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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年05月29日(火)13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)社会保障・税一体改革、(2)原発再稼動、(3)TPP交渉参加、(4)數土文夫NHK経営委員会委員長の辞任、についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)野田佳彦首相と小沢一郎元民主党代表との会談、(2)2030年の電源構成比案、(3)原発再稼動、(4)數土NHK経営委員会委員長の辞任、(5)芸能人の親の生活保護受給、(6)ギリシャのユーロ離脱と景況感、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

一点目は、社会保障・税一体改革について述べる。6月半ば過ぎには、衆議院(特別委員会)での審議が(与党が衆院採決の目安としている審議時間)100時間を達成する見込みの中で、明日、野田首相(民主党代表)と小沢元民主党代表の会談が行われる。話し合いの場を持つのは良いことだが、小沢元代表は(消費増税に)反対の立場を変えないと表明している。一方、首相は、「お会いするからには乾坤一擲」と述べられている。(消費増税法案をめぐる対談に)決着がつけばいいが、私としてはこのようなことが何度も重なること自体を懸念している。昨年12月と今年3月で(民主)党内の熟議は尽くされているので、話し合いは話し合いとして、粛々と(社会保障・税一体改革が)進められることを期待したい。また、自民党の(一体改革の)対案骨子もまとまり、基本的には社会保障制度改革国民会議(仮称)を創設して詳細を議論するという方向で合意されるようである。この考え方(与野党協議)は、(自民党政権の)福田内閣の際、(自民党から)提案があったが、(当時)野党の民主党が反対して参加せず、自民党と公明党の与党だけの会議になったように記憶している。恐らく立場も変わり、学習効果もあったと思うが、与・野党、特に与党と野党第一党が話し合いをするのは大変結構なことである。

二点目は、原発再稼働に関して述べる。現在国会で、原子力規制庁にするか、国家行政組織法に基づくいわゆる三条委員会にするかが論議されている。決着がつくには少し時間がかかるだろうが、できるだけ早く決着していただきたい。一方、大飯原発について、首相を含めた関係閣僚が集まり(協議をして)、再稼働が可能であると判断した。報道によると、明日30日に鳥取県で開催される関西広域連合の会議に、細野豪志原発事故担当相が(再稼働への地元の)理解を求めるため出席を調整しているとのことである。政府として責任を持ってきちんと説明し、周辺自治体の納得も得た上で、再稼働に目途をつけることを心から期待して止まない。(今夏の節電について、)自社(武田薬品工業)では、昨年度よりガスエンジンの発電などの手配を始めており、(関西電力管内の)15%節電はクリアできると見ているが、特に中小企業など柔軟な投資まではできずに頭を抱えているところも多々あると思うので、早めに目途をつけていただくことをお願いし、期待したい。

三点目は、TPP交渉参加についてである。首相もいろいろな場で前向きに進めると発言されているが、いつ正式に交渉協議への参加表明をするのかが定かでない。残念ながら、4月30日の日米首脳会談での表明はなかった。6月18日~19日にメキシコ・ロスカボスでG20が予定されており、まだ分からないが、(メキシコの)フェリペ・カルデロン大統領が正式な参加表明をすることも考えられる。日本が先に参加検討を表明し、カナダやメキシコがそれに続いたという昨年の経緯を思い起こせば、先に仕掛けた日本がまだ決断できないという状況は好ましくない。課題山積ではあるが、(できるだけ早い段階での)参加への態度表明を期待したい。日米間の問題では、米国の自動車業界が、自動車の非関税障壁の撤廃をオバマ大統領および米政府に強く要請していると聞く。これは議論の過程で、米国がある程度受け入れられる形を整えなくてはならないにしても、正式に参加を表明してもらいたい。ただし、(TPP交渉参加に向けて)大きな障壁となる農業改革について、民主党内での論議が一向に進んでいないことを大いに懸念する。それなくして正式な参加表明は難しいだろう。社会保障・税一体改革が最優先(課題)であることは理解できるが、それはそれとして進めていただきたい。

最後に、數土文夫NHK経営委員会委員長の辞任について、(判断の)過程ではいろいろな方の意見を聴いたと拝察するが、最終的にはご本人が個人で判断され、辞任に至ったと理解している。いろいろな報道があり、懸念の向きもまったく見当違いとも思わないし、「李下に冠を正さず」と述べる気持ちも分からないわけではない。一方、個人的な立場から述べれば、あのような報道の際には、數土さんが経営委員長を務めた間に、どのような業績があったのか、またなかったのかをきちんと評価することも必要ではないかと感じた。

