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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年09月04日(水)13:40~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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記者の質問に答える形で、長谷川閑史代表幹事より、(1)エネルギー・環境の選択肢、(2)民主党代表選・自民党総裁選・政局、(3)予算執行の抑制、(4)TPP交渉への参加表明、(5)尖閣諸島および竹島の問題、(6)今夏の節電、について発言があった。その後、前原金一副代表幹事・専務理事より、「教育改革による国際競争力強化PT 会合『議事サマリー』の一般公開と意見募集の試験的な実施について」説明があった。

Q: 原発比率を示す政府のエネルギー政策の議論について、各社報道によると「原発ゼロ」を目指す方向で調整されているようだ。経済界が求めている方向とはかなり異なるが、この点について見解を伺いたい。

長谷川: 報道で知る限りであるが、政府のエネルギー・環境会議で議論が進められており、最終的な結論は出ていないものの、賛否両論あるが(原発比率)ゼロの方向で検討されていると聞き、経済界としては懸念を持っている。政府が示した3つの選択肢は2030年の比率を示したものであり、現時点の議論が同様の時間軸なのか、それを越えるものかは承知していないが、経済同友会の考え方は以前より述べている通りである。仮に、世論の動向を踏まえて(原発ゼロの方向で)判断されるとすれば、政府としては当然のことながら説明責任を伴う。例えば、「経済に対するネガティブな影響がない」「国民生活が維持できる」といったことを、一定の論証や分析を踏まえて説明する責任が政府にはある。少なくとも当会としては、そのような(経済への影響がない、国民生活が維持できる)ことは確信していないので、(原発ゼロの方向性に対する)反対の立場は変わらない。

Q: 政府のエネルギー・環境会議の試算では、(原発ゼロとした場合、)2030年までに再生可能エネルギーに約50兆円の投資が必要になり、家庭の(電気)料金が倍になるという。企業の試算はまだ出ていないが、コストの面から、原発ゼロにした場合の企業への影響を伺いたい。また、ベトナムなどに原発を輸出しているが、産業という面での影響を伺いたい。

長谷川: 後者について、原発産業と考えるか原発を建設あるいは輸出する企業と考えるかは別にして、高効率の石炭による火力発電施設も含め、インフラ輸出をする場合は、必ず自国で十分なオペレーションをして、効率性だけでなく安定・安全運転が実現できているかも当然アピール・ポイントになり、他の競合国や競合会社との比較の対象にもなる。自国は(原発を)止めて、輸出だけをするということは極めて難しいと考えるのが自然である。

前者について、現時点におけるいくつかの前提条件の下で様々な試算が出ている。(電気料金が)高くなることは間違いないが、不確定要素があるにも関わらず決め打ちをしてしまうことには無理がある。大まかな方向としては、縮・原発の方向でいかざるを得ないし、いくべきだろう。その間、国家としてのバックアップである固定価格買取制度も含め、再生可能エネルギー(の促進)をできるだけ支援しなければいけない。このような中で、再生可能エネルギーの技術がどれだけ進展し、コストが削減でき、国民の需要を担う大きな電力源の一つとして育ち得るかを、状況を見ながら判断せざるを得ない。今の時点で、40兆円や50兆円の投資が必要という試算から方向性を決めること自体に無理があると思う。

Q: 次の総選挙で、原発維持/脱原発が争点になり得るか。最近出てきた原発ゼロの流れには、政府・与党の選挙対策と感じる人もいる。もし、選挙対策だとすると、原発政策の良し悪しは別にして、本末転倒の感がある。

