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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年12月04日(月)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川代表幹事より、(1)衆議院議員選挙公示と政権公約、(2)金融政策、(3)日中関係、(4)成長戦略、(5)日本銀行総裁人事、(6)景況感、(7)笹子トンネルの天井板崩落事故、について発言があった。

Q: 今日、衆議院議員選挙が公示された。先月の解散宣言から事実上選挙戦がスタートしており、街頭やメディアでの論争が始まって3週間が経つ。一方、前回の記者会見から、新党が生まれたり消えたりし、第三極といわれる勢力も二分化の方向に進みつつある。これまでの論戦等含め、選挙戦に求めることを伺いたい。

長谷川: 二点述べる。一つは、解散宣言から今日の公示まで比較的時間が短く、各党ともここまで早い(解散・総選挙になる)とは思っていなかったのかもしれない。(経済同友会は、11月22日に)『政権公約に基づく活発な政策論争を望む』として(緊急意見書を取りまとめ)、有権者が(政策で政党を)選択できるよう、各党に主張や内容を詳細に明示した政権公約、マニフェストの提示を求め(、主要な政策について公開質問状を出し)た。誠実に回答いただいた各党には感謝するが、(各党の政権公約が)各論にわたっており、日本が転換期にさしかかっている今、それぞれの政党がどのような国家像を目指していくかという観点からの姿勢が明示されていないことが残念である。また、具体的な政権の構想についても、もう少し明確に書かれることを期待していたが、民主党政権のマニフェストの紆余曲折を見た結果か、(各党とも)明確さに欠けている。有権者から見ると選択が難しいのではないか。

二つ目として、(先述の緊急意見書でも述べたが、)これまでの決められない政治、前に進まない政治や紆余曲折を考えると、国民の政治に対する失望感はかなり高いのではないかと思う。しかしながら、政治に対する不信感があったとしても、今のような日本が転換期にさしかかっている時には特に、有権者に与えられた選択の権利を行使するという意味で、選択が難しい中でも必死に考え、きちんと投票してほしい。投票せずにただ批判だけをするというのは、有権者として好ましい態度ではない。

Q: 経済同友会の公開質問状への各党の回答について、もう少し明確に書いてほしかったというのは、具体的にどの辺りか。

長谷川: 一つ例を挙げると、原子力発電について、10年後、20年後に「脱」や「卒」といった記載があるが、移行期間や「脱」「卒」原発後のエネルギー政策、コスト、受益者負担などのバランスや具体策がなく、とにかくなくすということだけが書かれている。福島第一原子力発電所の事故を経て、多くの人が原発はないに越したことはないと考えるのは当然だろう。「脱」「卒」原発に向かう時間軸や、代替エネルギー、コスト、受益者負担など、国民が選択、判断できる情報の提示が求められている。「あらゆる政策を総動員する」といった修飾語では中身が分からないので、もう少し掘り下げて書いていただくのが、国民にとってはより親切である。

Q: マニフェストから詳細の記述が削られている点について、所感を伺いたい。

長谷川: 前回(2009年)の総選挙の際、民主党は、16.7兆円を捻出し、子ども手当、高校無償化、高速道路無料化、農家戸別所得補償などを実行するとマニフェストに掲げたが、政権交代後にそれらを実現できなかった。それを見たり実際に経験した人たちは、あまり具体的に書くのはどうかと感じたかもしれない。金額は別として、政治家あるいは政党は、あくまでも政権を選択する有権者が何を知りたいか、判断するための材料をきちんと提供しているかを考え、詳細に政権公約に記載する必要があるのではないか。ビジネスの感覚で言えば、顧客に自社の製品・サービスを買ってもらうために、選択しやすいよう自社のメリットを差別化して示すのは当然である。

Q: 各党から国家像が示されていないとの発言があったが、今回の選挙戦でどういう国家像や論点を求めているのか。

長谷川: 中長期的には、世界の先進国の中でも最速で少子化・高齢化が進み、2055年頃には65歳以上が4割程度に達するという推計もある。かつて経験したことのない少子・高齢化社会に向かう中で、持続可能な社会保障制度をどう構築するかといった大きな課題がある。もう少し短いスパンでは、この国を円高・デフレから脱却させ再び成長路線に乗せるために何をするのかという問題がある。民主党は、産業政策においてグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーション、農林水産業の6次産業化、中小企業活性化の4本柱を提示している。自民党は、必ずしもその部分をきちんと書いておらず、当面は景気刺激のために公共投資も必要とのことだが、それが国土強靭化基本法案とどう結び付くのかは分からない。スケールは別として、当面の景気刺激策は必要かもしれないが、その先何をもって経済を牽引するのか、内閣に日本経済再生本部を作るとあるが、それ以上の具体的、詳細なものは明確に示されていない。この辺りを提示されることが必要だと思う。

