ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文(c)へ
グローバルナビゲーション(g)へ
ローカルナビ(l)へ
サイトのご利用案内(i)へ

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

ここから本文です。

長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年3月17日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

動画を拡大する

冒頭、長谷川代表幹事より3月11日に開催した「全国経済同友会 東日本大震災 追悼シンポジウム」および前日の被災地視察(大船渡市、陸前高田市)について、参加の御礼を述べた後、質問に答える形で、(1)春闘、(2)原発廃炉、(3)人手不足、(4)政労使会議についての評価、(5)エネルギーミックス、(6)地方(含む被災地)の経済情勢、(7)金融緩和2年目、(8)消費税率引き上げの評価、(9)東洋ゴム工業データ偽装問題について発言があった。

長谷川: 先週、岩手県盛岡市で全国経済同友会による「東日本大震災追悼シンポジウム」を開催した。報道の皆様にも参加していただき、厚く御礼申し上げる。開催前日には陸前高田市、大船渡市の現地視察も行った。また昨日は、第3回国連防災世界会議のフォーラムの一環として、仙台経済同友会との共催で防災シンポジウムを開催した。こちらも盛会のうちに終了したことを報告する。

Q: 春闘は、18日に集中回答日を迎え、電機や自動車など、相場形成に影響力のある業界では、昨年を上回る水準でのベースアップが見込まれている。今後の個人消費などに与える影響も含めた代表幹事の所見を伺いたい。

長谷川: 報道によれば、昨年の厚生労働省による集計結果では、(賃上げ率の)実績は2.19%だったが、民間のシンクタンクでは、今年は2.35%くらいになるのではないかと言われていた。その後、トヨタ自動車や日産自動車で、昨年を上回るベースアップの報道があり、もう少し(予想を)上回ってほしいとの期待も、あながち無理ではない。一方で、これは労使が決める問題であると、官製春闘に否定的な意見もあるが、政労使会議の後、個別の労使が話し合いをして決められたのであれば、日本経済にとっても良い方向だと思う。これをもって、実質賃金のギャップが解消し、消費者マインドにもポジティブな影響を与えることによって、個人消費が力強く復活していく。そのような好循環ができればいい。良い方向に向かいつつあると考えている。

前原: 非正規雇用から正規雇用に転換する企業が増えており、その影響もかなり大きいと考えている。

Q: 本日、関西電力と日本原子力発電が、美浜原子力発電所1、2号機を廃炉にすることを決定した。中国電力と九州電力も近く廃炉を決定する予定である。これから、原発の老朽化による廃炉が相次ぐことになるが、これらの決定についての評価と廃炉に関する考え方について伺いたい。

長谷川: 廃炉の問題について、今の段階では(運転期間が)40年を超えた原発は原則廃炉とする制度があるため、そういった前提を踏まえて、おそらく各電力会社は経済産業省とも話をして決めたことだと推察する。そのこと自体は、個別の電力会社、個別の原発の状況を見て決める問題であり、(廃炉決定の選択は)あってもおかしくないと考える。経済同友会としては、2011年の夏季セミナーで、「縮・原発」と申し上げたが、当初の意味と少しずれて理解されていた部分があった。それを含めて環境・エネルギー委員会で現在最終の詰めを行っており、そう遠くないうちに検討の結果について発表する。大きな方向としては、原子力規制委員会の新しい規制基準の適合審査を受け、避難計画と実際の訓練も含めた、地域住民との合意の成立といった問題をクリアしたところから再稼動していくべきである。これが経済同友会の立ち位置である。

Q: 春闘について、この二年「官製春闘」が続いたが、景気も実感としてそれほどよくない中、今回の春闘はいい数字も出るのではないかと思う。来年以降の春闘のあり方について、政労使会議は今後も継続されるべきかどうか、見解を伺いたい。

長谷川: 個人的な見解だが、一年、二年のというある程度の期間はしかたないにしても、当初の景気の好循環を作るという目的が達成されれば、それ以上(政労使会議を)継続するのは好ましくないと思う。報道によれば、好業績のトヨタが昨年を上回るベアを行い、大会社ではあるが、主要取引先であるデンソーもベアを行うという。系列会社や下請け企業にもその効果が波及するような配慮もあり、次第に浸透しつつあると思う。問題は中小の企業にどれだけ(効果が)浸透していくかということと、何といっても地方の経済である。地方経済は、個人消費がもう少し力強くならないと、まち・ひと・しごと創生のための交付金があるといっても、なかなか及ばない。そういった意味では(都市部とは)多少時間のずれもある。まず、今年の春闘が、予想されているような結果で収束すれば、トリクルダウンという人もいるが、その効果も(地方に)浸透していくものと考えている。

