代表幹事の発言

2015年度通常総会、理事会後記者会見発言要旨

長谷川 閑史 代表幹事(退任)
柏木 斉 副代表幹事(退任) 橘・フクシマ・咲江 副代表幹事(退任)
藤森 義明 副代表幹事(退任) 岡本 圀衞 副代表幹事(退任)
前原 金一 副代表幹事・専務理事(退任)
小林 喜光 代表幹事(新任)
朝田 照男 副代表幹事(新任) 小林 いずみ 副代表幹事(新任)
隅 修三 副代表幹事(新任) 馬田 一 副代表幹事(新任)
横尾 敬介 副代表幹事・専務理事(新任)

退任の長谷川閑史代表幹事、前原金一副代表幹事・専務理事、柏木斉、橘・フクシマ・咲江、藤森義明、岡本圀衞各副代表幹事の挨拶、次いで、新たに就任となった小林喜光代表幹事、朝田照男、小林いずみ、隅修三、馬田一各副代表幹事、横尾敬介副代表幹事・専務理事から挨拶があった。
その後、記者からの質問に答える形で、(1)代表幹事として最初に取り組みたいこと、(2)基礎的財政収支(PB)、(3)エネルギーミックス、(4)優先すべき政策課題、(5)世界における日本の立ち位置について、小林代表幹事から発言があった。

<退任挨拶>

長谷川:  私の退任挨拶は既に述べたので、一言だけ申し上げる。大変さまざまなことが起きた4年間ではあったが、本当に周りの人に支えられ、人材に恵まれ、経済同友会の活動をある程度は活性化することができたのではないか。無事、任期を満了できたことに感謝申し上げる。

前原:  桜井正光・長谷川閑史両代表幹事という大変優れたリーダーの下で仕事ができて幸せだった。この5年間では、長谷川代表幹事が就任する直前に東日本大震災が発生した。現在、本会の70年史の編纂作業を行っているが、過去の本会の歴史にはなかったような時代だったのではないか。東北の復興をテーマに掲げ、本会全体でかなりのエネルギーを注いだ。事務局も大変なエネルギーを使ったが、たくさんの感動もいただいた。最近では、支援を続けてきた(被災地の)高校で新しい校舎が建設されるなど、復興の兆しもはっきりと目に見えてきた。(活動を続けられたことを)大変ありがたく思っている。今後とも、同友会へのご支援をお願いしたい。5年間お世話になり、ありがとうございました。

柏木:  これまでベンチャー支援、地方分権を(主に)担当してきた。日本の再生には、地方の持つ潜在力を生かした自立が不可欠だと、かねてより提言してきた。長谷川代表幹事が掲げてこられた「行動する経済同友会」ということで、代表幹事にも参加していただき、各地方の知事や市長、各地経済同友会と地域の活性化について意見交換してきたことが大変思い出深い。政府の地方創生が今年度から本格的に動きだす中で、中央に依存するのではなく、意欲のある自治体がまずは動き出すことを期待したい。本当にお世話になりました。ありがとうございました。

フクシマ:  (副代表幹事に就任して)最初の3年間は、人材育成・活用委員会を通じて、女性、外国籍人材といったダイバーシティの促進を、4年目は、そうした多様な人材が高い生産性をもって働ける新しい働き方を検討した。2012年に「『意思決定ボード』のダイバーシティに向けた経営者の行動宣言~競争力としての女性管理職・役員の登用・活用~」(2012年5月28日発表)を発表した。以降、政府の後押しもあり、4年間大変充実した活動ができたと思っている。その中でも、人材の「材」は財産の「財」、「適材適所」に対して「適所適財」というような、本業において私がこだわりを持ってきた概念を発信することもできた。これはひとえに、非常に自由闊達な議論を許していただいた代表幹事をはじめ、幹事の皆様のおかげだと思っている。記者の皆様にも、いろいろと尖った発言をさせていただいたかもしれないが、これからも経済同友会をよろしくお願いしたい。ありがとうございました。

藤森:  副代表幹事は任期のため退任となるが、経済連携委員会をこれまで担当してきており、(経済連携が実際に)できるまでやめない。引き続き経済連携委員会委員長として、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の早期締結、他地域との経済連携の積極的な展開、そして国をもっと開き、グローバリゼーションをどんどん推進していく。しつこく、できるまで発言していきたいと思うので、引き続きよろしくお願い申し上げる。

