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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年12月2日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)衆議院議員総選挙公示にあたっての期待、(2)経団連と韓国・全国経済人連合会(全経連)との定期会合開催、(3)2013年の政治資金収支報告書、(4)日本国債の格下げ、(5)実質賃金の上昇に必要な条件、(6)消費税率のあり方、(7)為替水準、(8)衆院選の時期などについて発言があった。

Q: 本日、衆議院議員総選挙が公示された。今回の衆院選では、安倍政権の経済政策、アベノミクスの是非が大きな争点となっているが、あらためてどのような論戦を期待するか。

長谷川: この政権のスタートから、アベノミクスが実施され、当初の第1の矢、第2の矢は相当な効果があったということは衆目の一致するところである。第3の矢については、必ずしも目に見える効果が十分にないという評価もあるようである。これについては、基本的に長年放置された構造改革をやらなければいけないということで、かつてできなかった農業問題、医療・介護問題、雇用問題について、濃淡の差はあるが、切り込んだ政策を打ち出している。それを法制化し、実行し、効果が出るまでには時間がかかるので、あまり早急に結果を求めるのは、なかなか困難であると思う。しかしながら安倍晋三首相は、党首討論でこの道しかないと言っており、(アベノミクスに)勢いをつけることを念頭に、今回このような形で、解散総選挙に打って出たということであろう。結果がどうなるかは分からないが、日本の現状を考えれば、この機会を逃すとなかなかデフレ脱却、成長路線への回帰は難しいというのもまた衆目一致するところであるので、(これまでの方向が)さらに力強く推し進められることを期待する。消費税の再増税は、1年半先送りされた。これは三党合意である「税と社会保障の一体改革」の一環であるものの、社会保障については、与党のみならず野党もほとんど触れていない。しかし、これは避けて通ることできない問題である。選挙であるので、「子育ての部分は税率の引き上げを先送りしても、ちゃんとやる」などというが、そのように甘いものではなく、世代間・世代内格差是正などを含めた改革もやらないといけない。そこ(給付削減)に踏み込まなければならないということも念頭において、選挙戦を戦っていただきたいし、選挙後も(与野党が)責任をもって対応すべきである。

Q: 昨日、経団連が韓国の全国経済人連合会(全経連)と7年ぶりの定期会合を再開した。代表幹事の受け止めと評価、経済同友会として今後、韓国経済界との交流予定があれば伺いたい。

長谷川: 組織のあり方に違いはあるが、経団連と本会は兄弟みたいなものであるので、経団連がどうで本会がどうということはなく、意見の食い違いはままあるが、基本的にこの国を良くしていこうということは共通した理念を持つ団体である。今般、榊原会長を団長とする訪韓団が、韓国の経済団体との久しぶりの会談を持ったことは大変良いことであると考える。よく言われるように、日韓経済は、競合するところもあるが、基本的には相互補完関係にあり、政治的に若干の交流の断絶のようなものがあることで、経済にも影響を与えるということは誰にとってもいいことではない。自ら団を編成し訪韓され、少しでも連携を強める働きかけをされたことは妥当である。仄聞するところでは、朴槿惠(パク・クネ)大統領との会談も実現したとのことであるが、基本的に二国間相互の経済関係の連携を強めることが好ましいということには合意するものの、慰安婦問題等を含めた歴史問題に関しては、韓国側も努力はするが、日本側が整理して欲しいとのことだったと報道ベースでは聞く。政治は政治として、まずは経済団体間で交流し、連携を深めるという目的が達成されたことは大変良かったと思う。

本会ではただちに訪韓等の予定はないが、過去には2009年、2010年に韓国経済界との交流があり、昨年は前原専務理事が(日韓フォーラムで)福田康夫元首相と一緒に韓国を訪問したことがある。

Q: 先週末、総務省が発表した政治資金収支報告書で、報道各紙が1面で大きく扱っているのが、自民党に対する企業団体献金が4割増であったことである。ニワトリが先かタマゴが先かではあるが、アベノミクスの恩恵を受けた自動車産業など中心に、福田・麻生政権時代よりも増えており、顕著な自民党政治ではないかと思われる。これに関して一部では、利益誘導型政治の先祖返りとの批判もあるが、代表幹事としての受け止めを伺いたい。また、武田薬品工業もいくらか献金しているが、個社としての立場・考え方も伺いたい。

長谷川: それぞれの業界団体、あるいは個別の会社がどのような献金をするかについては、コメントは差し控えたい。確かに、長年のデフレから脱却する兆しがあり、それ(効果)が真っ先に表れたのが株式市場と企業業績の回復であるので、それを踏まえて献金を増やしたのではないかと推測はするが、そのことの是非についてコメントは差し控える。武田薬品工業については、基本的に業界団体として献金について決めたものに従っており、それは従来から何ら変更のない形で行っていることを申し上げる。

