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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2015年2月17日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)10-12月期国内総生産(GDP)、(2)TPP、(3)賃上げ、(4)ベアに対する考え方、(5)労働時間規制に関する改正案、(6)農協改革案について発言があった。また、前原金一副代表幹事・専務理事より全国経済同友会東日本大震災追悼シンポジウム、被災地視察会の案内、および独立行政法人日本学生機構主催・経済同友会後援の「平成26年度東京国際交流館スタディツアー(福島編)」に関する発言があった。

Q: 昨日、10-12月期の国内総生産が発表され、個人消費は今一つではあったが、久しぶりのプラス成長であった。この数字をどのようにとらえているか。

長谷川: 大半のエコノミストの予想が3%台後半で高かったため、それと比較すると年率換算で2.2%というのは少し低かった。個人消費と設備投資が、回復の兆しは見えているものの、今一つ力強さに欠ける。麻生太郎財務大臣も、菅義偉官房長官も、多少ニュアンスの違いはあるが、そのようなコメントをしていた。まずは、2期続いたマイナス成長が、成長路線に戻ってきたということは大変良かったと思う。力強さに欠ける要因の一つである賃金ギャップも、今の趨勢では2%ちょっと(の昨年の賃上げ)を上回ることも期待され、そうなると埋まるだろう。原油価格も50ドルちょっとで小康状態のようであり、GDPの6割を占める個人消費が、今後ある程度戻ってくることは期待できる。

Q: 先週、経済同友会の会員懇談会でアントニー・J・ブリンケン米国国務副長官が、TPPについて早期妥結を目指すと発言した。米国のスケジュールでは、今年春に妥結するとの見方もあるが、早期妥結に向けて日本はどう取り組むべきか。また、日本としてどのようなメリットがあるのかについても改めて伺いたい。

長谷川: 取り組みの仕方は、相手のあることでもあり、常に最後までぎりぎりのつばぜり合いということになろう。それは日米二国間の問題である。一方で、渋谷和久内閣審議官が交渉から戻られ、(業界団体向けに)ブリーフィングを行っている。その中では、農産物センシティビティ5品目もあるが、知的財産の問題もなかなか合意が得られないとのことである。これは、日米対それ以外、特に新興国との間で、できるだけ早く後発医薬品を出したい国々と、日米のようにできるだけ長く特許保護期間を持ちたい、革新的医薬品を継続的に創出しているような国との溝が埋まらないということである。昨日、米国議会の下院議員が、民主・共和の両党から合わせて10名の来訪があり、1時間15分程度意見交換を行った。その際にもTPPの話になったが、TPAすなわちTrade Promotion Authorityという大統領の一括権限は、少なくとも年央までには議会を通過しないといけないし、それ以前に、日米中心とした合意は春、その後条約の中身を詰めるのに半年かかるということもあり、来年には大統領選挙に突入することを考慮すれば、年内には完全に合意というスケジュール感のようである。報道にもあるが、基本的には共和党はプロ・フリートレーダー(自由貿易賛成派)でありサポートするが、全員が支持するとは限らないため、下院では60人程度、上院では10名程度の民主党のサポートが必要なようである。安倍晋三首相も国会答弁で(TPP交渉は)最終段階に来ているといっており、よもやここでの挫折はないだろう。以前から申し上げているが、TPP妥結に至ることが、ようやく突破口が開いた農業改革にも大きな後押しになる。すでに安倍政権が掲げている「2020年までに農林水産物・食品の輸出額を1兆円にする」というKPIに対し、すでに昨年(2013年)は(4,500億円(2012年)から)1,000億円増えている。そうしたことが、TPPの後押しを受けて、さらなる競争力の強化につながれば加速されるであろうし、滋賀県一県分(の面積)くらいあると言われる耕作放棄地も、大規模化や企業の参入などで、耕作地として使用されると、食料自給率にもプラスに働くのではないか。そうしたことを考えると、(TPP締結は)プラス効果の方が大きいだろう。何といっても、子どもが跡を継がないという状況が改善されないと、将来展望もひらけない。そのトレンドを大きく変えるきっかけになるものと期待している。

Q: 賃上げについて。2月18日に自動車労組が各社に要求を提出する。去年よりもさらなるベアということで、要求額も高くなっている。昨日のGDPの発表で、まだ個人消費が弱いということで、改めて賃上げに注目されている。どのくらいの水準の賃上げになれば、日本経済、個人消費がアップするのか。

長谷川: 企業業績は昨年よりもさらに良くなっている企業が多い。支払い能力という点で十分(さらなるベアも)あると思われる。賃上げ(の影響)は、一過性のものではなく、その人が雇用されている限り基本的に続く。そういった意味で、年度毎の業績だけでは決められない要因はあるにしても、麻生財務大臣がいうところの328兆円の企業の内部留保がある中で、景気の好循環を回すために、賃上げに使うことはあり得る。どのくらいの水準かという質問については、昨年の(賃上げの)平均は2.08%とか2.4%などの2%台前半なので、少なくともそれをクリアするだけの条件は整っているのではないかと思っている。

