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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年5月25日(月) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、小林喜光代表幹事より、(1)景気認識、(2)日中関係、(3)世界遺産、(4)安全保障法制、(5)労働法制、(6)コーポレート・ガナバンス・コード、(7)軽減税率、などについて発言があった。

Q: 先週、黒田東彦日本銀行総裁は記者会見で景気認識について、物価上昇率も当初の目標に向かいつつあり、賃金の上昇も反映されたせいか、かなり前向きな見方を示した。代表幹事の現状の景気認識について伺いたい。

小林: (実質GDPが)前期比で0.6%増、そのうち、在庫(の寄与度が)0.5%程度である。そのような意味で、4-6月期の景気を見てから確信を高めたい。名目(GDP)も年率換算すれば7.7%増。GDPデフレーターもかなりプラスの数値になる。結局、原油価格が1-3月期に急激に低下した影響が形として表れているように思う。4-6月期になれば、1バレル当たり40ドル近くまで低下したものが、60ドルあたりに戻ってきていることも含め、それらを見て確信を得たい。まだ、かなり安定した、と言える段階ではないが、この明るい雰囲気を継続することができれば良い。物価についても原油価格が安定すれば、どこで落ち着くかは別として、良い効果を期待できる。

Q: 先日、二階俊博自民党総務会長と習近平中国国家主席との会談も友好裏に終了し、日中関係は進展が見られる。一方で、安倍政権の70年談話発表前に歓迎するという思惑があったのではないかとの一部報道もある。日中関係について、現状も踏まえ、代表幹事の考えを伺いたい。

小林: 自社では、2年ほど前から、中国の国営企業との仕事は進みづらい状況にあった。しかし、ここにきて安定的に物を見るフェーズに入ってきたというのが実感だ。70年談話に向けての思惑があったかどうかは別として、この度の3,000人規模の大訪中団受け入れは、近年では予想できないような対応であり、良い雰囲気が醸成されている。日中関係は重要な局面に入ってきており、これは肯定的に捉えるべきだと思う。韓国との関係も含めて、現状は、政経分離ともいうべきツートラックでの対話が進み、状況が変化しつつある、そうした好機にあると捉えている。

Q: 重要な局面とは、具体的にどのようなことを想定しているか。政治日程的には、6月7日、8日にドイツで行われるG7エルマウ・サミットに際して首脳会談を期待しているという理解でよいか。

小林: 会談をテコにして今の状況からさらに一歩進めるということだと思う。

Q: 先般、榊原定征経団連会長が日韓経済協会の会合前に朴槿恵韓国大統領を表敬訪問した。かなり友好的だったという報道だが、先ほど述べられたツートラック方式といわれる、政治経済と文化や歴史問題は別に考える、ということが如実に反映されたと思う。しかし、世界遺産については、大統領も、歴史的な認識をしっかりと持ってほしいということだった。世界遺産の関連で、日韓関係についての見解を伺いたい。

小林: 世界遺産については、時間軸がずれている部分もあり、(韓国の主張を)関連づけるというところは、なかなか理解が難しいという印象である。

Q: 安全保障の関連法案について、これから国会で審議入りとなるが、先日行われた党首討論なども踏まえ、あらためて安保関連法案に対する代表幹事の認識を伺いたい。

小林: 安保法制そのものを考える以前に、戦後70年経った日本国と、それを取り巻く国際関係から考える必要がある。大統領選が終わってみないと分からないが、これまで中心となってきた米国が、イアン・ブレマー氏が出版した著書『スーパーパワー=超大国』でも示されているように、自分の頭の上の蠅だけを追う方向を目指すのか。あるいは、これまで通り伝統的スーパーパワーを発揮し、世界の警察官を目指すのか、完全にマネーボールという効率的な国家を目指すのか。そのあたりも踏まえ、議論が必要であると思う。中国、韓国、とりわけ北朝鮮、あるいはシーレーン、南シナ海の問題等、日本の石油タンカーのルートも含めて、経済に対しても大きな流れの変化をきたすような世界情勢で、国は何をするのか、国民を守る目的をどのような形で果たすか、という前提ありきだと思う。そのような中で、襲われた時にどのように対処するかという議論と同時に、忘れてはならないのは、日本の国是、50年、100年の計として、憲法の改正も含めた本質的な議論をやっていただくのが筋かと思う。そのあたりに期待したい。これは自民党(与党)だけでなく、野党に対しても同じことが言える。

