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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年4月1日(火) 15:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)消費税率の引き上げ、(2)景気見通し、(3)来年度の賃上げ、(4)防衛装備移転三原則の閣議決定、(5)日韓・日中関係、(6)国家としての対外発信、(7)「STAP細胞」の論文問題、などについて発言があった。

Q: 本日からいよいよ消費税率が5%から8%に上がった。代表幹事にとって増税を実感する場面はあったか。

長谷川: 本日は買い物をしている時間がなかったが、(3%上がることについて)あまり大騒ぎをしない方が良いと思う。誤解を恐れずに引用すると、昨日、ノルウェーの外務副大臣に会い、ノルウェーの消費税率は25%もあるのに、なぜ日本は5%から8%に上がることがこんなに騒ぎになるのかとの話があった。もちろん茶化してはいけないことで、逆累進性含め大きな負担があることは事実だが、世界の流れからいけば、政府は決して無茶なことを(国民に)お願いしているわけではない。社会保障制度改革国民会議の答申が出されて以降、政治の(社会保障制度改革への)取り組みが前進していないことは極めて遺憾だが、後の世代にツケを残さないためにやむを得ない(消費税率)引き上げであり、もう少し冷静に受け止めてはどうか。

Q: 当面は消費の冷え込みが懸念されるが、本日発表された日本銀行の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、足下は大企業製造業の業況判断指数(DI)が5四半期連続で改善となったが、先行きは悪化する予測が立てられている。今後の景気の見通しを伺いたい。

長谷川: ある程度(の消費の冷え込み)はやむを得ないにしても、(政府は、)それを最小限に留めるために5.5兆円におよぶ補正予算を組み、それを早期に執行するなど、できる限りの対策を講じている。(景気は)気分の問題でもあるから、ここで(景気回復が)失速するのではないかという心配はあまりせず、企業もベースアップを含む賃上げをしており、個人資産の累積も1,600兆円を超えて今も増え続けている状況であるので、(個人は)消費をしっかりしよう(、というマインドを持ちたい)。日本経済がデフレを脱却し、安定成長(の軌道)に乗るかの本当の境目であり、それぞれができる限りのことをして、少し消費もして、安定成長へ持っていく。皆がそう思わないと(現実に)ならない部分もあるので、経営者としてはぜひそうありたいと思っている。

Q: 年内に消費税率を8%から10%に引き上げる決断もしなければならないが、これについて見解を伺いたい。

長谷川: (8%から10%への引き上げは)法律で決まっていることではあるが、経済状況等を総合的に勘案した上で改めて判断するとの景気条項が付されている。菅義偉 内閣官房長官は報道で、ぜひ(10%への引き上げの)判断ができるような景気回復に持っていきたいと発言されており、政権の意欲は極めて強いと思う。そのような形(10%への引き上げ)が実現できるよう、経営者・経済界としてもできるだけのことはしたい。基礎年金の2分の1国庫負担分の財源については、今回の消費税率引き上げで確保されるが、それだけでは十分ではないので、将来にツケを回さないあるべき社会保障(制度を実現するためにも)、やむを得ない増税であり、避けて通ることはできないので、(10%への引き上げを)実現する方向に持っていく努力をそれぞれがすべきである。

Q: 日銀短観では、消費税率引き上げに対する企業側の見方は当面3ヶ月の反動減を懸念するトーンであり、それが数字に表れている。国、民間企業は、それぞれ今後何をすべきか。

長谷川: 国は、大規模補正予算や予算の前倒し執行など、できることはすべてやろうとしている。企業には供給サイドと需要創出との両面の役割がある。賃上げは、少なくとも大企業では政府の要請に応える状況となり、中小企業にも波及しつつある。良い循環ができつつあり、後は設備投資や雇用の増加が課題であるが、設備投資についてはなかなか腰が重く、目に見える形に出てきていない。4月から復興特別法人税が前倒し廃止となる。政府には賃上げ原資にも使ってほしいとの意図もあるようだが、この機会に古い設備の更新など、特に省エネに絶大な効果があるような例もあるので、そのようなことも含めて設備投資を考えていくべきだろう。また、統計を見ると、失業率は下がり、有効求人倍率は上がっている。具体的な労働力人口全体は下がっていても、労働参加率は増えている事実もあるので、せっかく出てきている良いトレンドをできるだけ維持・強化すべく、企業も努力をしていくということに尽きる。