長谷川: 結果としてそういう(争点になる)シナリオもあり得るだろうが、それは国民にとって不幸なシナリオだと思う。本来、先が分からないことを、感覚的・感情的な判断を求めるような形で争点にすべきではない。原発ゼロで本当に我々が望むような生活の維持・向上ができるか、あるいは、再生可能エネルギーをどこまで電力源として、どれだけのコストで創出できるようになるのか、などが分からない。また、「2030年に原発ゼロ」と決めてしまった時点で、(電力)企業の経営処理は、すべて減損会計をして損益計算書に反映させなければならなくなるだろう。(北海道電力)泊原発のように、できて間もない原発であっても、2030年以降は運転できないとなれば、運転をストップする形での会計処理をせざるを得ない。様々な影響があり、あまりにも不確定要素が多い中で争点にすることは、政治としては無責任だと言わざるを得ない。

Q: 最近の政治情勢について、民主党代表選、自民党総裁選、あるいはその先の総選挙を控え、政局の動向が慌しくなってきた。代表選、総裁選に関する注文があれば伺いたい。

長谷川: 党内の事情はそれぞれあるだろうが、(各候補者が)きちんと政策目標を掲げ、それぞれの党が自身の掲げる政策に最も近い、総理候補となり得る代表や総裁を選ぶことを期待する。またその過程では、候補者間で、政策を踏まえた十分な論議がなされることも併せて期待する。

Q: 特に自民党総裁選で、大阪維新の会との距離感が一つの焦点になっているが、このような政治状況について所感を伺いたい。また、懸案を進めていく上で、大阪維新の会が持つ可能性についてはどのようにお考えか。

長谷川: まず、後者について、懸案が何を意味するのかはよく分からないが、大阪維新の会の役割は、今の段階では全くの未知数であると思っている。

各党が次の総選挙でどの程度議席を取るかといった詳細な調査が度々行われているようである。現段階で承知する範囲では、多少の振れはあるにしても、自民党は比較第一党になるかもしれないが、(単独)過半数は難しいのではないか、あるいは、ずっと連立を組んできた公明党(の議席数)を足しても難しいかもしれない。そうなると、過半数を制するためには、さらに第三党と組まなければいけない。その時に、第三勢力として相当の議席獲得が見込まれる大阪維新の会を取り込むような、何らかの連携の可能性を探っておくことは、自民・公明にとっては当然考えるべき一つの手段だろう。一方、第三勢力同士で連携することで、より影響力を持ち、キャスティング・ボートを握っていく戦略から、他の野党が(大阪維新の会と)連携を模索することはあると思う。今のところ、(大阪維新の会は)どこかと組むという話は意図的に避けているように思う。いつ総選挙があるかにもよるが、どう転ぶかはまったく未知数であり、予測は極めて困難である。

Q: 赤字国債発行法案に成立の見通しがなく、地方交付税の支出を延期するなど予算執行の抑制を余儀なくされることになるが、所見を伺いたい。

長谷川: 本日付の日本経済新聞(朝刊)に『経済・労働界、共同提言へ』という記事が掲載されている。どのような経緯で掲載に至ったかは分からないが、内容は否定するものではなく、経済界・労働界・学界の有志で(政治改革を)提言するもので、今週中に記者会見を開く予定である。その提言でも、特例公債法案など予算関連法案が承認されない場合に、予算執行をどう担保していくのかについても取り上げている。本来、衆議院に予算の議決に関する優越が認められているにもかかわらず、関連法案が(参議院で)通らなければ、(予算の)執行が滞ってしまうという制度そのものに疑問を呈すもので、ぜひこれを解決してから総選挙に臨んでほしいと提言している。提言の詳細については、後日の(日本アカデメイアの)記者会見で発表するが、少なくとも現状、そのような(予算執行が滞る)事態が生じつつある。政権与党は予算執行の責任を負っており、自らが痛みを感じるような、例えば政党助成金や議員歳費などの支払いを一時凍結することも含め、できるだけ国民生活に影響を及ぼさない形で切り抜けるのが政府の義務であると考える。

