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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年12月16日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)政労使会議、(2)経済対策、(3)原油価格下落の影響、(4)いわゆる「六重苦」問題などについて発言があった。

Q: 今朝官邸で政労使会議の年内最終会合が開かれ、経済界は賃上げに最大限努力するとの文書がとりまとめられた。またこの文書には、賃金だけでなく、サービス産業の生産性向上、賃金体系の見直しなど、ともすると民間の行動に政府が介入する内容ではないかとの声もあるが、代表幹事からみてどのように映るか。

長谷川: この合意文書には、賃金体系については個々の会社の労使の十分な話し合いのもとで、その会社に合った見直しに取り組んでいくという一項も含まれている。これを前提とすれば、安倍政権が求めているデフレ脱却に向け、消費税率アップ分とインフレ分を足したものと、実質賃金とのギャップが依然としてある。(計算上は、)消費税プラスインフレ分が4%だとすると、今春の賃上げが2.07%、夏のボーナスが7%強、冬のボーナスが5%強の増で平均して6%増くらいだとすると、(年間賞与の支給月数が)4~5カ月分だと(すると、年間あたりの収入の増加は)3分の1の2%ぐらいはいくのかも知れないが、それでも足りていないという状況なので、引き続き賃上げをしていかなくてはならない。このことは、来年の消費税率引き上げを1年半伸ばす際の首相会見でも繰り返し述べられた通りであり、必要なことだと考える。同時に、労使は仕事の役割、貢献度を重視した賃金体系とすることや、子育て世代への配分を高める方向へ賃金体系を見直すことが重要だとの一項も含まれていることについて、これは、一つは完全雇用で労働力不足の状態がすでに生じている中、女性の労働参加率を高め、出生率を引き上げるために、子育て世代のハンディキャップを政策的にもできるだけ取り除いていく一方で、雇用者側としてそのような人たちに、より厚い配分をしていただきたいという話であり、論理的には極めて整合性が取れていると思う。私も会見で申し上げてきたように、大企業が先導している形で、最高益を更新している企業も多く、そのようなところから賃上げを行い、雇用の改善を行い、少しもたついている景気回復の足取りをしっかりすることへの貢献が求められている。

Q: 安倍首相の会見では、経済対策を年内に公表し、矢継ぎ早に対策を行うとのことだが、経済対策に何を求めるか伺いたい。

長谷川: 短期的なものと中長期的なものがある。首相からは、予算編成について、内閣改造は行わないので、早急に仕上げるよう指示があったものと理解している。もう一つは、現段階でもたつく景気回復を少しでも後押しすべく、補正予算を組むということであろう。当初2兆円と言われたものが報道によると3兆円規模だと言われているが、いずれにしても、地方創生、あるいは安倍政権の方針としても、バラマキはしないということであり、その基本方針を崩さない範囲で、どこに重点的に配分するかを早く考えるということであろう。その中でも、低所得者、賃金と(消費税率を含む)物価のギャップがもっとも消費活動に抑制的に働く方々への配慮が優先的に考えられると思う。

