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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年10月14日(火) 13:00~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)世界・日本経済の見通し、(2)北海道電力の電気料金再値上げと原発再稼働、(3)再生可能エネルギーの買い取り中断と新規認定の一時停止、(4)消費税率の10%への引き上げと経済対策、(5)日本人のノーベル物理学賞受賞、などについて発言があった。

Q: 日経平均株価が一時15,000円を割り込んだ。要因としては、先の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、世界経済の見通しについて下振れの懸念が表明されたことが大きい。下期にかけて、日本経済が下振れのリスクにさらされる局面は多くなるのか、それとも日本は例外なのか。今後の世界経済、日本経済の見通しをどのように受け止めているか。

長谷川: 麻生太郎副総理・財務・金融相は、「景気は緩やかな回復基調にあるが、国によってばらつきがある」と表現されていた。日本の景気見通しについて、本会内部でも分析・検討しているが、4月1日の消費税率引き上げ以降、反動が大きかったことと回復が少しもたついている状況から、やや足踏み状態かと(思われる)。これを抜けるための良いきっかけが国内的にも国際的にも必要なときに、G20での表明があり、国際通貨基金(IMF)も見通しを下方修正するとのことだった。

世界の中で、比較的良いと言われているのが米国と中近東諸国で、中国への見方は分かれる。週末に出席した国際会議(三極委員会東京地域会合)では、中国は大丈夫と言っていたが、それ以外の出席者の意見は分かれていた。世界第二位の経済大国が、少なくとも7%の成長をすることは世界経済にとって大きな影響力がある。中国もGDP成長率7%(程度)の達成を公言・公約しているので、実現すると思う。習近平国家主席がほぼ完全に権力を掌握しているとの話もあり、腐敗対策ではなく、経済持続性のためのさまざまな改革を実施している様子が見受けられる。

一番の懸念は欧州で、いまひとつ力強さが足りない。インフレ率が0.5%程度であり、日本が辿ったようなデフレになる懸念もある。ただし、米国はもちろんのこと欧州も、日本の過去の政策の失敗や長期低迷に結び付いたことをよく学んでいるので、それを何としても避ける手を打つこともG20の目標のひとつである。何とか持ち直してくれることを、世界中が期待している。

株価については、米国のニューヨーク証券取引所で連続して下がり、日本も10月に入ってから2週間で約1,000円値下がりした。それほど激しく落ちる理由があるのかという疑問は抱くものの、事実は事実である。世界経済全体が、G20 を元にネガティブなトレンドになっているが、長く続くとは思っていない。株価については、近いうちに揺り戻しがあると思う。

Q: 震災以降、原発停止中の北海道電力で二度目となる電気料金の値上げが行われた。地域の企業にとっては負担増となる。政府の要請により値上げ幅圧縮の措置も取られたが、一時的にはやむを得ない措置なのか、ある程度限界に来ているのか、現状での受け止めを伺いたい。

長谷川: 北海道では、これから冬場に向けて電力が最需要期に入る。原子力発電所の中でも比較的新しく建設された泊発電所の再稼動の目途が立っていない状況での、苦渋の決断だったと思う。政府としても、負担を少しでも和らげるよう、北海道電力とも協議し、当初の値上げ幅を抑制するような措置を取ったと理解している。従来から述べているように、原子力規制委員会の新たな基準による審査をクリアし、地域住民の理解が得られたところから再稼動をすることは避けて通れない、日本が取らざるを得ない当面の施策であると思う。北海道電力もその候補に挙がるべきであり、それまでは、債務超過を考えるとやむを得ない手段であることを、苦い現実ではあるが、国民も認識せざるを得ない。原発再稼働も電力料金値上げもだめとなると、債務超過で倒産することになるので、現実を冷徹に見つめるしかないと思う。

Q: 再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度について、太陽光(買い取り)の申し込み等の殺到によって、電力会社に買い取り手続きを中断する動きが広まり、経済産業省により新規認定の一時停止が検討されている。小渕優子経済産業相は年内に結論を出すと述べているが、どこをどのように見直せば、制度としてきちんと運営できるようになるのか、考えを伺いたい。

長谷川: 固定価格買い取り制度の導入は、民主党政権時に行われ、当時野党であった自民党の賛成もあって実施されたが、様々な点で見切り発車であったと、これまで本会でも主張してきたところである。ひとつは、当初の太陽光の買取価格は42円/kWhと記憶しているが、それ(価格設定)自体が国際的に見ても高い。同程度の価格にしていたドイツで、運営が難しく修正する方向が見えていた中、敢えて設定した。水力を除けば2%程度しかない再生可能エネルギー比率を早く20%に近付けたいとの希望があったのだろうが、その目標設定自体に無理があった。2012年7月に施行され、翌年3月末までに申請して承認されれば、直ちに事業化せずとも当初の価格が適用された。そのような問題もあり、その後、方針が変わった。当初の法律にも、電力会社の買い取りにあたっては、常に旨としてきた高品質の電力の安定的供給が難しくなる場合には買い取りを停止しても良いと書き込まれていると理解しており、それらが勘案されたものと推察する。決して望ましくはないが、やむを得ない措置と考える。