質疑応答

Q: 明日にも野田首相と小沢元民主党代表との会談が持たれる。改めて期待することを伺いたい。

長谷川: 党内の事情として(会談が)必要であると、党代表でもある首相が判断されたと理解している。(結果は)実際にやってみないと分からないにせよ、「乾坤一擲」「反対」とそれぞれの立場を表明している方同士なので、簡単に意見を変えるとは考えにくい。その中で、党代表として必要なプロセスと判断されたのであれば、粛々と実施する必要があることは理解する。それ以降は、先述の通り、党内論議で熟議を尽くした上で党として判断を下したことなので、(社会保障・税一体改革を)粛々と進められることを期待する。

Q: 原発再稼動に関連して、経済産業省が2030年時点の電源構成比(案)を提示した。提示された4案のうち、経済界にとってどれが最適と考えるか。

長谷川: 経済同友会としての公式見解は「縮原発」であるが、2030年時点で原発による発電量の比率はどの程度が適切かについてコメントする立場にはない。ただし、縮原発という限りは、福島第一原発事故以前の30%を維持することは難しいと考えるし、ましてやさらに増やすことも非現実的と感じる。一方、どこまで減らせるかについては、7月1日より再生可能エネルギーの固定価格買取制度が開始され、どれだけ効率的なものがどれだけの量供給されるか、技術の進展を見ないと分からない。2030年はこれから20年弱になるが、今の時代の技術進歩は目覚しいものがある。現在1%しかない水力を除く再生可能エネルギー(風力・太陽光)が、コスト競争力がある形で10%を超えることが実現できれば、原発の比率も下がる。そうでなければ、(原発を)ある程度維持していかざるを得ない。今の段階では、感覚的に、どの程度の比率が良いとか、4案のうちのどれが良いなどとは言い難い。

Q: 数値目標を設けずに市場に任せるという考え方も提示されているが、それについて所感を伺いたい。

長谷川: ある意味、実態はそれに近いと思うが、恐らくその辺りを苦労して出された案だと思う。元々、政府としては、いくつかのベストミックスの案を出して民意を問うと言っていた。いくつかの選択肢を提供し、国民の反応と実態を見ながら最終的に絞り込んでいくプロセスを取りたいという意向も働いているだろう。ただ、最終的に市場に任せるわけにはなかなかいかないのではないか。再生可能エネルギーのコストや競争力、そして総合的に日本のような再生可能エネルギーの条件が必ずしも最適とは言えない国土の中で、どの程度できるかを考慮しなくてはいけない。また、再生可能エネルギーの中で、若干話題にはなっているもののあまり注目されていない地熱発電といった、世界でトップ5程度に入るようなエネルギー源があるので、それらもしっかりと検討した上で最終的な方向を考えることが必要だろう。

Q: 原発再稼動について、期待はかねがねあると思うが、大飯原発の2基の再稼動には普通に考えても6週間かかる。今(再稼動の)判断をしても、万全を期しての再稼動など現状を考えれば(夏には)既に間に合わないのではないか。

長谷川: 経営者として、(シフト調整や投資など節電対応が)可能な企業については、最悪の事態に備えることは当然考えておかなければならない。それとは違った立場で、政府として、首相を含めた関係閣僚が協議し、再稼動が可能であると判断されたのであれば、きちんと説得をして、粛々と実現する必要がある。それが滞ったり、いたずらに時間が過ぎてしまうことは大変好ましくない。また、「間に合わない」という考えは確かにあるが、それは二義的な問題だと認識している。夏の暑さが本格的に始まる梅雨明けには間に合わないとしても、例えば、7月の終わりに稼働すれば、8月あるいは9月初旬の分だけでも目途がつき、本来であれば(必要な節電が)2ヶ月分と思っていたものが1ヶ月分になり、それはそれで企業として、対応やシフトの仕方もある。そういった意味でも、政府が判断されたものについては、粛々と実現していただきたい。それ以外については、原子力規制庁あるいは(野党が提案している)三条委員会の設立を待って、そこが担保したものを再稼動していく、という考え方もある。(大飯については、)それ以前の問題として決めたので、そこは政府の責任として行う必要があるのではないか。

Q: 地元の福井県は法的根拠があるが、滋賀県や京都府、大阪府については、政府が批判を恐れて尻込みしているように見える。これについてはどうか。

長谷川: 自治体の長から反対の狼煙が上がれば、(それに対して)きちんと説明や説得をした上で再稼働という形にもっていかないと、無視をして押し切れるという状況にはないと思う。国民全体がセンシティブになっている問題について、完全に全員が納得することは難しいにしても、少なくとも周辺の自治体の長が懸念を表明していることについては、「こうであるから大丈夫」「国がきちんと責任を持つ」という形で、渋々であれ納得をしてもらうというプロセスが、やはり今の段階では必要であろう。

