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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年06月05日(水)15:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)成長戦略スピーチ第3弾と株価下落、(2)一般用医薬品のインターネット販売解禁、(3)設備投資、(4)法人税減税、(5)10年後の1人当たり国民総所得(GNI)150万円増、(6)年金支給開始年齢引き上げ、について発言があった。その後、「世界最先端IT国家創造」宣言(案)に対する意見(パブリック・コメント)を公表した。

Q: 本日、安倍晋三内閣総理大臣の成長戦略スピーチ第3弾が、都内で行われた。成長戦略に対する評価と感想を伺いたい。また、この発表直後、株価が一旦上昇した後、前日比500円を超える下落となったことについての受け止めを伺いたい。

長谷川: 株価は、現在、調整局面で上下しているが、首相の本日の講演は、大変力強く、声の調子もさることながら、中身も規制改革についてコミットされた話であった。どうやって実行するのかまで見ないと効果をはかりかねる、というのが大方の見方ではないかと思う。4月の(成長戦略)第1弾では女性活躍促進を中心に話し、5月の第2弾では企業や農業を活性化、そして世界で勝つという話をされた。本日は、「民間活力の爆発」ということで成長の起爆剤とするというトーンで、規制改革は一丁目一番地と述べられた。首相は、スピーチの最後の方で、何についても来年の通常国会で(決める)と思われているかもしれないが、優先順位が高く、緊急に対応する必要があるものについては、秋の臨時国会できちんとやります、と述べられた。それが何を指すかは明言しなかったが、公の場で発言されているので、首相のコミットメントや思いは大変強いと思う。実際にやって見せてもらわないと分からない部分はあるにしても、相対的な比較で、スピード感、リーダーシップ、コミットメント、内容を総合的に見ると、ここ最近の歴代内閣では最も評価して良いのではないかと思う。経済界としても、それをサポート・応援して実現につなげていくべきだと思うし、メディアにも、バランスは必要だろうがそのようなトーンを検討いただくことも必要ではないか。

Q: 株価は本日、前日比で518円下落しているが、調整局面であるとの認識か。

長谷川: 日経平均株価の推移を見ると、昨年11月(8,661円/2012年11月13日時点)から8割くらい上がり、そこから2割程度調整しており、おかしくない調整幅だと思う。上がり方が急であったこともあるし、海外投資家が日本株へ投資し、一定の利益を得て退いたこともあるだろう。(5月23日に)一日で1,000円程度下がった時に、多くのエコノミストやアナリストは14,000円が底と予想し、(その水準は下回っているものの、依然)13,000円台で持ちこたえており、(昨年11月の水準も踏まえれば、)あまりパニックになる必要はないと思う。あまりに大きく変動し、個人投資家が振り回されて損をしてしまうことがないよう、留意される方がいいと思う。

Q: (株価の下落について)市場では、首相の成長戦略第3弾の発表が失望につながった、との見方もあるが、これについては否定的か。

長谷川: (成長戦略第3弾が失望につながったという見方は)違うと思う。批判的な目で見るきらいがあるが、比較論から行けば、“Sense of Urgency”(切迫感)やスピード感、強いリーダーシップ、コミットメントを考えれば、この政権が安定政権となって、これまで突破できなかった重要な課題を確実に解決するのが、日本にとって経済活性化につながる可能性の高い道だと思う。できるだけ支えることが、ある面では必要ではないか。

Q: 株式会社の農業参入が盛り込まれていないということで(失望感があったのではないか)。

長谷川: 医療は入っていなかったが、農業の話の流れで「株式会社を含め、意欲ある民間の皆さんにどんどん担い手になってもらいたい」と述べられており、盛り込まれていると認識している。

Q: 経済界の要望は、大体盛り込まれているという認識か。

長谷川: まだ積み残し課題はあるが、産業競争力会議でもフォローアップしていく。

Q: 第1弾から第3弾まで成長戦略が出たが、特に評価している点はどこか。実行前の現時点で、採点するとしたら百点満点中何点か。

長谷川: 実行の段階になれば行政の問題でもあり、法律を立てて承認して予算をつけないと実行できない。(そういうものは)すぐにできるわけではないが、来年の通常国会まで待たずとも、緊急性の高いものについては秋の臨時国会でやると述べられているので、それを冷静に待つことも必要だと思う。スピード感においては、TPP交渉参加や日本版NIHを評価したい。また今回、規制にも踏み込んだ発言をされており、具体的に実行できれば十分に評価できるし、いろいろな議論があった一般用医薬品の全面的なネット販売解禁もブレイクスルーであり、高く評価しても良い。点数はつけない。

