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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年7月29日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)「縮・原発」の再検討、(2)中国の食肉問題、(3)最低賃金引き上げ、(4)有効求人倍率と完全失業率、人手不足、(5)安倍首相の外交、(6)人口減少、(7)女性の活躍推進、などについて発言があった。

Q: 先日(7月17~18日)の夏季セミナーで、「縮・原発」の再検討を打ち出したが、なぜこのタイミングでの方針転換だったのか。今後1年程度をかけて検討するとのことだが、現時点で代表幹事はどう考えているか。

長谷川: 2011年3月11日の東日本大震災後、7月に開催した夏季セミナーで「縮・原発」を打ち出したが、基本的な考えは変わっていない。(当時の考え方をあらためて整理すると、)原発54基のうち事故が起きた福島第一は廃炉しかない、それ以外にも営業運転期間が40年近い古いものは廃炉との判断も下るだろうし、一方で新設は難しい。加えて、原子力規制委員会発足の下で新しい安全基準が作られることから、格段の厳しいチェックがなされることになる。当然のことながら、ピーク時には総発電量の3割を創出していたものは低下していかざるを得ないだろうと考え、夏季セミナーで議論し、「縮・原発」の方向を打ち出した。あれから3年が経ち、環境・エネルギー委員会(朝田照男委員長)でもメディアでも、当時の議論の詳細が薄れてきて、「縮・原発」=(原発を)どんどん縮小する方向、と受け止められていることもある。この言葉は設定したときの役割を果たしたように思い、この問題をどう位置付けるか、朝田委員会であらためて検討していく。基本方針を根本的に変えることは考えていない。

Q: 中国の食肉問題について、日本企業としてはコスト削減のために中国に出ていかざるを得ない側面があるが、安全性への懸念もあり難しい問題である。代表幹事の受け止めを伺いたい。

長谷川: 誤解を恐れずに言えば、グローバル化をし、コスト削減を追求する中では、このようなリスクもある程度は織り込まざるを得ないのが現実ではないか。報道によれば、ファミリーマートや出資者である伊藤忠商事も、該当の工場に対して、相当念入りに安全性の査察、チェックをされたようだが、四六時中監視をしているわけではない。報道によれば、内部告発から政府系の報道機関がパートタイマーとして潜伏し、働きながら撮影し、公表したとのことである。中国政府は、新政権のキャンペーンとして腐敗を追及しており、個人のみならず、(企業の)不適切な製造についても摘発していく方向になるのだろう。製薬業界でも、英国系のグラクソ・スミスクラインという世界でトップ5前後の医薬品企業が、不正行為によって大変厳しい追及を受け、逮捕者も出し、(中国市場における)ビジネスが激減するような事態もあった。中国でビジネスをする場合には、念には念を入れて、自社のビジネス慣行を追及されて困ることのないようにする、製品の調達では安全性を徹底的に守る、万一リスクが避けられないような懸念があれば、コスト削減の追求だけでしがみつかないということまでも考えざるを得ない。今回問題となった上海福喜食品については、親会社である米国OSIグループのCEOやCOOが上海に入り、謝罪会見をしている。これが一罰百戒のためのメッセージとなって、再発防止につながれば良いが、なかなかそう簡単な問題でもないと思うので、(調達においては)注意の上に注意をする必要がある。(中国では)今回が初めてのケースではないこともあり、国内での製造に比して格段に厳しい安全性のチェックや注意をする必要がある。

Q: 今年度の最低賃金の引き上げが議論されている。地方経済活性化に関連して、引き上げをどう受け止めるか。経営側としては慎重にならざるを得ない状況もあると思われるが、所感を伺いたい。

長谷川: 厚生労働省の審議会で議論が続いているようである。2013年度は(全国平均で前年度から)15円増の764円に引き上げ、報道によれば、今年度も二桁の引き上げは避けられないとのことである。背景には、アベノミクス効果と言われるデフレからの脱却が明白に見えてきており、加えて消費税率引き上げによる一時的な購買力の相対的低下も見られる。政府から賃上げ要請を受けたこともあり、昨年と比較しても遜色のない形で(最低賃金も)引き上げていくことが妥当な環境にあるのではないか。

Q: 本日、厚生労働省が6月の有効求人倍率を発表した。今回で19ヶ月連続の改善となり、医療・福祉や建設の分野で新規求人数が増加している。これについて受け止めを伺いたい。