Q: 株価について、先週来、時価総額が過去最高を更新し続けている。株価についての受けとめと、それに関連し、株高ないし景気の好調を実感できない消費者、一般大衆に対してどのような方策が必要と認識しているかについて伺いたい。

小林: 銘柄の組み合わせに違いもあるが、時価総額としてはバブル期と同等の規模である。しかし、PER(株価収益率)は、当時と比べ低く、黒田日銀総裁も述べているように、決して現状がバブルであるという認識はない。最大のポイントは、アベノミクスにより80円から120円へと円安が進み、大企業を中心とした日本経済の国際競争力がほぼ回復してきたことにあり、その果実が2013、2014年と現れてきた。本日の新聞報道によれば、日本企業のROE(自己資本利益率)は、3社に1社が10%を超えているとされ、それをマーケットがきちんと評価した結果とも言えるのではないか。今後、賃金や物価が並行して上昇していくことにより、どれだけトリクルダウンが起こり、中小企業へもその効果が波及していくか。両論はあるのは承知だが、大きいところが温まれば、小さいところも温まるのが普通で、そうしたフェーズに入っていくのではないかと思う。米国(FRB)の出口戦略問題もあるだろうが、原油価格が変わらず、120円台の為替をキープすることができれば、ここ2~3年は比較的、安定して進むだろうし、うまく対処ができれば、少なくとも東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年まではうまく行けるだろう。この間に人口問題も含め、それ以降の備えを進めることができる絶好のチャンスが来つつあるのではないかと考えている。

Q: 一般論として、5月の終わりになっても決算できない状況の大企業があることについて代表幹事の意見を伺いたい。

小林: 特に意見はない。たまたま間違えたり見過ごしてしまったりすることは、一般論としてはあると思う。しかし、いずれにせよまだ正式な結果が出ない中でのコメントは控えさせていただきたい。

Q: 解体が言われているシャープについてもそのような認識か。

小林: 感慨が深い。コンシューマーエレキ(消費者家電)が一体どうだったかというあたりまで振り返ると、当時、円高でどの電機企業も苦労されていたが、2000年代初頭は、日本が最も優れていたのはコンシューマーエレキと自動車という時代だった。だから、シャープがどうであるといった個々の企業に対する認識ではなくて、やはり為替はとても重要だとの実感がむしろ伝わってくる。

Q: 労働者派遣法改正について、労働者を働かせる側のメリットはいろいろと言われている。しかし、働き手の目からみてメリットはあるのかという懸念が指摘されている。働き手に対する影響をどのように考えているか。

小林: 基本的に言えば、やはり働き方のフレキシビリティというか、自由度を上げる中の一つ(の政策)と捉えればと思う。働く側もそれぞれの選択をできる、そういうオプションが増えたということは正しいと思う。当然、働かせる側も、法律ができたから、それに単に則っていればいいという見方よりは、やはり働く側を常に配慮すべきである。制度があっても運用によって相当変わるので、これは心していくべきだと思う。

Q: 運用次第という話について、例えば、非正規社員をスキル次第で正規社員にするよう促すという内容も盛り込まれているようだが、これはあくまでも性善説ではないか。企業への期待が込められているが、働く側にとっては疑心暗鬼になり、賛否が分かれているという状況ではないか。経済界として正しい運用をするための働きかけや取り組み、提言などを考えているのか、お聞かせいただきたい。

小林: 景気が良くなり、人手不足という状況が続けば、必然的に、早く正規での雇用をという方向性が出てくるような気がする。一律の内部規制でなくとも、日本の場合は性善説で、少なくとも経営者のメンタリティ面には期待できると思うし、悲観はしていない。

