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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年06月19日(火)13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)欧州債務危機、(2)社会保障・税一体改革、(3)大飯原発再稼動と固定価格買取制度、についてコメントを述べた後、前原金一副代表幹事・専務理事より2012年度(第27回)夏季セミナー(開催:7月12~14日、岩手県盛岡市)について連絡があった。その後、記者の質問に答える形で、(1)TPP交渉参加表明、(2)大飯原発再稼動、(3)固定価格買取制度、(4)欧州債務危機、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、欧州債務危機について述べる。ギリシャの再選挙の結果、財政緊縮策を支持する政党が、2党合わせれば過半数を獲得した。まだ連立の最終合意には至っていないようだが、一応は最悪の事態は避けられたというところではないか。ただし、直ちに危機の連鎖反応を起こす状況ではなくなったとしても、これが最終的に欧州の安定に繋がるという保証はない。また、ドイツのアンゲラ・メルケル首相はG20の場ではあくまでも財政緊縮策の実行を求めるとの立場を主張していると聞く。一方、フランスでは、フランソワ・オランド大統領を支持する左派勢力が議会でも過半数を獲得した。これからドイツとフランスの間で、緊縮財政に加え、競争力の強化、成長にどれだけ舵をきっていくのかが、欧州の状況を左右すると思われる。いずれにせよ、過去の日本やアメリカの経験からしても、短期間で急速にこの問題が解決するとは考えられず、世界経済に与える影響は当分続くと考えざるを得ない。

二点目に、社会保障・税一体改革について述べる。昨日も民主党内での合意形成に向けた会議があったが、予想に違わず意思決定はなされていない。民主党幹部、特に責任を持つ前原誠司政調会長は、本日中に何とか結論をみたいという意向のようであるが、どう決着するかが分からないのが民主党の現状である。報道によると、野田佳彦首相は明朝帰国され、必要に応じて両院議員総会に出席する覚悟もあるとのことである。本来ならば(首相が)そこまでしなくとも決めるのが筋であるが、最後はそうなる(首相自ら両院議員総会に出席し、党としての意思決定を図る)のかもしれない。首相には、21日には衆議院での採決まで持っていくという強い決意があると理解している。また、ここに至ってそれ以外の選択肢はあり得ないと思うので、粛々と進められることを注視したい。

三点目は、大飯原発の再稼動についてである。これまでの安全性の確保・担保に関する手続きの問題は、菅政権から受け継いできた課題ではあるが、必ずしも国民の納得が十分に得られる形となっていないことは否めない。当初、民主党の希望としては、4月に環境省の下に原子力規制庁を作り、そこで安全性の点検・確認をした上で(再稼動する)というプロセスであったようだが、これ自体が9月にずれ込み、最終的には三条委員会の下に規制庁を作るということで野党と合意した。今夏大幅な節電の要請をせざるを得ない、あるいは計画停電をせざるを得ないような状況を回避するという意味では、(大飯原発の再稼動は)妥当な判断であったと考える。その他の(大飯以外の)原発については、比較的新しい世代のものを中心に再稼動を考える必要があると思うが、それは規制庁が正式に発足してから、可及的速やかに安全性のチェック・担保を行い、逐次再稼働の方向に持っていかれることを期待する。一つだけ、かねてより疑問に感じていたことを申し上げる。再稼働について、国民の注目度が高いだけにメディアも大きく取り上げるが、原発は止まっていれば安全で、稼働すると危険であるように受け止められる傾向にある。しかし、地震や津波の影響は、核燃料棒が中にあれば、(停止中で)制御棒があってもその危険度にあまり変わりはないというのが原子力の専門家の見解であり、確認した限りでもそのようである。現に、福島第一原発4号炉は休止中であったにもかかわらず水素爆発を起こした。止めていれば安全性に問題がなく、動かしていれば問題があるということではない。仮にあまり(安全度に)変わりがないということであれば、万全な安全対策が必要であることは間違いないが、経済活動や救命、(療養中の患者の)生命の維持にもつながっているなど、色々な要素を加味して、再稼動について考えるべきであろうと思っている。

また、直接的に関係はないが、7月1日から固定価格買取制度が始まる中で、買取価格についての議論がある。制度の内容について必ずしもすべてを理解できていないかもしれないが、最初の3年間は(参入の)インセンティブのために高めの買取価格が設定される。一方で、本年7月1日から来年3月31日までに経済産業大臣の設備認定を受けた法人は、(太陽光・風力・中小水力発電において、)2012年度の調達価格が向こう20年間保証されることになる。3月31日までにどれだけの申請と設備認定が下りるかにもよるが、今後の技術革新、あるいは近隣国での現在の単価を見ても、今後20年間保証するというのは、少し(発電事業者に)甘いのではないかという感覚を持たざるを得ない。再生可能エネルギー(導入)を促進するためのインセンティブであることは理解するが、せめて設備投資の償却期間が終わった段階で見直すなどのやり方もあったのではないか。私の理解に間違いがなければ、インセンティブにやや重きを置かれすぎて、結果として受益者・使用者の負担が大きくなるため、適宜見直されることを望みたい。

