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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2014年02月04日(火) 13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)株価下落、(2)女性の活躍促進、(3)世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)、(4)ジャネット・イエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長の就任と米国の金融緩和縮小策、(5)法人実効税率引き下げ、(6)日本経済団体連合会の次期会長内定、(7)春闘、(8)ソチ冬季五輪、(9)東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会、(10)橋下徹大阪市長の出直し選挙、などについて発言があった。

Q: 本日の東京株式市場では、午後になって日経平均株価が500円超下落している。先進国の金融緩和策や新興国への通貨不安などが不安定要素のようだが、現在のマーケットの動向をどのように見ているか。

長谷川: 私が理解している限りにおいては、米国(経済)は順調に回復、欧州は底を打っており、日本も今のところ指標的にはほぼ順調である。新興国の一部では大幅な成長率の低下が見られるものの、中国は今年も7%台の成長は間違いないだろうと、少なくとも世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席していた中国からの参加者は異口同音に自信ありげに述べていた。ロシアは少し成長が鈍化するようだが、インドは(成長率が)一桁後半に向かっていると聞いている。これがどこまで現実になるかは別として、基本的なトレンドとして不安材料があるとは認識していない。

一方で、今の流れとしては、米国の量的金融緩和第3弾(QE3)の出口戦略の実施により、新興国に回っていたお金が、景気回復が進みつつある先進国、特に米国に流れる(現象が起きている)。為替については、こういう時は安定通貨である円が買われる動きが心理的にあり、このような状況になっていると思う。甘利明 経済財政・再生担当相も述べているように、基本的な問題が株価に表れる形で悪くなっているわけではないので、少し落ち着いて様子を見た方が良い。株価の下落を心配する気持ちは分かるが、このような心理状況に対しては一喜一憂しない方がいいのではないか。

Q: 割烹着の「リケジョ(理系女子)」で話題になったが、理化学研究所の小保方晴子氏が新たな万能細胞「STAP細胞」を発見した。今回の理系の若い女性の快挙をどう受け止めているか。また、社会での女性の活躍について、企業としてどのような対応や期待を持っているか。

長谷川: (小保方さんの発見は)すごいの一言に尽きる。実用化には時間がかかるようだが、それにしても、(現所属の)理化学研究所だけでなく、(留学していた)米ハーバード大学時代の教授の話でも、非常な頑張り屋で徹夜も辞さずに研究をしていたそうである。徹夜で研究をせよという意味ではないが、それだけ打ち込んできた研究が、今回のような画期的な形で成果を上げたことは素晴らしい。また、女性でかつ比較的キャリアの浅い方がこのような発見をされたことは誠に快挙であり、後に続く若い人達や俗に言われる「リケジョ」の励みになれば、これに勝る喜びはない。これが直接、企業での女性の活躍や管理職、指導的地位への登用比率と関連するとは思わない。安倍晋三首相はダボス会議の基調講演で、「女性の労働参加率が男性並みになれば日本のGDPは16%伸びる」とのヒラリー・クリントン前米国務長官の言葉を引用し、ぜひ女性の社会的進出、活躍を推進したいと述べていた。これは企業でも同じで、大きな動きが出てきつつあると思う。自身の会社で考えても、実際に企業の中で成功しているロールモデルとなる女性が数多く目に見える形にならないと、なかなか本当の大きな動きは出てこない。その部分をどうするかについては、個々の企業の工夫があると思うが、社内で特別なプログラムを組み、管理職能力を向上させ、自信をつけてもらうと同時に、実際に管理職に近い役職や管理職になった方に、アドバイスをして相談相手にもなれるような高いポジションの人を付けるなど、様々な工夫が必要になる。成果が出ればそのようなプログラムは不要になるが、これまでの職場環境や慣行から大きく転換するには、弾みをつけるようないろいろなことを考えていく必要がある。

Q: 今年のダボス会議の感想や印象について、雰囲気も含めて伺いたい。

長谷川: まず、雰囲気については、ますます込み合って動物園のような印象だった。クラウス・シュワブ 世界経済フォーラム創設者兼会長のヒルダ夫人によると、これまで分科会はホテルで開催していたが今年は会議場に集中したため余計に混んだのだろうとのことだった。