Q: 特例公債法案など関連法案は、予算案と同時に審議すべきという考えと理解してよいか。

長谷川: そうである。十分研究したわけではないが、諸外国ではそのようになっており、日本の制度がガラパゴス化していると言っていい。衆議院に予算の議決に関する優越が認められていても、(関連法案が否決されて)執行できなければ意味がなく、当然セットで議決されるべきである。その上で、予算執行の結果が国民の期待に応えるものでなければ、選挙で国民の審判が下るというのが議会制民主主義のルールである。法的に根拠(強制力)がない状況の中で、政権運営を停滞させることは、政権与党の執行責任、政権担当責任を歪めるものである。その意味では、参議院における問責決議も同じ範疇に入る問題であると考える。

Q: 法的根拠がないところで歪みを生じるとは、具体的に何を念頭に置いているのか。

長谷川: 例えば、「予算関連法案」が具体的にどこまで何を意味するのか、法的に定義されていないだろう。ねじれ国会で、衆議院で過半数を持っている政権与党が決めた予算について、(予算関連法案が参議院で通らず成立しなければ)執行が滞るということが、議会制民主主義本来の趣旨に反すると考える。

Q: 野党側の対応への意見は。

長谷川: 今後、総選挙がいつ行われるかは分からないが、衆議院議員の任期は残り1年を切り、早晩総選挙が行われることになる。今の趨勢では、政権が交代する可能性は大いにあり、今後も当面は今の(政権運営が安定しない)状況が常態化することが考えられる。これまでの、一つの党が与党であり続け、片や野党であり続けるという前提の下に本来の主旨を曲げて主張を通すといった制度が残ることは、今後政権与党になった政党が困るということを十分に認識し、与野党で話し合い、政権の運営や予算の執行を停滞させることがないような運営をしていただきたい。

Q: 与野党が対立している状況で、これから党首選はじめ衆院選に突入する。「この様な状況はしばらく変わらないだろう」との発言があったが、政治の混乱が経済界に与える影響について、どのような点に懸念を抱いているか。

長谷川: 経済界は国民生活を維持するための富の創出に貢献していると自負しているので、国民生活への影響という観点で述べる。最大の影響は、政権が安定しないことで、国家の中・長期ビジョン(策定)とそれを実現することによる国益の最大化という「ブレない政治」が実行できないことである。もう一つは、衆参のねじれで様々な問題の意思決定が滞ることである。さらには、首相や閣僚が(国会)予算委員会に張り付けになるという問題もある。本来であれば、主要国の首相や閣僚とのネットワークづくりや信頼関係づくりにもっと時間を割き理解を深めることによって、(日本の)影響力や信頼感も増して、懸案事項の解決を前進させることが国家・政治家に求められていると思うが、今の状況では実行できない。これは国家にとっても不幸な状況である。同時に、総選挙の予測を見ると、一つの党が安定的に過半数を取れず、来年の参議院選挙でも同じことを繰り返し、政権運営が安定しない可能性が高い。その中でどうやって国益を損なわない政治の運営をするかは、与党と野党第一党、あるいは政権に関与する党に共同責任があると思う。これらの点を、私は極めて懸念している。

Q: 今週末、ロシアでAPEC首脳会談が行われるが、懸案のTPP交渉への参加表明について改めて見解を伺いたい。

長谷川: 野田首相は、昨年(11月)ハワイでのAPEC(首脳会談)において(TPP交渉参加に向けた)予備協議に入ることを発表された。その流れから言えば、正式な参加表明は早いに越したことはないが、ほぼ1年を過ぎても未だ正式な表明がないことは極めて残念である。さはさりながら、それが日本にとって致命的な遅れかというと、昨年とは状況が変わっている。昨年、強く(日本の参加を)押していたバラク・オバマ米大統領は、本年中に結論を出すと言ったが、最近ではロン・カーク米通商代表が来年の今頃までかかるだろうと発言しており、それが実態だと考える。11月に大統領選挙が行われ、オバマ氏が勝てば組閣を経て早くて来年の春、ロムニー氏が勝てばすべてのポリティカル・アポインティーを決定して政権が落ち着くのはおそらく来年夏頃ではないかと思われる。アメリカがフルスピードでこの問題に取り掛かる準備ができるまでには時間がかかり、日本にとっては不幸中の幸いであろうと考える。