Q: 昨日、米国の格付け機関であるムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債を1段階格下げした。消費税率引き上げの先送りによって、財政再建がより困難になったとの判断だが、このことに対する受け止めを伺いたい。

長谷川: 個々の格付け会社の判断についてコメントをしても詮無いことであるので、差し控えたい。ムーディーズの判断について仄聞するに、そのような理由(財政再建が困難になったこと等)が背景にあると理解している。財政再建について、最初の質問にも関連するが、総選挙が終わった後の経済政策および経済成長、さらには企業の業績がどこまで改善し、税収が増えるという関連もあるため、今の段階ではムーディーズはそのように判断したが、結果として妥当であったかどうかは少し成り行きを見てみないとわからない。格下げによって国債がすぐにどうにかなるわけでもない。発行した国債の90%は自国で消化している状況もあり、何ら影響がないので、一喜一憂する必要はないと考えている。

Q: 衆議院選挙について、今回はアベノミクスもさることながら、中長期的に評価すべき課題が山積する中での選挙となる。特にどのようなテーマでの論戦を期待するか、あらためて伺いたい。

長谷川: 党首討論などを見るに、与党はアベノミクスの是非を問うとの位置付けにしているが、野党側は各党さまざまである。財政再建のために公務員の大幅削減を主張する党もあれば、分厚い中間層を復活する政策をとると言いながら、具体的に説得力のある形で説明していない党もある。したがって、個々の有権者としては、各党の主張をよく見る(必要がある)。同時に、円安のせいもあるが、ドルベースで見れば、中国の経済規模は日本の二倍になったとの報道がある中で、日本は少子高齢化の厳しい状況であり、何とか経済を成長させない限り、長い間苦しんできたデフレからの脱却(はできないだろう)。また、シェールガス(革命)とOPECの減産見送りで原油価格は下がっているが、必ずまた上がってくるだろう。そうなると、日本は化石燃料だけで20兆円を超えるような輸入をしなければならないという宿命もある。そういった意味も考えれば、日本が経済成長路線に戻れるかどうかの分岐点となる選挙であるから、どの政党がそのことについてより高い確率で、責任を持って実行してくれるかが、判断の一番のポイントになると思う。それはそれとして、まずは選挙民に与えられた権利を行使して投票に参加していただくことが重要である。

Q: 厚生労働省が(10月の)毎月勤労統計を発表した。16カ月連続で実質賃金が減少となり、なかなか伸びてこない。(実質賃金が)伸びてくるには何が必要で、なぜ伸びてこないのか、代表幹事の受け止めを聞かせていただきたい。

長谷川: 安倍首相も何回も述べているが、安倍政権になって100万人の雇用が増加したので、その分、個別(の賃金上昇)を薄める要素にはなる。結局のところ、賃金がどれだけ上がり、実質賃金のギャップを埋めるかに尽きる。消費税率とインフレ率を合わせると、一回の賃上げでは、10数年振りに2%を超えるベースアップもこの春実施されたが、それでは埋めきれない状況にある。来年の賃上げで、自動車総連は6,000円のベースアップ要求で、昨年の倍になっている。そのまま(要求通り)いくかどうかは別にして、昨年より上積みできる、特に業績の良い企業が先導して(賃上げすることで)ギャップを埋め、一般の国民の皆さんの安心感、マインドセットをムードとして作っていくことが一番大事であると思う。そのことを含めて、安倍首相もあえて消費税の増税を1年半先送りした。ここで経済の成長路線への復帰が実現しなければ大変なことになる。個人もさることながら、経済界も全面的なバックアップをしていかなくてはならないと考える。たまたま、7-9月期の設備投資も(前年同期比で)5.5%増と予想外に良かった。おそらく12月8日に発表される7-9月期のGDPの二次速報値も(当初の)マイナス1.6%から大きく上方修正されるという観測がもっぱらのようである。そうなったらそうなったで、トレンドとしては(わが国経済は)緩やかながら拡大傾向にあることが担保される。そういったことの一つ一つの積み上げがきわめて大切である。

前原: 賃金の動きはゆっくりである。私は労働分配率や、ユニット・レーバー・コストの世界的な標準からみて、望ましい水準に2、3年がかりで上がっていくのではないかと思っている。政府もそれを一生懸命後押ししているし、経済界もやるといっているので、実現していくのではないか。

Q: 消費税の再引き上げが1年半延期になったが、先程指摘のあったように世代間ギャップの問題もある。10年後には団塊の世代が後期高齢者に入り、この世代の年金を(相対的に人数の少ない)若い人が支えるのは難しいだろう。消費税率も20%ぐらいないといけないという主張もあるが、経済同友会として、この10年ぐらい考えた場合、世代間ギャップを埋めるにはどのような方法をとればいいと考えるか。本来、それが今回の選挙の争点にならないといけないと考えるがいかがか。

