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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2013年02月13日(水)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、(1)春闘・安倍晋三首相による賃上げ要請、(2)各国からの円安牽制、(3)レスリングの2020年夏季五輪中核競技からの除外、(4)産業競争力会議事務局への民間人材登用、(5)日本経済団体連合会の副会長人事、(6)安倍政権の経済政策に対する評価、について発言があった。

最後に、前原金一副代表幹事・専務理事より、「IPPO IPPO NIPPONプロジェクト 第3期活動終了のお知らせ」について、説明があった。

Q: 今日、大手自動車メーカー各労働組合が経営側に要求書を提出し、春闘交渉が始まった。昨日、安倍首相の経済界に対する賃上げ協力要請に対し、代表幹事は、業績が回復すれば自然に賞与は上がると述べていたが、今年の春闘や賃上げについて、改めて見通しを伺いたい。

長谷川: 総選挙前から、安倍自由民主党総裁(当時)の発言等に為替が反応し、それが株式市場にも影響してきた。「三本の矢」の一つとして大胆な金融緩和を言われていたことも(円高是正の)背景にある。一方、ユーロ危機や米国の景気停滞からセーフ・ハーバーとして円に流れていた投機マネーが、欧州における金融危機の先行きの方向性がある程度見えてきたことや、米国(経済)がフィスカル・クリフ(財政の崖)を越えて景気回復が見えてきていることから、ユーロやドルへの投資に戻っているという背景もあり、円安が進んでいると思う。そのような恩恵を受け、保有株の評価や円高是正による売上利益増などから、企業が決算を上方修正しているという報道もいくつか出ている。そのような企業を中心に、供給側の論理だけでなく、需要創造・内需喚起という観点から、できる範囲で賃金や賞与に反映することが必要ではないか。安倍首相からの賃上げ要請の席でも述べたが、当会の会員所属企業の中でも大手企業の多くは、業績が上がれば自動的に賞与も上がるという業績連動型の賞与体系を採用している。

Q: 首相による賃上げ要請は異例だが、どのようにとらえているか。

長谷川: 雇用者の所得が増えていくことは、内需喚起の一つの大きな要素にもなる。これから成長戦略を本格的にどういう形で実行していくかについては、産業競争力会議等で協議をして決めていく。(政府の金融政策の効果は)為替の円安、株価の大幅な上昇など(企業業績の改善に)追い風となっている現状では、(政府からの賃上げ)協力要請は異例であっても、私としては真摯に受け止め、経済界もできるところから対応し、賃金や賞与を可能な範囲で上げていくことで協力してはどうか。六重苦ともいわれた企業にとっては、ハードルが高い面もあるが、政府でなければできないことは政府に改善努力を求める一方で、経済界としても、できる範囲で前向きに検討し協力していく姿勢は極めて重要である。これは日本全体の問題であり、一方的に誰かにお願いするだけというわけにはいかない。そういう配慮も今の段階では必要ではないかと思う。

Q: 一律の賃上げは難しい状況の中で、首相の要請について理解はできても、なかなか(実行は)難しいのではないか。

長谷川: 先述の通り、現に業績を上方修正している企業もある。その企業が業績連動型の賃金体系になっているかは分からないが、実際に自らの企業努力に円安の恩恵も相まって業績が回復しているのであれば、労働分配率を維持すれば当然(業績回復分は)賃金や賞与に反映される。この局面では、少なくとも労働分配率を下げずに従業員に配分し、それが消費に結び付く形をとることが妥当ではないかと考える。

Q: 賃上げについて、昨日の正副代表幹事会で検討するとのことであったが、副代表幹事からの反応を伺いたい。

長谷川: 基本的には、(賃上げは)個々の企業の業績状況によるが、できる限り(政府からの)要請を前向きに受け止め、協力を考えていこうという議論であった。個別にどの企業が何をするという議論はなかったが、例えば、業績が改善し賞与が上がる企業においては、「今年はこういう業績だったのでこれだけ上がった」という表示を個別にしてはどうかとの意見もあった。

Q: 要請に対して前向きに考えていこうという議論と理解してよいか。

長谷川: できる限り前向きに考えていこうということである。

Q: 経済同友会として、どの企業がどれだけ増えたかを発表するのか。

長谷川: そのつもりはない。できるだけ前向きに取り組んでいただくよう要請し、あとは個々の企業の経営者の判断に委ねる。昨日の安倍首相との会合の場では、限られた短い時間であったが、「民間は民間で、個々の企業ができるだけ協力して前向きに取り組むよう考えていきたいし、そのように各企業の経営者にもお願いしていきたい。一方で、前政権の時に決まった公務員給与の2年間平均7.8%削減について、現下の情勢では難しいかもしれないが、一度再検討していただく余地はあるのでないか」と申し上げた。

前原: デフレ要因の4割くらいは公務員給与の引き下げで説明できるというのが、今のデフレの実体である。本気でデフレを止めるつもりであれば、政府もそこまで踏み込まなければいけないのではないか。

