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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年10月01日(火)13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事
冨山 和彦 副代表幹事・改革推進プラットフォーム事務局長

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)2014年4月の消費税率8%への引き上げおよび経済対策(復興特別法人税の一年前倒し廃止)と賃上げ、(2)日本企業の競争力強化、(3)日銀の9月の全国企業短期経済観測調査(短観)、(4)中国企業家代表団との意見交換、(5)米政府機関の一部閉鎖、などについて発言があった。

定例記者会見終了後、冨山和彦副代表幹事・改革推進プラットフォーム事務局長より、『第185回国会(臨時会)に向けた意見書』について説明があった。

Q: 先ほど、官邸で政府・与党政策懇談会が開かれ、正式に安倍晋三首相から、来年4月に消費税率を8%に引き上げることが表明された。これに先立ち、税制改正大綱では企業の賃上げを促すいくつかの減税政策が明記された。これに対する所感を伺いたい。また、復興特別法人税を一年前倒しで廃止することも検討されているが、各方面から企業優遇ではないかとの指摘もある。これについてはどうお考えか。

長谷川: 賃上げについては、前回の定例記者会見で述べた通りで、企業の多くは、業績の変動は賞与に反映する形をとっている。欧米では、都市部における消費者物価の変動(アーバン・インフレーション・レート)に応じ、ジョブグレードと個人の評価をマトリックスにして賃金を決める。例えば、インフレ率が2%で業績の良い人であれば3~3.5%の賃上げを行う。米国では、賃上げまでの期間を12か月から10か月に縮めるやり方もある。日本の場合、そのような(ベースアップの)ルールを確立している企業はそうないと思うが、前提・原則は、インフレに対する生活の維持である。長い間デフレであった時には、デフレ以上に賃下げを行ったかは別として、なかなかベースアップはなかったし、労働組合側からもベースアップを要求する論拠に乏しかった。今後、物価が上昇し、企業の業績も上がり、その持続性がある程度見込まれるようになれば、当然ながら、景気(回復)に貢献するため、また政府の様々な施策に呼応するためにも賃上げを考えるべき企業もあるのではないかと考える。

復興特別法人税(の一年前倒し廃止)について、そのような(企業優遇という)見方をされることは、経営者として、あるいは経済界にいる者として、一番困る捉え方である。産業競争力会議でも何度も具体的に意見表明しているが、確かに企業側から見れば、イコール・フッティングという意味で、周辺国に比べて著しく高い法人実効税率であり、(当然ながら)引き下げを求める。もう一つの重要なファクターは、先進国の中でGDPに占める対内直接投資(FDI)の残高比率が一桁、それも4%に届かないのは日本だけであり、他は軒並み二桁である。小泉政権時に対内直接投資の(GDP比率)倍増を目指したが、若干上昇したものの4%を超えたことはなかったし、今でも下回っている。安倍政権が取り組んでいる「日本の経済を成長路線に戻す」という目的に、当然、国内企業も投資などで呼応していかなければならない。しかし、諸外国と比べて著しく劣っている部分を国家として是正することも考えないと、国内企業だけに(この国の)持続的な成長を求めることはインバランスである。そのような観点からも、法人実効税率引き下げと同時に、規制改革を実際に行い、さらには国家戦略特区のような、従来とは異なる考え方で特区を設置し、特定の地域に特定の条件を設定することによって、海外から投資を呼び込む(ことも有意義である)。少なくともアジアで最も起業しやすい国を、特区の中で具体的な条件を設定することで、ぜひ実現していただきたい。これ(国家戦略特区)は従来の特区と違い、手上げ方式ではない。特区に対する要望やアイデアは聞くが、最終的にはトップダウンで、どこにどのような条件の特区を設けるかを決めて進めるものだと理解しているし、フレキシブルに考えて実現することが必要である。

Q: 改めて、(安倍首相の)消費税率引き上げ表明に対する受け止めを伺いたい。

長谷川: 本日も産業競争力会議があり、首相は既に頭の中で決断を下されていると思うが、予定通りに行っていただくことが必要だと思うし、そういう判断を評価したいと申し上げてきた。

