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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年9月17日(水) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)日中関係、(2)賃上げ、(3)円安、(4)景況感、(5)消費税率引き上げ、(6)スコットランドの独立、などについて発言があった。

Q: 日中関係について、11月のAPECでの首脳会談実現に向け、関係修復の動きも出てくるのではないかと思う。現状の課題や目指すべき方向性について、意見を伺いたい。

長谷川: 目指すべき方向性については、世界第2位と第3位の経済大国が一衣帯水の距離にあり、協力すればWin-Win、しなければネガティブに、二国間だけでなく周辺諸国や世界にも影響を及ぼすため、(日本と中国が)仲良くしていくことが望ましい。

先週北京を訪れ、中国の国有企業、民間企業を含む企業家集団と意見交換を行った。今回の訪中は、昨年9月、日中関係が水面下での雪解けも見えない中で、代表団に来日いただいたことへの答礼である。(昨年の来日は、)中国中信集団という国有企業のコングロマリットの常振明会長が、日本への研修経験もあるとのことで、ビジネス、経済面ではなんとか対話と協力を維持しなければならないとの問題意識の下、代表幹事特別顧問でスタンフォード大学名誉教授、清華大学客員教授の青木昌彦氏を通じて申し入れがあり、実現した。大変有意義な意見交換の場を持つことができ、丁度一年が経ったので、今年は当方から訪問した。今回の企業家集団との会合では、中国側から16人の企業家の参加を得て、大変活発かつ和気藹々とした意見交換ができた。また、唐家璇 中日友好協会会長、李小林 中国人民対外友好協会会長にもお会いした。両会長からは、現在の日中関係に至った原因は日本側にあるとの話もあったが、今回はそのような話をするための訪中ではなく、意見として聞いた上で、我々としては日本政府の対応が不適切であるとは思っていないと回答し、それ以上の話にはならなかった。北京駐在の報道の方にも述べた通り、現在もかつて言われた「政冷経熱」の状況かもしれないが、政治は「冷静」に対応するという「冷」であり、経済は熱っぽく交流しようという意味での「政冷経熱」でありたいと考えている。

Q: 昨日、新たな民間議員が入って経済財政諮問会議が行われた。賃金の話題も出たが、経済好循環の二周目に向け、賃金の議論がどうあるべきかについて、所感を伺いたい。

長谷川: 基本的には、賃金は労使の話し合いで決まるが、今は、政権が15年に及ぶデフレからの脱却を掲げ、あらゆる可能性を追求している段階である。昨年も、前例のない事態に「三本の矢」という前例のない対策を講じている中では、政労使で賃上げを議論するという前例のないことがあって良いのではないかと述べた。現段階においてもその考えは変わっていない。今年4月に消費税率が8%に引き上げられた。今春は、多くの企業で久しくなかったベースアップも含め、2%超の賃上げが行われた。加えて、夏のボーナスも、経団連の集計によると対前年比で8%程度上がり、7月の現金給与総額は前年同月比で2.6%程度上がっているとのことである。それでも消費税率引き上げ分とインフレを加味すると、実質若干のマイナスになっており、GDPの大きな部分を占める個人消費について、ある程度の勢いを維持するためには、企業側の賃上げ努力について話し合っても良いと考える。

Q: どのような状況、環境になれば、企業は賃上げの実現を本格的に考えるようになるか。

長谷川: 企業経営者の責務として、従業員の生活の安定を第一に考えなければならない。賞与は、業績連動のニュアンスが強い。賃金にももちろん業績は加味するが、世の中がインフレの状況になれば、それに応じて購買力が低下しないよう、生活安定に資する賃金を支給することも、企業の責務の一つであると考えている。安倍政権がデフレからの脱却に取り組み、少しずつではあるがインフレ傾向になってきている。(消費税率引き上げの影響を除く)物価上昇率は1%程度になっているため、(賃金を)据え置けば、実質上の購買力は下がる状況にある。企業としては、景気を上向きにすることも考え、業績を向上させて賃金を上げ、従業員の生活の安定を図ることもしていかなければならない。

前原: 国全体で考えると、企業の賃上げが公務員の賃上げにもつながる。その意味で、来年は少し波及効果が表れてくると見ている。

Q: 政労使会議では、今年も賃上げがテーマとなるか。

長谷川: 本来であれば、(賃金は)労使で決めることだが、前例のない事態には前例のない対応をしなければ、なかなか突破口が開けない。(政労使会議での賃上げに関する話し合いは、)来年くらいまではやむを得ないのではないか。最終的には個々の企業が判断することであるが、今春の賃上げを見ても、10数年ぶりのベースアップというポジティブな反応も表れている。来年の消費税率引き上げを控え、可能であればもう一年(政労使会議で)話し合うことは、今の段階では意味があると思う。