内容について、今年のハイライトは、日本の安倍首相とイランのハサン・ロウハーニー大統領が出席し、非公開を含めいろいろな場でスピーチや議論をしたことである。特に安倍首相は、水曜日(1月22日)夕方、これまでアンゲラ・メルケル独首相やニコラ・サルコジ仏大統領(当時)、デーヴィッド・キャメロン英首相が話してきたダボス会議の一番のメインの場で、アベノミクスについて英語で基調講演を行った。アベノミクスの「第三の矢」がうまくいくかについて、日本を見ている、あるいはダボス会議に参加している人の大方の見方は、構造改革がどこまで進むかが一つの成功の目安になると思っていた。それに対し(安倍首相は)、農業改革、医療制度改革、雇用問題、法人実効税率引き下げ、女性の活躍推進、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を含むさまざまな問題について、すべて具体的に述べられ、かなり詳細であるという印象を与えたと同時に、実行するかどうかをしっかり見ていきたいと思わせた。大臣も5人も参加し、日本のプレゼンスは非常に高かった。昨年のダボス会議は、安倍政権の発足直後で、首相はビデオで参加され、少し日本に注目が向きかけたという印象だった。一昨年以前は、日本関係のパネル・ディスカッションは閑古鳥が鳴き、小さな部屋でさえ空きがあるという印象だった。今年は、大きな部屋でも立ち見が出ており、まさに様変わりであった。

Q: 世界経済について、米連邦準備制度理事会(FRB)の新議長にジャネット・イエレン氏が就任し、基本的には量的緩和の縮小を継続していくものと見られるが、その受け止めと新議長への期待を伺いたい。

長谷川: (イエレン新議長は)基本的には、これまでのベン・バーナンキ前議長の路線を継承するものと考える。米国の政府や市場は(米国のGDP成長率を)3%程度と見ているようだが、ダボス会議の参加者はもう少し上と見ている向きが強いように感じた。失業率や四半期別GDP成長率を見ても、確実に成長に向かっていると思われる。世界第一の国の経済が順調に回復すれば、世界全体の経済にポジティブな影響を与えると思う。

一方で、その背景にはシェールガス、シェールオイルがある。米国であれほどのエネルギー革命が進むとは、一年前には誰も考えなかったが、米国が純粋な資源輸出国になる見通しすらつきつつある。そうなれば、産業競争力の面で米国はかなり有利になり、日本も欧州も米国とどう競争し、優勢を保つ、あるいは互角に戦うかを考えなければならない。エネルギー問題については、日本は見直しの時期にあるし、欧州も一旦大きく再生可能エネルギーに向かったが、それでずっとやっていけるのかという考えもあり、一部の国には方向性を変える動きもある。そのような(エネルギー計画見直しの)動きが今後出てくる可能性があると感じている。

Q: 米国の量的緩和縮小策に関連して、新興国は米国のマネー引き上げに批判的であるが、この点はいかがか。

長谷川: アルゼンチン・ペソが20%以上急落したが、一国の問題がなぜ新興国全体に影響するのかはなかなか理解しがたいところである。通貨防衛のために、インドやトルコなどでも利上げで対応しており、基本的に問題がないところは早晩落ち着くものと思う。

米国の(量的緩和を)徐々に縮小していく出口戦略については、今マーケットが非常にもろい状況であり、影響やタイミングを見ながら慎重に行われるべきだと考える。

Q: 法人税改革の議論がこれから本格的に始まろうとしている。実効税率について経済界は引き下げ、財務省は課税ベースの拡大という方向感だと思うが、改めて法人実効税率の引き下げについての考え方を伺いたい。

長谷川: 日本企業の競争力の問題もあるが、国内の少子・高齢化が進み、米国のシェールガス革命もある中で、これまで海外への生産拠点の移転が進んだ日本(企業)が、(生産拠点等を国内に)戻すインセンティブはまだ働かない。電気料金も高くなっている中で、国内への投資を呼び込もうとすれば、国内市場を改革、開放し、諸外国と比較して極端に低い対内直接投資残高(対GDP比)をどう上げるかにもメスを入れていく必要がある。そのためには、法人実効税率引き下げなどの税制改革やエネルギーの安定・安価な供給など、所与の環境を整えなければならず、(法人実効税率の引き下げは)その一環である。(対内直接投資残高の対GDP比は)小泉政権時にも倍増計画が策定され、当時3%台後半まで拡大したが、今もその水準にとどまっている。安倍政権でも2020年までにこれを倍増しようとしており、(今般の法人実効税率引き下げ議論も)その一環であると理解している。ただ、仮に倍増して8%程度になっても、OECD加盟国、あるいは、先進国、新興国の平均は30%程度であり、日本だけが一桁という状況は変わらない。現在の一桁前半という状況を放置していてはならず、少子・高齢化や海外移転の進展など所与の条件も変わってきている中で、ここにも本格的にメスを入れていくべきであり、法人実効税率引き下げも大きな一つのインセンティブになる。

