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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年06月14日(金)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)成長戦略と骨太方針の閣議決定、(2)川崎重工業の三井造船との経営統合交渉白紙撤回、(3)産業競争力強化法と産業再編、(4)法人実効税率引き下げ、(5)大衆薬のネット販売、(6)景況観、(7)復興庁幹部のtwitterでの暴言、(8)衆議院の定数削減を含む選挙制度の見直し見送り、などについて発言があった。

Q: 本日、成長戦略と骨太の方針が閣議決定されたが、改めて感想と所見を伺いたい。

長谷川: 見方はいろいろあると思うが、政策課題はほとんどの場合、法案を成立させ、それに予算を付けて初めて実行できる類のものである。現段階でそこまでできていないのは、国会会期も残り幾ばくかの状況ではやむを得ない。安倍晋三首相も、秋の臨時国会を成長戦略実行国会と位置付け、産業競争力強化法案を通すと述べられており、そこには投資減税や産業再編を促す税制も入れることを考えるとのことである。税制改正については、年末頃に(大綱が)まとまり翌年の通常国会で審議し本予算に入れるという通常のスケジュールを前倒しするとも述べられているので、しっかりと見守りたい。(その程度の実行の遅れは)政策課題の遂行プロセス上やむを得ないと考える。一方で、積み残し課題がいくつかある。エネルギー、医療、農業、雇用など、「日本再興戦略」(本文P.9~10)に書いてあるものである。仮に、参議院議員選挙で(与党が)過半数を取れれば、(近年)久しくなかった安定政権が実現し、その中でいかにそれら課題に対して具体的に取り組み、突破するかを注目したいし、そこが本番だと思う。経済財政諮問会議は、国会閉会中の夏も、中期財政計画などについてまとめるとのことであり、休みなく、新たな成長、あるいは来年度以降に向けて必要な検討と意思決定をされるだろう。首相自らが、進化する成長戦略と位置付けておられ、今の段階では物足りない部分があるという評価も理解するが、しっかりと見守って、着実に実現していただくよう期待したいし、私も産業競争力会議のメンバーとして、果たせる役割があればその実現の一翼を担いたい。

Q: 閣議決定された成長戦略について、これまでと抜本的に異なる、次元の違うものができたと思われるか。体裁を見る限り、これまで何度も出されてきた成長戦略と似通っている印象を受ける。作成した張本人として自己評価は難しいかと思うが、所感を伺いたい。

長谷川: 今の段階で「異次元の成長戦略である」と例を示すことは難しいと思うが、本当の違いはここから出てくると考えている。岩盤と言われるような、これまで改革できなかった規制についても、表現はストレートではないがきちんと書かれている。これを実行し突破できるかどうかで差が出る。成長戦略の書き振りだけを見てどこが異次元なのかと言われると、簡単に納得が得られる形かどうかは難しいところである。

Q: フォローアップが必要になると思われるが、産業競争力会議ではどのように行うのか。

長谷川: まだ明確にはなっていない。ある程度希望を持っているのは、ここまでの過程で、必要な時には首相が何度も自ら決断し、不在の際には甘利明経済財政・再生相に全権が委任され、最後は総理指示という形で決めるところを見てきている。このようなことは民主党政権では見られなかった。今後の本当の突破局面において、首相がリーダーシップを発揮し、必要に応じてぎりぎりの決断を行うであろう期待が持てる。もう一つ違うのは、スピード感である。首相は、これまで3回(成長戦略)スピーチを行ったが、反応がいまひとつ期待に合わなかった場合には、すぐにフォローアップの発言をされている。そのこと自体が自ら述べられている進化を続ける成長戦略であり、今後もそうされる覚悟が見えるので、期待して良いのではないか。逆説的に言えば、今の状況を見て、この政権以上に、強いリーダーシップとスピード感をもって改革に取り組める政権があるかというと、なかなか難しい。首相自らが、6月11日のWEF(世界経済フォーラム)ジャパン・ミーティングで講演した際に、“TINA”というマーガレット・サッチャー元英国首相の言葉を引用して述べられていた。TINAとは、“There is no alternative.(他に方法がない)”の頭文字で、サッチャー元首相はよくこの言葉を使っていたそうである。