岡本:  副代表幹事は3年間、財政・税制改革委員長は4年間務めさせていただいた。経済同友会の活動では、いろいろな意見が出て、時には議論で互いが対立するといったホットな状況もたくさんあった。そういった中で、私も大変多くの勉強をさせていただいた。思い出としては、財政・税制改革委員会で財政再建に向けた提言「財政再建は待ったなし~次世代にツケを残すな~」(2015年1月21日)を発表できたことである。このような問題は、誰も取り組みたくないわけだが、委員のメンバーには日本の将来を憂う人が多く、真剣な討議をして、あのような提言を出すことができた。これは大きな収穫であったと思っている。これを支えてくださった長谷川代表幹事に心から感謝申し上げるとともに、小林新体制の下で、経済同友会がさらに大発展することを祈っている。誠にありがとうございました。

<新任挨拶>

小林(喜):  3.11や民主党から自民党への政権交代が起きた中で、これだけの行動と素晴らしい提言を発表してきた長谷川同友会、それを支えた前原専務理事にお疲れ様でしたと申し上げたい。本当にありがとうございました。柏木さんには地方(創生)の先鞭をつけていただいて、文字通り、呼び水となっていただいたので、これをぜひ続けていきたい。日本経済団体連合会の副会長に就任される岡本さんには、財政再建のシミュレーションから始まり、(状況が)こんなに大変であるということを見事に提言にまとめていただいた。それを引き継いで、逃げないでしっかりとやっていきたいと思う。フクシマさんと藤森さんには(それぞれ)雇用・労働市場委員会、経済連携委員会委員長として、日本には極めて重要な分野を今年も担当していただけるということで、よろしくお願いしたい。新任の副代表幹事についても、非常に優秀な方に恵まれたと思っている。個々の分野について勉強する能力もないため、全体をどううまく(整理して)、基本的なメッセージを伝えるのか。会員が楽しく集って、きちんとした意味のある提言や行動(をするためにはどうすればよいか)。今後の日本、世界、自分自身の所属企業を含め、議論できる場が作れればいいと思っている。

就任挨拶でも申し上げたが、戦後70年という一つの節目はモノの時代(からの転換)ではないか。テクノロジーが進歩して、東京オリンピック・パラリンピックまで5年ほどの熟成期間があり、2020年からサイバー空間(の時代)になる。私はそれを「z=a+bi」と呼んでいる。「a」は「atom」、「b」は「bit」である。「i」は「internet」の「i」であると同時に、虚数の「i」である。最近、これが2020年以降の世界をものすごくきれいに表しているのではないかと思っている。それと共役複素数をかけると「a2+b2」、大きさとは量のあるモノだけではなくて、量のないバーチャル空間をこれまで日本はどれだけ押さえてきたか。経済も大転換するだろうし、雇用の形態も変わるだろう。私たちは、そのようなすごい時代に生まれてしまったのではないか。産業革命などと言っていられる時代ではなく、サイバーセキュリティも含め、サイバーの時代になってしまうと、とんでもないことが起こる。それくらいの危機感、逆に言えばわくわく感をもって考えてみたらどうかということが、「Japan version 2.0」の意味に含まれている。いずれにしても、大変革の時代に、持続可能な社会に向かっていかにわれわれが挑戦していくかが大きな課題になる。ロングタームで考えながら、政治と経済はまさに不可分であり、六重苦、七重苦といわれたものが、(政治によって)あっという間に氷解し、経済が活性化した。政治は経済にとって最も重要なエビデンスであることをこの2年数カ月でわれわれは目の当たりにした。もちろん、われわれ(企業)がよって立つものは株主であり、政治はあくまで日本国の選挙民がベースになっており、立場がまったく違う。今後も、緊張感を持った形で、お互い進んでいけたらと思っている。長谷川さんのような優秀な人の後を私が継ぐことになるが、いろいろサポートをいただいて、一緒に考えるという思いで今後も可愛がっていただきたい。

朝田:  2年前に丸紅の会長に就任してから、経済同友会の活動に積極的に携わってきた。2013年度は、TICAD V後であり、アフリカに極めて焦点が当たっていたので、欧州・ロシア・アフリカ委員会委員長として、アフリカ中心の活動報告書をまとめた。昨年は、環境・エネルギー委員会委員長、今年は副代表幹事とともに環境・資源エネルギー委員会委員長を務めさせていただく。原子力・原発のあり方ということで、「縮・原発」を謳ってきたが、さらに掘り下げて、原発はどうあるべきかを踏まえ、将来的なエネルギー計画について、先だって提言「わが国における原発のあり方――豊かな国民生活を支えるベースロード電源として社会に受容されるために――」(2015年3月24日発表)をまとめた。今後は、提言させていただいたエネルギーミックスの実現、使い勝手のよい再生可能エネルギーや、更なる新エネルギーの導入などに向かって活動していきたい。

