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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年05月15日(火)13:30~
出席者 長谷川 閑史 代表幹事
前原 金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)累積債務問題と社会保障・税一体改革、(2)今夏の電力需給と東京電力の社外取締役人事、(3)日中韓FTAとTPP、についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)東京電力の社外取締役人事、(2)就職内定率の改善、(3)若者雇用戦略、(4)今夏の電力需給と節電、(5)ソニーとパナソニックの有機ELテレビ事業での提携交渉、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

一点目は、累積債務問題について、(公的債務残高が)昨年度末で960兆円、今年度末には1,000兆円を超えると予想されている。貿易収支もマイナスになり、経常収支も前年度から半減の約7兆9,000億円になった。今後、経常収支は、昨年度ほど酷くはないものの、当面は化石燃料の輸入額が20兆円を超える傾向が続くであろう。そういった状況の中で、野田首相が政治生命をかけると発言されている社会保障・税一体改革については、どうしてもやっていただきたいし、国家にとっても必要な政治的課題だと考えている。一方で、経済が成長しない限り、成長しないパイの中で切り口を分け合ったところで将来展望は開けない。特に、今年度から本格的に団塊世代が年金受給者になり、(65歳を迎える年齢の人口が)130万人程度から(最大)230万人程度に増えると聞いている。大まかに考えても、一人平均160万円程度の年金や医療費等のコスト、組合健康保険から(退職によって)国民健康保険に移ることなどを考えると、(増分の)100万人だけで2兆円程度の原資が必要になると考えられる。1990年代の初めから経済はほとんど成長していないのに、社会保障関係費が2.3倍に増えており、それがさらに加速する状況では、待ったなしに社会保障・税一体改革と同時に成長戦略を実現し、名目成長率3%・実質成長率2%・インフレ率1%を絶対に実現していかなければならない。国家戦略会議に議員の一人として参加しているが、私の力不足もあり、部分的な議論になりがちで、全体の成長戦略や歳出削減・歳入増をどうするか(という議論にならない。)また、(各々の議論が)どのテーマに属しているのかが分からず、全体との関連付けができないまま議論している。こういった隔靴掻痒の感があり、大きな全体像を見ながらの政策決定や国家戦略会議での提言ができていないことをもどかしく感じている。また、成長戦略と同時に、例えば歳出削減であれば、政治・行政改革や社会保障改革などの制度改革もやらなくてはいけないし、地方への権限・税源の移譲等を進めて(地方の)自主性に任せることも含めた規制・制度改革をやらなければいけない。歳入増については、税制改革だけでなく、国有財産の処分や郵政改革などを徹底的にやってほしい。郵政改革では(郵政民営化改正)法案が通ったが、当面は国家が(株式の)3分の1を保有するにしても、(残りの)3分の2はいつ頃売却されるのか、それによって少なくとも5~6兆円の一時的な国庫収入が見込まれる。

二点目は、今夏の電力需給問題について、既にエネルギー・環境会議の資料が出ているが、関西電力(管内)の見通しが一番厳しい。特に、大飯原発の再稼動の目途がつかなければ、今のエネルギー・環境会議の予想では、通常の年であっても15%程度、加えて予備率3%と見れば18%の電力不足になる。2010年のように猛暑であれば、さらに3~4%増えると言われている。そのような中で、節電については、各地域における節電の数値目標として、関西であれば15~20%、九州では10~12%、北海道では7%程度と出されており、関西電力管内では場合によって電力使用制限令も検討されている。それをできるだけ避けるために、少しでも余裕のある中部・中国・四国地方に節電を要請し、余剰電力を関西電力管内に融通することで、節電要請の割合を下げるというのが政府の考えのようだ。やむを得ない事情はあるにしても、できるだけ早く(電力需給の)見通しを出してもらわないと、事業運営をする立場の者にとっては、事業計画が立てられないし、できることにも限界がある。政府が最終的に出した要請を受けてどのように対応するかを限られた時間の中で考えざるを得ず、大変厳しい状況となりつつある。エネルギー・環境会議では今週中に最終結論を出すとのことなので、企業としても考えなければいけない。また、直接は関係しないが、昨日、東京電力の役員人事が発表され、11人の取締役のうち過半の7名が社外取締役となり、そのうち3名が経済界から選ばれた。たまたま副代表幹事を経験した方、あるいは現職の副代表幹事が選ばれたが、経済同友会は経営者個人の集まりの団体であり、組織として要請するようなことはない。私の知るところでは、それぞれの方に下河辺次期会長が直接コンタクトをされ、本人が熟慮の上で判断したと聞いている。(3名の)中では私に意見を求めた方もおり、私としては、現役の経営者と経済同友会の仕事に加え、非常勤の社外取締役とはいえ、大変な困難が予想される立場であるが、もし可能であれば引き受けてもらえるとありがたいと話した。