Q: 円安が加速している。メリットもある一方で、アナリストを中心に経済に打撃を与えるのではないかとのデメリットが指摘されている。今後の見通しや円安のダメージについて、所感を伺いたい。

長谷川: 行き過ぎた円安/円高は好ましくなく、急激な短期間での移行も好ましくない。為替レートの妥当な範囲は個々の企業で異なるが、一般論としては1ドル100円から105円、それを多少逸脱する範囲であれば、輸入と輸出のバランス上の問題もある程度包含し、経済成長を続けることが可能ではないかと考える。また、国家の財政面においては、エネルギー源としての化石燃料の輸入は、発電量の9割を火力に頼っていることから増加しており、WTIで100ドル弱/バレル程度で勘案すると、一日約100億円、年間約3兆円を超える追加輸入費用がかかっていると言われている。それを上回る生産性で稼がないと、日本経済としては、貿易収支はすでに赤字が継続しているが、経常収支までも赤字状態が定着することになり、好ましくない。

Q: 消費税率引き上げから5か月が経った。想像以上に景気は回復していないとの指摘もあるが、現在の景気認識と今後の見通しについて伺いたい。

長谷川: 最も懸念されるのは、7-9月期の国内総生産(GDP)である。7月、8月は天候不順の影響もあり、住宅(着工件数)がなかなか回復しない状況も見られるなど、少し懸念材料がある。機械受注や設備投資などの先行指標は、力強くはないが少しプラスの状況である。まだ大きく心配することはないかもしれないが、ややもたついているというのが、今の率直な感想である。政権は年内に、11月中旬に発表予定の7-9月期GDP速報値も踏まえ、来年10月からの10%への消費税率引き上げを判断するとのことだが、国際公約でもあり三党合意でもあるので、理屈からいけば粛々と実施することになるだろう。景気への影響を考えなければならない現状に鑑みても、どのような判断をし、その判断を補強するためにどのような政策を打ち出していくかに注目していきたい。

Q: 消費税率の10%への引き上げについて、黒田東彦 日本銀行総裁は記者会見で、上げるリスク、上げないリスクについて述べていた。これらのリスクに関する所感を伺いたい。

長谷川: 国際公約である財政健全化に懸念が生じることが、上げないリスクの大きな要因の一つではないかと考える。そこから先は、仮定の話となり、状況を見なければ分からない。安倍政権になり、税収はこれまでの40兆円程度から50兆円を超えるようになった。消費による貢献や業績の向上が、税収に大きなプラスとなっているが、逆に振れるようなことになれば、これも大きなリスクになる。政権として、さまざまなことを考慮した上で、リスクを最小限にして、(消費税率引き上げを)実施されることに期待している。

Q: 明日、スコットランド独立の是非をめぐる国民投票が実施される。日本経済に与える影響は不明だが、英国から独立することで、金融面やEU経済への影響も考えられる。代表幹事の所感を伺いたい。

長谷川: 他国のことだが、なぜこのようなことになるのかというのが率直な疑問である。スコットランド議会で独立(賛成)派が過半数を取り、デーヴィッド・キャメロン英国首相に住民投票の実施を交渉したとのことである。キャメロン首相が(住民投票を)認めた時点では、賛成派は3割程度で、一度実施しておけばこの議論を収束できるとの見通しだったようだが、意外にも直近になって独立賛成派が猛追し、賛否が拮抗しているようである。背景には、(スコットランドが独立すれば)北海油田をすべて取り込めるという目算があるやに聞いている。スコットランドとイングランドが合併してUnited Kingdom(連合王国)を形成してから300年以上になるが、個別の民族や地域の事情があるにしても、住民投票による独立が実際に起こることは、欧州にも北米大陸にも同様の問題を抱えている国・地域があり、世界にとってあまり好ましくないように思う。スコットランドが独立したらアバディーン空港をどうするか等、さまざまな問題が出てくると言われており、必ず不安定要因につながる。ここは冷静に考えて、独立反対派が有利になることが、英国にとっても世界にとっても良いのではないかというのが、個人的な感想である。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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