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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年9月30日(水) 13:00~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)景気認識、(2)消費税率の10%への引き上げ、(3)為替、(4)政労使会議・賃上げ・年功賃金の見直し、などについて発言があった。

Q: 景気認識について、本日は各種統計の公表集中日だが、生産が弱めの数字で、甘利明経済財政・再生相も「(駆け込み需要の)反動減の収束に手間取っている」と発言している。景気は回復軌道に乗っているのか、あるいは7-9月期以降乗るのか、代表幹事の見解を伺いたい。

長谷川: 確かに数字は少し弱含みではあるが、全体のトレンドとしてはそれほど心配する状況にはないと考える。11月に7-9月期の実質GDP成長率が発表される予定だが、その際も四半期で前年同期と比較するだけでなく、特に9月の数字がどう出るかに注目したい。8月は悪天候など消費抑制要因もあり、前年と同じ環境にはなかった。確かに鉱工業生産などいくつかの面で少しマイナスが出ているが、一時的なものではないかと思っている。

Q: 12月に消費税率10%への引き上げについての判断があるが、今の経済状況のままであれば引き上げる決断をすべきと考えるか。

長谷川: 消費税率引き上げに関する法律には景気条項が付帯されているが、基本的には、例えば経済がマイナス成長に大きく振れるような状況を指していると理解している。本年で言えば、4-6月期のマイナスに続き、7-9月期も大幅なマイナスになるようなことでもない限り、法の趣旨に則れば、粛々と引き上げることが妥当である。

消費税率引き上げは、社会保障・税一体改革に基づくもので、社会保障費が毎年1兆円ずつ増えている中では、(消費税率を)引き上げて財政の安定化を図らなければ持続性が損なわれていく。また、輝く女性推進の諸プランにある幼稚園・保育所の増設や学童保育への支援などにも、消費税率引き上げ分が織り込まれているものもある。

さらに、国際公約でもあり、消費税率を引き上げられないことがジャパン・リスクと受け止められ、国債の金利が少しでも上がれば、国の財政にとって数兆円もの負担につながる。さまざまなことを考えれば、多少の心配はあっても粛々と実行すべきである。

景気対策については、政府に知恵のある方がいるので、ある程度の対策の打ちようはあるだろう。

Q: 為替について、1ドル=110円に迫る勢いで円安が進行中である。三村明夫日本商工会議所会頭は「行き過ぎの水準」と述べ、榊原定征日本経済団体連合会会長は「当然急激な変動は注視しなければならないが、現在はぎりぎりの適正水準」と発言している。現状が適正水準かどうかについて、所感を伺いたい。

長谷川: 長期のデフレの間に、日本の産業のあり方も変わってきており、円安になっても輸出は増えず、GDPの10数%を輸出で稼いでいたような時代とは異なっている。化石燃料の98%を海外からの輸入に頼っているわが国において、これ以上円安が進むことは、国にとっても産業界にとっても必ずしもプラスではなく、あまり行き過ぎてほしくない。世界経済を見ると、米国が最も順調であり、新興国はいろいろなところで躓き、欧州諸国も良いとは言えない。その中で、ドルとの相対的な関係で円が安くなることも、ある程度やむを得ない部分はあるが、あまり急激にこれ以上(円安が)進むことは決して好ましくない。

Q: 昨日から政労使会議が再開している。この政労使会議が持つ意義と賃上げについて、所感を伺いたい。

長谷川:  基本的に、賃金は個別企業の労使交渉で決まるということが大前提である。政労使会議が行われ、たとえ政府から賃上げの要請があったとしても、労使の交渉で決まるという前提・原則は崩れない。デフレ・マインドで、長い間ベースアップや賃上げが行われてこなかった。デフレによって実質賃金、購買力が上がっていたと言えなくもないが、そのような状況から確実に脱却しつつある現状では、政府も示しているように、それぞれができるだけ協力して経済の好循環をつくっていかなければならない。企業の収益改善によって、雇用、賃金、設備投資を増やし、それらが消費というかたちで景気の好循環につながっていく。このような状況をつくるためにも、ある程度の賃金上昇は必要である。賃上げを政労使会議で議論することについて、今後、慣行化することを良いとは思わないが、まだ足取りが覚束ない中で今年も行われることについては、ある程度理解できる。また、賃上げだけでなく、付加価値生産性に見合った賃金体系や働き方の改革についても議論の対象になっている。個別企業の労使で話し合う原則は崩さないにしても、政労使会議のような場で議論されることには意味があると思う。今までは、ワーク・ライフ・バランスとして、(現行の枠組みの中で)フレキシブルな働き方ができるようにすることで(仕事と生活の)バランスを保つことを目指していた。(時間や仕事を)自分でコントロールできるようになれば、ワーク・ライフ・マネジメントができる。特に、ホワイトカラーでは、時間と生産性が必ずしも見合うとは言えない部分について、真剣に検討して変えていくことが必要だと思う。

Q: 先週、日立製作所が、管理職における年功賃金の廃止を発表した。このような動きは今後、他の日本企業にも浸透すると考えるか。

長谷川: 管理職については、普及していくのではないかと思う。日本企業には日本企業のあり方があって、年功賃金を変えることが全体のモチベーションや生産性の向上につながるかというと、必ずしもそうではないかもしれない。会社固有の事情を見ながらよく考え、年功賃金を維持するほうが良ければ(それが良く)、現に年功賃金の廃止を試みたが、やはり元に戻したというケースも聞いている。個々の会社で職種群なども考えて行うべきだと思う。年功賃金が全面的に悪いと言うつもりはまったくない。