Q: 決められない政治の産物か、12党から候補者が立ち、国民も選びにくい状況だが、これをどう考えるか。また、年明けから選挙制度の議論が始まると思うが、そもそも二大政党制を可能にするために小選挙区制にしたはずなのに、成り行きもあるが今は12党ある。中長期的な選挙制度についても見解も伺いたい。

長谷川: 選挙制度の専門家でないので分からないが、個人的な感想を述べる。決められない政治、あるいは政治の劣化の原因が小選挙区制にあるのではないかとの見方もあるが、制度を中選挙区制に戻したら見違えるように良くなるかというと、私はそうは思わない。選挙による本格的な政権交代は3年3カ月前が初めてであったが、その結果が国民の期待を大きく裏切ったのは極めて残念なことである。しかし、新しいことを試みるときには失敗も付き物で、企業でも国でも悪い時には悪いことが重なるが、だからといってここで諦めるのではなく、政党、政権の選択が可能なより良い制度ができるよう、進化するよう、国民側も支えていく必要があると感じる。

12党は、過渡期だろう。この状況がずっと続くとは思えないし、あり得ない。民主党が政権を取ってから、100人以上が民主党から離党した。その多くは様々な政党の結成に関与しており、一部このような結果に結び付いたと思う。同時に、現状の政治に満足しない人たちを糾合しようという第三極ができた。第三極は大きく二つに分かれつつあるようで、小異を捨てて大同につくという言葉で括られているが、(政策の)中身が相当違っても一緒になっている。実際に、仮にキャスティング・ボートを握ったとしても、党としてまとまって強い影響力を与え得るかというと、過去の経験から考えても極めて疑問である。選挙の結果がどうなるか、それを踏まえて各政党がどうされるかによって明らかになってくるだろう。

Q: 今回の選挙は「政権の枠組み決める選挙」との報道がある。自公中心か民主中心か第三極中心かという意味だが、この表現には個人的には違和感がある。代表幹事の所感を伺いたい。

長谷川: 個人的な感想を述べると、枠組みは今の延長線上ではないか。むしろ、自民党・公明党の連合で過半数を取ることもあり得るシナリオの一つだと思うが、仮にそうなっても参議院とのねじれは、少なくとも来年の参議院選挙まで残る。幸いなことに、特例公債法案だけは人質としないことが合意されているので、予算の部分だけはある程度前に進むだろう。それ以外の重要政策課題については、必要に応じて政策連携を組むことで前に進めていくという方法だけは、ぜひ今後も継続していただきたい。

Q: 金融政策が総選挙の争点となっているが、記憶の範囲では今までなく、珍しい選挙であると感じている。大胆な金融政策を表明している政党もあれば、それは禁じ手であるという政党もある。経済界には、本来の目的ではないが為替への影響も期待できるので大いにやっていただきたいという意見もあれば、資金需要がないので効果がないという意見もある。金融政策に関する各党の論戦について、見解を伺いたい。

長谷川: 個人的には、各党が(金融政策について)活発に論戦をしているとは受け止めていない。(自由民主党の)安倍晋三総裁の強い主張が注目を浴びている。前回の定例記者会見でも述べ、直接安倍総裁にも申し上げたが、(金融緩和に触れる場合は、常に財政規律にも触れるなど)バランスの取れた発言をしていただきたい。円高やデフレ脱却は、日本銀行の金融政策だけで全て解決できるはずもない。特に経済成長に関しては、政府も(日銀の金融政策に)呼応し、きちんと対策を打つ必要がある。日銀の独立性や権限の範囲は(日本銀行法で)明確に定められている。震災復興の原資の議論で、復興債を発行して日銀が引き受けてはどうかとの案もあったが、結果的には実現せず、一旦は決まった法人実効税率の引き下げを3年間一部延期することで原資を調達することとなった。同様に、建設国債であれ赤字国債であれ、(国債の)引き受けは好ましくないしあまり例がない。安倍総裁は、市場からの購入を求めているのであって、直接引き受けを要求しているわけではないと表明しており、その点は微妙であるが、いずれにせよ、政府がすべき政策と日銀がすべき政策について、互いがきちんと理解した上で協力することが望ましい。