Q: 法人実効税率を引き下げても、景気が良ければ自然増で税収は賄えるとの議論もあるが。

長谷川: そのような「法人税のパラドックス」の考え方もあり、結果として確かにそうなった諸外国の分析も見たことはあるが、所与の条件が異なる中では比較もできないので、今の日本に必ずしも当てはまるかは分からない。一方で、周辺国を見ると、中国25%、韓国24.2%、シンガポール17%などと低く、欧州諸国においても高くて30%台前半、低いところでは25%程度であり、キャメロン英首相も、消費税率は上げるが法人税率は下げて20%にすると述べている。競争力を高めるためには(法人実効税率の引き下げが)必要であると多くの国で認識されていると同時に、その効果もある程度検証されているということでないと、国民も納得しない。日本も、少なくとも構造改革の一環としてチャレンジする意義はあると考える。

Q: 日本企業が、日本に留まりたい、国内に投資したいと本気で考えれば、もっと必死で法人実効税率引き下げを訴えると思うが、そのような動きはさほど感じられない。引き下げてくれたら国内にいてもいい、というように感じるが、いかがか。

長谷川: 一つ(の理由として)は、日本企業の海外移転がかなり進んでしまっている(ことにある)。いわゆるイコール・フッティングやレベル・プレイング・フィールド(競争条件を同じにする)の意味ではそうある(法人実効税率を諸外国と同じレベルにする)べきだが、とはいえ、2000年代に入ってから製造業で1,500万人の雇用が1,000万人を切る状況になったものが、(実効税率引き下げによって)1,500万人に戻るかといえば難しいだろう。少なくとも、さらなる海外移転のスローダウンはあるかもしれない。法人税だけでなく、電力多消費型でマージンの薄い事業をしている企業は、電力料金が周辺国に比べて倍以上高いなど(という課題も抱えており)、そういうことも含めて魅力ある市場にしていかないと(海外移転の食い止めは)できない。同時に、消費税率引き上げの時期に、法人実効税率の引き下げを声高に言うと、トレードオフと受け止められる懸念があるかもしれず、それは経済界としても本意ではない。しかし、産業競争力会議や経済財政諮問会議などで、経済界を代表している民間議員はきちんと主張しているので、それでいいのではないか。

Q: 日本経済団体連合会(経団連)の次期会長に、榊原定征 東レ代表取締役会長という技術エンジニアが内定した。1月30日の記者会見で、かつて社長時代にダボス会議に出席した際、メルケル独首相が「ドイツは戦時中、欧州に迷惑をかけたので、変革をもって欧州に貢献したい」とのスピーチに感動して、イノベーションを研究したと述べていた。70歳という年齢は決して若くないが、6月に会長に就任され新たなステージを迎える。経済同友会としても連携する局面もあると思うが、どう見ているか。経団連会長に久しぶりに技術屋が就任することも含めて、所感を伺いたい。

長谷川: 今の時代に、経営者として立派な実績を上げてきた方であれば、文科系/理科系、事務屋/技術屋などとあまり考える必要はないのではないか。日本企業の場合、ようやく(グローバル)競争が激しくなり、経営者の育成、選別がかなり透明かつ客観的になりつつある。各企業が、真剣に経営者を育てることを考えなくては、勝ち残れない、生き残れないだろう。経済同友会は企業経営者が個人の立場で参加する団体であり、経団連とは少し性質が違うが、多くの問題で共通の意見もあり、可能なところは協力することを積極的、前向きに考えたい。三村明夫 日本・東京商工会議所会頭も、三団体で協力できることはしたいと就任挨拶で述べられ、私もそれに呼応して挨拶させていただいた。そのような機運が高まることは良い。

メルケル首相の話だが、ドイツの改革を行ったのは社会民主党のゲアハルト・シュレーダー首相の時で、次のキリスト教民主同盟はその恩恵を受けたというのが実態である。2000年代の初めにドイツは“Sick Man of Europe (欧州の病人)”と揶揄され、そこから2010年までに雇用、教育、労働などいろいろなテーマを掲げて本格的な改革を行った。シュレーダー前首相は、先般来日した際、それらの改革で政権から去ることになったがドイツにとっては良いものを残した、と述べていた。この改革が結果として成果に結び付き、“Strong Man of Europe”として蘇ったと、2013年3月にベルリンで開催された三極委員会でメルケル首相からも伺った。因果は巡り、結果良ければすべて良しだが、その時の政権担当あるいは社長は恩恵を受けるにせよ、布石を打って、改革をし、結果が出るまでには時間がかかる。安倍政権の「第三の矢」も、時間がかかることは分かっているが、やってさえくれればポジティブに受け止められる、とダボス会議の参加者も述べていた。