Q: 去年と同じ状況をクリアするというだけではちょっと不十分ではないかという認識がある。

長谷川: 消費税(率引き上げ)の影響は、今年の4月からなくなる。それに(今春の賃上げが)上乗せされる。二年間を通しで見て、実質賃金のギャップがクリアされれば、大きく潮目が変わるのではないかと思う。十分かといえば、それぞれの立場がある。5%でも十分ではない人もいるだろう。過去との比較で、長い間のデフレの中で、去年も10数年ぶりの賃上げ率で、今年も更新されるということになれば、消費者マインドによい影響を与える。それに加えて、様々な税制上の優遇策、(子ども版)NISAだけでなく、子や孫への生前贈与の非課税限度額を引き上げるなどの景気刺激策が取られている。住宅取得についても毎年度少しずつ異なるが、さまざまな刺激策が取られている。そうしたことから(景気は)多分よくなると感じている。同時に、この機会を逃すと、なかなか本格的な成長軌道に戻るのは難しくなる。その中で(国の)借金ばかり増えると、またもと来た暗い道に戻ってしまう。何としてもここで、デフレからの脱却と、安定成長へ戻すことについて、皆ができる範囲でやらなくてはならないと思う。法人税減税は、企業にとって(賃上げに対する)支払い能力にはプラスになることは付言しておきたい。

Q: GDPと個人消費について、民間の予想を下回った理由について、消費税率引き上げ前の駆け込み需要の反動減が続いているのかどうかについては議論が分かれるところだが、代表幹事は反動減が続いていると考えるか?

長谷川: 概ね反動減は終わっているが、一部、特に住宅については、昨年との比較では、かなりマイナスである。(回復は)まだら模様であって、完全に払拭された状況になっていないと、残念ながら言わざるを得ない。

Q: 反動減の期間は1年にもなろうとしているが、代表幹事の見立てでは長いと感じるか。

長谷川: 長い。あまりにも長い間デフレの状況にいたので、(景気が)回復していくのか、来年も賃上げするのかなど、さまざまな懸念があった。この傾向を加速したのは、企業や産業が駆け込み需要を煽るようなインセンティブをつけた部分があり、そうしたことが(反動減を)助長してしまった。しかし、それもほぼ終わったと見てよいのではないか。

Q: 4月からはもう回復していくという見立てか。

長谷川: 業種にもよるが、今年に入ってから回復傾向が見えている。昨年の10-12月期のトレンドが、1月以降で少し強めに出てくるのではないかと見ている。

前原: 昨年だけでなく、一昨年のデータを見ると、比較的落ち着いた判断ができる。

Q: ベアの考え方について伺いたい。企業業績は昨年よりも良くなっているとのことだが、ベアは将来にも影響する。昨年賃上げし、さらに今年も賃金カーブをいじることについては、経営側として大きな決断になると思われる。企業業績の回復との見合いで、ベアの必要性についてどの程度やるべきかについて、代表幹事の所見を伺いたい。

長谷川: 個別の労使の交渉で決まる部分だが、企業によっては、昨年はローソン、今年はトヨタ自動車が発表しているように、一番生活費のかかる年齢層に少し厚めにするだとか、さまざまなやり方がある。昨年は本当に久しぶりのベアだったので、要求側は「今年も」と思うだろうが、支払い側としてはそれをどのように回答に盛り込むか。さまざまな形で回答が出てくるのではないかと思う。個社(武田薬品工業)の場合でも、そのような話が出つつあり、どのように対応するのか、昨年同様一律でやるのか、あるいは今年は違う考えでやるのか、検討しているところである。

Q: 厚生労働省がまとめた労働時間規制に関する改正案について、企業に聞くと趣旨には賛同するが、特定の職種であれば成果主義などを取り入れているところも多い。また比較的早期に管理職になるため、新制度の対象者も少ないので、今後どのような立て付けになるかを見極めたいという、やや慎重な意見も多い。企業としてどういった形で広げていく考えか。

長谷川: 広げていくという考えはない。あくまでもプロフェッショナルな、自己の裁量範囲の広い労働をしている人が、働いた時間の長さではなく、アウトプットで評価をされる制度を作る。これに1,075万円の年収制限が加わる。そういったことを考えると、全労働者の3%未満が対象になるだろうといわれている。将来のことは別にして、(年収による)制約条件をつけ、その上厚生労働省は、(健康管理について)年間104日の休日を取らせること、一定のインターバルを付与すること、1カ月または3カ月の在社時間の上限をつけることを求め、このうちいずれか1つについて実現せよとのことだが、経営者の観点からいけば、(年間休日)104日などは当たり前の話である。それも含めて、できるだけ多く(の取り組み)を充足する形で、企業も積極的にとらえて実現していくことが必要である。(対象となる人数)規模の大小よりも、会社にとっても、労働者にとっても、(導入して)良かったというポジティブな評価を双方ができるような形でやることが一番大事である。対象者数は二の次の問題だと思う。