前原: (前回の消費税率引き上げ時と比べると)金融が安定している他、東日本大震災からの復興のための投資や2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた投資もあり、条件は大きく異なる。

長谷川: (前回引き上げ時の)97年とよく比べられる。ダボス会議のセッションでジョセフ・E・スティグリッツ氏と同席した際にも、彼は97年の増税時には大きな反動があったと述べていたが、我々はレッスンを学び大規模補正予算も組んでいるなど、当時とは状況が違い心配ない、と反論した。

Q: 5月以降にベースアップの効果が、7月以降に賞与(引き上げ)の効果が出てくる。法人実効税率引き下げが決まると、政府は経済界に、来年もベースアップや賃上げを要請するのではないか。そうなると資本主義が本末転倒になるように思う。国内に生産拠点を移している企業も多くなっている中で、官邸主導で賃上げが決まることについて、企業はもっと考えるべきだと思う。もう少し建設的な内容で経済成長に結び付ける政策を打ち出さなくてはいけないのではないか。税においても、法人税だけでなく輸出戻し税など、いろいろな措置がある。総合的な判断の中で、97年の反省も踏まえ、今度は失敗しないための経済同友会としての考えがあれば伺いたい。

長谷川: 経済同友会としては改めて考えるが、来年の賃上げはまだ先の話であり、その時の経済情勢や景気動向、個々の企業業績の動向による。今は、できるだけ景気回復、デフレ脱却の基調を持続する方向に持っていかないと、フィスカル・コンソリデーション(財政再建)の目途も立たない。(財政再建のためには、)GDPの成長により(債務の)相対的な比率を下げていくしかない。これは他人事でなく、企業も(政府から)言われようが言われまいが、来年も賃上げをきちんと検討すべきである。(景気が回復しても)国内での投資が期待するほど戻っていないことは事実であるが、先日のレコフの調査ではM&Aは活発で、特にアジアでは過去最高水準規模のM&Aも行われているとのことである。それはいずれ投資リターンとして所得収支に戻ってくる。そのような投資が、業績回復を反映して増加しているということは、全体としてみれば、即効性、遅行性の問題はあるにしてもポジティブに考えるべきであるし、この流れを止めないことが重要である。

さらに、国家戦略特区の地域が指定され、具体的施策は今後6~7月に、担当大臣、関係自治体の長、民間事業者で構成される特区地域会議で検討される。そこで、いままで突破できなかった規制について、まずは実証・検証をする意味でも殻を破る試みがぜひ必要である。これは、海外投資家も注目しているところである

前原: 日本の生産設備は世代が古い。小松製作所の事例を伺い目からウロコだった。(国内の工場を)最新設備に換えることで、エネルギーコストや生産コストがほぼ50%削減でき、世界で戦えるコストになったとのことで、毎年順次最新のものに置き換えていくとのことだった。他の企業も同じ状況にあると思われ、そのような動きも今後出てくるのではないか。

Q: 本日の閣議で、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」が決定された。一定条件を満たした武器の輸出が認められることが柱になるが、これに関する課題と受け止めを伺いたい。

長谷川: 政府も慎重に考えており、当然、輸出してはいけない国には厳重に規制をかけると同時に、迂回等のないようトレースをしていくなどいろいろな縛りをかけている。(今回の新しい原則の)背景には、日本の防衛産業の生産性を上げることと同時に、防衛費を有効に使うという目的がある。事実関係の詳細を把握しているわけではないが、今まで武器の製造に協力できずに高い物を買わざるを得なかったというようなことが緩和されるのであれば、(一定の条件下での輸出を)前向きに考えるべきだと思う。

日本の防衛費は、絶対額では世界で5~6番目程度である(2012年に世界5位/ストックホルム国際平和研究所2013年公表)。米国が世界の軍事費の約40%を占めており、日本は3~4%程度である。

