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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年02月18日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉、(2)大雪被害、(3)2013年10~12月期の実質GDP成長率、(4)ソチ冬季五輪、(5)東京五輪・パラリンピック、などについて発言があった。

Q: 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定について、今週末から閣僚会合が行われる予定であり、いよいよ交渉妥結か持ち越しかという局面である。甘利明 経済財政・再生担当相は本日午前中の会見で、重要5項目の関税について譲歩する可能性を示唆したが、TPP協定交渉妥結に向けての期待をあらためて伺いたい。また、今回妥結しないとなれば、当面交渉が動かなくなると予想されるが、そうなった場合の影響や懸念を伺いたい。

長谷川: アベノミクスの「第三の矢」は、構造改革がメインであり、(第一、第二の矢に比べれば効果の発現には時間を要するが、)比較的短期で効果が出やすいのが国家戦略特区だと思う。もう一つ、構造改革とは別だが、TPP協定交渉が合意に達すれば、それは日本の経済成長にもプラスになる。経済三団体(日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会)の総意として、先週月曜日(2月10日)、三団体長が安倍晋三首相を訪問し、TPP協定交渉の促進をお願いした(共同提言『TPP交渉の早期妥結を求める』)。その後、甘利大臣が訪米、マイケル・フロマン米国通商代表と2時間半に及ぶ会談をされて、ようやく双方のセンシティビティ・イシューについて間合いを詰める機運が出てきたことは喜ばしい。昨年末には「1ミリも譲れない」(西村康稔内閣府副大臣)とのことだったが、今週月曜日には西川公也自民党TPP対策委員長が「今週、大きな決断の時が来るかもしれない」と発言され、少し前進する機運が出てきたようにも読み取れる。一方で、まだ(日米間の)ギャップは大きいとも言われている。今、ウェンディ・カトラー米国通商代表部次席代表代行が来日して交渉を続けており、シンガポールでは首席交渉官会合も始まり、今週末から閣僚級の会合が行われる。この機会にぜひ大きく前進してほしいと思うのは経済界の一致する意見である。これまでの交渉の推移や現状を理解する範囲で考えると、シンガポールでの交渉で一挙に(妥結)、というのはなかなか難しいかなと若干懸念しているが、それが現実にならないよう積極的に前に進めて、詰めていただきたい。

Q: TPP協定交渉について、「シンガポールで一挙に、というのはなかなか難しい」との発言があったが、閣僚会合での実質合意が難しいという意味か。

長谷川: 特に(日米)二国間の隔たりが大きいと言われる関税の問題、米国は自動車、日本は農産物5項目、特に牛肉、豚肉、酪農品といったセンシティビティ・イシューについて、間合いを少し詰めていく動きは出てきた。シンガポール(での閣僚会合)ですべて一気に解決すればいいが、若干懸念があるので、それが当たらないような(合意に向かう)結果になってくれることを望んでいる。

Q: TPP協定交渉が閣僚会合で進展しなければ、4月のバラク・オバマ米大統領の訪日が焦点になると思われる。シンガポールでの交渉が進展しなかった場合、今後はどうなるか。

長谷川: (TPP協定は)トップ同士の交渉で決まる性格のものではない。万一、シンガポールで合意に達しなくても、ある程度間合いや距離感が計れると思うので、それを(担当者間で)さらに進めていただき、(その場合は)オバマ大統領の訪日時期に合わせて合意に達することが望ましく、ぜひそういう努力をしていただきたい。

Q: 記録的な大雪により、企業の生産活動や個人の生活に大きな影響が出ている。一部には孤立している地域もあり、首都圏の交通機関やインフラの脆弱性が明らかになった。これについて所感を伺いたい。

長谷川: 週末から続く被害を踏まえて、政府も豪雪非常災害対策本部を設置し対応を急いでいるようである。首都圏や普段1mを超えるような積雪に見舞われることのない地域での雪対策の脆弱性が露わになった。米国でも、特に東部を中心に厳しい寒波と吹雪に襲われたことが経済のスローダウンの一つの要因と言われているが、日本も今回のような大雪に対して、早急に対策をとれる、孤立しないで済む、何日間にも及ぶ道路の渋滞・停滞がないようにする、ということをこの機会に考えてほしい。今の段階であれば、経済への影響はそう心配する必要はないと感じている。