日銀の金融緩和が不十分かについては、様々な論議があり、(実際に)やってみないと分からない。国債購入額が88兆円に達したとの報道もあり、日銀はかつてない金融緩和をしている。一方で、例えば、米国FED(連邦準備制度理事会)が実施した金融緩和との対比では不十分との考えもある。日銀からすれば、2000年代初めから金融緩和を継続しており、それ以前からの比較で見れば(FEDと比較しても)不十分ではない、とのことである。この論議は結論が出ない。副作用を避けるため、財政規律、累積債務の解消、プライマリー・バランス(黒字化の実現)はきちんとするとの政府のコミットメントがあり、その上で日銀が大幅に金融緩和をすると判断すれば、やってみる価値はあるかもしれない。かつてのように、大幅な緩和をすることで、円だけに大幅な円キャリートレードが起こるようなことは、(他国も積極的に金融緩和をしている)今の状況ではないだろう。

Q: 金融政策が争点になっているとは思っていないとの発言があったが、自民党の安倍総裁が一人で(金融緩和を)主張しているだけという受け止めか。

長谷川: (総選挙の)争点になっているという認識はない、という趣旨である。

前原: デフレ脱却は、金融の課題ではあるものの、他の経済的要因も大きい。仮に、2%のインフレを目標にするのであれば、過去のデフレ要因分析をもっとしっかりと行い、政策の選択肢と効果を示さなければいけない。貨幣をたくさん刷ればいいという政策は、これまでも実施しているが、必ずしも成功していない部分がある。要因を分析すると、交易条件の悪化が一番大きく、賃下げの影響も大きい。バブル崩壊後の処理などについてよく分析して、提言していただければと思う。

Q: 日中関係が最悪の状態であり、関係回復の打開策が望まれる。尖閣問題以降、関係が悪化したことによる経済界への影響と、新政権への要望について伺いたい。また、対中政策については、どのように考えるか。

長谷川: 中国各地で反日デモによる破壊行為が頻繁に起きていた時期と比べれば、今は小康状態であり、落ち着きを取り戻しつつあるので、最悪の時期とは思っていない。しかし、望むべき関係からすれば、以前の状況に戻ったとはいえない。起きてしまったことを言っても仕方がないので、政府も経済界も、あらゆるチャネルを使って関係修復に努力するしかない。互いに傷つくが、その傷のどちらが大きいかなどを論議しても仕方がないし、日本と中国は、好むも好まざるも一衣帯水の関係にある。先人が知恵を絞って作り上げた戦略的互恵関係という共通理念に向かって改善しようという原点に立ち返り、地道に冷静に努力を続けるしかないと思う。

Q: 成長戦略、経済戦略について伺いたい。自民党政権時代からこれまでいろいろな戦略を作ってきたにも関わらず、なぜ進まなかったのか。成長戦略の策定に実際に関わっていたが、前に進まなかったことについて、どのような思いを抱いているか。

長谷川: (進まなかったことには)様々な理由があるが、抜本的・本質的な部分が二つある。前回の定例記者会見でも述べたが、一つは、特に成長戦略の場合、主要な政策課題を合意して決めても、実行にあたっては(管轄が)複数の省庁にまたがることが殆どである。その場合、誰がどういう形で最終判断と責任とリーダーシップを持って実行していくか。予算と人材と権限をどう集約し、きちんと責任持って実行につなげるのかが欠けている。「省庁間の連携を密にして」といつも言われるが、実際にそう(省庁間の連携が密に)なった試しがない。ここに政治主導でメスを入れ、必要に応じて予算と人材と権限等を集中投下できるような体制を作らなければ進まないと思う。一例として、ライフ・イノベーションの分野で、医療機器や創薬を柱に据えるのであれば、製薬産業あるいは医療機器産業での自社の研究以外に、政府系の研究機関や大学等いろいろなところで行っている研究と、産業界のビジネスとを結び付ける橋渡しの役割をするような、日本版NIH(National Institutes of Health:米国立衛生研究所)が必要だ。米国のNIHには、ライフ・サイエンスの全予算3兆円程度を一括して投入している。日本の場合は、残念ながらそこまでの予算はなく、経済産業省、厚生労働省、文部科学省を合わせても恐らく4,000億円程度と記憶しているが、それもバラバラで一貫していない。欧州にも、政府がそのような橋渡しをする機能を作っている国が沢山ある。そのようなことをしなければ、政府が本気で成長戦略を実現することは不可能だと思う。

