率にしていくための一つの区切りとなる。ただ川内原発も停止してから4年以上、再稼働を申請してからほぼ2年を経ており、もう少し早くならないものかという気はする。

Q: 先ほどの自民党の会合の中で報道機関に対して経済界を通じて圧力をかけるように求める発言が出た。この一連の問題についてどう受け止めているか。

小林: 言論の自由、報道の自由について、自民党のほんの一部の人たちがそう思っているのだと思うが、残念である。

Q: ギリシャ情勢について、今夜ユーロ圏首脳会議でギリシャへの支援について話し合われる予定だが、今後のギリシャ情勢の見通しと落としどころ、日本経済への影響について伺いたい。

小林: 今日、日経平均株価は200円ほど上昇し、戻ってきた。金利も下がっており、昨日に比べ反対の動きをしている。気になるのはWTI原油先物が4ドル程度下がったことである。ここ1、2ヶ月は、EUとギリシャが議論する中で(マーケットは)神経質な動きをすると思うが、(ギリシャは、ユーロ圏での)経済規模が2%程度と、それほど大きくはない。(今後、)年金まで減らしていく緊縮政策に対する抵抗感がさらに喚起されて、全体のムードとしてアンチドイツ、アンチEUの動きにならないことを祈りたい。

最も気になることは、ロシアや中国の動きなど、政治的な影響が長期的にダメージとして効いてくることである。(ギリシャが)EUにとどまってくれるのがベストな方向であり、今後の交渉がうまく進むことを期待する。

日本への影響について当面はそれほど大きくはないと思うが、これが小さなトリガーとなって、最終的に(国際)政治の方向性が変わってくることに対する危惧は持っている。

Q: 政府税制調査会の議論が始まった。配偶者控除など、所得税改革の話がメインになってくると思うが、来年の税制改正に向けて経済同友会としてはどのような点に焦点を当てていきたいと考えているか。また、先日、菅義偉官房長官が、来年度の税制改正に企業版ふるさと納税を盛り込みたいと発言したが、こうした発想に対する評価を伺いたい。

小林: まさに「税こそが政治」である。6月30日に閣議決定された骨太の方針(「経済財政運営と改革の基本方針2015」)が基本になるが、税制は世代間格差(の問題)が焦点となる局面に差し掛かっており、若者の活性化を踏まえた方向(性)が一番のポイントである。また、高所得者から低所得者への(所得の)再分配を円滑に行う仕掛けづくりも考えていくべきだと思う。

企業版ふるさと納税については、長谷川閑史前代表幹事もかねてから発言しているように、経済同友会として大いに前向きに検討していくべき事項だと考えている。

Q: 先般、トヨタ自動車の外国人役員が麻薬保持の疑いで逮捕されたが、グローバル人材活用の流れになっていくと思われる中、真相はまだ明らかではないものの、今回の一件についてどうか考えるか。また、こういったことを未然に防ぐための対策についてどう考えるか。

小林: 本件は、どういう最終結果になるのかを踏まえて議論すべきことかと思うが、現段階で言えるのは、個社の話はどうあれ、日本はいま、非常にダイナミックに、ROE経営、コーポレート・ガバナンス、あるいはスチュワードシップコードなどに取り組んでいる。成長戦略の議論がトリガーになり、機も熟したところで、社外取締役の2名以上の選任など、ここ2、3年で状況がドラスティックに変わってきた。ROEについても、経済同友会は10%以上を標榜しているが、平均的には8~10%あたりを目指すようになっている。資本効率を上げる一方で、ダイバーシティを強化し、潜在成長率・資本・投資・労働・イノベーションについて、いかに効率を上げるかということに関して、各法人はかなり注意深く変化を捉え、自らが変わっていこうとしている。その流れの中で、相当慎重にチェックしても、中には漏れるものもあるということを考えつつ、マネジメントしていくべきと考える。

Q: 今回の安全保障法制が整備されれば、例えば日系企業のタンカーが海賊の出没するような海域で活動する際、自衛隊の輸送機あるいは艦隊からの保護が担保されると思うか。また、経済同友会では、今回の安保法制について個別に議論しているか。

小林: 完全に担保されるかどうかは状況次第かと思う。自衛隊(だけ)でできるのか、あるいは米軍と一緒にやる方がよいのか。そういったことを含めた応用問題として考えるべきである。保護されるということは完全に担保できないが、保護される確率は高くなるとは思う。経済同友会では、従来は議論したことがあるかもしれないが、今回の法律に関して、個別の議論は具体的には始まっていない。