Q: 時給が上がっている企業も多く、業種によっては人手不足の状況になっている。そのような中、外国人労働者について、技能実習制度の対象業種を拡大したり、期間を3年から5年に延長したりという動きがある。改めて、労働力需給がタイトな状況について見解を伺いたい。

長谷川: 「これだけやればいい」という解決策というのはないが、実行可能な対応として、例えば、技能実習の三年間の制限を、実習生の受け入れを規定どおりに行っている優良企業や団体に対して、さらに二年間の延長を認める方向が打ち出されている。それも当面の対策として、改善の一助にはなるだろう。ただし、ほぼ完全雇用が達成しつつある中で、不足する労働力を補うにはそれだけでは不足である。当面は、それに加えて女性の労働参加、復帰を推進することも必要である。この二年間で、80万人の女性が労働参加されたと聞く。これが毎年続くかどうかは別としても、何十万人という単位で労働者が増えるというのは極めて(経済に)ポジティブなファクターになる。もうひとつは、高齢者の方にできるだけ長く職に留まっていただき、税金を納める立場を継続していただく。まずはそれらの対策をやった上で、いずれは、外国人(にも多く働いていただく)。ただし、これは移民という話とは少し異なり、日本版のグリーンカードやワークパーミット(就労許可)ということであり、それらを考えていかなければ、まち・ひと・しごと創生長期ビジョンで掲げている、2060年に一億人を下回らないという目標の達成もなかなか難しいのではないかと考える。

前原: 地方の問題について、昨年は地方に(アベノミクスの)効果が行き届いていないという声が強かったが、それはガソリン価格が高かったという影響も大きかった。今のガソリン価格の水準は、地方に住んでいて非常に楽であり、春闘の結果もストレートに効いてくるのではないかと思う。

Q: 政労使会議について、好循環を作るという目的が達成されたら、継続は好ましくないとの話であった。政労使会議のプラスの面もあったと思うが、マイナス面はどのようにとらえているか。

長谷川: 労使で話し合って決めるという原則論に立ち返れば、かつてない状況を打破するためにはかつてない対策が必要だとこれまで申し上げてきた通り、(政労使会議が)あってもよいと思うが、(経済が)巡航する状況になれば、そうした緊急時の対策は再考されるべきだということである。

Q: エネルギーミックスについて、提言書を近々発表されるとのことだが、先般、一部報道では「原発比率20%下限」を提言すると言われている。提言内容はまだ固まっていないものとは思うが、数字について、お考えを伺いたい。

長谷川: 環境・エネルギー委員会で最終の詰めを行っている段階であり、今はコメントを差し控えさせていただく。

Q: 仮に原発比率20%とすれば、40年廃炉の原則を適用すれば、一部リプレースが発生するが、原発のリプレースについて、同友会の考え方を伺いたい。

長谷川: その件についても、提言発表時に必要であればコメントしたい。

Q: 前原専務理事に伺いたい。ガソリン価格の高騰が地方経済に与えた影響が大きかったとのことであった。確かに北海道などではその影響も緩和されているようだが、原油安以外で、アベノミクス効果が実態として浸透しないファクター、今後改善される点についてどのようなものが考えられるか。

前原: 先ほど非正規雇用の話をしたが、昨年までは、新卒でも非正規の採用が多かった。今年はほとんど正規で採用されている。この効果は非常に大きい。また、非正規で採用されていた若者が正規雇用へ転換されていけば、通常のベアよりもかなり大きな効果がある。経済同友会会員所属企業にも一部そういう動きがみられ、同じことが全国で起きているものと推察している。

長谷川: 失業率も昨年12月の3.4%から1月には3.6%に上昇している。それは、恐らく新たに労働市場に参加しようとする人が増えてきていることだと思われる。そうした状況も今後の地方経済の好転に貢献するものと考えている。

Q: 黒田緩和から2年位経過した。厳密な意味で捉えるかどうかはおいて、当初2年で2%の物価目標が掲げられた。マインド自体は上向きつつある。責任を問うか否かは別として、足下で原油安があるから、この数字自体にあまりこだわらなくてもいいという姿勢か。それとも、もう少し大胆な追加緩和が必要と考えるのか。本日、金融政策決定会合が終わったばかりだが、伺いたい。