長谷川: 本日、総務省から6月の完全失業率(季節調整値)も発表され、前月比で0.2%増の3.7%となった。一方、有効求人倍率は1.10倍で、22年ぶりの高水準と認識している。数字に若干矛盾があるように見えるが、景気が良くなったことで、特に女性を中心に労働参加(への意欲が高まり)、就職したい、パートタイムで働きたいという求職者が増えていることが、完全失業率がやや上振れとなった原因ではないかと分析されている。有効求人倍率が1.10倍になったことで、全体として賃金が上がっていく方向になることは、政府が目指しているインフレとの関係においても、ある程度必然的な方向であると思う。一方で、医療・福祉については、大きなトレンドとして、購買力の観点からも賃上げを考える必要がある。同時に、第三次産業の中でも比較的生産性が低いといわれている分野である。大企業におけるホワイトカラーの生産性も低いと言われているが、(今回の求人増は)生産性を上げる一つのきっかけとなることを期待しており、良い方向に進むといい。政府が昨年来「日本再興戦略」で述べており、経済界も賛同している「成熟産業から成長産業への失業なき労働移動」が進み、所得も増えていけば、良い循環が回っていくのではないか。

Q: 人手不足と言われている状況について、実感はあるか。

長谷川: 企業や産業によって異なる。特に、第三次産業の小売・流通業や建設、農業、造船などは非常にタイトである。建設計画について、労働者不足や資材・人件費の高騰によって、新たな建て替えや建設を見送るという動きも出ていると聞いている。東京オリンピック・パラリンピックというマイルストーンもある中で、それぞれの事情で調整を図ることは必要であり、決して悪いことではない。建設業界にある2020年以降に需要がなくなるのではないかという懸念も、少しは緩和されるのではないか。

前原: 就職氷河期に就職できなかった人たちが100万人を超えていたが、現在の統計を見ると、仕事を探していない非労働力人口が15万人減っており、良いことだと思う。

長谷川: 産業競争力会議の議論で、政府側からブラック企業の話がよく出ていたが、(従業員に対して)乱暴な扱いをしている企業も、このような状況になれば人が去っていく。そのようなことに対する是正効果もあり、相対的に見れば決して悪いことではない。

Q: 安倍晋三首相の中南米訪問に企業経営者が同行している。資源外交等これまでうまくいかなかった部分を対処していくと述べており、首相就任以降42カ国を歴訪するに至っている。一方で、肝心な近隣諸国との関係改善に向けてはまったくアクションがない。中途半端とも受け止められる安倍外交について、所感を伺いたい。

長谷川: メディアの皆さんの方が詳しいと思うが、目立つ形でのアクションとして表面化はしていないものの、水面下ではいろいろなシグナルを送っていると思う。11月に中国・北京でアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議が予定されているが、その際に(日中)首脳会談が実現できるかも話題となっており、ホスト側の中国も頭を悩ませているのではないか。頭を悩ます必要もないと思うが、これまでの延長線上で考えれば、中国側にもそう簡単にはいかない事情があるのかもしれない。APECのような会議で、ホスト国が主要国のトップと個別の会談をするのは慣習化、常識化しており、ぜひ実現することを望みたい。恐らく(日本)政府もそのような観点でメッセージを送っているだろうと想像する。同時に、近隣二カ国、特に韓国については、安全保障の面では準同盟国であるにもかかわらず、(韓国は日本に対して)歴史問題を前面に打ち出し、本来であればもう少し緊密に行き来をし、首脳会談も行うべきところであるのに、中国とだけ実施している。これは韓国の方針だが、もう少しバランスをとってもらえると、皆が懸念を持っている状況も少しは改善するのではないか。中国との関係においては、政治的、内政的課題もあり、なかなか急速に改善することは、何かのきっかけでもない限り難しいだろう。一方で、経済交流は以前よりも頻繁に行われるようになってきている。政治においては、課題の解決や首脳会談の実現を願うところだが、経済においては交流が抑制されることのないよう、切り離して進めるべきである。そうすれば、(政治面でも)前に進む一助になると考える。