もう一つは、中央と地方の関係において、税収の6割を中央が、4割を地方が集めているが、使うのは6割が地方、4割が国である。国が条件を付けて交付金という形で地方に渡すが、ある閣僚を経験した自民党議員の話では、同程度の規模の地方自治体でも、効率の悪い(運営をしている)自治体ほど交付金が多く、効率の良い自治体は交付金を減らされるとのことである。高度成長時代のように富を再配分するメカニズムが続いているのであれば別だが、今は負担の再配分をしなければならない時代である。このようなシステムを続けていては、本気で改革が必要というメッセージは国民に伝わらず、また、持たれ合いの体制になるだろう。国家戦略会議でも述べているが、ここにメスを入れない限り、政府が本気で規制改革を含めた制度改革に取り組むという姿勢は信じられない。規制改革・制度改革の良いところは、ものによって違いはあるが、殆どお金がかからないところである。公共投資には何千億、何兆円というお金が必要になるが、規制改革そのものは、財政の投資を要しないという点からも、率先してやるべきだ。

Q: そういった面で、期待できる公開質問状への回答はあったか。

長谷川: 詳細はまだ精査していないが、必ずしもそうは思わない。認識している限りでは、そこまで切り込んで書いた政党はないようだ。

Q: 総選挙後、日銀総裁人事がある。経済同友会の(諮問委員会委員長代理である)稲葉延雄氏の名前も挙がっており、過去にも速水優元代表幹事が総裁を経験しているが、民間からの登用についてどのようにお考えか。

長谷川: 民間だから、あるいは官僚だからどう、ということはない。どういう方が相応しいかまでを詳しく話せるような見識を持ち合わせていないので、コメントは差し控えたい。日銀法で確立されている日銀の独立性を維持しながら、政府と日銀が協力できることは協力していただきたい。(協力する姿勢が)表面に出なくても良く、裏での協力でも構わない。互いに目指すところは一緒なので、非難をし合わずきちんと協力していただくことが一番良い。

Q: 日銀短観が12月14日に発表される予定で、中国における日本製品のボイコットの影響で悪化すると予想されているが、今後の景気動向をどう見ているか。また、今後のリスク要因、特に中国の対日感情の悪化による日本製品回避の影響と、アメリカの「財政の崖」について、所感を伺いたい。

長谷川: 株式市場の多少の復活あるいは円安について、(懸念材料の一つである)米国の財政の崖に対して(米国政府は)最後は(大幅な歳出削減などの断行を)妥協するという見方が主流になりつつあると思うし、それとは直接関係ないが、自動車の対米輸出も好調で大幅に伸びている。

(国内の)景気については、要注意ではあるが、急激に大幅な悪化を懸念しなければならない程ではない。ただ、持続的に景気をこれ以上下振れさせない方策は打っていく必要がある。どこが政権を取っても大型の補正予算を組むと言われているし、当然それは必要な措置だろう。

中国との関係について、産業によって状況は異なるが、今後も買い控え等はある程度継続するだろう。ただ、日本製品の品質の高さや安全性の信頼度は中国の消費者もよく分かっているケースが多いので、それ(品質の高い製品)を地道に提供していくことで、少しずつ回復していく過程をとらざるを得ない。病気と同じで、悪くなる時は一瞬だが、治るには時間がかかる。(日中関係を)解決するための奇手妙案があれば誰でもやるが、そういったものはないと考えて冷静に対応していくことが必要である。

Q: 中日本高速道路の笹子トンネルで天井板崩落事故が起き、社会資本の老朽化の問題が指摘されているが、所感を伺いたい。また、公共投資の必要性についてはどのようにお考えか。

長谷川: あの事故の惨事を見て、「なぜ」という感情を持つのは誰しも同じだろう。しかし、それが全てのインフラの劣化に結び付くかは慎重に見極めなければいけない。今回の事故の原因究明を待たなければいけないが、あのような崩落事故が起こること自体、かつては想像もし得なかった。既に中日本高速道路にも捜査が入っているようだが、徹底的な原因究明をして、必要な予防措置、修理・保全措置は当然とられるべきである。そのために必要な投資は当然やらなくてはいけない。それは、(自民党の)国土強靭化とは別に、もう一度インフラの劣化や保守・点検整備の不十分なところについては総点検する必要がある。二度と起こしてはいけない事故であり、万全の体制をとっていただきたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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