物理的に自衛隊が行ってタンカーを助けるというのは、もちろん大きな一つの議論の方向だが、視点として一つ欠けていると思うのは、これだけのサイバー・セキュリティや情報戦争の時代に、ある国は衛星を打ち落とす可能性もあるし、ある国はミサイルをどこかに向けるということもある中で、先に手を打たないと、瞬間的に一発で日本の国土が大打撃を受けてしまう可能性があることだ。かつてのように自分の家族が1年とか2年、戦地に赴くといった戦争のパターンは、もう21世紀に(主としては)あり得ず、リアルからサイバーへの情報戦争の時代になっていくと思う。その意味では、日本が衛星などですべての情報を網羅することは難しく、やはり米国の方がはるかに優れているのが実情である。従って、情報を共有するということがかなり重要なポイントになると思う。国会で諮って議論するなどといったことは言っていられない場合もあるだろう。そういった議論が足りないことが心配である。リアル・エコノミーもバーチャル・エコノミーも、いかにハイブリッドでやっていくかを考える経済・社会になっているが、例えばIoT(Internet of Things)については、経済だけではなくて安全保障にも当てはまると考える。中国、アジア、アメリカもそういうフェーズに入っている中で、いつまでもリアルばかりを議論していることを懸念している。

Q: 来週の経済同友会夏季セミナーでは、「持続可能な社会の構築に向けて」という大きなテーマで議論されると伺っている。小林代表幹事の就任後初のセミナーであるが、どのような議論をしたいと考えているか。

小林: われわれ経済人としては、社会に対してどうコミットし、次の世代に問題のあるものを残さず、良いものを残すべく、どう努力をしていくかが最大のポイントだ。サステナブル、持続可能性というのは、次の世代に、どれだけまっとうなものを残せるか(であり、これは自身の)最大の思いでもある。財政健全化はその筆頭であり、莫大な借金を(今以上に)もっと増やした形で(次世代に)背負ってもらうのでは困る。原子力にしても、とにかく人類はそういうものに手を出した。これを何とかリサイクルを含め、あるいは単純なストレージを含め、きちんとした形でテクノロジーを残していかないとならない。ここで逃げたら、結局、今までの残渣の物をどう処理するかという作業さえできない。原子力を専攻する若者がいなくなったら廃炉さえできない。あるいは高齢化社会で若い人が大幅に減り、地方も疲弊していく中で、やはり一定程度の技術力、ロボット技術も含め、今後の社会に向けて何を準備すべきかという大きな課題を日本は持っている。

そのような中でわれわれ経済人は何ができるか。まず第一に(民間企業としては)儲けなければ仕方がない。いかに生産性を効率よく上げるか。ROEは各産業によって最適点があるため、そのあたりも議論したい。また、高齢化社会の中での農業、観光、地方分権などの地方創生の議論、あるいは震災後4年経ったが復興がままならない東北に対して今後どうコミットしていくか(という議論)。(さらに)20年、30年、50年先のあるべき社会システムは、単純に効率だけを追えばいい(社会システムな)のか。名目GDPの500兆円が1,000兆円までいくと考えることが無理で、GDPの単純な成長が限界にきたとき、2025年に向けて75歳(以上の人口)が増える中で、財政をどうキープしていくか。2020年問題以上(の問題)である。あるべき経済社会というのは、借金はもちろん返すが、この日本だけで数値的な成長が追えるのかどうか。人々のウェルビーイング(良好な状態)とは一体何なのか。これらをまじめに議論していかないと、いつまでもリニアに一直線で成長するというところに戻るのは、どこかで破たんをきたすような気がする。こういった議論ができればと考えている。

Q: ROE経営を突き詰めると、いかに収益を上げるかということだと思う。日本の競争環境については企業数が多いという指摘が(以前)あったが、淘汰・再編の形を来週の夏季セミナーで議論するか。

小林: 一部は(議論の中に)入ってくるだろう。銀行、損保、鉄鋼など、かなり集約化が進んだ業界はある。ただ、例えば化学や食品の業界は、何万もの企業がひしめいており、海外と比較すると(各社の)売上高や利益率が低い。(こうした状況は)グローバル化の中で許されなくなった。企業の集約化や強い分野へのフォーカスは、(これまでのような)官や銀行主導ではなく、経営者自身が実行していかなければならない。経営者の心の中にある岩盤を崩すという議論を(夏季セミナーで)すべきであり、他力本願でなく自力で、という雰囲気を作りたい。

Q: 代表幹事の会社はどうか。

小林: (私は)会長なので、オペレーションではなく、監督する立場だ。(ただ、企業経営も)農業を集約化して効率化するのと同様に、なかなか難しい。自分の田んぼのコメはうまいと言っているのが日本の文化である。狩猟民族は1か0で、強い者が勝つ(という世界だ)。日本は村八分にならないように、俺の米はうまいが、お前の米もうまい(という世界であり)、これを壊さないとグローバル化しない。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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