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小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年5月12日(火) 13:30~
出席者 小林 喜光 代表幹事
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事

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小林喜光代表幹事より、冒頭挨拶の後、記者の質問に答える形で、(1)安保法制、(2)財政健全化、(3)世界経済の動向、(4)労働法制、(5)国内経済などについて発言があった。最後に、横尾敬介副代表幹事・専務理事からも挨拶があった。

Q: 代表幹事就任後、初めての定例記者会見となる。はじめに小林代表幹事より、一言お願いしたい。

小林: 自分自身がどのような方向を歩むかを含め、試行錯誤が始まったというレベルである。任期を全うできるよう、皆さんのご支援をぜひよろしくお願いしたい。

安倍晋三首相が訪米し、非常に立派なパフォーマンスを示された。さらにこの6月から8月にかけて、安保法制、プライマリーバランス2020年の黒字化をはじめとした財政再建、原子力をはじめとしたエネルギー、労働法制、ダイバーシティなど、日本の懸案事項が今まさに同時並行的に動き出す、そういう時期に差しかかってきている。このような中で、経済同友会としてどのようなスタンスで提言活動を行っていくか。

この10年、20年、ずっと訴え続けている財政再建については、試算によって、いかにシビアであるかが分かっている。アベノミクス第三の矢(成長戦略)に対して、われわれ企業経営者もかなり責任を持って、経済成長の実現に取り組まなければならない。5年、10年、20年、あるいは50年先を見据え、どのような準備をしていくべきか。今ボールはわれわれ経営者側にある、という認識を持っている。

政治、経済全体に対して提言を行うと同時に、どのように行動していくか、これまで以上に行動する経営者の集団として、結果を出すための議論も必要ではないかと思っている。スタートからあまり気張りすぎないよう、淡々と、しかし、しっかりと議論して、やるべきことをやり、結果を出していきたいという覚悟でいる。

Q: 安保法制について、昨日、与党合意がなされた。14日に臨時閣議で決定、15日に国会提出の予定である。今、まさに課題山積の中で、安保法制が大きなプライオリティを持っていると思うが、見解を伺いたい。

小林: 経済同友会はこれまでも集団的自衛権行使の必要性を訴えてきている。基本的には、憲法の制約の中で議論すべきであるが、いずれは憲法そのものに関する国民的議論が必要だと思う。戦後70年で、アジアのパワーバランスを含め、日本を取り巻く政治状況が変わってきている。国際平和にどのような形で貢献するか、自国をわれわれ自身でどう守っていくか、そして同盟国と共にどのような形で防衛していくかについて議論を深め、公明党も含めて一定の結論に達したということは、大いに評価できる。

Q: 安全保障関連法案について、小林代表幹事は、世界情勢の動きに合わせた対応として評価された、と理解したが、立憲主義の視点から特に手続き論について異論を唱える向きもある。昨日の経団連の会見では、榊原会長が「国民の理解がまだ十分ではない」と述べられた。これに関してどのように受け止めているか。

小林: 財政健全化計画における計算と同様に、安保法制も複雑系である。われわれはこの70年間で平和に慣れてしまい、有事に対する心構えがあまりできていない。10本に余る法律の変更や、集団的自衛権の行使を含め、非常に複雑な部分も追加され、一方では、世界全体の平和を守るための後方支援という新しいコンセプトも入ってきている。全体をきちんと把握し、個別の法案を熟知して、個々に自分の意見を持つまでに至った人は、そう多くいるような状況ではないと思う。今後の手続きにかかわらず、議論の俎上に上がった段階で、国民的議論を喚起するための分かりやすい情報提供などをメディアの方々にもお願いしたいと思う。そもそも自国を守るということはどういうことなのかを含め、国民が議論できるよう、咀嚼して、分かりやすく伝えてほしい。世界の安全保障の常識も含め、世界の情勢はどうなっているのか。中東やIS(イスラミックステート)など報道は比較的なされているが、身近である尖閣諸島の問題を含め、21世紀の世界情勢について、国民が包括的に把握できるように努めなくてはならないと思う。

Q: 14日の閣議決定後、国会での審議が始まるが、会期内だと期間は1カ月半ということになる。「国民的な議論」という話からすれば、国会審議こそ、そのような場であるべきと考えるが、今国会での成立の可能性も含め、審議時間は十分にあると考えるか。

小林: 決めるべきことはきちんと決める、という姿勢が重要であり、期間については、次の問題になると思う。

Q: 基礎的財政収支(PB)について、今、政府の経済財政諮問会議では、2020年度までの財政健全化計画が議論されている。経済同友会は、既に2024年度までに消費税率を17%に引き上げるべきとの提言を発表しているが、引き続き、17%への引き上げを主張していく考えか。また、あらためて、現状でどのような見解を持っているか伺いたい。

