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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年11月5日(水) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)10月31日に日本銀行政策委員会・金融政策決定会合で決定された「量的・質的金融緩和」の拡大、(2)消費税増税を判断する「今後の経済財政動向等についての点検会合」、(3)米国の中間選挙、(4)急激な円安、(5)景気対策の必要性、(6)衆議院解散論などについて発言があった。

Q: 先週金曜日に追加金融緩和が行われた。株価は上昇したが、急激な円安の副作用を懸念する声も出はじめている。現状、円ドルレートは113円台後半である。追加緩和に対する評価と為替水準について見解を伺いたい。

長谷川: 先程、共同通信社主催の「きさらぎ会例会」で黒田東彦日本銀行総裁の話を直接伺ってきた。終始一貫して言っていたのは、15年にわたる「デフレマインド」からの脱却をするために、2年程度を目途にインフレ率2%の目標の実現を目指すということである。これは昨年4月に日銀がQQE(量的・質的金融緩和)を発表した時からまったく変わっていない。原油価格の下落は、短期的には物価を引き下げる方向に働くが、長い目で見れば必ずしもその方向(物価引下げ)ではなく作用する。最近のインフレ率は、1%半ば程度だったのが、1%程度まで下落してきた。ここで(好転している期待形成の)モメンタムを失うことのないように、2%目標達成のために何でもやるというコミットメントを今回も実施するため、QQEの拡大を行ったということである。

為替の件については(記者会見で)何度も申し上げているが、QQE実施によって物価水準を目標に近づけるためにモメンタムを維持すれば、為替水準がまったく変わらないことはあり得ない。一方、株式市場には大きなポジティブなインパクトを与えた。総合的に見る必要はあるとしても、基本的にあまりに急激な為替変動は、企業経営(への影響)や物価押し上げ要因となるような点で、若干懸念されるところである。特に最近では、個人消費が弱含みであることによる景気への懸念があるので、これに拍車をかけることにならないように、注意深く見守っていかなくてはならない。

Q: 昨日から「今後の経済財政動向等についての点検会合」が始まった。長谷川代表幹事は、かねてから社会保障の安定財源確保の点、引き上げが国際公約である点、法律に2015年10月に税率引き上げが明記されているといった理由で、予定通りの税率引き上げを主張されているが、そのスタンスに変わりはないか。

長谷川: 基本的姿勢はまったく変わっていない。7-9月期の国内総生産(GDP)の速報値が11月17日に、二次速報が12月8日に公表される。菅義偉官房長官もそれを見て判断すると言っている。確かに、消費税率の引き上げに伴う駆け込み需要の反動減がかなりの規模であったことや、夏場の天候不順も若干影響して弱含みとなり、7-9月期のGDPがそれほど回復しないのではないかという見通しが一般的のようである。しかしながら、今後のトレンドをみると、10-12月、そして来年まで見ると、実質成長をしていくだろうというのも共通の見方のようである。そうしたことも総合的に考えれば、ここはやはり消費の不安要因の一つでもある将来の社会保障制度(の財源問題)について、目に見える形で前進させ、完全にとはいわないにしても、ある程度不安を緩和する。そういったことが消費者のマインドにも影響することを考えれば、粛々と(消費税率の引き上げを)やっていくことがよろしいのではないかと思う。

Q: 米国の中間選挙は開票中であるが、共和党が上下院で過半数を制する勢いである。今後の日米関係にどのような影響を及ぼすのか、特にTPP交渉に変化があるか否かについて見解を伺いたい。

長谷川: 最新の情報では、上院で共和党50議席、民主党44議席のようである。共和党が上院で過半数を取り戻すことはほぼ間違いないだろうと見られるが、基本的に日米関係には影響はほとんどないだろう。お互いに必要なパートナーであるし、地域の安全保障の問題を考えると、必要性は増すことはあっても減ることはないと(日米で)双方よく認識している。仮に共和党が政権を取れば、政権与党である(日本の)自民党と(米国の)共和党とは、どちらかといえば歴史的に連携が深く、そういった意味からも、大きな影響があるとは思わない。

ビル・クリントン大統領(民主党)時代に取り組んだ北米自由貿易協定(NAFTA)は、共和党の支持を得て議会を通過させたという経緯がある。共和党は基本的に自由貿易に賛成で、民主党がネガティブであった。私としては、いずれにせよ共和党の協力を得なくてはならないと考えている。他の法案や議会の駆け引きとの関係がどうなるかは別にして、仮に共和党が上下院の過半数を取ってもTPP交渉に影響を与えることはなく、むしろ推進に働くことを強く期待したい。