選挙後に出したコメント「第47回衆議院議員総選挙の結果を受けて」(2014年12月14日発表)でも申し上げたが、日本経済は本当に岐路に立っている。第一の矢、第二の矢は、資産効果や金利の低下、円安など様々な効果を生み、デフレ脱却の兆しは見えてきたが、これから何をどうするか、安定的成長路線にもっていけるかどうかの分岐点にある。したがって、経営者としてもできることはしっかりやらなければいけないし、政府と協力してやらないといけないことは政府にも要請する必要があり、これから考えていきたい。現時点で政府に申し上げたいのは、一つは積み残し課題である社会保障と税の一体改革の中の、社会保障制度の改革であり、これは進んでいない。当初より消費税増税分は全額社会保障に充てることとしており、来年10月予定の増税分も充て込んで、保育所などの設置等、待機児童解消の対策を打っているところは、予定通りに政府の支援があるのかという懸念もあるようである。先ほども申し上げた女性の労働参加と子育て支援というアベノミクス第三の矢の根幹部分がやや揺れ動いているという状況もあるので、社会保障制度改革をどうするか、2017年4月まで先送りした消費増税との関係を含めて、きちんと道筋を示すべきである。もう一つは違憲状態にあるという今の選挙区割りの問題である。一票の不平等性について、今回の選挙でも宮城5区と東京1区では、(有権者数が)23万人と49万人と、2倍以上の差があると指摘されている。そのような状況が依然として是正されてなく、是正を求める弁護士グループはただちに今回の選挙が無効であると提訴すると言っているが、立法府が憲法違反の状態をどのような理由があるにせよ、2年以上放置していることは、国の根幹を問われている問題であり、早急に是正していただきたい。 この2点について早急に取り組んでいただきたい。最後に、TPPについて申し上げる。オバマ大統領は11日の輸出促進に関する会合で、「TPPは世界で最も急速に成長するアジア太平洋地域で高い水準の貿易を実現するものだ。合意できる可能性は50%よりはるかに高い」と述べ、交渉妥結に重ねて意欲を示したとされている。また、その上で「この野心的な協定が議会で確実に承認されるよう取り組んでいく」と言っている。マイケル・フロマン米国通商代表もTPA(貿易促進権限)という議会で一括承認を得るための大統領権限の付与を求めているようであり、安倍首相もそのような米国の動きも含めてサポーティブな意見を述べている。日本は米国と協力できるところは協力し、あるいは日本がリーダーシップをとって、まとめることが日本にとって大きなメッセージになる。岩盤規制の一つと言われる農業の改革について、方向性は出ているが、TPP合意となればいよいよ本格的に改革が必要だという自覚も促される。兆しが見えている農業への企業の参入など、加速度的、自律的に進んでいくのではないか、そしてこれが第三の矢の後押しにもなるだろうと考えている。

Q: 原油価格安を背景に、欧米諸国、新興国で株価が下落している。ロシアは6.5%という異例の利上げを行った。世界経済の先行きについてどのように見るか。

長谷川: 大体、原油がこれだけ下がると誰が予想したか。一つ(の価格下落の理由は)は、世界中が金余りで、投機筋が常に機会を求めてきた(ことがある)。原油はこの半年ぐらいずっと下がり続け、先般のOPEC総会で生産量を抑制せず、市場原理に任せるという態度を示した。米国のシェールオイル産出が過大な心理的影響を与えて、さらに価格が下がるという状況になっている。昨日も(本会の会合で)ディスカッションをしたが、そのような(資源関係の)事業に携わる経営者の話の結論は、「上がったものは下がる、下がったものは上がる」ということだった。原油価格は(ニューヨーク市場で)ピークで1バレル147ドルまでつけたものが、50ドル台まで下がったのであるから、これは大きな下落である。これが石炭など一次産品全般にも影響しているようである。一次産品輸出国にはマイナスだが、それを購入して加工する国はプラスになるので、(原油価格下落の)影響はまだら模様になる。全輸出の5割以上が化石燃料で占めるロシア(における影響)は甚大であると言わざるを得ない。サウジアラビアなど国民への福祉などの無料提供を維持するには(財政均衡価格として)1バレル90~100ドル程度は必要と言われている。蓄積はあるのでしばらく持つにしても、いろいろ考えると、この状況が長く続くとは思えない。来年一杯(このような状況が)続くという人もいるが、私の個人的な観測としては、何らかのきっかけで修正に向かって上がっていくと思う。結論は、一喜一憂しない(ということである)。ただ、価格の急激な変動は、投機筋にとって「待ってました」となるのかもしれないが、事業会社としては少し困る。

前原: デフレ脱却が日本経済の最大のテーマだが、デフレの要因は、賃下げと交易条件の悪化が大きいと思われる。安倍首相の下、賃金は上がり始めていて、これは来年も上がる。なので、片方はクリアしている。交易条件についても、原油価格が下がったことで、おそらくこれが数カ月も続くとすれば、交易条件が大幅に改善するという効果が生まれる。今は(影響が)まだら模様だが、日本にとって有利な状況になり、デフレ脱却もできると思っている。私は(価格下落が)続いたほうがありがたいと思っている。

Q: 先程、経済対策には短期的、中長期的なものがあるとの発言があった。賃上げは、来年の春闘を経て、5月ごろから消費に反映する。その間の短期的な対策として、低所得者向け現物支給などがあると思うが、他に即効的なものは何があるか。

長谷川: (政権として)しばりをかけているバラマキ(的な政策)を排除した上で、即効性がある対策というと、極めて難しいと思う。

Q: 今年は自然災害も多かったことから、土砂崩れ対策などが結構行われている。ガソリン価格などは少し下がったが、それほど下がったという実感もない。寒冷地の暖房費補助や、地方は交通手段を車に頼っているので、そのような点での補助は即効性があるのではないか。