Q: 産業競争力強化法に関係する部分もあるが、昨日、川崎重工業のクーデター騒ぎがあり、三井造船との経営統合交渉が白紙に戻った。率直な感想と、産業競争力強化法では産業再編を促すという話であるが、今の日本の企業にとって再編が必要かについて、見解を伺いたい。

長谷川: 川崎重工業の件については詳細な内実を知らないので、報道で理解した範囲での回答となる。川崎重工業において造船事業は収入全体の10%程度との報道であったが、それにしても、あのようなM&Aであれば、当然取締役会で何度も承認を得、デュー・ディリジェンス(詳細調査)も行い、その結果、最終的な合意プロセスを踏むというのが通常のガバナンスであろう。反対派の多数派の役員が、推進していた社長以下数名の役員を解任するというようなことが起きること自体、通常のガバナンスでは考えにくい。自社(武田薬品工業)では何度もM&Aを行っているが、その際のプロセスを考えても、あのようなことが起こる余地はない。なぜあのようなことになったのか、理解に苦しむというのが率直な気持ちである。

二点目(産業再編に関して)は、(過去の)電機や自動車など、日本がダントツの優位性を持ち主導している産業では、各企業の規模をもって、世界に飛躍し、シェアを争い、切磋琢磨しながら伸びていくことは可能であった。しかし今や、例えば日本の電機メーカー5社を合わせたより大きい売上・利益というサムスンのような巨大企業が、徹底的に効率性を追求して市場を席巻している。そのような企業とグローバルなマーケットで戦わなければならない場合は、従来のような規模ではなかなか難しいところもある。グローバルなマーケットでの競争力をつけるためには、再編も当然あり得る。再編のやり方は、例えば、三菱重工と日立製作所のように火力発電事業だけを切り出し、それを一つの事業体として効率化を図るというやり方もあれば、パナソニックが白物家電を除いて三洋電機を買収したようなやり方もある。日本のGDPは世界の8%程度であり、産業によって異なるが、押しなべて言えばマーケット・購買力もその程度である。製薬市場も(日本は)世界の10%を切っている。また、成長のドライバーは現在新興国にある。その両方を考えると、世界のマーケット、中でも新興国で勝負できなければ今後(グローバル競争下で)生き残れず、(競争に)必要な規模の経済を追求する必要もある。グローバルに展開して生き残ろうとする企業にとって、(再編は)避けて通れない。

Q: 川崎重工業の三井造船との経営統合交渉白紙撤回について、通常のガバナンスではありえないとの発言だったが、何が抜けていたとお考えか。

長谷川: 想像でコメントをするのは極めて難しい。自身の企業買収の経験では、ターゲットの企業を決めたら、何故その企業を選んだかと、自分たちなりに見積もればこの金額まで出してもシナジー(相乗作用を活用した効果として利益)が取れる(ことを示し)、まずはノン・バインディング買収のアプローチをさせてほしい、と取締役会に諮る。取締役会で承認を得て、ノン・バインディングのオファーをし、デュー・ディリジェンスをし、バインディング・オファーに行くというプロセスを踏む。最初の財務諸表からの見積と詳細調査後の見積とを比較し、上限の要素と下限のリスクとを考慮しこの範囲であれば(いけると判断する)。念のため、そこに第三者の投資銀行から、我々の評価が妥当であるとのフェアネス・オピニオン(公正かつ衡平に客観的な立場で専門的見地から出された公正な第三者意見)をもらう。取締役会でこのようなプロセスを踏んでいれば、今回のようなことは起こらないだろうと思う。何度も買収をしてきた経験から言えば、何故起こったのかな、というのが率直な感想である。

