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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年07月02日(金)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
冨山和彦 副代表幹事・改革推進プラットフォーム事務局長
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)景況観、(2)第23回参議院議員通常選挙、(3)東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の再稼働申請、(4)法人実効税率引き下げ、(5)選挙制度改革、(6)米国家安全保障局(NSA)の盗聴、などについて発言があった。その後、冨山和彦副代表幹事・改革推進プラットフォーム事務局長より、意見書「第23回参議院議員通常選挙 日本再興に向けて残された重要課題を巡る政策論争を望む」を発表し、質疑応答を行った。

Q: 昨日、日本銀行が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(日銀短観)に関連して、今回、円安が景気回復にどのような影響・効果を与えたと見ているか。例えば、米国向け輸出などかと思うが、どのような点が景況感の改善につながっていると思われるか。

長谷川: 当然のことながら、円安は輸出産業にとってはプラスになる。(海外経済の動向を俯瞰すると)米国経済は比較的順調に回復しつつあるように見受けられる。新興国、なかでも中国では、今年の経済成長率が最終的にどの辺りに着地するのかがまだ分からない。さまざまな懸念材料が報道され、それに対して(中国)政府も少し引き締め気味の政策を採らざるを得ない状況の中で、急速な、あるいは近い将来の景気回復は見込みづらいと感じるので、(海外経済)全体としては斑模様ではないか。国内を見ると、化石燃料の輸入価格が上がっており、電力会社は5カ月連続で値上げをしている。また、食料品関連でも小麦を使った製品やマヨネーズなどの値上げ、あるいは価格は維持しても容量を減らす実質的な値上げも見られ、(円安は)功罪相半ばであると言える。GDPの観点から言えば、第2四半期もおそらく、第1四半期ほどではないだろうが、高い成長率が見込まれている。日銀短観にもあったが、少し設備投資にも動きが出てきているのではないか。まだ増産のための設備投資のような目立った動きはないようだが、補修や更新など、リーマン・ショック後、手控えていたようなところへの投資の動きが出てきているように見受けられる。また、(本会の)景気定点観測アンケート調査の結果を見ても、景気の先行きに(対して)やや楽観的な見方が増えてきており、全体的には、日銀が目指しているインフレ(目標)、政府が目指している成長軌道に、比較的順調に向かいつつあると言えるのではないか。

Q: 株価が14,000円台に回復し、為替も1ドル=100円近くに戻ってきた。相場について所感を伺いたい。

長谷川: 急激な株価上昇による調整局面での上下はあるだろう。今回の円安方向へのトレンドと株価上昇は、景気全体にある程度方向性が見えてきた、少し確信のようなものが出つつあることを反映しているのではないか。相場は市場に聞かないと分からないにしても、5月23日以降の1日で1,000円近くも(株価が)下がるような乱高下はあまり心配しなくて良い状況で、落ち着きを取り戻しつつある中での回復ではないかと考えている。

Q: (株価が)上げ下げを経て調整が進み、自民党・公明党が(参議院で)過半数を固め、いよいよアベノミクスが成長軌道に入るということか。

長谷川: 三本目の矢も放たれ、(円安・株高の)トレンドとしては結構だが、それが的を射るか(の判断)はいささか時期尚早である。「日本再興戦略」にも書かれている通り、これから検討すべき課題や先送りされている課題も多々ある。例えば、農業問題について、菅義偉内閣官房長官は、農地集約のためには、都道府県単位の農地バンクを作り、そこから農業法人等広域で農業をしたいところにリースする形で目的が達成できると言っているが、実際に所期の目的を達成できるかは見てみないと分からない。また、投資減税についても、秋の“成長戦略実行国会”で産業競争力強化法案が提出され、そこに織り込まれるだろうと予想されるが、“成長戦略第2弾”として遅滞なく実行に移されるかはよく見極めないといけない。現在の安倍晋三内閣総理大臣、菅内閣官房長官、甘利明経済再生担当相はしっかりとした結束とリーダーシップを持っておられ、可能性は結構あると考えるが、最終的に政策は法案成立と予算執行で初めて具体的な成果につながっていくものである。投資減税に関しては、法案が成立すれば(その成果が)享受されることになるし、甘利大臣が何度も述べられている事業再編を促進する税制も、具体化すればそれを利用した再編も進むかもしれない。その辺りは法律が成立してからの問題であり、結果を見てみないと分からない。私としては、良い方向に向かっているが、着実に仕上げていくことが重要だと考える。

Q: 参院選の公示が目前に近づいている。東京都議選は投票率の低さなどいろいろな問題があったが、次の参院選についての期待など、所感を伺いたい。

長谷川: 参院選に向けた意見については、後ほど冨山和彦副代表幹事・改革推進プラットフォーム事務局長が説明する。気になるのは投票率の低さである。東京都議選の投票率は戦後2番目の低さであり、参院選では50%を割って過去最低になるのでは、とまで言われている。多くの人が、ある程度趨勢が決まっているとの感触を持っているかもしれないが、(投票は)国民の権利行使として極めて重要な機会であるだけに、できるだけ多くの方に投票に行っていただくことを求めたい。経済同友会としても、会員所属企業において、従業員や家族の投票を呼びかけるよう周知を依頼している。