最後に、(5月13~14日に北京にて)日中韓の首脳会談が開催され、日中韓FTAについて年内の交渉開始が合意されたと報じられている。そのこと自体は喜ばしいことである。一方で、それ以前から、正式な交渉参加という形ではないものの、実質上交渉が行われているTPPについて、残念ながら4月30日の日米首脳会談では(野田)首相の(交渉参加の)表明はなかった。次は今月中旬のG8首脳会議、さらには6月にメキシコで開催されるG20首脳会議という(交渉参加を表明できる)機会がある。首相なりの考えや政治の状況があるにしても、態度表明は早いに越したことはないので、首相として決断し、しかるべき時期に表明されることを期待したい。

質疑応答

Q: 東京電力の社外取締役人事について、政府から長谷川代表幹事に推薦等の要請はあったのか。

長谷川: 正式な要請とは受けとっていない。

Q: (正式でなくても)話はあったのか。

長谷川: 以心伝心(の部分もあり)推測に任せる。

Q: 正式要請はなく以心伝心とのことだが、その時期はいつ頃だったか。

長谷川: 推測に任せる。(政界と経済界の間では)いろいろな形で、与党、野党、前連立与党の皆さんなどと食事会等があり、私も他の経営者も参加している。そのような中でできている日頃の関係も働いたのではないか。

Q: 日本経団連の米倉会長は、(政府から)人を出して欲しいということで動いたが時間的制約があって(難しかった)と発言している。結果として、(経済界からの)3人ともが経済同友会人脈となったが、感想を伺いたい。

長谷川: 基本的には、どういう仕事であれ人物本位、求められている職務に合う人物であることが第一義であろう。経済同友会代表幹事としては、経済団体がこぞって支援をするという形ができればそれに越したことはなかったと感じているが、他団体のことでもあり、コメントする立場にはない。

Q: 今後、(東京電力は)委員会等設置会社で社外取締役が過半を占めることになる。日本では、社外取締役がまだあまりうまく機能していないと聞くが、今後の東京電力の経営体制について、懸念や期待を伺いたい。

長谷川: 全ては取締役会にどういう意識をもって臨むか、特に、会長あるいは執行の責任者である社長がどういう意識をもって臨むかによって決まる。質問の意図には、オリンパスのように社外取締役がいてもうまく機能しなかったということもあると思う。どのような(経営の)形を整えようと、執行の責任者あるいは取締役会の最高責任者が意図的に何かを曲げようとすれば、それを社外取締役という機能で完全に防ぐことは極めて難しい。しかし、今回の東京電力の場合は全く別であり、そのような予断を持つこと自体が好ましくないと思っている。社外取締役過半、委員会等設置会社という東京電力にとって全く新しいガバナンス体制となり、戸惑うことも多いだろうが、うまく機能することを心から望んで止まない。

Q: 東京電力の社外取締役に藤森氏が就任した。米ゼネラル・エレクトリック(GE)出身で、適切かどうかという報道もあるが、GE出身の藤森氏が就任したことについて所感を伺いたい。