小林: 経済財政諮問会議の民間議員を1年9カ月務めていた時も、議論のテーマは、基本的な解析と、経済成長をベースにして、消費税をも含んだ歳入の拡大と、今後、高齢化が進む中で毎年一兆円近くも増えていく社会保障費をどれだけ削減するか、ということであった。これはある意味、算数の問題だと思う。今、2015年度のPBの赤字額が16.4兆円、2020年度に向けて実質2%以上、名目3%以上の経済成長をベースに仮定をしても歳入増は7兆円で、黒字化にはまだ9.4兆円も足らない。

本日の報道によると、2018年度に中間目標を設定し、2017年4月の消費税率10%への引き上げを経て、そのトレンドをしっかりと見た後、もう一度それをフィードバックする形で2020年度までの計画を見直していくことが、経済財政諮問会議で議論されているようである。また、GDP比でPBの赤字を1%程度まで改善する目標を掲げて、歳出削減と同時に、経済成長分の増収についても考えていると報道されている。安倍首相や甘利明経済再生担当大臣のお考えは、消費税率10%を超える引き上げは少なくとも2020年までは凍結したいとのことである。そのような前提で計算すると、かなりの経済成長をベースにしても、社会保障費を中心とした6~10兆円近くの歳出削減が計算上必要になってくる。とはいえ、消費税率10%への引き上げ後の18年から20年にかけて、さらに消費税率を引き上げた場合に、今度は経済がシュリンクしてしまったら元も子もない。消費税率を5%から8%に引き上げた際、1年近く実体経済は元に戻らなかったことを考えると、政治に携わる人たちの判断として理解はできる。

しかし、そうは言っても算数が合わない。2020年代後半には、さらに高齢化が進み、稼ぎ手がいなくなる。経済同友会が発表した提言「財政再建は待ったなし~次世代にツケを残すな~」(2015年1月21日発表)では、たとえ消費税率を毎年1%ずつ引き上げて17%にし、かつ、毎年5,000億円ぐらいの社会保障費を削ったとしても厳しいという内容である。では2020年に向かって、10%からどれだけ引き上げるべきなのか。6~7月の諮問会議からの結論を待って、議論をしていきたいと思う。

Q: 世界経済について伺いたい。ゴールデンウィークに入る前に、米国のGDPが思ったより伸びておらず、また、先立って中国が利下げするなど、世界経済の成長のベースになっている国の変調が見えるようだが、世界経済に対する認識と、このことをどのように見ているか伺いたい。

小林: 確かに、この2、3カ月で、経済同友会の会合などで会員の意見を聞いていると、かなり悲観的なことを述べる人もいる。特に、米国が本当にこのままGDP成長率が伸び悩む状態になるのか、それともこの1、2カ月でまた成長軌道に戻るのかどうか。1~3月期の中国のGDPは前年同期比7.0%増という結果が出ているが、必ずしも皆が楽観視していないというのが現状かと思う。これは性急に結論を出すというより、あと2、3カ月、特に米国経済に関しては、いろいろな結果を見ないと、良し悪しを判断することはなかなか難しいのではないかとは思う。ただ、そうはいっても、日本の場合は、今までどおりの成長戦略、国内の活性化を進めると同時に、為替が1ドル120円あたりで推移するなら、これをやはり大いにうまく使って、しっかりと外でも稼ぐ。このようなことを続けていく以外にないと思っている。

Q: GDP成長率が名目3%、実質2%という比較的高めの経済成長が前提条件のもとで、2020年度までの財政健全化計画を策定することについて見解を伺いたい。

小林: おそらく現在、名目2%、実質1%レベルではないか。そうであれば、2020年でも16.4兆円のPB赤字がそのまま残ってしまうというくらい状況はシビアである。そもそも日本の潜在成長率がおよそ0.6~0.8%のレベルで、資本や労働、あるいは全要素生産性(TFP)を含めて、個々にどうすれば名目3%、実質2%を達成できるのか。現在のGDP成長率はほとんどゼロに等しい。それは消費税率引き上げの影響を含め、いろいろな影響はあったにせよ、実質2%以上という目標は、簡単な数値ではない。