質疑応答

Q: G20の場で、事実上、メキシコがTPPへの参加を表明し、日本は先を越された形になったが、これについて所感を伺いたい。

長谷川: 昨年のAPECで(野田首相がTPP交渉の)「事前協議に参加する」と表明され、およそ8ヶ月が経った。本来であれば、4月末の日米首脳会談(での参加表明)は見送ったとしても、今回(のG20)が次のタイミングであり、(交渉参加を)表明することが望ましかったと思う。しかしながら、国内を見ると、この政局の中、社会保障・税一体改革(関連法案)を最優先で通さなければならない状況である。そのような中で、国民の半分以上が反対しているTPP(交渉参加)について、党内での合意形成もなく、また農業の競争力強化の具体案もないままで、(交渉への)参加表明を求めても非現実的である。また、アメリカは11月に大統領選挙を控えており、それが終わるまでは本格的に条件を詰めるなど急速な進展は期待できない、と一般的に判断されている。諸般の事情を考えると、メキシコが先に参加表明し、日本がタイミングを合わせられなかったことが、実質的に日本にどれだけのマイナス影響を与えるかについては、致命的なものではないと感じている。

Q: 経済同友会としては、「(原発を)再稼動すべき」という一方で、「縮原発」も宣言している。国民としては縮原発の方向性が見えず、なし崩し的に再稼動されるのではないかという点に反発がある。そのような状況下で、縮原発の方向性はどうすべきか。また、新しい原発は再稼動すべきという意見は理解したが、古い原発を廃炉にする方法を示していない現状をどう考えるか。

長谷川: エネルギー・環境会議で(エネルギーミックスの)4つの選択肢が公表され、基本的にはこの中から、最終的には政府がどれを選ぶかを決める。いずれにしても、昨年の(夏季セミナーで)縮原発を宣言した時から、(原発依存度)30%を持続することは非現実的であり、ましてや以前のエネルギー基本計画のように50%を超えることも非現実的である。そうすると、当面は原発に依存する比率を下げていかざるを得ず、他に選択肢はないという観点からも(縮原発が)妥当だと判断した。一方で、エネルギー・環境会議の中間報告書も2030年のエネルギーのベスト・ミックスをどうするかであったが、大体の方向は出せても、今後の再生可能エネルギーの技術発展やそれに伴うコスト削減などがどこまで進むのか、はっきりしない部分がある。あるいは、エネルギー・環境会議では(エネルギーミックスの)大きなウェイトになっていないが、(日本は)地熱発電のポテンシャルは世界第3位と言われており、場合によっては(ウェイトが)増えるかもしれない。このように、様々な要因を考えると、今の段階で断定的に20年後(のエネルギーのベスト・ミックス)を示して縛られると、かえって将来の選択肢の幅を狭めてしまうことになる。廃炉の基準はしっかりと定めた上で、柔軟に考えて対応しなければ現実的ではないだろう。

Q: 大飯原発の再稼動について、フル稼働は7月下旬から8月上旬と暑くなってからになる。夏の初期は節電が必要と考えるが、武田薬品工業では対応の見直しを考えているか。

長谷川: 本格フル稼働には6週間かかると言われているが、それまで、例えば4週目で4~5割の発電が可能となるなど、(フル稼働までに)節電がどの程度の段階で緩和されていくのかを聞いた上で判断しなければいけない。しかし、6週間(でフル稼働)という目処がはっきりしたことで、企業は(これまでと比べて)はるかに対応しやすい。例えば、お盆休みを7月にずらすなど、色々な対応が可能である。企業としては、最悪の事態を覚悟して準備を行ってきたところを緩和することになるので、そう混乱なく対応が可能であると考える。

Q: 武田薬品工業では、お盆休みを7月にずらす計画があるのか。

長谷川: 考えていない。武田薬品工業では最悪の事態を想定し、自家発電設備を備えたところである。NAS電池は残念ながらまだ納品されていないが、固定式ガス発電機と移動発電車の両方を調達し、当初の15%節電にも耐えられるよう対応済みである。当初の想定よりも(節電目標が)緩和される環境の中で、より厳しい対応を取らなくてはならない状況にはない。