前原: 30年ほど前に山梨県甲府市で勤務していたことがあるが、地形的な要因が大きく、5~600ミリの雨が降ると「陸の孤島」になり、どこにも行けず、どこからも入れない状態で数日間過ごしたことがある。当時は夏休みで、郷里に帰っていた人は戻れないような状況が続いた。今回の対応として、コンビニエンスストアの経営者から、ヘリコプターで(孤立した地域に)物資を届けるとの話を聞いたが、それくらいしか手段がなく難しい。30~40cmの積雪はよくあり、その程度であれば途絶しないが、1mは想像を絶しており、ご苦労が多いと思う。

Q: 昨日、2013年10~12月期の実質GDP成長率が発表され、市場予想を下回る結果となった。デフレ脱却の道筋が見えてきたと見るか、消費税率引き上げへの不安が残ると見るか、見方が別れるところだが、受け止めを伺いたい。

長谷川: 判断が難しい前期比・年率プラス1.0%という数字になった。まずは、4四半期連続でプラスになったことは良かった。同時に、内容を見れば、どちらかと言えば内需の主導による成長の貢献が大きいことも、ある意味では良かった。(今回の結果は)4月の消費税率8%への引き上げの際、その前の駆け込み(需要)や(引き上げ後の)反動(への対応について)のひとつの判断材料になるが、政権もその辺りは十分に承知されており、5.5兆円規模の補正予算を組んでいる。また、4~6月期のGDP成長率が若干落ち込むのはやむを得ないが、次の7~9月期にはプラスに戻す方向で、成長路線を堅持したいとの考えのようである。その実現のためには、政府の対策も必要だが、民間もあまり神経質に弱気にならずに、景気の持続的成長のためにできることをやっていくことが極めて大事である。それぞれの立場で皆がやっていかないと、長い間のデフレを脱却し、成長路線へ持っていくことは実現できない。その気持ちをまず持つことが重要であり、個人もこの機会にお金を使ってほしい。

Q: 今回のGDP成長率の数字が賃上げに影響を与えることはあるか。

長谷川: それはないと思う。企業業績は相当改善、回復してきており、先行きの見通しにも反映できるような企業は、ぜひ賃上げを、ベースアップにも踏み込んで考えていただきたい。消費者物価は1%程度の上昇に転じてきており、かつてのようなデフレの時であれば、賃上げやベースアップは厳しいとの考えもあったかもしれないが、このトレンドが完全に変わってきている。加えて、消費税率引き上げが内需、個人消費の抑制につながりかねないので、それをいくらかでも緩和できるような対策を、打てる企業は打っていくべきだろうと考える。

Q: 円安に転じてから時間が経っているが、輸出がなかなか伸びない現状がある。その原因や背景、また今後の輸出の見通しについて、所感を伺いたい。

長谷川: 一般的に、二つの要因が指摘されている。一つは、長い間のデフレ、円高の中で、製造業の従事者が約1,300万人(2000年代初頭)から現在は約1,000万人となっている。結果として第三次産業に移った人もいるが、(製造業の)生産拠点が海外に移ったことが、円安になってもJカーブ(効果)を待ってもなかなか輸出が増えない主な要因だと思う。個人的見解だが、自動車業界で、国内生産が多い企業の方が円安のポジティブな影響を多く受けていることも一つの証左だろう。二つ目は、長いデフレ期間に、残念ながら企業が防衛的になった部分もある。後から来る国々(の企業)にキャッチアップされ、対抗できるだけの効率化・合理化が必ずしも進んでおらず、輸出競争力の面で近隣諸国との差が以前ほどでないことも、輸出がなかなか増えない原因だろう。加えて、電力の約9割を火力で発電しており、1日100億円、年間3兆5~6千億円の化石燃料費(増による電力コスト増)の影響もある。