Q: 消費税率8%への引き上げ表明について、「評価する」との発言があったが、改めてどのような点を評価するか。また、これからの政府への注文を伺いたい。

長谷川: 大きく二つある。一つは、元々の三党合意の根底にあったように、社会保障の持続性を担保するための消費税率引き上げであり、社会保障制度改革国民会議でまとめた報告書の具体化に早く取り組むべきである。もう一つは、基礎的財政収支(プライマリー・バランス)の問題である。社会保障(の給付)は総額が110兆円にも上っており、今後も毎年1兆円を超える(公費負担の)増加が見込まれる中、安定した財源を確保しない限り、国民の安心感は得られない。景気も順調に回復しつつあるため、予定通り消費税率引き上げは実施されるべきである。駆け込み需要の後にはネガティブな反動も考えられるので、それを最小限にとどめるためにさまざまな税制・財政の対策がうたれようとしている。それらを総合的に評価したい。(来年4月に8%に引き上げた後には、)さらに1年半後の10%への引き上げも控えており、(来年4月以降に)一時的に景気が落ち込んだとしても、できる限り早く回復軌道に戻し、第二弾の消費税率引き上げも実行されることで、財政規律の面でも国際公約に対する回答としてメッセージを送ることが大事ではないか。

前原: もう一つ加えると、日本の国債に対する信用が高まるという効果があると思う。

Q: (復興特別法人税が前倒し廃止された場合、)減税分の使途について本当に賃上げに回っているかを検証するという考え方も示されている。それについて所感を伺いたい。また、恩恵を受ける経済界として、被災地の方々にどのような説明を行うか。

長谷川: 現時点で被災地の方々に説明をすることは考えていないが、具体的に機会があれば話したいと思う。(法人実効税率引き下げの)タイミングについては、前回の定例記者会見でも「政治判断の部分が大きい」と述べたし、経済界が、自分たちが苦しいから復興税を前倒しで廃止して、復興のために猶予された法人実効税率引き下げ分を早く返してほしいと述べるつもりもない。被災地の方々や一般国民の犠牲の上に、経済界だけが恩恵を受けるというような構図は避けなければならない。個人としても経済同友会としても、そのようなつもりはまったくない。一方で、景気回復の大きな流れという点では、(先進国の中で)日本だけが対内直接投資(残高)GDP比4%以下という状況で、持続的な成長を実現していくことには少し無理がある。その点も踏まえて、法人実効税率の引き下げと規制改革をし、日本を魅力ある市場にする。日本再興戦略が「世界で一番企業活動がしやすい国」を目指すことに加え、私からも「アジアで一番起業がしやすい国」というキャッチフレーズを提案して進めていただいており、それを具体的に示すものとして必要な施策を提示している。

減税分が賃上げに回ったかを個別具体的に検証することには、あまり意味があるとは思わない。企業はできる限り(政府の施策に)応えることに尽きる。

Q: 賃上げについて、政府・与党でこれだけのことをやったのだから、企業にも賃上げしてもらわなくては困るというようなムードが作られているように思うが、それについて所感を伺いたい、また、企業はどうすべきか。

長谷川: (賃金は、)最終的には個別企業の労使関係の中で決まるという前提だが、政府はできるだけのことをするし、税制のインセンティブも検討するから、経済界、企業も賃金について考えてほしい、とのことである。これについては、経済界も真摯に受け止めるべきであろう。経済界でも、産業、企業によってアベノミクスの第一の矢、第二の矢による恩恵の波及具合はさまざまだが、より恩恵を受けた企業が先頭を切って示していくことも必要ではないか。日本再興戦略は、“There is no bystander(傍観者はいない)”ということを基本コンセプトの一つとしている。それぞれができることをやり、皆で協力してデフレから脱却し、成長軌道に戻そうということである。参加している民間側も経済界も、それ相応の責任を果たしていく必要がある。

Q: 復興特別法人税の前倒し廃止や研究開発投資に対する減税が検討されるなど、経済界の要望が尊重されている。また、為替も含め六重苦と言われた状況はかなり変わってきており、日本の産業競争力が上がってきてもおかしくないと考えるが、一方で、スマートフォンから撤退する企業も増え、鉄鋼でもアジア諸国との競争も変わらず厳しい。環境の変化を日本企業の競争力につなげていくには、具体的に何をしたらいいと考えるか。

長谷川: 答えがあれば教えてほしい。個別企業がグローバル・マーケットにおける競争力をどう高めるかは、それぞれの企業が考えていかなければならない。ただし、来る臨時国会で提出される予定の産業競争力強化法案や関連施策には、例えば事業再編や不採算事業を複数社がカーブアウトしてさらに強めていく際、それを支える税制措置などが盛り込まれると聞く。そのような施策も利用して、これまでなかなか進まなかった企業の再編も視野に入れて考えるべきである。誤解を恐れずに言えば、携帯電話市場には当初8つの企業が参入しており、どう考えても少し多く、必然的に過当競争になる。これまでであれば、国内市場は国内企業同士で海外からの進入をブロックすることもできたが、主力がスマートフォンになり、iPhoneの登場で状況が大きく変わった。縮小する市場で過当競争を続けることはますます意味をなさなくなっている。ましてや、本当に成長する市場は海外にあり、少なくともグローバルに展開する企業においては、海外企業とどう戦っていくかを考えなくてはならず、国内で消耗戦をしている時代ではない。活用できる税制や仕組みがあれば、これを機にうまく活用すればいい。IMF介入を契機に産業再編が進んだ韓国のような例もあるが、われわれ日本の企業経営者も傍観者ではいけない。