Q: 安倍首相は、講演で、一般用医薬品のインターネット販売解禁を表明したが、この評価を伺いたい。また、設備投資について、3年間で70兆円に戻したいとの話があったが、現実的に可能と考えるか。

長谷川: 一般用医薬品のインターネット販売解禁について、首相は「消費者の安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で、全ての一般用医薬品の販売を解禁する」という表現をされた。それができると、画期的な規制改革だと思う。さらに、健康食品の機能性表示を解禁するとも述べられていた。アメリカでは、国の認定を受けていないことを明記すれば商品に機能性表示をすることができ、国には後で届け出ればよい(制度である)と述べられていた。(日本で)そこまで実施するとは言わなかったが、アメリカを例に挙げて、解禁すると述べられた。当然実行されると思うし、そうであれば画期的であると判断する。
設備投資については、アメリカではオバマ大統領が製造業の活性化と言っているし、安倍首相も、製造業を成長の一つのドライビング・フォースにしたいというトーンであったと感じた。アメリカの場合は、シェールガス・シェールオイル革命で圧倒的に燃料コストが低くなり、アメリカでの(製造業の)投資効率が非常に良くなった部分があるが、日本は必ずしもそういう状況ではない中で、製造業が全面的に(成長を)牽引することは、やや現実的でないと考える。むしろ、(企業が)海外で投資しても、所得収支として持ち帰って日本に税金を払い、それを、これからニーズも増え、GDPに占める比率が最も高い第3次産業の効率性や幼稚園、保育園、老人ホームなどに向けて投資をする(ことが望ましい)。これまで家庭で子供や高齢者の世話をせざるを得なかった人が仕事に就けば税金も払うし消費もする、といったwin-winの形を築くことで、全体の設備投資、そして景気の好循環を作っていくことが大事だと思う。

Q: 薬のネット販売について、薬害の団体や日本薬剤師会から、安全性を犠牲にするのかとの反発があるが、その主張についてはどうお考えか。武田薬品工業の社長として伺いたい。

長谷川: スイッチOTC薬(医療用医薬品から転換された一般用医薬品)の容量は、医療用薬品より低い。加えて、対面販売を主張していた方たちの論点背景には、特に第一類(の医薬品)についてはカウンターの後ろに置き、副作用についても薬剤師が対面で説明するという状況であった。ネット販売の際には、現品説明書をきちんと読まないと買えないようにするなど、読むことを確認する手法を考えるのが良い。その上で、基本的には、消費者の自己責任・自己判断の部分もある。薬害を容認するつもりは全くなく、あってはならないが、消費者の利便性と(安全性と)のバランスを考えれば、消費者も十分に注意を払うことを、この機会に喚起することも必要である。

Q: 産業競争力会議の三木谷浩史議員が、「医薬品のネット販売が盛り込まれなければ議員を辞める」と発言したとの報道があったが、このような態度をどう考えるか。

長谷川: (三木谷議員の発言を)直接聞いていないので、コメントしかねる。一般論で言えば、政府の要請があって会議に参加をする中で、交換条件としてこれを通すから引き受けるというものでもないし、また、各議員の主張が全て通るものでもない。そのような理解の上で(会議に)臨むしか、やむを得ないと思う。その結果について、個々の議員がどう判断するかは個人の問題である。

Q: 設備投資増について、一企業(武田薬品工業)の経営者として、どのような対応ができるか。

長谷川: 企業の設備投資には(個別企業ごとに)サイクルがあり、政府から要請があったからといって急に今年できる話ではない。自社では、3年前に研究所に1,600億円を投資、山口県光市の工場に200億円以上を投資し製剤・包装の工場を造ったこともあり、大きな投資が一巡した段階である。また、償却の範囲内で投資をしようという少しディフェンシブな方針で、大きな設備投資が必要な案件が目の前にあるわけではなく、即自社で行動できるかは難しい。今回の成長戦略では、(設備投資に対する企業への)インセンティブが明示されておらず、まだ議論の途中だと思うが、例えば、一括償却や加速度償却などが時限立法で出されれば、今のうちに設備投資をしようとフレキシブルに対応する企業もあるかもしれない。