Q: 人口減少問題について、総合的な所感を伺いたい。

長谷川: 経済成長と人口増は連動しており、「人口ボーナス」と呼ぶ人もいる。その逆は「人口オーナス」と言われ、人口減少下で経済成長がうまく実現した例はないことから、(人口減少は)由々しき問題と考えている。経済財政諮問会議の下に「選択する未来」委員会(三村明夫会長)が設置され、2060年にも人口1億人を維持するとのビジョンが出された。具体的方策はこれから練ることになると思うが、日本の現在の合計特殊出生率は1.43(2013年)しかなく、人口を維持するには2.07必要である。女性の労働参加を容易にし、ワーキング・マザーをサポートするという安倍政権の方針は今後も追求しなければならないが、人口を維持できる出生率にまで戻すことは容易ではない。フランスでも2.01くらいで、移民と合わせて人口を維持しているところであり、外国からの人の受け入れを無視して人口を維持することは、なかなか難しい。いずれこの問題について本格的に議論をし、門戸を開いていかなければ、(2060年に人口1億人維持の)達成は難しいだろう。持論としては、適格要件をクリアすれば国籍を与える移民という形以前の段階として、突破口としては国家戦略特区を中心に高度人材の受け入れを始め、技能実習制度の滞在期間を3年から5年に延長し、建設・造船労働者は特別に7年間の猶予を持った受け入れを許可する、など少しずつではあるが試みも実施されている。これらの実態を見ながら、全体としては徐々に緩和する方向に行かざるを得ないのではないか。韓国ではすでに10年近い滞在期間を認めており、日本だけが例外的に頑なに(受け入れを)避けながら経済成長を続けていくことは難しいと思う。

Q: 秋の臨時国会で、安倍政権は女性活躍推進のための新たな政策を打ち出そうとしている。女性やワーキング・マザーの活躍推進のために必要な規制緩和を三つ挙げるとすれば、どのようなものがあるか。

長谷川: 必ずしも規制緩和だけではないが、一つは、子どもを安心して預けられる環境整備である。就学前は幼稚園や保育園に、(親が)安心して預けられる、多少残業などがあってもフレキシブルに対応してもらえること。また、「小1の壁」と言われる学童保育についても、夕方の親の帰宅時間までは面倒を見られるよう、厚生労働省と文部科学省とで調整していると認識している。二点目は、裁量労働、テレワークを含む在宅勤務など、フレキシブルな勤務態様を可能にすることである。働く側に犠牲を強いることないよう慎重に行うべきであるが、例えばワーキング・マザー、特に乳児に近い子どもを育てている人には、子どもが寝た後、夜10時から働きたいというような要望もある。その場合、現行法制では深夜勤務手当を付けなくてはならない。働く側と働いてもらう側のニーズをうまくすり合わせてフレキシブルに対応できるようにすべきではないか。厚生労働省でも検討することになっており、その結果を待ちたい。三点目は、企業が一番努力しなければならず、社会も努力すべき問題だが、いわゆる男性中心社会の是正である。教育、トレーニング、昇進の際の判断基準などについて、女性特有の制約を考慮し、例えば転勤や海外勤務に従えないようなことがハンディとならないよう、企業として制度を考えなければならない。すでにいくつかの企業で行われているが、数値目標を設けるとともに、それを達成するためのカスタムメイドのトレーニング・プログラムやメンタリング制度などを作る必要がある。そのようなことをすべて併せて実施することによって、役割こそ違え、基本的には平等であるはずの男女の差がなくなることを目指す必要がある。

前原: 子どもを持つ母親が孤立して悩んでいるケースが多い。それを解決するには、地域の教育力や育児力を向上させなければならない。制度はどの地域にもあるが、それぞれの関係機関がバラバラに頑張っているところが多い。保健所や幼稚園、保育園、小学校、児童館、場合によってはおやじの会や町内会、さらには地域の企業も一緒になって子どもを育てるという、かつて日本の田舎にあった環境をとり戻すことに各地域で取り組むべきである。以前学校の経営に携わり、いかに悩んでいる母親が多いか、孤立している母親が多いかが身に沁みて分かった。

長谷川: 個人的には、「教育審議会」という名称より「人材育成審議会」とした方が良いと日ごろから考えている。教育というと学校に限定されるが、家庭、地域社会、企業それぞれに役割があり、みんなが力を合わせて人材を育成することが必要である。すべてを学校の先生や教育、文部科学省に委ねることは良くないし、誤解を招く。日本に必要なことは、総合力を結集しての人材育成である。

以上

(文責: 経済同友会 事務局)


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