Q: 成長戦略の新陳代謝について、政府が指針を示すということで、再編が必要な業界を政府が示すとも受け取れるが、実際に可能なのか。

長谷川: 具体的に(政府が)どのようなことを考えているのかが定かでない。例えば、M&Aなど企業同士ではなく、事業を切り出して(提携や統合などを)考える場合もある。単体では利益が出ない事業について、クリティカル・マス(普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となる普及率)をつくることで利益や競争力が出るような目途が立てば、そこだけを切り出して事業会社をつくることもある。当面は赤字の場合、出資している親会社に損金として入れる(パススルー税制)など、そのようなこと(を政府が示すの)かもしれない。

Q: 法人実効税率引き下げが成長戦略に明記されておらず、菅義偉官房長官が口頭で検討はするとの方向を示した程度である。経済同友会の今のスタンスと今後の期待を伺いたい。

長谷川: 経済界として主張しているのは、イコール・フッティングである。法人実効税率の実質の差が10%以上あるということは、同じ利益を上げてもフリー・キャッシュフローでそれだけの差がつくということであり、M&Aを含めた投資能力において、企業競争力上のハンディを背負うことであるというのが第一点。もう一つは、マーケットの魅力という点である。成長戦略の成果目標に、2020年までに対日直接投資(FDI)を倍の35兆円にするとあるが、このためにも日本市場の魅力を上げる必要がある。周辺国が24~25%の法人税率で企業を誘致している中、日本が10%も高い状況で、それでなくても英語が通じにくい、社会インフラの問題などのハンディがある中では、当然考えるべきことである。本日午前中の閣僚発言を見ると、麻生太郎副総理・財務・金融相は法人税を払っていない企業が7割を超えている(から効果は少ない)、甘利経済財政・再生相は研究開発減税や投資減税など個別の政策減税が重要であり、全体の法人税を下げる必要はない、という発言もされているようである。いろいろな考えはあろうが、内輪の議論だけでなく、外国の投資を惹きつけることを考えれば、当然そういうこと(法人実効税率引き下げ)は必要であるし、それがなければ世界の国々が日本に(投資を)するわけがない。日本だけがやらなくても済むという理屈はなかなか立たない。今、人口が減っている中、FDIも殆ど伸びていないという状況の中にあって、そういった点にも目配りをして、マーケットの魅力度を高める政策も当然必要だということである。

前原: 「法人税を払っていない企業が7割を超えている」との麻生副総理・財務・金融相の発言があったが、払っている3割の大半は国際的に競争をしている企業であり、そこで(イコール・フッティングを)判断しなくてはならないと思う。

長谷川: さらに言えば、法人税収の過半は(法人税を)払っている3割(の企業)からだろう。

Q: 大衆薬のインターネットネット販売について、窓口が広くなり社会的利便性が上がる話ではあるが、成長戦略に切り口を落とし込んだ場合の需要の増加やGDPへの貢献についてはどのようにお考えか。

長谷川: ネット販売自体は、成長に貢献する大きなファクターではないと思う。三木谷浩史氏は、今の時代、対面原則を頑なに守るのではなく、インターネット上で代替できることは行い、効率性を高めてはどうか、ということを背景に、一つのシンボリックな問題として大衆薬のネット販売を強く主張しておられた。他にも「対面」が基本のルールのものは多くあり、極端な例としては遠隔地医療が挙げられるが、それがどうつながるかは別として、一つの突破口として三木谷氏が考えられていたことは事実である。経済効果というより、社会的コストの削減としてプラス効果があるだろう。経済成長そのものを牽引するほどの大きなファクターにはならないだろう。

Q: 大衆薬のネット販売に関する問題は、議論が混乱して成長戦略の一つの目玉のように取り上げられており、それが成長戦略とどのような関係があるかを疑問視している国民もいると思うが、この段階でこの問題が出てきたことの意味は何か。