Q: 2月8日にJA全中が自民党の農協改革案にほぼ合意した。金丸恭文副代表幹事も早くから農協改革に取り組まれていて、今後関連法案が通れば一歩前進と述べているが、改めて、農協改革の合意について代表幹事の受け止めを伺いたい。

長谷川: 戦後間もなく、農業振興のために農協法(が制定されて)から60年以上経過したが、一切変わることはなかった。その間、農業従事者数も減り、実態も環境も随分変わってきた。ようやくこうした形で、具体的に別の(一般)社団法人にするということが、少なくとも法案として提出されることになり、萬歳章会長も(改革案を)受け入れるとしたわけなので、突破口として大変意義のあることだと思う。もちろん、穿った見方をすれば、(一般)社団法人になろうがなるまいが、結局そこに(監査を)頼むことになるとか、さまざま(問題が)あるが、しかし、それはやってみないとわからない。また、地方の中央会は(連合会として)残るし、(准組合員制度も)5年間の状況を見た上で判断される。肝心なのは、何らかの改革をすることで、耕作放棄地が再び耕作されるようになり、農業の競争力がついて、輸出ができるようになる(ことである)。(農業が)産業として貢献するようになることが望ましい。条件は違うにしても、九州より少し大きい程度のオランダは、EUの真ん中に位置することもあるが、農産物の実質輸出額が一番大きい国である。そういったこともできるようになる。これが農業の改革の契機になれば、日本にとっても、従事者にも本当にプラスになるのではないかと思う。

Q: TPPの交渉と関連付けられていると思うか。

長谷川: 思っている。蓋を開けてみないとわからないが、報道によれば米国のコメについてはミニマムアクセス米の別枠を作る方法による解決など、肝心要のセンシティビティは、そのような形で守るのであろう。それ以外についても、セーフガード条項で激変緩和をするだろうし、関税を撤廃するにしても10年あるいはそれ以上の期間で激変緩和をするだろう。そういったことが実現すれば、移行期間中に従事者の人も、どのように競争力を高めて、生き残るかを考えることになる。国もその支援をする。結果として競争力が高まる可能性が高い。現状の延長線上の施策では、よりよい将来展望がひらけるかといえば、それはないと思う。リスクはあっても、ベターな将来展望がひらける可能性がある方向について、従事者としても国としても目指すのが妥当ではないかと思う。

前原: 二点ご案内する。一点目は、「全国経済同友会東日本大震災追悼シンポジウム、被災地視察会」の開催の案内である。本会では、東日本大震災の復興支援のために、本会をはじめ全国44の経済同友会による「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト」や、震災復興部会などの活動を行ってきた。例年3月11日に開催している追悼シンポジウムを今年は盛岡市、前日の10日に大船渡市、陸前高田市で被災地視察会を開催する。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りすると共に、復興の加速にむけた諸課題について、現地の人と意見交換をしたいと考えている。メディアの皆さんには被災地の情報を発信していただければと思う。

二点目は、「平成26年度東京国際交流館スタディツアー(福島編)」についてである。本会では福島の風評被害の払拭支援に取り組んでいる。この一環として本会会員所属団体である独立行政法人日本学生機構が、90の国・地域からの留学生が暮らす東京国際交流館のイベントとして、このツアーを本会後援の下で実施することになった。同館には、国内の一流大学に国費・政府派遣で留学しているアジア・中東諸国の政治家候補や、官僚なども生活しており、各国の将来を担うグローバル人材や政府高官などを多数輩出している。

今回、これらの留学生のうち、約40名が参加する予定である。インドネシア、イラン、ベトナム、カザフスタン、キューバ、ネパール、タイ、イギリス、フィリピン、アフガニスタン、エジプト、ギリシャ、ポーランドなどからの留学生で、県外から10カ国以上の国からの優秀な外国人留学生が、同時に福島県を訪問するのは、同県でもはじめてのようである。このツアーは、農産物の安全確認モニタリング検査見学、地域を支える地元企業への訪問、観光産業再生を牽引するスパリゾートハワイアンズへの宿泊など、報道では伝えきれていない同県の現状を、彼らが実際に体験し、理解してもらう内容となっている。

各社におかれては、福島の風評被害払拭の一助として、現地駐在の方を含め、ぜひこの取り組みを発信していただければと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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