Q: 今回の参院選は、いわゆるネット選挙運動が解禁になって初の選挙となる。経済同友会も推進の立場で主張してきたと思うが、一方で、本当に費用がかからないかについては専門家からも異論がある。これに対する期待や懸念があれば伺いたい。

長谷川: 本格的なネット選挙(運動)が行われる初めての選挙になるが、指摘のあった懸念が顕在化するかどうかは、実際に状況を見てみないと分からない。本会の政治改革委員会でも(ネット選挙を)推進している。個人認証の課題はあるが、将来はネット投票も考えていく必要がある。都会の若者の投票率が低く、地方の高齢者の投票率は高い、そこに「一票の格差」が加わり、結果として国政には都会の若者の声が過少に反映され、地方の高齢者の声が過大に反映されることを助長している。選挙区割りや定数是正の問題もあるが、投票行動や集計の容易さを考えても、(ネット投票について)検討すべきだと考えている。

Q: 東京電力が、国に対して柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を申請するようである。地元の県知事などが慎重な姿勢を示す一方、これ以上稼働できないと電気料金の再値上げという問題が浮上する。この点について、代表幹事の所感を伺いたい。

長谷川: (再稼働については、)原子力規制委員会の安全基準に従い、個別の監査・判定を3つ程度のグループが各原発を回って調査しておられると聞いており、その結果次第となる。東京電力の立場としては、再建計画(「総合特別事業計画」)のシナリオに柏崎刈羽原発の再稼動を入れていたが、当初のプランより遅れている。更に遅れることになれば、火力発電で補うことになり、燃料費がかさむから値上げをせざるを得ない。これは、東京電力としては選択の余地のない、事業継続のためにやむを得ない措置であり、再稼働が認められなければ債務超過を避けられないということだろう。事情は、大なり小なり、比較的原発への依存度が高い関西電力や九州電力なども同じような状況にあると思う。経済同友会では、東日本大震災後から「縮・原発」を述べており、比較的新しく安全性の備えがより高いもの、なおかつ原子力規制委員会が設定した安全基準に則った調査の結果、安全性が担保されたものについては再稼動をし、いまや90%にならんとする化石燃料による発電への依存を少しでも軽くすることを考えなければならない。昨年から始まった固定価格買取(FIT)制度で、実際に許可を得たところは、報道によると1,300万kWの発電量(設備容量)になるとのことだが、実際に稼働の目途が立っているのは130万kWと聞く。再生可能エネルギーにはかなりの優遇措置を取っており、許可を受けているのであれば、早く具体的に発電ができるよう施工を早めることが必要ではないか。

Q: 東京電力・柏崎刈羽原発の再稼働に向けた動きについて、やむを得ないとの発言だったが、今日の動きを見るとできるだけ早く安全審査を申請するとのことで、ようやく動き始めたようだ。経済界として、このタイミングで動き始めたことをどう考えるか。

長谷川: 東京電力の経営判断としては当然だろう。債務超過を避け、企業として存続するために必要な判断として(安全審査の)申請をされるということで、原子力規制委員会は粛々と迅速に審査、回答されることを求めたい。

Q: 法人実効税率の引き下げについて、投資減税には政府も前向きのようだが、法人実効税率引き下げとなると、財務省が難色を示すなどなかなか難しいようである。今後どのように打ち破るお考えか。

長谷川: 打ち破るには言い続けるしかない。法人税を払っている法人は全体の3割で残りの7割は払っていない(から法人実効税率を下げる必要はない)との話があるが、払っている3割に恩恵が行き渡るような法人実効税率引き下げは、当然あってもいいのではないか。同時に、近隣諸国と比べても韓国24.2%、中国25%という中で、同じ競争条件、イコール・フッティングという考え方からも大きなハンディキャップを背負っている。加えて、小泉政権時に対内直接投資(FDI)のGDP比率倍増という話があったが、この10年間まったく動いていない。今回、安倍政権の「日本再興戦略」の中で、「2020年までに外国企業の対内直接投資残高を現在の2倍の35兆円に拡大する」と明示した。その実現のためにも(日本)市場を魅力的なものにする、あるいは投資のリターンを周辺諸外国と比べても遜色のないものにする、という観点からも、ぜひ(法人実効税率引き下げを)実行いただく必要がある。