Q: 賃上げについて、一時的に業績が上がった場合に賞与に反映させることは、安倍首相が要請する以前から当たり前のことである。賃金カーブ自体を引き上げるベースアップができれば一番だと思うが、これについて所感を伺いたい。

長谷川: 当社(武田薬品工業)を例に述べると、職務給制度になっており、それぞれの職務等級の中で段階があり、熟練度に応じて上げていくと同時に、職務等級が1ランク上がればベースが上がるという両方の組み合わせである。もちろん本人のパフォーマンス・能力の発揮度によって変わるが、過去3年間の実績を見ると、一人平均で毎年数%上がっている。従来の延長線上で考えれば、今年もそうなるだろう。基本的に、(従来型の)ベース・アップの交渉というよりは、職務給の箱(号俸)全体について、市場の動向や年代別の賃金カーブをみて、競争力のある人材を獲得・確保するための競争力ある賃金水準になるよう常に見ている。全体の箱の金額を上げたり、個人のパフォーマンスにより等級が上がるなどで賃金が決まる。かなり理論的・合理的に説明が可能な仕組みである。

Q: 人件費の総額自体を増やすには、足下の景気回復だけでなく、ある程度先々まで景気が安定的に回復して、成長戦略も軌道に乗って、ということも必要ではないか。

長谷川: 経営者の考え方次第だろう。現状を見て、一本目と二本目の矢が放たれて効果が出ているが、三本目の成長に企業としてどこまで貢献・寄与できるかを考えれば、「少なくとも労働分配率は下げない」という基本的な考えで良いのではないかと感じる。当社では、賞与については業績連動で、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)があって、会社全体・部門ごと・個人それぞれのパフォーマンスで自動的に決まるようにしている。(業績向上分は)賞与原資として消化されるのが一般的であろうが、さらに(余裕が)あれば賃金に反映させることもあり得るのではないか。

Q: 昨日の首相との対話で、政府ができることの範囲の中で、経団連から労働市場の規制緩和にも言及されたと聞く。これをどのように考えるか。また、注力すべきはどの規制とお考えか。

長谷川: (労働市場の規制緩和に関しては)経済財政諮問会議で問題提起されていると承知している。成長産業が変わっていく中で、労働者も職種や業種の転換ができる、あるいはしやすい労働法制が、現下の世界の潮流では望まれているのではないか。長い目で見れば、産業や企業、あるいは経済全体の活性化に繋がっていく。具体的には、事業の実体に応じて業種転換を図る場合、企業側から(従業員に)お願いしやすくすると同時に、受け皿となる政府の公共サービスとして、再訓練について、必要な期間、必要なものを提供していく。結果として、産業(構造)の転換を促進する。このような労働法制が望ましい。今は企業に雇用調整助成金を配布し、それによって雇用を維持するという手法だが、長い目で見て、同じお金を使うのであれば、先述のような形が持続性もあり、本人や企業にとっても良いのではないかと考える。

Q: 賃上げについて、円安効果の影響を受けている大企業の先頭集団は協力するとしても、これまで抱えている構造的な非正規雇用などの問題や、社会保障制度への不安の払拭などは一気に改善できない。先頭集団以外の方々の気持ちを前向きにさせるためには、どのような施策が望ましいか。

長谷川: (将来に対する)不安感の払拭に賃金をもって応えるのは難しい。年金、医療、介護を含め、社会保障(制度)に対する将来不安については、社会保障制度改革国民会議で、法定期限である8月21日までに結論をきちんと出し、国民の不安を払拭することが王道だろう。日本人は心配性で、80歳でも老後を心配して消費をしないという国民性であり、(家計金融資産)約1,450兆円のうち6割程度を60歳以上が所有している部分を、消費あるいは投資に向ける施策を併せて実行しなくてはならない。孫への教育投資を生前贈与できる仕組みは一つの前進である。賃金については、総人件費が5%以上上がらないと(法人税の)税額控除(対象)にはならないとのことなので、これはかなり高いハードルであり、(減税の恩恵を)享受できる企業はそう多くないかもしれない。

Q: 為替に関して、G20を明後日にひかえ、各国から実質的な円安牽制発言があり、それに伴って若干為替も円高気味になっている。各国の円安牽制発言についての見解を伺いたい。

長谷川: 菅義偉官房長官も述べている通り、各国の財政・金融政策は、為替レートではなく国内の政策目的に対してとられているものであり、日本も為替介入をしているわけではない。各国の立場上、懸念されることはあっても、特に日本がそれを問題にする必要もないし、G20で問題になるとも個人的には思わない。前回の記者会見でも述べた通り、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)においても、そのような(日本が問題視される)全体のトーンではなかった。

Q: 昨日、スイス・ローザンヌで、2020年の夏季五輪の中核競技種目から、レスリングが外れることが決定した。2020年オリンピック・パラリンピックの東京誘致を推進している立場から、所感を伺いたい。