Q: 明日以降、今年の労使交渉が本格化する。ベースアップについて、できる企業はどんどんやれば良いと述べていたが、春闘でどのような果実が取れれば、良い春闘と考えるか。

長谷川: 個々の経営者と労働組合が、必死になって考え、交渉した結果が集大成としてまとまる。環境が大きく変わり、直近では、消費者物価指数は対前年比で1%を超える状況になっており、デフレから脱却しつつある。長い間(ベースアップを)していない企業も多く、業績の見通しがある程度つく企業は、通常の定期昇給だけではなく、ベースアップも(あって良いのではないか)。政府が復興特別法人税の一年前倒し廃止を実行することも考え、できる企業から(ベースアップを含む賃上げを)するべきではないか。少なくともあまり水をさすべきではない。

Q: 政労使会議もあったが、政治の立場からは、4月1日からの消費税率引き上げに伴う物価上昇に見合う賃上げを望むと思うが、経営者の立場からはそこまでは難しいと考える。これについて所感を伺いたい。

長谷川: 購買力の観点から考えると、デフレの際は賃金が上がらなくても購買力が上がったが、逆のことが起こりつつある。ようやく経済が反転して、四半期別GDPも、少し上下はあるが過去一年はプラスになっている。4月1日の消費税率引き上げを乗り越え、この路線を継続するためには、企業も、賃金や設備投資の面でできる限りのことをするべきである。(政府も企業も)互いができることをし、(景気回復の)モメンタムを失わないようにすることは極めて大事である。安倍晋三首相も甘利経済財政・再生担当相も何度も述べている通り、政府が(賃上げに)言及することは極めて異例であるが、これまで15年も極めて異例の(デフレという)事態が続いており、異例の状況から脱却するためにはこれまであまりやったことがないことを、許容の範囲内でやれば良いと思う。

Q: 今週末、ソチ冬季五輪が開幕する。2020年東京五輪を控えて、期待や注文を伺いたい。

長谷川: ソチ冬季五輪を何としても成功させたいとのウラジミール・プーチン露大統領の思い入れで、4万人近い警備態勢で万全の措置をとっているとの報道があった。開催中に何事も起こらないことを祈ると同時に、ロシアにとって初の冬季五輪であり、成功裏に終わることを心から祈っている。加えて、(日本では)「長野(冬季五輪)を超える」というのが合言葉になっているようだが、日本人アスリートが活躍し、長野を超える成績をあげていただければ、さらに2020年東京開催に向けた機運も盛り上がると思うので、期待している。幸先の良いスタートを切って勢いに乗ってもらいたい。

Q: 個人的に応援している種目はあるか。

長谷川: どちらかと言えばフィールドなど陸上競技が好きだが、ウィンタースポーツも好きで、自身ではスキーをする。競技では、スキーのダウンヒル(滑降)やパシュートも面白い。

Q: 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の会長に続き、事務総長、名誉会長が決まったが、この布陣について所感を伺いたい。

長谷川: 強力な布陣で弾みがついて良いのではないか。昨日、森喜朗会長と武藤敏郎事務総長にわざわざご挨拶にお越しいただき、恐縮している。まずは2019年のラグビーワールドカップを大いに盛り上げ、日本がベスト4くらいに入るようにしていただき、勢いをつけて東京オリンピック・パラリンピックも大成功に導いていただきたいと、申し上げた。森会長と武藤事務総長は40年来のおつきあいとのことで、信頼関係も厚いようにお見受けした。経済界からも御手洗冨士夫名誉会長、豊田章男副会長と、オールジャパン態勢が着々と整いつつあり、盛り上がっていくと思う。

Q: 橋下徹 大阪市長が辞任を表明し、大阪都構想を問う出直し選挙の動きに出たが、受け止めを伺いたい。

長谷川: 理解しにくいというのが率直な感想である。大阪都構想を掲げて自ら府知事から市長に転進された。四つの案を出していずれも多数の支持を得られない状況のようだが、このような(出直し選挙の)形で信を問うことで、果たして都構想(の進展)に弾みがつくのかについては、率直に言っていささか疑問である。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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