Q: 政労使会議で、麻生太郎副総理兼財務・金融相が、「企業には内部留保が24兆円ある」と発言していた。そもそも麻生大臣は、今回の政労使会議の開催に反対しており、ようやく納得を得た形となったが、内部留保に関する発言について所感を伺いたい。

長谷川: まず、内部留保についてはいろいろな数字が出ており、不確かである。引当金等も内部留保とみなした300兆円以上という話や、バランスシート上で投資に使えるのは80兆円という説もあり、今回の24兆円は初めて聞いた数字である。感覚的に(投資等に使える資金)は70~80兆円が当たらずとも遠からずの数字だと思う。デフレの時代であれば、現金で持っている方が価値が高まるかもしれないが、インフレが現実になりつつあり、円安の状況を考えればさらにインフレに振れる可能性もある。バランスシート上にキャッシュを持っているよりも、投資をしてリターンを得る方が良い。景気が良くなればそのようなチャンスも増えてくるので、そのように経営者のマインドが変わっていくことは好ましい。IRの場では、アクティビスト・タイプの機関投資家を中心に、金利が低い時にバランスシート上にキャッシュを置いたままでどうするのか、それならば特別配当をせよ、ということを必ず問われる。どのような株主であれ、きちんと説明できるような経営をするのが経営者の義務である。タイミングとしては、前向きに考える時期に来ていると思う。

Q: 物価上昇の兆しは見えているが、景気が良くなる保証はない。スタグフレーションが懸念されるが、それを回避する対策は打たれていない。賃金上昇が物価上昇に追い付かないと景気は良くならないが、この状況に対して政府に求めることはあるか。

長谷川: 消費税率引き上げのタイミングなどで、景気や(消費者)心理の状況を見て対策を取ることはあるだろう。安倍首相は、現時点では(2014年度)補正予算は組まないと述べており、今の段階から(補正予算を組むと)言うべき筋合いのものではないが、必要なときには検討されるだろうと思う。賃上げに関連して、本日、8月の毎月勤労統計調査(速報値)が公表され、現金給与総額の増加率が3%の増税分に満たないと言われている。確かにボーナスも含む数値だが、(消費マインドは)理屈ではないところも大きく、消費マインドを萎えさせるような流れは好ましくない。理解が誤っていたら訂正するが、アベノミクス、ウーマノミクスで女性など、新たな雇用・労働参加が進むと、全体(家計)の総額は上がっても、一人当たりの平均値は下がる。このような要素も勘案し、あまりネガティブな面ばかりを見ない方が良い。景気を回復させるための最後に近いチャンスなので、経営者は経営者で、政府は政府で、しっかりと努力すべきである。

前原: 賃上げについて、大企業はかなり上げたが、中小企業の上げ幅は少ない。また、都会では上がっていても地方での上がり方は少なく、スピード感の違いはあるかもしれない。(中小企業や地方に)波及していけば全体の雰囲気が変わると思う。

長谷川: 懸念は懸念としてあるが、ここでダメだと思ってしまうと本当にダメになるかもしれない。経営者としては、何とかなる、何とかしなければならないと考える。

Q: 政労使会議でも、賃上げに対する政府の圧力がより高まってくるのではないか。

長谷川: 今春の賃上げにも(政府からの)要請があり、17年ぶりにベースアップが復活した企業もある。経営者は、企業業績が改善している中で、どこまでボーナス、賃金それぞれに反映させるかを考えているだろう。この状況が何年か続いて、景気の安定的な回復が見通せるようになれば、賃上げの方に向かうだろう。経営者がその辺りを判断する微妙な時期にある。

Q: 現金給与総額は4月1日に消費税率が引き上げられた3%分も上がっていないが、10月1日に値上がりする商品もある。物価上昇が消費に与える影響について所感を伺いたい。

長谷川: 個々の感じ方や、公衆の面前で大丈夫とは言いにくい日本人特有のメンタリティーの問題もある。欧州に3年間住んでいた経験があり、その間に消費税率が上がった国もあったが、引き上げ前の駆け込みやその反動での落ち込みなどのニュースは皆無だった。日本は独特で、細かなことに過敏に反応しすぎる面もあるのではないか。

Q: 年功賃金について、個々の会社の事情によるとの発言があった。安倍首相が年功賃金の見直しに言及することに対して、勇み足との印象も受けるが、いかがか。

長谷川: 最後は、労使が話し合った上で経営者が決めることである。首相に言われたら迷惑という類のものではない。政府の気持ちは理解した上で、自社ではこうするという見識の問題である。自社(武田薬品工業)でも、管理職は理屈から言っても年功賃金に馴染まないので、まず管理職から始めている。一般の労働者については、職種によっては合わないかもしれないので、そこはよく考えた方が良い。首相の発信が議論のきっかけになることは悪くないと思う。独立取締役についても、“Comply or Explain(遵守または説明)”が義務付けられたことで、各社設置に動いている。これ自体は全体としてはプラスであり、ないよりはあった方が良い。どこまで良いかは別の問題だが、そういうものだと思う。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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