Q: 今日、9月の日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)が発表された。特に大企業・製造業の業況判断DIはプラス12と、当初の予想よりもかなり高い数字が出てきた。リーマン・ショック前の水準を回復したが、この数字に対する受け止めと、代表幹事の肌感覚とマッチしているかについて伺いたい。

長谷川: 私が身を置く(製薬)業界はあまり業績が景気に左右されないため、肌感覚は特にない。経済同友会で(四半期ごとに)実施している「景気定点観測アンケート調査結果」においても、(9月18日に公表した9月の調査結果では)このようなポジティブな結果はバブル期以来ではないかと言われるほど良い数値が出ていた。これが日銀短観で確認されたと考えており、大変結構である。ただし、「天井感」と表現していた報道もあったが、これをいかに持続性ある形にもっていくかが課題であり、それぞれに関与する政府も経済界も考えていかなければならない転換点に至っていると感じる。

Q: 大企業と中小企業の経営者の景況感の差が広がっているようにも感じるが。

長谷川: 中小企業の経営者と意見交換をしたわけではないが、一般的には、景気回復の影響は、大企業から中小企業に、また中央から地方に、少しタイムラグを持って浸透していく傾向があると言われている。ようやく中小企業にも少しポジティブな影響が伝わっているとの報道もあったように、いずれ(景気回復の影響が中小企業や地方にも)浸透することを期待している。

Q: 先週来日した中国企業トップとの交流会について、このような時期に来日したことの意味、どのような意見交換をしたか、それを通じて印象に残ったこと、また、中国のような政経不可分な国とのビジネス交流の可能性を伺いたい。

長谷川: なぜこのタイミングでの来日になったのかについては、話していない。中国の経済界を代表する方々が久し振りに訪日されたので、歓迎した。当会で代表幹事特別顧問をお願いしている青木昌彦スタンフォード大学名誉教授を通じてコンタクトがあり、喜んでお受けした。素直に来日を歓迎し、(経済問題について)率直な意見交換をするのが会合の趣旨であった。内容で印象に残ったのは、アベノミクスとリコノミクスの話である。両国は、異なる局面ではあるが、互いに転換点にあるとの内容だった。日本は長きにわたるデフレからの脱却でソフト・テイクオフ、中国は高速成長から中高速成長に呼び方を変えているようであるが、(GDP成長率)7%代前半から半ばくらいの成長にソフト・ランディングをさせようとするものである。いずれも転換点においては、さまざまな改革を実行しなければならない。日本の場合は、アベノミクスの「三本の矢」のうち、これからやろうとしている規制改革や税制改革、公務員制度改革などが重要である。中国は、例えば、中央から地方への権限移譲や戸籍制度の改革、国有地の民間への払い下げ、上海の自由経済特区における金利の自由化等の先駆的試みなど、さまざまな具体的施策の話を聞いた。実行の段階においては、互いに課題も多いのではないかという話もした。それぞれの国の経済情勢や政策課題を話し、その後意見交換の時間も設け、大変有意義な会合であった。今後も、このような交流を続けたいと考えており、時期を見て当会から中国を訪問することも計画している。当面は、中国委員会でフォローアップをしていく。

Q: 米国の暫定予算案をめぐる一部政府機関閉鎖について、世界経済への影響をどのように考えるか。

長谷川: どのくらい続くかによる。(前回政府機関が閉鎖された)17年前はちょうどアメリカにおり、「一時帰休」を英語で“Furlough”ということも覚えた記憶がある。当時と状況が違うのは、共和党の特にティーパーティーのような右寄りのグループと、リベラルな民主党の左寄りのグループとの差がどんどん開いており、最終的にはどこかに妥協点を見つけてきたこれまでの米国議会政治の手法が、段々難しくなってきているということである。バラク・オバマ大統領は、シリア問題などを見ても、強いリーダーシップを発揮してトップダウンで決断するよりも、中間点での合意を探っていくというやり方であるが、議会が右と左で極端に離れている中では、このような結果となることはある程度やむを得ないのではないか。こういう(政府機関の閉鎖)状況が長く続くと、世界経済にも影響が出てくるであろうが、現時点においては、マーケットも織り込み済みであろうし、すぐにネガティブな反応が出るとは考えていない。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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