長谷川: そのような報道を見て、このような見方もあるのだなと思った。(報道では)福島第一原発の1号機(原子炉)がGE社製と書かれていたが、製造されたのは40数年前で、藤森氏がGEに就職もしていない時期の話である。そのようなことまで根掘り葉掘り言い出して、資格要件を疑うようなことになると、ますますいろいろな選択肢を狭めてしまうし、それが藤森氏の適格性に疑義を挟むようなことにはつながらないと判断している。

Q: 3月に卒業した大学生の就職内定率が、少し改善され(前年同期比2.6ポイント増の)93.6%(4月1日現在)となったが、所感を伺いたい。

長谷川: (就職)内定率が上がったことは、昨年と比べて少しではあるが、大変良かった。採用する企業の立場からすれば、将来に対する展望が若干明るさを増したことも作用しているだろう。しかし、本質的な問題として、大学を出て就職を求める新卒の学生(の応募)が大企業に集中するという傾向がある。前原副代表幹事・専務理事が委員長を務めた新卒採用問題プロジェクト・チームの提言でも述べたが、わずか数百名から千名程度の募集に十万人を超える応募があるなど極端な状況もあるので、就職活動開始時期の変更を契機に、採用する側も配慮が必要であるし、応募する側も少し冷静に判断をするなど、互いに考え直すべきだろう。インターネットでの応募は簡単ではあるが、百社もエントリーした結果全てダメだったというような、少し配慮に欠く表現になるかもしれないが、そういった無駄は排除し、互いにどういうところで働きたい、どういう人に来て欲しい、ということを冷静に考え、対応することが少しでも進めばよいと思う。

前原: 大変大きなミスマッチが起きている。静岡や香川など、地方の経済界と学界が一緒にミスマッチを解消するという動きも出てきており、着々と成果を上げているところもある。このような動きが全国で広まれば、大都市の大企業への(学生の応募の)集中が減っていくのではないかと思っている。

Q: 今日、厚生労働省が若年雇用の戦略の骨子を発表するようだ。キャリアアップ支援について、産官学で実践的な職業教育としてインターンシップを充実させるという案も入っているようだが、経済界として、若年雇用を増やすためにどういったことをしていくべきとお考えか。

長谷川: インターンシップについては、先述の新卒採用問題PTの提言でも触れている。経済界の中で意見が一致しているわけではないが、経済同友会としては、インターンシップによって、学生は企業で行われている業務を実際に経験して学ぶ機会が持てるし、企業は、必ずしも採用を見極めるツールにするものではないが、学生を肌感覚で知ることができ、結果として採用に結びつくという形があってもよいと思う。就職協定の抜け道であるかのごとくだけ考えて制限をするのは、柔軟性に欠けるのではないか。海外留学生や海外からの国内留学生、また海外の大学で採用している学生は範疇に入っておらず、(国内の)新卒学生だけを対象としているのは、実態にそぐわなくなってきている。ハローワーク(の出先機関)を大学内に設けて就職指導等を行うことも否定はしないが、学生も教員も、自分たちは何のために勉強しているのか、企業がどういう技能や知識を持った人材を求めているのかをよく考え、その期待に応えられる状態で就職活動を始められるよう自らを持っていく努力もしていただく必要があると思う。

前原: インターンシップを採用につなげてはいけないという制限は、かつて(あった)大企業が(先に)良い人材を採用してしまうということからできたと思うが、もう通用しない時代になっている。大半の学生にとっては、インターンシップで良い出会いがあれば就職が決まるというのが望ましい時代になっている。特に、中堅・中小企業や地方の企業は、もっとインターンシップを活用して良い人材を採っていけばよい。地方の企業で留学生を採用したいケースもあるので、マッチングの意味でも活用できるのではないか。

Q: 政府では、関西電力には電力使用制限令の発動を検討し、関西・北海道・九州・四国の四電力会社には計画停電の準備を求めることを考えているようだ。(実現すると)経済に非常に大きなダメージを与えると思うが、どのように受け止めているか。