もうひとつ、勉強不足でよく分からないところもあるが、太陽光でも風力でも発電はある程度どの事業者でもできるが、高品質・安定供給に必要な蓄電能力や送電網は電力会社に頼ることになるだろう。そのコストの兼ね合いも考え、十分に行き届いていないことがあれば、法的にも運用面でもコスト負担面でも見直しがあって然るべきである。

Q: 原発再稼動は避けて通れないとの発言があった。今年の夏季セミナーで「縮・原発見直し」を表明したが、現在の議論はどのような状況か。

長谷川: 東日本大震災後の(2011年7月の)夏季セミナーで「縮・原発」を決めたが、当時とは少し違う理解をされている向きもあって、(今年の夏季セミナーで)見直しを表明した。震災前は54基の原発が動き、総発電電力量の30%を担っていた。東京電力福島第一原発事故を受け、建設中のものを含めて新設は凍結しなければならず、福島第一原発は当然ながら廃炉、全基の再稼動は非現実的であった。安全性をさらに強化しても30%のピークからは減らざるを得ないことを踏まえて「縮・原発」とした。これが、本会は原発を縮小し続けるべきとの立場にあると受け止められてきたので、本会としての位置付けについて再認識を促す意味もあり、夏季セミナーで述べた次第である。趣旨としてはそれほど変わっていない。

Q: 景気が足踏み状態との発言もあったが、消費税率の再引き上げを延期すべきとの声が聞かれる。今の考え方を伺いたい。

長谷川: 三党合意により、2014年4月と2015年10月の(消費税率)引き上げが決まった。このインターバルが良かったか否かを今論じるのは詮無いことである。安倍晋三首相が、7-9月期の経済状況を見て12月に(引き上げを)判断されるので、それを待つ以外ない。(消費税率引き上げの)背景には、社会保障費が年間1兆円以上増えているという現状がある。法律で定めていた基礎年金の二分の一を国庫負担にする(恒久的な財源)手当てもできていなかった。また、世代間格差の是正など社会保障制度そのものの見直しが必要だが、それだけで(財源が)賄えるわけではないことも事実である。安定財源として消費税を(社会保障の)目的税化する。その上で、本会でも提言している通り、税率は10%でも足りず、17%は必要である。これらの背景を考えると(税率の再引き上げを延期する)余裕は日本にはない。同時に国際公約でもあり、政権は、(再引き上げを)やるリスクとやらないリスクをよく考え、慎重に判断されるだろう。今の段階で(景気減速の)懸念はあるが、(消費税率の再引き上げを)やめるべきというのは時期尚早であり、予定通りに引き上げられることを期待している。

Q: (消費税率の再引き上げは、)今の景気の状態では、経済対策なしには厳しいのではないか。

長谷川: (安倍首相は今年4月の8%への引き上げ時に実施した)5兆円の経済対策の効果を検証すると国会で答弁されている。それを踏まえた上で、必要であれば新たな財政出動を検討されるだろう。その効果について、今この場で言うべきではないが、政権としてきちんと考えて判断されるものと思う。

Q: 日本人のノーベル物理学賞の受賞について、受け止めを伺いたい。

長谷川: 授賞理由にあった「20世紀は白熱灯が照らし、21世紀はLEDが照らす」との説明がすべてを象徴している。ノーベル物理学賞を受賞した技術が実際に社会や生活にどう役立っているか分かりにくいものも多いが、今回は、光の三原色のうち難しかった青色LEDの発明に成功し、フルカラー化が可能になった。かつ、大幅な電力消費削減、長寿命化は画期的であり、地球温暖化防止にも貢献する。また、技術だけでなく、事業でも目に見える形に役立つものが認められたのは、日本にとっても大変良かった。中村修二先生は米国籍との話もあるが、日本での業績であることは間違いない。

Q: 中村先生は「怒り」が原動力であるとし、日本の基礎研究へのサポート体制のあり方に一石を投じた。グローバル企業の経営者として、この点について意見もあると思うが、いかがか。

長谷川: 人それぞれモチベーションを上げる原動力は異なり、中村先生の場合は“anger(怒り)”だが、万人に共通するものではない。日本の科学者、物理学者は、どちらかいえば専門分野に没頭し、子どものように純粋な方が多い。知的財産について、中村先生の退職後に(かつて所属していた会社との間で)いろいろあったことは事実である。政府では、企業における発明・発見の帰属について検討しているが、発明者の特定が難しいこともあり、(法人帰属や当事者の契約とした上で、)会社として制度を持つ方向にある。自社(武田薬品工業)も発明報奨制度を持っており、人によっては数千万円という報奨金を受ける。これ(法人帰属や当事者の契約)が世界の趨勢であり、落ち着くべきところに落ち着いて、互いにしこりや不満を残さないのが一番良い。

Q: 武田薬品工業の社員がノーベル賞をとった場合、いくらくらい配分されるのか。

長谷川: まだ考えていないが、相応の金額を考えたい。金額は、実用化と業績への影響に基づいて決まる。薬を市場に出し、発売後5年間の売り上げ実績を見て、発明者に配分する。美徳的なところとして、こうした成果はいろいろな人が協力した結果でもあるので、個人で全部受け取るのではなく、皆で分けるという人もいて、さまざまである。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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