長谷川: 桜井正光前代表幹事の時に作成した、「2020年の日本創生―若者が輝き、世界が期待する国へ―」(2011年1月11日発表)の中で、消費税率を17%に引き上げないと、サステイナブルな社会保障制度はできないということを表明しており、今の状況でシミュレーションしても(必要な税率は)それほど変わらないだろう。これは皆分かっていることではあるが、前回(1997年に)消費税率を引き上げてからかなりの間、税率の引き上げができなかった。これを一つの政権の数年間で2回に分けて実施しようということはかつてなかったことである。これは三党合意(に基づく決め事)だからやっていただくとして、その先を見た時に、必ず(税率を)上げなくてはいけないということを政治家も官僚も経済界も分かっている。一般国民にも、あまり目をつぶらずに分かっていただくことが必要である。(メディアの)皆さんにももいずれ(消費税率の引き上げが)必要になることを(国民に)啓発していただきたい。日本の国民負担率が(国民)所得の4割程度で、一方、給付は5割程度であり、1割のギャップが赤字という構図が続いている。この部分を解消する必要があり、時間が経てば経つほど累積債務が増え、ますます残された時間は短くなる。そのことをどこまで政治家がどう正直に国民に訴えて自覚を促すか。われわれもそれについてこれまで以上に、シミュレーションなり(を行い)、いろいろな形で啓発していくしかないと思う。

Q: 来年4月までの代表幹事の在任期間中に、これを見直すことを考えているか。

長谷川: 中長期の問題でもあり、私の在任中としては、金丸恭文副代表幹事に10年後の経済同友会のあるべき姿について検討してもらっている。現在の個別の問題や、桜井前代表幹事(時代の提言)の見直し(を行うかどうか)については、次の代表幹事に委ねたいと考える。

前原: 一応、社会保障の委員会で議論はしているが、どのような形(のアウトプット)が出てくるかは今のところわからない。

Q: 今の為替の水準について、昨日1ドル119円台になり、120円台をうかがう状況にもなった。現在の水準が許容範囲にあるものかどうかについて、改めて認識を伺いたい。

長谷川: 個別の企業によって事情が異なる。大企業と中小企業によっても異なるという分析もある。そういった中で、いつも申し上げるように、急激な円安・急激な円高は対応が追いつかないので望ましくないというのが基本である。同時に、日本と米国のファンダメンタルズの違いを見れば、日本の場合は、先般の追加金融緩和を行ったところだが、最近はさらに(緩和が)必要ではないかという意見も出ているところである。一方、米国では量的緩和を終了し、(次は)いつ利上げするかというタイミングを計る状況にある。当然のことながら、既に円安・ドル高の要因になっている。今後どこまで(円安が)いくかは別にして、対ドルで円安傾向が続くのはやむを得ないのではないか。

Q: ドルが120円台になることもあるか。

長谷川: 1ドルが120円台になるとか、壁を突破するなどとはあまり言うべきでない。銀行などで聞いたりすると、120円台まで(になる)との話もあるが、相場のことだからどうなるかはわからない。トレンドとしては円安になってもおかしくない。

前原: 以前もお話したが、(円安により)韓国が影響を受けている。これは朴大統領もお話されていることである。(かつて)韓国経済が絶好調だった頃、日本円と韓国ウォンの為替レートでみると、(当時の平均的なレートよりも)3~4割ウォンが安くなっていたことがプラスに働いた。しかし現在では当時に比べて5割ほど(対円で)ウォン高が進んだ。韓国の立場から見れば、1~2割程度円安に振れていることになるのかもしれない。

長谷川: (当時)韓国企業と直接競争関係にある企業の経営者は、わずか1年程度で5割程度ウォンが安くなり、競争力を失ったと嘆いていた。あの時期そういうこと(為替レートの変動による競争力低下)を主張していた人もいた。

Q: 衆院選を今やることについて、今でなくてもいいのではないかという意見もあるが、選挙の時期に関してはどのようにお考えか。

長谷川: これ(衆議院解散)は首相だけに与えられた権限であり、行使するタイミングは首相がお決めになる(ことである)。そのことについて、メディアとして様々な考え方を表明するのは結構かと思うが、(解散そのものを)「良い」とか「悪い」とかいってもあまり意味のないことである。結果、安倍首相が、アベノミクスで「この道しかない」と言うように、(解散で)さらに(改革が)進むようになるのであれば、それは(後から見て)正解だったとなるかもしれない。今の日本の経済からいえば、構造改革をさらに進めていただく必要があり、(選挙によって)そういう体制になるのが望ましい。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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