長谷川: (金融政策決定)会合の内容は承知していないが、当時は、2年で(マネタリーベースを)2倍にして、(物価目標の)2%を達成する「トリプル・ツー」、その後、想定外の追加緩和(Quantitative and Qualitative monetary Easing、量的・質的金融緩和)をした。今の段階では、本来の目的である、資金需要がタイトなところに、大量の資金を供給して投資等に回すことと、また物価を上げるという方向にはなかなかいかないのではないかという感じがする。そういった面も含めて慎重に検討されているのだと想像する。当面、そのような考えが直ちに実行され、直ちに効果を出すとは思えない。原油も一時50ドル近くまで上昇したが、また43ドルぐらいまで下がってきている。投機筋は下落傾向が続くのではないかと煽っている。今後の動向がどちらに振れるか分からない状況の時に、物価目標を早急に達成しようとしても難しいので、慎重に考えているのだと思う。

Q: 先週被災地を視察された際には、景気認識や賃上げといった話は出たのか。

長谷川: そういう段階ではまったくない。被災地によって復興の進捗度合いに違いがあるということが如実に分かった。今回(訪問したの)は、大船渡市、陸前高田市だったが、どちらかといえば遅れている地域で、女川町や気仙沼市は、むしろかなり進んでいるほうであるというように聞いている。問題は、発災から4年経過しているが、仮設(住宅)に住む人がいまだに8万人いる状況だということである。確かに、嵩上げなど将来の地震や津波が来た際の防災を考える必要はあるが、一方で、時間が経過すればするほど、実際に用意ができても、戻ってくる人が(少なくなる)。現に、陸前高田でも(戻る人が)少なくなっているという話を聞いているし、そういう状況から考えると、やるなら早くやる(ことが必要である)。なかなか難しいのはよくわかるが、人口が何割も減るところもある。今度のことを考えれば、隣の市町村と一緒になって、クリティカル・マスというか、人口や規模を大きくして一緒に復興していく、という選択肢も本当は取られて良かったのではないかと思う。個別の事情があったのだろうと思うが、現実にそうならなかった。福島を除き、ようやく復興が本格化する、という状況だと認識している。

Q: 被災地では回復しない販路、人手不足、資材の高騰など、ある意味アベノミクスの負の部分が一手に出てきている印象を受けているが、そういった印象はあるか。

長谷川: アベノミクスの負の部分というかどうかは別だが、ただ、一斉に復旧・復興をやることになれば、そこに建設や土木の需要が集中することは事実である。それに加えて確かにアベノミクスによる景況感の変化がなせる業で、東京などでも設備投資や建築投資が非常に増えている。そのことが資材や人件費の高騰につながっている部分はあるが、それ自体は現地サイドから見れば、マイナスではなくて、(復興という仕事の)持続性の問題はあるものの、当面は仕事で賃金を得られる場があるということであり、必ずしも復興にマイナスに作用しているとは言えない。国家財政の効率的な使用という観点からは、少し予定より予算が嵩むということにはなっているかもしれない。

前原: 資材の高騰は心配したが、オイル価格がこれだけ下がったので相当中和されたと思う。むしろ、代表幹事が言ったように(復興の)スピードの問題がある。(以前、)陸前高田の八木澤商店の会長の話を聞いたが、(津波ですべて流されたので)新しい工場を隣の町の高台に開業した。(陸前高田で)嵩上げが終った頃には、他の場所で事業を営んでいることになる。そういう会社はかなりあると思う。スピードはかなり大きな影響を与えている。

Q: 消費増税からまもなく一年である。GDPの推移を見ても、消費の反動減がかなり大きい。増税の一年を振り返って、どのように評価するか。

長谷川: 3%という増税幅が、想定以上の駆け込み需要と反動減を生じさせたというのは事実である。結果はどうなるかわからないが、それもあって安倍首相の判断で(税率引き上げが)一年半延長となった。それは決まったことであり、これを最大限ポジティブに活かすためにも、ここできちんと賃上げし、個人消費を刺激する。また、企業も業績の良いところは設備投資をするといった好循環を作る環境が整いつつある。ぜひ、これを現実のものにしていく必要がある。景気そのものは、昨年10-12月期の国内総生産(GDP)は下方修正となったが、傾向としてはなだらかな回復の基調に乗りつつあるという感じがしている。ここでこの勢いをより確かなものにするため、今言ったことをしっかりやっていくことが大切である。

Q: 国の免震構造の基準を満たしていない装置の問題について、資材の不足等の折、焦った面があったのではないかと思う。事実関係を見てどう思うか。また、東洋ゴム工業は経済同友会の会員所属企業か。

前原: 大阪の会社であることは承知している。

長谷川: 関西経済同友会の会員かどうかは調べないとわからない。報道は事実であると思うが、企業としてはあってはならないことである。起こってしまったことを、最小限のダメージで済ませるかということで、企業として最大限の努力をして、規格にあったものに取り代えが可能な部分は対応する、ということが必要ではないかと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


ローカルナビここまでです。

ここからサイトのご利用案内です。

スマートフォン版サイトに戻る

サイトのご利用案内ここまでです。