小林(い):  2007~2008年の1期2年、副代表幹事を務めさせていただいた。日本の社会も経済も、この7年間でずいぶん変わったとあらためて感じている。その間5年ほど海外にいたが、外から日本が変わっていく様子を見て、(今後)日本がどのように変わっていくのか、グローバル社会にどのようなメッセージを発信していくのかが大変重要だと感じた。(今年度は)米州委員会委員長として、皆様のお役に立てればと思う。

隅:  今年度から地方創生委員会委員長を務めることになった。私は田舎から東京に出てきた一人として、この国を心豊かな国にしていくためには、地方が元気で活力がなければならない(と考えている)。国や地方自治体が盛んに取り組みを開始しているが、われわれ民間に何ができるのか、何をしなければならないのか。そういったことをこれから考え、実行・実現につなげていければと思っている。

馬田:  副代表幹事として、精一杯がんばりたい。3月で自社の社長職を退任し、4月から自由な時間ができ、自社のことを考えなければならない時間が少なくなった。これを機会に日本の将来、あるいは日本の若い世代、その次の世代がきちんとやっていけるような国にするにはどうすればよいかを考えていきたい。

横尾:  前原専務理事のようにしっかりとした役割を果たせるか自信はないが、一生懸命やらせていただきたいと思う。2000年の(わが国の)歴史を振り返ると、国の体制が変わる節目があった。直近では第二次世界大戦だと思うが、それから戦後70年、まさに今が日本の国のあり方が変わる時だと個人的には感じており、また、変えなければいけないと感じている。そのタイミングで声をかけていただいて、(副代表幹事・専務理事への就任を決めた。)日本の将来・社会像を考え、意見を発信し、かつ行動を実践していくことができればと思っている。今後、ご指導をいただくことが多いと思うが、ぜひよろしくお願いしたい。

<質疑応答>
Q: 任期の1年目、代表幹事が最初に取り組みたいことは何か。

小林(喜):  2015年度事業計画は継続性(があり)、極端にとんだようなテーマは当然ないわけで、(改革推進)プラットフォームは存続するし、委員会もいくつか新設はされている。先程の就任挨拶でも申し上げたが、経済社会のみならず世界の人間社会の継続がそう簡単な時代ではなくなったという認識の下、一企業、日本の経済社会(に留まらず)、これは欧米でもターム(言葉)として、サステナビリティという言葉はここ10~20年来、当然議論されている。しかし、そこをもう一度ゼロベースというか、こういう大変革という認識の下、(見直していく必要がある。)経済学におけるGDPという指標一つとっても、正確な規律が今やできていないのではないかという問題意識が私には常にあり、バーチャルな世界もきちんとした(指標など何らかの)形にしないと(いけないのではないか)。将来の方向性についても、日本は特に相変わらずモノづくりだけにこだわる企業もある中で、私もモノづくりの会社にいるわけだが、これはどうも違うのではないか。このあたりの議論はもう少し深めるべきと考える。そのくらいにパラダイムは変わってきている。例えば、今の若い人は、極端なことを言えば、モノに対する欲求がかなり減ってきている。十数年先になれば、シェアリングビジネス、所有ではなく共有の時代になっていくだろう。昔のように、自分で何でも買うという時代ではない。また、これが急峻に変わりつつある。さらに、通商交渉もかなり自由になってきている中で、日本がどうしたらいいのか、そういったあたりはもう少し議論した方がいい。それと目指すべきは、経済、社会、自分自身の問題。内省的に、政府に対しての要望、あるいは先程のサステナビリティをベースとして言えば、財政再建は絶対にやらないともたないところに来ている。それに加えて内なる変革というか、自分の中にある日本の古い封建的な(部分)、これについては良い面もあるが悪い面もあるので、内省的に見つめて、どうすればいいか議論する必要がある。

Q: 2020年の基礎的財政収支(PB)の黒字化は、財政・税制改革委員会で発表した提言を踏まえると、この問題に初めに手を付けるべきではないかと思うが、代表幹事の考えを伺いたい。

小林(喜):  バーゼル(銀行監督委員会)の議論をみると、そう簡単に国内だけの事情(を考慮すればいい)というわけにもいかないだろうから、それも踏まえて継続的に経済同友会として発信すると同時に、6~7月の経済財政諮問会議の結果を待ってどう考えるか、このような順番だと思う。