前原: GDP比で見ると圧倒的に少ない。

長谷川: 日本は防衛費1%枠(防衛費は国民総生産(GNP)の1%を超えない)という縛りをつけている。シンガポールは国家予算の20%程度が国防費である。

前原: 韓国もシンガポールと同程度である(2012年度時点では15%程度)。

Q: 日米韓首脳会談がオランダのハーグで実現した。三首脳は、バラク・オバマ米大統領を挟んで会見を行い、朴槿恵 韓国大統領はあまり良い反応でない印象を受けたが、首脳会談が実現したことに対する所見を伺いたい。また、習近平 中国国家主席がドイツでの講演で南京大虐殺について発言したことについて、受け止めを伺いたい。

長谷川: (日米韓首脳会談については、)米国の強いバックアップ、要請もあり、核安全保障サミットの場を利用して三カ国の首脳会談が実現したことは、少なくとも前進だと思っている。朴大統領は、報道で見る限りはあまり笑顔も浮かべず友好的な印象ではなかったかもしれないが、公式な会談に入る前の冒頭挨拶では笑顔も見られた。いろいろな局面を考慮の上での行動だと推察するが、いずれにせよ安倍首相と朴大統領の就任後初めて首脳会談が開かれたことは良かった。テーマは、歴史認識のようなものを避け、朝鮮半島における核の問題や北朝鮮の脅威についての共同対応に絞られたにしても、会って話したことが第一歩になるので、それはそれで意義があったと思う。次のステップとして、防衛担当の局長級協議も予定されているとのことで、少し前に進み出したことは良いことだと思う。

習近平 中国国家主席のドイツでの講演については、菅官房長官がすぐに反論しておられ、その通りだと思う。我々から見ればまったく相応しくない場であのような話が出ることに対しては、日本として都度態度を鮮明にしておくことが、今の段階では最低限必要なことなので、適切な対応だと思う。

Q: 南極海での調査捕鯨をめぐる国際司法裁判所の判決で、日本は全面敗訴となった。日本の外交、国際的アピールの問題点について、習中国国家主席の諸外国へのアピールや朴韓国大統領のプロパガンダ的な発言など、それぞれが自らの国益を主張している。日本は、国家としてPRをするような対外発信能力の欠如を感じることがあるが、いかがか。

長谷川: 国の威信を守り、不当な第三国からの批判に対しては、その都度反論していくことが最低限必要だが、残念ながら、過去においてそのようなことをやってこなかったツケを今払わされている部分もある。安倍政権が過去の清算をしている、ツケを緩和しているという立場は考慮しなくてはいけないにしても、一つひとつ反論をしていくしかないと思っている。根本的に、河野談話、村山談話については、第一次安倍政権でも今回の政権でも、見直しはせず継承すると国会で述べられている。今は、南京大虐殺などの問題について、都度反論することしかできないが、だからといって諦めることも国家としてできないので、適時適切に反論するしかない。

前原: 現在は中国の事情で中断しているが、世界中から集めた専門家による歴史検証の作業を、どんなに長い時間がかかってもやるべきである。その積み重ねが大事だと思う。

(日米韓首脳会談終了後、記者会見時の)朴大統領の表情について、韓国国内や北朝鮮の問題にはいろいろな事情があるので、日本人には分かりにくい面があるのではないかと推測している。それだけで我々が感情的になるべきではない。

Q: 理化学研究所が、小保方晴子氏の「STAP細胞」に関する論文に不正があると発表した。小保方氏は反論しているようだが、今後、日本の科学技術の世界からの信用性にも関わってくる問題であり、所感を伺いたい。

長谷川: 私は科学者ではないが、新規の発見・発明については、再現性が検証の根幹であると考える。それができていない段階で、いわゆる「コピペ」など本質的でない部分でも、適切でない論文作成の手法が明るみに出ており、小保方さんは極めて不利な状況にあると思われる。今回、理化学研究所が(不正があるとの)見解を発表したことは、現段階ではほぼ確定的な判断であろうと思われ、極めて残念である。特に、科学技術立国を標榜している日本においては、絶対にあってはならないし、今後二度と起きないよういろいろな形で考えていただきたい。日本人の良さは、真面目にコツコツ努力をし、誠実に物事に対応するところである。それを根底から崩すようなことが出てきたとすれば極めて嘆かわしいし、強い遺憾の意を表明したい。

以上

(文責:経済同友会 事務局)


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