来週、北京でアジア太平洋経済協力会議(APEC)が開催される。そこでTPP担当の閣僚会議が開催される予定である。前回会合でフロマン米通商代表部代表は、まだまだ協議すべき点は多いが、決着点が見えるところに来たと述べていた一方で、甘利明TPP担当大臣は少し厳しいと(の認識を示した)。米国は言いたいことを言うので、日本からすると今の段階ではそのような反応を国内向けのメッセージとしても出さなくてはならない面があるのだろうと思うが、何とかそこ(閣僚会議)で合意にこぎつけていただきたい。

 「(アベノミクスの)第三の矢の実際の効果はどこにどう出ているのか、うまくいっていないのではないか」と外国の知人からよく聞かれる。構造改革は「第三の矢」の大きな柱の一つであり、政府は昨年の臨時国会からはじまり、政府はさまざまな法整備を行い、過去の内閣で実現できなかった、いわゆる岩盤規制への切り込みを行った。農業、医療に切り込み、雇用はまだ十分とはいえないまでも、小さな第一歩を踏み出している。これらが法制化され、実施され、経済にインパクトを与えるまでには少し時間がかかることは理解をしておかねばならない。同時に、目に見える形(の成果)としてTPP交渉の合意に達することができれば、(実際に)発効するのがその1年先だとしても、心理的に大きなインパクトを与えるし、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)や日中韓の三カ国の自由貿易協定、さらにはEUとの自由貿易協定などにも大きくポジティブな影響を与えると考える。そういった要素を含めて、TPP交渉は強く進めていただきたい。共和党が上下両院で過半数を取ること自体は、決してネガティブには働かないと考える。

Q: 日銀による追加金融緩和が行われる以前に、為替水準の急激な変動は望ましくないと言っていたが、現状と以前では、どのくらい意識が変わっているか。

長谷川: 先ほど述べた通り、為替だけでなくパッケージで見るべきである。「デフレマインド」を脱却するためのモメンタムが少しスローダウンしているという黒田総裁の懸念から、日銀のコミットメントを実現するために、あのような形でサプライズのQQEを行ったわけだが、その結果をどう見るかにもよるが、株価にはポジティブな影響を与えており、これは全世界にも波及している。為替は円安となったが、円安そのものが必ずしもマイナスに響くわけでもない。企業業績そのものは依然として好調であり、円安によってさらに(好調な業績を)加速する企業も数多くある。一方で、一般の消費者が直面するコスト・プッシュ・インフレ的なものや中小企業では、円安が必ずしもよい形で働かない。これらがパッケージとして成り立っているので、一面的に見て悪いと言うわけにはいかない。ただ、経営の立場からすれば、急激に(為替が)動くこと自体は、業績見通しや生産の調整など、いろいろなことについてさまざまな影響が表れるので、そういった意味ではあまり好ましくないと考える。

前原: 円安は、地方在住の人や中小企業に悪い影響を与えるといわれる。地方では車をよく利用しており、ガソリン価格の上昇の影響が大きい。今回、ガソリン価格は下がっているので、円安のマイナス分が帳消しになり、そのような意味で(円安とガソリン価格が)同時に上がった時と比べ、影響は小さいのではないかと思う。

Q: 追加金融緩和について、総合的な評価を伺いたい。

長谷川: 黒田総裁は「薬は処方されたものを最後まで飲み切る必要がある」と述べられており、どのような形で総合的に影響を与えるかは、少し経過を見なければわからない。日銀の立場として、昨年来のコミットメントを守るために(追加金融緩和を)行ったことは理解すべきだと考える。

Q: 昨日より経済財政諮問会議では景気対策に関する議論が始まっているが、消費税増税に伴う景気対策は必要だと考えるか。必要ということであれば、景気に即効性のある対策としてどのようなものが求められるか。

長谷川: 景気対策に関する甘利明経済再生担当相の発言も一部報道されているが、これは現在、政府でどのような形で必要になるかどうか、検討されているところだと思う。一般の消費者、国民のマインドを考えると、何らかの形で補正(予算)的な対策を出すことはおそらく考えていると思うし、必要ではないかと思う。どこの部分にどのようにして訴求するかは、政府と与党の判断を待ちたい。

前原: 統計を見ると、賃金の上昇が(景気に)一番プラスになると考える。この冬のボーナスや来春の賃上げ交渉がどうなるかによって、見える景色も変わってくるのではないかと思う。政府に頼るだけでなく、民間も、もっと努力しなければならない。