経済財政諮問会議による、あるいは財務省も含め、個々の歳出をいかに削減するかという議論はもちろん必要である。その一方で、産業競争力会議では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、それまでに何をやるかを議論している。医療、ヘルスケアソリューション的な新しい予防医学、農業、マイナンバーの活用などによる新しいビジネスの創出、環境や省エネ問題、新エネルギー開発などである。しかし、時間軸を考えれば、これらはすべて5~10年は先になるような議論である。イノベーション自体、10年、20年のスパンの話であって、1、2年先に、本当にGDP成長率が上がるような議論をしているのかというと、少しフェーズが違っており、時間軸のずれを感じる。

2018年度に、歳出削減により6兆円程度改善させるという議論だが、これは高成長を前提とした試算であって、見通しと現状認識の乖離は問題だと思っている。歳出削減もさることながら、経済成長と歳入拡大の試算が具体性のある数値かを、もう少し検証する必要があると考えている。

Q: 政権内にも、かつての社会保障費2,200億円削減が実現できなったトラウマがあるのではと思うが、これから取り組む歳出削減はそれ以上のものになるのではないか。多少高めの経済成長を見込んだとしても厳しい状況で、やる覚悟があるのか、やれる項目はあるのかということがあると思うが、見解を伺いたい。

小林: 確かに小泉政権時の社会保障費2,200億円削減は、ほとんど実現できなかった。まさにご質問のとおり、本当に今回、それ以上の歳出削減を、しかも高齢化が進み社会保障費の自然増が大きい中で実行するということは、まさに覚悟の問題であり、政治が実行できるかどうかである。われわれもこの覚悟を問うていくしかないと思う。バーゼルの新規制(銀行が保有する長期国債等の金利変動リスクを反映した新規制)なども出てきており、世界は甘くは見てくれない。また、次の世代に禍根を残さないようにすべきであり、今、この強い安倍政権の時代に、やはり確たる覚悟を持ってやる以外ないと思う。

Q: 労働法制について、労働者派遣法の改正案が、本日から衆議院で審議入りした。この法案の内容に関する所見と、これが実現・成立した場合、経済界にどのような影響があるのかを伺いたい。

小林: 基本的には時代の背景もあると思う。私の若いころは、工場、いわゆるコンビナートでの交代制の勤務であった。やがてIT化が進み、オフィスの仕事が中心となり、単純なものづくりやサービスから、非常に高度な世界での競争へと、事業内容も変化してきている。このような中で、高い競争力を持ち、最も効率良く、良い環境で働くためには、どうしたらよいか、ということだと思う。

働き方も多様化し、その人に合った個別の働き方がある。それにどう合わせていくかの第一歩と捉えている。従来どおりの労働者を守るということだけでは、対応しきれないのではないか。経営との関係性も含め、より効率良く、あるいは能力のある人は、それなりの自由度や報酬が得られるようにするといった社会でなければ、グローバルな戦いの中で、外国籍人材などが来てくれないだろう。そのような視点で見る部分と、従来の日本文化を育んできた働き方からの移行期における配慮というのが必要だと思う。

Q: 労働者側から見れば、非正規雇用者のキャリアの安定化や正社員化などにつながっていくのかという疑問もある。この点についても伺いたい。

小林: どのような制度であっても、結局は各企業のマネジメントの問題に行き着くのではないか。新しい制度を導入し、2、3年経過を見た上で議論する、というのが前に進む方法だと思う。

Q: 国内経済では、20日に1–3月のGDPが発表される。今のところ、民間アナリストの予想では1%前後と、成長の動きが依然弱いという状況のようである。実体経済の現状をどのように感じているか、やや持ち直してきているのか、さらに今後、どのように経済が推移すると見ているかについて見解を伺いたい。

小林: いまだに為替の影響は良い方向に続いている。この2015年度は、例えば化学工業界では、まだまだ成長していく可能性があり、前向きに捉えて良いのではないか。内需・外需とも2015~16年あたりまでは、かなり期待できる状況だと思っている。

Q: 昨年4月の消費増税後、少し経済が低調であったが、その時期はもう乗り越えているか。

小林: ほぼ乗り越え、今後は、物価も上昇するのではないか。原油次第であるが、原油価格が60ドルあたりを維持できれば、かなり良い方向に行くと見ている。

Q: 横尾専務理事にも一言お願いしたい。

横尾: 小林代表幹事と同様に4月27日の総会で選任され、昨日よりオフィスで実質的な執務が始まった。これまでは、「株式会社」という立場で、民間の利益追求型の会社で仕事をしてきたため、だいぶ雰囲気が違うと感じている。やはり日本の将来をよく考えたとき、日本の根幹をなすような政策提言は非常に大事だと思う。代表幹事が述べたように、実現に向けて、微力ではあるが、少しでもお役に立てればという心境である。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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