Q: (企業の設備投資の促進に対して、)法人税減税よりも投資減税の方が効果があるのではないかとの見方もあるが。

長谷川: 諸外国の例を見ても、設備投資を促進する場合は、加速度償却か一括償却が一般的だろうと考える。

Q: 市場は法人税減税が盛り込まれなかったことに失望感を持っているとの指摘があるが、法人税減税に対する所感と市場の反応の見方を伺いたい。

長谷川: 誰が何を期待するかはそれぞれにあっても良い。「世界で最も企業活動がしやすい国」という観点からは、法人税減税が入って然るべきであったし、本日の首相の話には(企業活動に関する)明確なメッセージは入っていない。さはさりながら、医療についても、混合診療の解禁を行うとまでは踏み込んでいないが、「混合診療の問題をご指摘いただきました。私は、この世界を大きく進化させます。最新の医療技術を一気に普及するための、新しい仕組みを作ります」と、それに近い発言をしている。これまで難しいと言われていたことまで、農業も含めて踏み込んでいる。見方はそれぞれだが、法人税減税に今触れていないから失望したというよりも、この時点ではもう少しポジティブに考えることも必要ではないか。

Q: 成長戦略第3弾で、安倍首相は「10年後に1人当たりの個人総所得150万円増」と打ち出したが、実現性についてどのようにお考えか。

長谷川: 150万円増が何割のアップになるのか、ベースの明示がなかったので判断しかねる。もう少し勉強してからコメントしたい。安倍首相の意図は、国民総所得(GNI)のことで、給与所得ではないと理解している。

前原: 雇用のミスマッチ解消が大きなプラスにつながると思う。また、非正規雇用が増えたことに強い問題意識を持っており、これを改善することで(10年後に)150万円増に寄与するのではないかと期待している。

Q: 国民総所得に関連して、年3%なので無理のない気はするが、国民感情としては「10年後ではなく、今でしょう」という感じもする。10年後という表現についてはどのように受け止めているか。

長谷川: 今と言えば非現実的となる。どのような論理で(数字を)積み上げたのかは理解できていないが、論理的背景があっての発言だと思う。例えば、「3年間で民間投資70兆円を回復」「2020年に農林水産物・食品の輸出額を1兆円に」など、期間を区切っておられるので、論理的背景を分析しての発言だろう。今それを検証せずに批判をすることは控えたいし、10年後ではなく3年後とした場合、その手法に疑問を呈する可能性もあるので、冷静に見るべきだと思う。落ちるときは速いが、上がる時は時間がかかる。

Q: 社会保障制度改革国民会議で、年金支給開始年齢を引き上げるとの議論が出ている。所得を増やそうとしている一方で、年金支給開始年齢を引き上げることについて所感を伺いたい。

長谷川: 世界の趨勢を見れば、(年金支給開始年齢の引き上げを)実施している諸外国は複数あり、現行の賦課方式が破たんしていることは事実である。日本の場合、65歳定年をさらに伸ばすことは現実的にはすぐに課題にならないと思うが、年金支給開始年齢をさらに上げるという話になるのであれば、継続して働く人には年金も一部支給するなど、個人が選択もできるような段階的な組み合わせを提供し、工夫をもって(国民の)納得を得ながら進めないと説得力を持たないのではないか。ただし、趨勢としては寿命が延びれば延びるほど考えなくてはならない。アメリカで年金制度ができた際には、平均寿命と年金支給開始年齢の間には3~4年のギャップしかなかった。今の日本では、(平均寿命と年金支給開始年齢との差は)20~25年となっていることを考えると、持続可能な制度ではないため、どこかで(支給開始年齢の引き上げを)考えなくてはならないだろうが、その際には先述のような工夫が要るだろう。

Q: 安倍政権は、企業に賃上げを要請するなど消費刺激の政策をとっている一方で、年金支給開始年齢が引き上げられると、合成の誤謬が起きないか。

長谷川: (年金支給開始年齢引き上げについては、)これまで何度も出ては消えてきた議論で、本格的な検討に入った段階とは理解していない。まだ議論の過程であり、全体の推移の中でどのような扱いになるのかを見守りたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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