長谷川: 黒田総裁も述べていたが、今が正念場である。これから本当に好循環にうまく乗せていけるかどうか。業績が上がれば、(上昇分は)当然設備投資に回るだろうし、賃上げにも回っていくだろう。さらに、質的・量的な面でも雇用にプラスの影響を与える。雇用を増やし、非正規を正規に変えるという両面での好循環をつくり、これらが消費に反映され、成長に還元されて、さらに業績を上げていく。この好循環を作るために、今は必死にやっているところである。即効薬があればそれに越したことはないが、政府は法改正の実施や、(賃上げを議論した)前例のない政労使会議など、批判を覚悟で、できる限りのことをやっている。経済界もそれを後押しすることによって好循環を作る。できる限りのことをやるという考え方で、実行していく覚悟が必要である。

Q: 昨日の消費税の集中点検会合では、予定通りの10%への増税に5人が賛成、3人が反対であった。ただ、反対の有識者も増税そのものではなく、時期、タイミングが悪いということであり、1年から1年3カ月程度後ろ倒しすべきという意見もあった。冬のボーナス商戦も控える中、税率引き上げのタイミング自体も、後ろ倒しするべきではないと考える理由を伺いたい。

長谷川: (会合の議論を)深く理解しているわけではないが、(税率引き上げを)やるリスクと、やらないリスクを考える必要がある。(税率引き上げが)国際公約なのかコミットメントなのかという議論はあるが、いずれにしてもG7、G8あるいはG20でそういう話をしているのは間違いない。コミットメントであることは安倍首相も言及しているところである。やらないということではなく、たかが1年とか1年半延ばすだけじゃないかという意見はあるだろうが、累積債務残高が先進国で日本の次に多いのはイタリアで、対GDP比で146%である。日本は230%であり、そういう状況の国が、一度(実施時期を)延ばすと、再度延ばすのではないかと受け取られかねない。消費税率の引き上げに絶好のタイミングはない。三党合意でなぜ(8%引き上げ後の10%への増税を)1年半後にしたのか、記憶は定かではないが、合意し法制化したものである限り、よほどのマイナス成長が続くというような状況や、見通しでもない限り、粛々と実行すべきだと考える。

Q: (黒田総裁が述べていた、今が)正念場という中で、政界では秋風と共に解散風も吹き始めているようである。いろいろなスキャンダルもあり、さまざまな説や分析もあるが、どのようにお考えか。

長谷川: (安倍首相が)「撃ち方やめ(になればいい)」と言ったとか言わないかという話もあったが、そんなことをやっている暇もなく、(ましてや)解散はないだろう。課題山積の状況の中、特に緊急、喫緊の課題が多々ある中で、国会は法律を作り、(政府は)これを実行するところであり、停滞が許される状況ではない。先ほどの景気対策やTPP、さらには国家戦略特区をうまく活用して、目に見える形で、少なくとも形だけでも(改革を)示す必要がある。そういう裁量権が(国家戦略特区には)与えられており、これを大いに活用して、国民や世界に対してメッセージ性のあるものをパッケージとして作り、発信していただきたい。正念場の段階において、国政の中断はあまり好ましくない。

最後に一言だけ申し上げる。社会保障制度など、国民にある程度の痛みを伴う改革(への理解)を求めていかざるを得ない。であればこそ、国会議員として、あるいは国会としてやるべきことについてはやっていただきたい。例えば、一例が選挙制度改革の問題である。最高裁が(投票価値の不均衡が)違憲状態(に至っている)と判断して久しい。一部の高裁では違憲・無効という判決も出ていた。そういう状況の中で、再来年の夏には参議院議員選挙もあるが、まったく進歩が見られないというのは、国民の期待に応えていない、あるいは三権分立の精神に則っていないと言われても仕方ない。最近あまり言っていなかったが、このことも含めてやるべきことはしっかりやっていただきたい。基礎年金の半分は税金で賄うこととしながら、昨年度までは年金特例公債で差額分をカバーしていた。また70~74歳の(前期高齢者)医療費の窓口負担は2割と規定されているが、1割のままで補てんしていたものを、ようやく段階的に2割負担をしていくことになった。法律で決めたことは粛々と実行していただく必要がある。また、再々申し上げているが、民間企業に例えば高齢者について雇用延長を求めるのであれば、公務員も同様にするのが筋である。この機会に改めて申し上げておきたい。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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