Q: 固定価格買取制度について、今の制度は問題があり速やかに見直すべきとのことだが、パブリック・コメントの時期も終わっている。間に合ったのは日本商工会議所だけだったが、なぜ、もう少し早く、産業界から強く意見を出さなかったのか。

長谷川: 再生可能エネルギーの比率をできるだけ増やし、(導入)促進のためのインセンティブを与えることに異論はない。しかし、今の状況で20年間(買取価格を)固定してしまうことについては、われわれとしては問題なしとは言えないと考えている。意見表明のタイミングが遅れたのは、経済同友会内での議論が間に合わなかったためであり、もっと早くやるべきだったとは思う。

Q: 固定価格買取制度について、代表幹事自身の考えとして、インセンティブを与え過ぎたという現状を見直すよう、今後どういう形で働きかけていくとお考えか。

長谷川: 経済同友会内部で改めて検討した上で、公式なコメントを出したいと考えているが、一旦決まった制度を変えることはなかなか難しいだろう。今回始まる制度を進めてみて、(例えば10kw以上の太陽光発電では)42円、20年間の保証について、ある程度経過した時点で見直し、法改正も含めて現実的なものにしていくことが必要と考える。実施後の経緯を注意深く見守り、必要に応じて提言をしたい。

前原: かつて保険業界が予定利率の逆ザヤ問題で苦しんだ経験もあり、20年の固定期間は長い。結局は国民の負担になり、あまりに長期の保証は問題があるような気がする。

長谷川: 既に、この価格よりかなり安いコストで発電できることを実証している国が周辺国にもあると聞いている。そのような状況の中で、そういった価格を長期に固定することは、需要者の負担という点でフェアでない感じがする。

Q: 固定価格20年は長いとのことだが、太陽光発電などに参入しようとしている企業にとっては、安定的な利益は重要である。参入意思のある企業は経済同友会会員にもいるのではないか。

前原: 冷静に考えて、20年は過剰な利益を与える価格設定ではないかと考える。初期におけるインセンティブは必要だが、現状を見ると5~10年程度で良いのではないか。

Q: 経済同友会内部で原案に賛成という意見があって、早期に考えがまとまらなかったということか。

長谷川: そういうことではない。きちんと事実を把握した上でないと議論や意思決定はできないが、内容の調査・検証等に時間を要してしまったということである。事実を知った上で、コストの低下や償却期間を考えれば、インセンティブとして適切な利潤が必要なのは当然だが、それを超える分については使用者の負担を考えるなどの見直しがあって然るべきということである。

Q: 金額を変える時期は、償却期間を終える時期か、あるいは来年など早い段階で行うべきか。

長谷川: 経済同友会として時期を特定できるものではないが、コスト削減のスピードと同時に、3月末までに認可を受けたところはその設備の償却期間を見た上で、そのタイミングに併せて調整するのが一番理解・納得を得やすいのではないかと、個人的には感じる。

Q: 20年間(保証)という前提で参入することもあり、一度決めたものを見直すのは難しいのではないか。来年3月末までの参入は(20年間)42円で、それ以降は異なるので、それ以降の部分を提言されてはどうか。また、今回は特に与野党合意で当初の3年間は高く設定しようということになった経緯もある。

長谷川: 事情は把握しているが、諸外国でも途中で変えた事例もある。設備を建設して電気を売る側(の利益)と、使用者の負担とのバランスを考えると、諸外国の例も含め、結果として20年(の保証)はやや長いということになるのではないかと考える。然るべきタイミングで見直す時期がくるのではないかと感じている。

Q: この間、会員から(問題点について)言うべきだという声が強まったということか。

長谷川: そうではない。正副代表幹事会や先週末に開催したスタートアップ・ミーティングでの(経済同友会幹部の)議論を踏まえ、内容を精査した上で本日のコメントに至った。

Q: 欧州問題について、短期で収束するとは思えないとのことであったが、そのような情勢を踏まえ、政府や日銀に対してどのような対応を求めるか。追加緩和策を求めるか。

長谷川: 難しい問題であるが、端的に述べれば、(政府、日銀には)状況を冷静に見つめたいというような第三者的な発言ではなく、必要に応じて(追加金融)緩和など(の対策を)考えるといった意思表示を行ってほしい。アメリカでも、いまだにQE3(量的金融緩和政策の第3弾)を実施していないが、ベン・バーナンキFRB議長は、「必要に応じて行う」と常に意思を表明していることが歯止めになっている部分がある。日銀にも、その程度の意思表示は可能であればしていただきたいと思っている。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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