Q: 今朝未明のソチ冬季五輪のスキー・ジャンプ男子団体について、感想を伺いたい。

長谷川: (スキー・ジャンプ男子ラージヒルでは、)苦節7度目の冬季五輪で、初めて個人で銀メダルを獲得した葛西紀明選手の活躍には、誰もが拍手喝さいを送ったと思う。また、葛西選手が最後の滑走者を務めたジャンプ男子団体で、葛西選手の134メートルの大飛躍の後、伊東大貴選手、清水礼留飛選手、竹内拓選手ら若い3選手が駆け寄り、抱き合って喜んでいたシーンは何とも言えず良かった。葛西さんを中心に、先輩を見習って一生懸命頑張ってきた、と若い選手たちが異口同音にコメントしており、良いチームであることに感銘を受けた。心から拍手喝さいを送りたい。

Q: ソチ冬季五輪のこれまでの競技についてはどうか。

長谷川: 開催前には高い希望や夢を語ることも大事で、メダル10個は獲得したいとのことだったが、残された可能性はフィギュアスケート女子にかかっているようにも思う。少し期待通りにいかなかった部分もあるにせよ、全般的には長野冬季五輪以来のメダルを獲った種目もいくつかあり、日本人選手がよく頑張って国民に明るいニュースを届けてくれていると思う。

Q: 経済同友会では、「アスナビ(トップアスリート就職支援ナビゲーション)」などで熱心に選手を支援している。ソチ冬季五輪を見ていると、ドイツなど欧州勢が強くなっているように感じ、ある意味国力に比例するのかもしれないが、6年後の東京五輪・パラリンピックを考えると、日本の選手層はまだ薄いのではないか。6年後を見据え、政府、文部科学省も力を注ぐ必要があるが、経済界としてはこれからどのようなことに取り組めばよいと考えるか。

長谷川: 長野冬季五輪以来(成績が)停滞している中で、英才教育を受けて育ってきた人たちが、10代でスノーボードなどで活躍しており、その前の世代が牽引しつつも着実にバトンタッチは進んでいるのではないか。特に夏季五輪の関係で、東京都北区にナショナルトレーニングセンターができ、従来にない環境でいろいろなトレーニングができるようになったことがかなりポジティブに働いていると思う。企業がチームを持つことはなかなか難しくなってきたが、選手個人を社員として雇用し、現役時代は思いきり競技に打ち込んでもらい、その後は本人の希望や能力で社員として働いてもらう、そのような趣旨でアスナビによる就職支援を進めている。企業として、大きなチームを支えることはコスト面でも課題があるが、選手数名であれば、さほど大きな負担でなく支えることができ、かつ将来のオリンピック・パラリンピックにも貢献できるので、より多くの企業ができる範囲で支援することを考えることも、底辺を支える意味で重要である。2020年の成熟国家としての東京五輪・パラリンピックでは、国民は多くのメダル獲得を期待しており、国を挙げてのサポートが必要になる。これからいろいろな要請が出てくると思うが、企業もできる範囲でできる限りのサポートをしていくことも大事だと思う。

前原: これから(ソチ冬季)パラリンピックは(メダル獲得が)期待できる。

Q: 欧州勢はどのように強くなっていると考えるか。

長谷川: 素人なので詳細は分からないが、例えば男女とも表彰台を独占したオランダのスピードスケートの強さを見ると、トレーニング方法が圧倒的に優れている部分があるのではないかと思う。そのようなものを謙虚に学ばないと、国内だけでは勝つことが難しい。企業の国際競争も同様で、最良の結果を出しているところがどのようにその結果に結び付けたかと自身のやり方を比較して、足りない部分をキャッチアップするために積極的に自分たちの体質に合ったやり方で取り入れる、次のステップとして超えるためにはどうすれば良いかを考えるベンチマーキングが重要である。ジャンプもスケートも外国人コーチを雇っているケースもあるが、(その競技の)先進国のコーチを積極的に受け入れ、その技術も受け入れる。あまり自分たちの中だけにこだわらず、ベストのものを持ってくることを考える必要もあるだろう。

前原: オランダのスピードスケートは、靴のエッジに秘密があるとの解説もあったが、技術的な協力も必要だろう。機材も含め、技術面では日本は強みがあると思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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