長谷川: 古代オリンピックでもメイン種目であったレスリングが外れるということは、いかにも唐突で、過去の柔道や複合スキーの(ルール改正の)ことなど、やや勘繰りたくなる部分はある。報道によると、決定に関与するIOC理事会メンバーの15名中9名が欧州出身とのことである。それがどう影響しているのかは分からないが、古代はもちろん近代オリンピックが始まって以降ずっとある種目が、今のような形で排除の対象の一つとなることには(疑問がある)。近代5種との比較だということだが、個人的には、5種、10種(のどちらが妥当か)でもそうだし、他にも普及の度合いやメダル独占の状況などいろいろな議論があると思う。特に女子レスリングにおいては日本が席巻し目立ち過ぎた部分があるかもしれないが、今回の決定はいかにも唐突で不自然であり、(日本の席巻が影響しているなら)それはあってはならないと考える。

Q: 産業競争力会議について、楽天の三木谷浩史社長が、事務局に民間を入れてほしいと発言している。この点について所感を伺いたい。

長谷川: 三木谷議員の要請については、基本的に賛同する。どういう形で決着がつくのかは現段階では分からないし、最終的には首相、第一義的には甘利明経済再生担当相が決められることであるが、そういう方向に進むよう私もサポートしたい。

Q: 産業競争力会議の事務局に、民間スタッフはなぜ必要なのか。

長谷川: 正式の会議以外に、代理人会議や事務局説明など、意思疎通の齟齬がない形で進めてもらっているが、民間から同じような仕組みの(政府の)組織に出向して実際に働いた経験がある人もいるので、そういう人を(事務局に)送り込むことで、民間議員のペーパーや提言をまとめるプロセスは、より迅速になり、大いに意味があると思う。

Q: 三木谷さんは、(事務局が官僚だと)官僚主導になり、民間議員の意見が最終的なアウトプットに反映されないのではないかと危惧しているが。

長谷川: 現段階で、産業競争力会議についてそのような評価は時期尚早かと思うが、過去の経験からいけばその懸念がないわけではない。(その危惧を)少しでも薄めるためにも、民間議員の意見が迅速かつ的確に反映されるような形を担保するという面からは、意味があると思う。

Q: 経団連が新たな副会長3人を発表した。3社とも製造業であるが、所感を伺いたい。

長谷川: 他団体のことで(経緯は分からないが)、すべて同一企業からの後任であるようだが、個別企業や組織としての経団連の事情で考えられたことだろう。いずれもかつて(経団連)会長を輩出した企業であり、十分理解できる。

Q: 経済同友会としてはどうか。

長谷川: 他団体の人事についてコメントはない。経済同友会では、役員等候補選考委員会で公明正大に選考して役員等を決めており、代表幹事といえども(自身の意向で)決められる状況ではない。極めて健全であると自負している。

Q: 安倍政権の経済政策について、総選挙前は、安倍さんの唱える「物価目標を入れた大胆な金融緩和」に対する評価はさまざまだった。政権が発足して2ヶ月が経った現時点で、企業決算やマクロ経済の流れから見たアベノミクスへの評価を伺いたい。政権発足時に想定していた以上の成果とお考えか。

長谷川: 政権発足時に(成果を)想定をしていなかったので、後半の質問に答えることは難しい。総選挙前からの発言に対しては、当時から述べていた通り、一つは、大胆な金融緩和や機動的な財政出動については理解できるとしていた。特に、(2014年4月の)消費税率引き上げの景気条項を考えると、今ここで景気を落とすわけにはいかないし、即効性があるものとして大型の補正予算を組むなどは理解できる。一方で、財政規律をどうするかが明確に述べられていなかったため、懸念材料として指摘してきた。本日、麻生太郎副総理兼財務相が、2015年度までに基礎的財政収支(の赤字幅)を半減、2020年度までに黒字化するという目標を守る、と述べられており、これをきちんと守っていただくことが極めて重要で、国際的なメッセージとしても大事である。また、インフレ・ターゲットについて、2%という数値は、他国の中央銀行が掲げている目標と齟齬があるわけではなくターゲットとしては標準的ではあるが、日本固有の過去の経緯を見ると、極めてストレッチな(高い)目標であることも事実である。政府が定めた来年度の(日本経済の成長率)実質GDPプラス2.5%、名目GDPプラス2.7%を達成するのは相当ストレッチであるため、いかに早く実効性ある成長戦略を最終化して実行するかにかかっている。最後に、(総選挙前から)初期段階では少し乱暴な表現、例えば市場から国債をいくらでも買えば良いなどということもあったが、徐々に修正されている。株価は、瞬間的ではあったがリーマン・ショック前に戻り、為替も行き過ぎた円高が是正されつつある。円/ドル・レートもリーマン・ショック直近は110円/ドル程度、4-9月期では115円/ドル程度で、その水準に戻れという意図ではないが、その辺りまで戻っても他国から非難されるものではないし、日本にとってもプラスになることは多いだろう。ただし、化石燃料の輸入が増えているので、それが為替変動で高騰する分について、このまま一本調子で円安傾向が進むことが全体のバランス上良いのかは難しい面もあるが、簡単にコントロールできることでもないので、トーンダウンした方が良い感じもある。(評価は、)結果が出ていることが何より大事であり、“So far so good”である。(為替についても、)異常な介入なしに(円高の是正が進んでいるという)結果はポジティブに受け止めている。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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