Q: z=a+biのように、代表幹事の頭の中で描く世界、可能性、危機感を国民と共有するということは大事だと思われるが、伝える力ということに関して工夫や自信はあるか。

小林(喜):  伝えるということについては、(メディアの)皆さんとともに伝えることになると思う。メディアは、われわれにとって最も重要な伝えるツールだと思っているし、欧米で進行している(最先端の)テクノロジーについても、伝えると同時に学ばねばならないと感じている。同友会の中で切磋琢磨していくとともに、メディアの皆様と一緒に勉強するということが重要だと考えている。

Q: 短期的な足元の話を伺いたい。先日、経済同友会からもエネルギーミックスについての提言が出されたが、明日、資源エネルギー庁から示される予定の内容としては、原発比率は20-22%、再生可能エネルギーについては22-24%と、概ね経済同友会の提言内容に軌を一にしていると思われるが、これについて受け止めを伺いたい。また、個別インタビューの中で、原発というものは人類がゆくゆくなくしていかなければならない、捨てる場所についても、何ら固まっていないとの指摘があったが、長期的な見方との折り合いをつけていくべく、どのように政策提言をしていくのか。

小林(喜):  経済同友会の3月の提言では、(原発は)ミニマム20~22%で、(原子炉の利用については)60年への延長も考えなければならず、また、CO2を使用しないエネルギーは全体で50%、その内再生可能エネルギーは30%近くと、(原発比率を低くし、再生可能エネルギーの比率を高めにしているという点で)同友会の方が踏み込んでいるといえるかもしれない。しかし、(経産省の数字と比較して)そこまで大きな違いはないという印象である。エネルギーミックスは、S+3Eという4元連立方程式の最適化の話である。まず(第一に)安全性は当然だし、コストは安くしないと日本は当面戦えない。当然環境問題もある。また、いかに安定供給できるか。これらすべてを最適化していくことは難しい。原子力については、これまで相当お金をかけてきたわけで、プルトニウムはリアクター(原子炉)が動いていようがいまいが、現に存在している。(核燃料のリサイクルや廃棄などの)バックエンドについては、廃炉も含め、国が中心となって取り組むべきである。長谷川さんも6月から東京電力の社外取締役に就任されると聞いているが、(関係者とは然るべく)相談しながらやっていくべきと思っている。しかし100年後には、ウランベースのものはないのではないか。トリウム等同じ原子力発電でももっといいテクノロジーも出てくるだろうし、そういう意味で2030年に再度(エネルギーミックスを)見直そうというのが経済同友会(のスタンス)である。

Q: 日本は分岐点ではなく崖っぷちにいると危機感を示されたが、節目の年に就任され改めて伺いたい。財政再建、エネルギー等、さまざまな政策課題があるが、その中での優先課題は何か。

小林(喜):  プライオリティは付けられない。全部(が優先課題)である。

Q: 持続的な社会を構築していくために、一番大事な政策、議論を進めていくべき政策とは何か。

小林(喜):  原子炉の事故を起こすのは地球規模でみた場合、劇症肝炎で、他方、CO2をまき散らすような化石燃料を相変わらず使うというのは慢性(疾患の)糖尿病だと言っている。2100年になったら気温が下手すると5度も上がり、うまくいっても2度の上昇までしか抑えられない(と言われている)。このような結果になれば、世界は成り立たない。すべてはバランスなのだと思う。政策は基本的にはやはりさまざまな多変数をいかに最適化するかということが問題だと思う。プライオリティはものによってはあるが、経済同友会にはいろいろな思いをもった人が沢山いるわけなので、横串を通しながら、いかに全体として意味のある訴え方をするかということ(が重要ではない)かと思う。

Q: グローバル社会における日本の経済界・産業界としての立ち位置、メッセージについて伺いたい。最近、日中首脳会談が行われ、日中関係は改善の方向に向かっていると言われている。また、近く日米首脳会談も予定されているが、日本が世界の中でどういう立ち位置でいるべきなのか、通商交渉の状況なども踏まえて伺いたい。

小林(喜):  政治(レベルの会談)と通商交渉によって、(日本経済の)六重苦が(改善され)、例えば為替あるいは通商上の大きなメリットが出てくるのは確かである。結局、経済サイドにとっては、中国であろうがアメリカであろうが、ビジネスが基本である。政治はどちらかと言うと、安全保障が当然先に来るという違いはあるが、われわれにしてみれば、中国ともアメリカとも、やはり事業をベースにして仲良くしていくというスタンスかと思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)

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