長谷川: 規制改革の一つのシンボルとして捉えた意味だと思っている。

Q: マーケットは、アベノミクスが始まる前の水準に戻りつつあるが、率直な感想を伺いたい。

長谷川: 短期間に(株価が)8割上がり、現在は5割強の12,000円程度である。短期間にこれだけ(株価が)上がったというケースは、終戦直後まで遡ると分からないが、ほとんどないと思うし、その中で調整局面が来ることは当然あり得る。先般、テレビで、アメリカのヘッジファンドが高速で高い頻度でトレードを行うコンピューター・システムを使って(取引を行って)いる報道を見て、今の株式市場は、一昔前の株式市場とは全く違う要素が入っていると感じた。そのような人たちが巨大な売り買いをすればマーケットは荒れるし、マーケットのボラティリティが高い市場に出て行って稼ぐということがあるのではないか。専門家ではないので証券業界の方々にも伺ったが、少し前にはタイ・バーツの市場で同様の事象が起こったなど具体例があるようだ。企業や景気の実態が良くなれば、落ち着きを取り戻して安定的になるだろうと考えなくてはならない。また、僭越ではあるが、特に個人投資家の方は、少し長い目で投資をされる必要があると思う。

Q: 円安株高で資産効果が膨らんだが、それが全体に行き渡っていない。先述の税制や雇用など積み残しの課題をきちんとやるにはタイムラグがある。その間をどのように繋いだらよいか。

長谷川: (GDP)第一四半期も3.5%から4.1%に修正され、多くのエコノミストの予想では、4-6月期は3%近く成長するのではとの見方である。それが実現すれば、循環的に企業の業績にも(影響するし)、ボーナスにも若干反映されるだろう。また、設備投資もなかなか戻ってこなかったが、このところ下げ止まっており、少し上向く可能性もあるかもしれない。加えて、所得収支はかなり上振れをしている状況であり、国の予算で立てられている法人税収も上振れをし、循環としては良い方向に向かっているのではないか。

Q: このところ為替相場が円高に揺れるなど不安定な動きを見せているが、企業業績に与える影響について所感を伺いたい。

長谷川: 一時103~104円程度だったが現在95円位まで修正されており、変動の期間と幅からすればかなり大きく振れていることになるかもしれない。一方で、円高からの修正も相当急ピッチだったため、トレーダーの動き次第ではこういうことがあり得ると思う。また、アメリカの景気も比較的堅調に回復していると思われる。バラク・オバマ大統領が輸出倍増を掲げているが、今の為替レートではなかなか難しいとの話もあり、必ずしも(アメリカは)日本の今の金融政策を表立って非難はしないだろうし、来週のG8(主要国首脳会議)でもそのような非難がないことを望む。IMF(国際通貨基金)は依然としてバックアップしてくれているようだが、サポートするほどの傾向が持続すると考えることは難しい。そのような状況で、少し円高に振れることはあるだろう。日本経済も、化石燃料中心として多くの輸入をしているため、経済全般を見ればこの程度の円高が必ずしも一方的に悪いというわけではない。あまり一喜一憂しないほうがいい。再び80円台半ば以下まで円高が進むなど、極端に振れることが良くない。

Q: 東日本大震災からの復興では、政府から経済界に対して人材派遣の要請も行われている中、復興庁幹部のtwitterでの暴言については怒り心頭だと思われるが、所感を伺いたい。

長谷川: 人生色々、人も色々。コメントするに値しない。語るに落ちる。

Q: 国会では、衆議院議員の定数削減の合意が断念される見込みである。アベノミクスのスピード感に比べ、こちらは遅々として進まない状況だが、どのように感じるか。

長谷川: 立法府が憲法違反を放置すること自体が、法治国家としてあり得ない。2011年3月23日の最高裁判所大法廷判決から2年以上、これまで(違憲状態を)放っておいて、今国会でも決着がつかないのは極めて遺憾である。異論はあるだろうが、0増5減と区割りのやり直しをすることで、最低限必要な(一票の)格差是正は実現できると理解しており、それだけは(今国会で)通る見込みがついた。定数削減について、経済同友会では、国会議員だけで、自らの身を切る改革に関して与野党が合意できる案を見つけるのは難しいだろうから、第9次の選挙制度審議会を設置して答申を行い、国会で論議して決めてはどうかと一貫して(主張して)いる。この期に及んで(自ら身を切る改革を行うことは)やはり難しいだろうと思われ、選挙制度審議会を提言したい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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