長谷川: 冒頭に述べたように、今週中にエネルギー・環境会議で結論を出すということなので、最終結論を待ちたい。ただし、関西電力(管内)は、原発依存率が高かっただけに極端な状況であり、相当な覚悟を持って節電の要請をする、あるいは企業もそれに応えるべく協力をしなくてはいけないし、場合によっては(電力)使用制限令もやむを得ない場合もあると思う。その他の(地域での)計画停電等については、昨年の(東京電力管内の)惨憺たる結果を見れば、そういう状況のない形(が望ましい。)(その他の地域の節電要請の割合は)昨年東京電力等(の管内)で達成した実績のある範囲内であると考えているので、政府側の節電要請に需要側が応えるのが一番望ましいのではないか。

Q: 四社以外の東京電力管内等でも節電要請を受け、同時に他の電力会社に電力を供給するとなると、節電ドミノのような状態が起きる。結果的に電力を融通すればそこの電力が減る、また高い電力を買わなければいけなくなるということが起きる。回復が見込まれる経済に対して影響を与えるのではないかと思われるが、これについてはいかがお考えか。

長谷川: (電力供給を受ける)需要者、特に産業側としては、このような状況が好ましいとは決して思っていないが、原発50基がすべて稼働を停止し、必ずしもその再開の見通しが立たない中で夏を迎えることになる可能性が一日一日高まっている状況である。もちろん声を大にして改善への要求は続けるが、自分たちでコントロールできないものについて、結果が想定できることは常にそれにどう対応するかを考えるのが経営者の務めである。好ましくはないが、これを受けて何とか生き延びていかなければいけないのも現実問題である。(国内の産業)空洞化という問題もあるが、急に海外に生産を移転することもできない。例えば自社(武田薬品工業)の場合は、関西(電力管内)の工場(で製造しているもの)の一部を例えば中国電力管内の工場に移管するなどの範囲で考える。また、土日に稼動して平日に休む、お盆の休みを増やして10~11月の休日に働く、また既に5月の連休は稼動して備蓄生産をしているなど、すべてを動員して対応するということに尽きる。

Q: 海外移転はすぐにはできないということだが、長期的に見ると、電力が不安定な中で、経営者として海外移転は視野に入ってくると思う。経済界が素直に言うことを聞いてばかりいると、政府に危機感が伝わらず、すぐに(電力使用)制限令といった話が出てくるのではないか。政府に(企業の現状が)届いていない危機感はあるか。

長谷川: 事業経営をしたことのない政治家が多いので、切迫感や危機感が十分に肌感覚で理解できない部分もあるかもしれないし、産業界から政府への危機感の伝達が必ずしも十分でない部分もあるかもしれない。少し引いて見れば、今の状況の中では、どこかで突破口を作らなければならないものの、原発の再稼動は極めて難しい。再生可能エネルギーや火力発電を増やすにしても、できる限りのことは既に対応しているとすれば、これ以上無い袖は振れない。こうした中で一方的に政府を責めてもせんないことで、物分りが良すぎて政府の危機感を鈍らせているのではないかという指摘は、ニワトリが先か卵が先かの関係に似ている。最後はお互いがこの国のために良かれと思ってやっている現状について、あまり非生産的な非難合戦をしても何も生まれない。日本人であれば、できる範囲で、必死に歯をくいしばって耐えるしかない。

Q: 個社のことは答えにくいと思うので、一般論として伺いたい。ソニーとパナソニックが有機ELテレビ事業で提携交渉に入ったとの報道があった。かつてライバルと言われた2社がこのような形で提携せざるを得ない状況になっていることについて、所感を伺いたい。

長谷川: 企業の合併となると、各企業の事情もあってなかなか難しいだろうが、技術やビジネスユニットなど協力できる範囲で協力して、対外国際競争力をより高めた形で、真の競争マーケットである海外で勝負する体制を整えることは、大いに結構ではないか。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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