Q: 數土文夫NHK経営委員会委員長について言及があったが、數土さんのNHKでの業績をどう見ているか。

長谷川: 數土さんの経営委員長としての業績や実態を詳細に承知しているわけではないが、仄聞するところでは、相当改革のメスを入れ、(今後の)方向性を出されたと聞いている。ご本人が「(改革の)方向は定まったので自身が去っても後顧の憂いはない」と述べられているが、今後その言葉が現実になることを期待する。

Q: 辞任は残念、もう少し続けてほしかったと考えるか。

長谷川: 何とも曰く言い難しである。ご本人が最終的に判断された問題について、個人的な感想としてはご本人の判断を尊重するということに尽きる。

Q: NHKの経営委員長を辞めれば、東京電力の会長になっても良いように思うが。

長谷川: ご本人は会長を固辞されたと認識している。

Q: 今朝、安住淳財務相の閣議後会見で、6月1日より円と人民元の直接取引が開始されるとの発表があった。これに期待するところを伺いたい。

長谷川: そういった形で中国との関係が一歩前進していくことは好ましい。実務的にも、直接取引が不可能であれば仲介が必要で、そこに必ず手数料が発生するという問題もあるので、元の調達を必要とする企業などにとって多少なりともコスト削減になることは好ましい方向である。

Q: これによって貿易の拡大も期待できるか。

長谷川: プラスにはなるだろうが、あまり顕著なプラスになるとは考えていない。

Q: 芸能人の母親が生活保護を受給していた問題について、所感を伺いたい。

長谷川: 生活保護担当の窓口の方と(受給の)相談をしていたとのことだが、もう少し国民全体が自己責任ということを考える必要があると思う。報道のみで事実や詳細は一切分からないが、国民の平均年収が400万円程度という時代に、1,000万円程度の収入があれば、生活保護を辞退して何とかするというのが普通の感覚であろう。やはり自己責任(が原則で)、本当に困っている時、あるいは本当の弱者の方に救済の手を差し伸べることが社会保障の基本理念であるので、一社会人として(生活保護の辞退を)判断するべきだったのではないかと思う。

Q: ギリシャの(ユーロ)離脱が現実味を帯びているような論調が多く、スペインの銀行にも波及している。その辺りの情勢や日本企業への影響をどう考えるか。また、今日、失業率が発表され、これまでの改善基調から一服して生産の動きがやや鈍っているとの観測も出ているようだが、所見を伺いたい。

長谷川: 設備投資は前四半期の反動もあって少し落ち込んだようだが、景気全体の見通しとしては少し力強さが出てきたのではないか。復興特需による部分もかなりあるため、全国的に押し並べて波及しているかについては、もう少し慎重に見る必要がある。

ギリシャの問題は、国民のアンケートでは70%以上がユーロに留まるべきと判断している。それを考えれば、ユーロ離脱も辞さず、緊縮財政はやらないとしている前回選挙で第二党だった政党が、連立であれ過半数を取って緊縮財政を完全に放棄してしまい、それをユーロの他の国々がよしとせずに、最終的に離脱に追い込まれるというシナリオは、ないとはいえないが、かなり非現実的だと思う。国民が事態の深刻さを理解し、70%以上が(離脱)反対というのであれば、少なくともロシアンルーレットのようなギャンブル的な選挙の結果は出ないと想像している。自分達が抜けたら困るだろうから何とかしてくれるだろう、というのがロシアンルーレットと述べた趣旨だ。一方、ドイツとフランスの間、あるいはドイツ・北欧連合とそれ以外という形で、必ずしも意見が一致していない問題に、ユーロ共同債や競争力強化、経済成長がある。コンセプトは両方包含した形だが、具体的な形を見た上で、ユーロ・ゾーンの政策という名目の下に、ギリシャの緊縮財政と同時にギリシャ自身も(経済)成長できる方策が出てくる可能性は無きにしも非ずである。ユーロ・ゾーンからの離脱は、マーケットも既に予測している通り、現実的にはほぼないと思う。ドラクマがユーロに入った時の5分の1程度の交換比率で仮想マーケットができつつあると聞くし、それはギリシャの人も知っているはずでる。ギリシャでユーロの預金をどんどん引き下ろしているにしても、それは短期的な対策であって、中長期的には(ギリシャのユーロ離脱は)現実的なシナリオとしてはないと思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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