横尾: 正規ありきでもないということである。

小林: 労働者側からみても、すべてが正規でありたいわけではなく、そこのフレキシビリティをどう考えるかだ。

Q: 戦後70年の関係で、夏に安倍晋三首相が談話を出すと言われているが、植民地支配への反省認識を盛り込むかどうかについて、代表幹事の見解を伺いたい。

小林: これも複雑かつセンシティブな話だが、先日安倍首相が米国で演説された中で使われた二つのことばremorse、repentanceには、相当悔恨の念が入っている。言葉というのは、状況によってかなり変化するような気がする。中国・韓国の状況が変化している中で、この二つの言葉以上に反省を意味する言葉があるのかどうか。官邸以外も含めた関係者間で知恵を出して適切な言葉を出すと期待している。

Q: 先程ROEの話があったが、平均では日本企業のROEは欧米と比較するとまだまだ低く、5%に満たない企業もかなり多い。今後日本企業全体として効率経営を目指すには何が必要か。また、6月からコーポレート・ガバナンス・コードの適用が始まるが、独立社外取締役選任の動きや持ち合い株解消の動きが出てきているが、こういった企業の動きについてどうお考えか。

小林: 自社のROEは6.4%である。業界によっても相当違うが、欧米に比べると化学業界は相当悪い。それはエネルギー・コストが非常に高くて、中東の石油や、今や米国のシェールオイル等を使っていかなければいけないことが大きい。結果としてハンディキャップの大きさは、業界間によってかなり明確に差がある。ROEは本質的にはやはり最適化のプロセスだと思う。無理にROEを上げようとすることは、持続可能ではない。例えば、研究開発のコストを減らせば、製薬企業のROEはあっという間に20~30%になるが、次の新薬は出てこないだろう。特に製造業は、どのあたりに設備投資や研究開発投資を行うかといった最適化プロセスの中でまず考えていかなくてはならないと思う。とりわけ米国と比べてROEは相当低いわけだが、欧州並みに持っていくためには、六重苦に対処する必要がある。不利な為替、高い法人税、硬直的な労働法制、環境規制の強化、あるいはTPPについては少し可能性が見えてきてはいるが、自由貿易協定への対応の遅れ、これら五つのほか、どうにもならないのがエネルギー・コストと資源コストの問題である。しかし、為替が非常にドラスティックに良い方向に向かったために良い形になってきている。そういう意味で、他のサービス産業含め、かなり良い方向にきたと言える。その結果、効率の良い経営をするという、日本の経営者の方向性が一つになってきた。ただし日本の場合怖いのは、ROEと言い始めたら皆ROEと言い出すという懸念がある。そこは個々の経営者のものの考え方が重要で、新たなイノベーション・テクノロジーを生むための長期的な投資をどうするかについては、もう少し自由度をもってやっていくべきだと思う。コーポレート・ガバナンスについては、経済同友会では、以前より社外取締役は2名以上と主張しており、これはグローバルなマーケット・スタンダードとしては、やはりコーポレート・ガバナンス・コードでいわれる類のことはますます加速している。オープンでフェアで、かつ透明性の高い形にすべきだと思う。

Q: 社外取締役は米国では過半数だが、日本も将来的にはそういう方向にいくべきか。

小林: どのようなフェーズにもっていくかという議論はあるが、三つのカテゴリーの株式会社があり、指名委員会等設置会社になれば過半数になるかと思う。一方、グーグルは3~4人くらいで経営している。社外取締役もいない。そういう一部の若くてイノベーティブで新しい会社については、最初から委員会等設置会社にする必要もないだろう。その辺の自由度はむしろアメリカこそ持っているのではないか。

Q: 軽減税率について、与党で本格的な検討が始まった。経済同友会は昨年の7月に9団体連名で『消費税の複数税率導入に反対する意見』を出し、単一税率を維持すべきとした。あらためて、反対している理由と軽減税率に関する所見を伺いたい。

小林: 基本的には、経済同友会としてのスタンスは変えていない。消費税率10%というレベルでは、極めて煩雑でコストがかかり、結果として税収が減るもの(軽減税率の導入)については、積極的に賛成はできない。どれくらいの税率から軽減していくべきかという議論はしておらず何とも言い難いが、17%程度というオーダーであれば、大いに議論するときが来るかもしれない。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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