Q: 尖閣諸島や竹島の問題など、中国、韓国との関係が緊迫化している。経済の影響も懸念される中で、今の動きに対する所感を伺いたい。

長谷川: 尖閣諸島も竹島も日本固有の領土であり、領土紛争が起きること自体が誠に遺憾な状況である。竹島は、サンフランシスコ平和条約で、韓国の要求にもかかわらず、明確に日本の領土と認められた。その後、不幸にして李承晩大統領(当時)の「李承晩ライン」が一方的に決められ、既成事実としての(韓国による)実効支配が始まり、戦後、日本が復興期で国際的な政治舞台での影響力も少ない中で、きちんとそれを是正することができなかったことが今日に及んでいる。いま、政府が検討している国際司法裁判所への提訴は、とり得る手段としては妥当だと思う。裁判には相手国の同意が必要だとしても、(韓国は日本の提案を否定する理由を)説明しなければいけないと理解しているので、きちんと手続きを踏んで進めることで何らかの進展を見ることを期待している。

尖閣諸島も日本の領土であることは間違いないし、加えて日本が実効支配し、所有権も明確にしている。中国が一方的に自身の領土であることを宣言したが、日本は粛々と日本の領土であることを主張し続け、実効支配をより明確にしていくことになろう。その一つが、報道での理解しかないが、個人の持ち主の方が東京都に譲渡してもよいとのことなので、国有化を粛々と進め、少し現状が改善されることは、日本にとっても妥当な方向ではないか。

Q: 数値目標付きの節電期間が今週末で一旦終わる。節電がうまくいき、関西電力管内でも場合によっては大飯原発を再稼働しなくてもよかったのではないかとの声もある。今夏の節電を振り返って、所感を伺いたい。

長谷川: ある意味では日本人の良さでもあるが、個人や家庭、あるいは企業の反応により、節電目標を達成できた。結果論として、大飯原発の再稼働がなくても(電力量が)賄えたのではないかという判断は確かにあり得るかもしれないが、そもそも国民や企業が節電をすると、消費活動などの抑制にも繋がり、電力会社の電力料金の収益にも影響する。本来であれば、これだけデフレが続いており日本の景気をどうするかという状況では、景気にマイナスになることはできるだけ避け、景気回復に少しでも貢献をする、安心して(電気を)使えるようにするのが政府の役割であり、国民もそう考えるべきだと思う。(今夏の)結果だけを見て(原発が)なくても大丈夫と判断するのは、今年に限れば大丈夫だったかもしれないが、長い目で国家の繁栄、国民生活の向上、企業の繁栄を考えれば、軽々に判断するべきではない。(節電が常態化すると)自粛・萎縮する経済に入り込んで悪循環になる可能性もあるので、(原発再稼動の必要がないと)今の段階で決め打ちすべきではない。

教育改革による国際競争力強化PT
会合『議事サマリー』の一般公開と意見募集の試験的な実施について

前原: 経済同友会では、本年度より、抜本的な教育改革を通じて日本の国際競争力を高めていくことを目指し、「教育改革による国際競争力強化プロジェクト・チーム(PT)」(委員長:三木谷浩史)を立ち上げた。本PTでは、日本の教育制度の中でも英語教育改革に焦点をあて、わが国の国際競争力を強化するための抜本的な教育改革に向けた提言をとりまとめるべく、7月25日より検討を開始している。

この度、活動成果として取りまとめる提言を対外発表する前の段階から、議論の過程を含めて一般の方々に直接発信することで広く関心を持っていただくため、会合「議事サマリー」等のホームページ上での一般公開を、試験的に実施することとした。同時に、一般の方々からの意見をメールにて広く受け付ける。本会が委員会・PTの議論の過程を一般公開し、意見を募集することは、今回が初めての試みとなる。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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