長谷川: WTIは4~5割ぐらい低下しているが、小売価格は下がっていない。そのような(燃料価格高騰対策)ことが政府内で検討されていると聞いている。そのこと自体が、どの程度の景気刺激効果や、下支え効果があるかは分からないが、期限を区切った上で(あれば)、何らかの形でそのようなことを含めて検討には値すると思う。

Q: 今月30日に予定されている税制改正大綱では、法人税減税が盛り込まれるので、企業として3月決算で(減税効果を)見込むことができるだろう。総選挙があったので、経団連では早めの来年度予算編成を求めている。来年の三月末ぐらいまでに手を打たないと、消費税増税を先送りした効果が薄れてしまうのではないか。

長谷川: 心理的なものが大きい。何といっても賃上げ(が必要)で、名目賃金とインフレ率(を含んだ物価水準)の差が埋まることが最も効果があると思う。これは数字のマジックであるが、来年の4月から、今年の消費税3%引き上げ分は前年実績となるために、(税率分の)ギャップは出てこない。本来であれば、メディアの皆さんもご覧になると思うが、(税率引き上げ)以前の数字と比較して埋まったかどうかを実現できれば、心理的に大いに変わってくる。大企業のほうからでも先導して(賃上げを)実現する。本年実績の(定期昇給とベアを合わせた賃上げ率である)2.07%について、今回のベースアップ要求の状況や、景気や業績の動向を見れば、若干の上積みについても、今の環境の中で考慮されていると思うし、期待できるのだろうと思うので、そのギャップは十分埋まるものと私自身は期待している。

前原: 私も地方に住んでいるので分かるが、地方では一人一台で車を利用している。ガソリンが1リッター160円台から140円台に下がったのはプラスの影響があるし、地方の中小企業にもかなり(プラスの影響がある)。(これまで)ガソリン代が上昇したことによるコスト増が大きかった。逆の方向に動いているので、(プラスの影響は)じわりと効いてくる。

長谷川: 原発の再稼働について、これは新聞社や個人によって意見が異なるが、今の段階で世界一厳しい安全基準をクリアしたもの、川内原発が(新しい基準で)最初(に再稼働する)といわれている。それに電力の自由化を進める段階で、今日の新聞だったか、送配電事業について日立製作所と(スイスの重電大手の)ABBが合弁して日本で展開するという新しい動きも出ている。(東京電力の)數土文夫会長がいうように、(電力事業の)効率性を高めて、いずれは値段を下げる。このようなことが実現すれば、実際の効果もあるが、心理的に大きいと思う。

Q: 二年前の民主党政権時に、経済界ではいわゆる「六重苦」と言われる問題があった。その後のビジネス環境としてアベノミクスなども進んでいるが、当時から前に進んだもの、まだ途上のもの、まったく進んでないものなどもあると思う。「六重苦」は今や死語なのか、それとも、現状として何重苦か残っているのか。

長谷川: なかなか難しいが、(○、△、×で表すと)超円高は解消したので○である。法人税の実効税率の高さは、来年度2.5%下げるということについて、この年末の税制改正大綱に盛り込まれれば△となるだろうが、一方、外形標準課税の導入や研究開発減税の削減、欠損金の繰越控除の縮小など、様々な税収中立のための方策も考えられているため、企業としてしっかり計算しないと本当にプラスかマイナスか分からない。しかし、法人税だけをみると方向が明確になっているので△である。自由貿易協定の遅れについても、先程TPPについて述べたが、これが進めば、欧州とのEPA、アジアとのRCEPも進む。そうした刺激が連鎖反応を与えることになるので△でいいのではないかと思う。残りの3つの電力価格問題、労働規制の厳しさ、環境問題の厳しさだが、(いずれも)まだ×である。日本はCO2(など温室効果ガス)の問題については何の答えも出していない。来年パリで行われるCOP21までには新しいエネルギーの基本政策を出して、原発の目途もつけて、国としての方針を出さなくてはいけない段階である。日本では地球温暖化対策税だけはしっかりとっているが、まだ解決していない。そういった意味からすると、ここは×である。誤解を恐れず、私の独断と偏見でいえば、3勝3敗まではいかないが、2.5勝3敗ぐらいではないか。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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