Q: 安倍首相が、選挙制度改革について諮問機関を設置して議論すべきと述べた。国会に有識者による第三者機関を設置するとのことだが、受け止めを伺いたい。

長谷川: ある意味では自然の成り行きと考える。0増5減は別として、定数削減や区割り変更など、本格的な(選挙制度)改正については、国会議員、特に政党間の話し合いでは、およそ決まるはずもない。過去においても、選挙制度審議会が8次にわたってつくられており、経済同友会としては第9次選挙制度審議会をつくって議論すべきと主張している。国会内に設置するとの発言だったが、多数の政治家が入って政党間の争いになると結論を得にくいので、第三者を中心とした審議会を設置されることが望ましいと考える。

Q: アメリカの諜報機関の盗聴が話題になっており、EUや日本の大使館も盗聴されていたとの報道があるが、受け止めを伺いたい。

長谷川: 米国家安全保障局(NSA)がどのような範囲で盗聴していたかは分からないが、報道によると、仏・オランド大統領も批判を表明し、菅内閣官房長官も実態の究明と報告を求めている。そのような反応は当然であるが、米政府も責任を持って回答するとしているので、その辺りがきちんと報告されなければどうなるか分からないし、(報告)されたとしても、我々国民の知るところになるかは現段階では分からない。個人情報や国家機密などを考えると極めて難しい判断である。(盗聴によって)テロを未然に防いだという話もあり、その辺りのバランスは考えなくてはならないにしても、大使館はそれぞれの国において治外法権であり、その主権を侵害する形で盗聴をするということは抗議されて然るべきであるし、相手国に知らせて盗聴することは無意味なのでやむを得なかったかもしれないが、外交や信頼関係の面では好ましくないと言わざるを得ない。

<意見書「第23回参議院議員通常選挙 日本再興に向けて残された重要課題を巡る政策論争を望む」について>

Q: 項目がたくさん並んでいるが、重要なものを3つ挙げるとすればどれか。

長谷川: (3つに絞ることは難しく、)掲げた5つ「経済成長戦略」「国家運営(統治機構)の再構築」「財政政策・社会保障政策」「震災復興政策」「エネルギー政策」はすべて重要論点である。敢えて順番を付けるならば記載順(「経済成長戦略」「国家運営(統治機構)の再構築」「財政政策・社会保障政策」)だろうが、「震災復興政策」「エネルギー政策」も当然重要であると考えている。

Q: 有権者が(候補者・政党を)判断する際に、争点がはっきりないと東京都議選と同じになる。政党の主張がはっきりする争点を明確にする方が良いのではないか。

長谷川: 国家的命題としては掲げた5項目すべて重要だが、選挙の争点として、国民に分かりやすい形で成長戦略について論争をするのは難しいだろう。端的には、岩盤規制と言われるものについて、一つでも二つでも突破するか否かという点は分かりやすい。それも首相や官房長官や経済再生担当相はやると述べられているが、実際にどういう形で実行されるかは秋の臨時国会を待たないと分からない。

Q: 与党は経済(成長)を前面に出して政権運営をしており、経済成長や財政再建については誰も反対できない。そのような項目を争点として仕立てるのは、ある意味卑怯ではないか。

冨山: 実際に選挙に勝った後の遂行能力を考えると、むしろ物議をかもすような争点を問うておいた方が楽だと言える。岩盤規制や財政規律の中での社会保障、原発関連など、党内・国民・メディアの受け止め方が賛否両論分かれるテーマを選挙時に掲げておく方が、勝った後の運営は進めやすいと考える。

前原: これまで殆ど実行できてこなかったことからこのような事態が生じており、今回は実行がポイントだということである。

長谷川: 敢えて物議をかもすような部分はモヤッとさせておいて、円安や株価の50~60%上昇など(の成果)を背景に、日本経済が復興しない限りすべての問題の解決の糸口はないという前提で、それを前面に押し出すのは政権与党の一つのやり方である。逆に、エネルギー政策などを前面に出すと議論が分かれるのは事実だろう。安倍首相は、ねじれの原因は自身が首相だった6年前の参院選に負けたからであり、それ(ねじれ)を何としてもと自身で解消したいと述べられている。深読みをすれば、そのようなことも今回の背景になっているのではないか。

Q: 個別の政策課題について、選挙の際にコミットメントをし、選挙後に実行していくのが重要だということか。

長谷川: それは一つのやり方であり、実際にはさまざまな要素がある。大きな流れとして、まず安定政権をつくることがこの国の重要課題である。これまで毎年のように首相が代わり、内閣も半年くらいしかもたない状況では突破できなかった改革や実行できなかった政策(が多々あった。)また外交面でもしっかりと各国の閣僚たちとの関係構築を図る中で、行き詰っている問題に対して解決の糸口を見出していく。そのように、状況に応じてどのような戦略をとるかは政権与党が考え、それを国民がどう判断し、投票行動に結び付けるかだろう。

冨山: 裏を返せば、大きな野党はチャレンジャーなので、意見書で挙げた重要論点に関して明確なスタンスを持って(選挙に)挑戦した方が、国民に選択肢を与えることができる。そのような意味でも応援メッセージを送りたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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