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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年02月28日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)日銀の金融緩和の強化、(2)米オバマ政権による法人税改革案、(3)FTA/EPA・TPPなど経済連携・貿易自由化、についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)エルピーダの会社更生法申請、(2)AIJ投資顧問の年金消失問題、(3)新卒学生の採用活動時期、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、2月14日に日銀が発表した金融緩和の強化について述べる。政府と阿吽の呼吸で実施され、結果としてタイミングも良かったためか、発表以降、円安・株高に振れていることは歓迎したい。(円安・株高の)背景としては、アメリカの景気回復傾向が見えつつあること、欧州におけるギリシャ危機が当面は回避される目途がついたこと、中国では景気減速が言われているもののインフレ懸念がある程度収まりつつある中で金融緩和の実施がさらなる景気刺激につながるであろうこと、さらに、日本の貿易赤字がもしかすると定着傾向にあるかもしれない(という市場の思惑)、などの要因が相まっているのではないかと考えられる。一方で、米Fed(米連邦準備制度理事会)も、QE3(量的緩和)は未定だが2014年まで現在の金融緩和(ゼロ金利)を続けると述べており、物価についても、ターゲットとは言わないがゴールという形で見通しを述べている。日銀もそれに併せてアンダースタンディング(「(中長期的な物価安定の)理解」)からゴール「(中長期的な物価安定の)目途」」に表現を変えており、これらのタイミングが大きく影響したのではないかと思う。また、(日銀の)目標は「2%以下のプラスのインフレを目指すが、当面は1%目途」ということであり、さらには主として長期国債の購入を対象とした資産買入等の基金の55兆円から65兆円への増額といった施策のタイミングが結果として良く、効果が出たことを歓迎したい。

次に、2月22日にオバマ大統領が、法人税・事業税等を含めたビジネス・タックスの改革の枠組みを発表した。(現在35%の連邦政府の法人税率を)28%まで下げると日本では報道されているが、この改革案“The President’s Framework for Business Tax Reform”を見ると、諸外国の表面税率および実効税率が明示されており、アメリカでは表面税率は39.2%であるが、実効税率は既に29.2%と書かれている。日本とアメリカが法人税率40%前後と先進国で最も高いと言われているが、実際に製薬業界では(両国間の)実効税率に15%程度の差があるとこれまでも主張してきた。一方で、日本は、表面税率39.5%、実効税率42.9%と書かれており、これ(実効税率)は一時的な現象ではないかと思う。この改革案では、税の抜け道を見直すことで、現在29.2%(の実効税率)を28%にすると同時に、製造業は25%以下にするなど、産業ごとや中小企業に対する税制を変えるなど産業力強化に注力して改革する案が書かれている。実施のタイミングは書かれておらず、おそらく今のアメリカの政局を考えると、オバマ大統領が再選されない限り実行はされないと考える。日本でも法人実効税率を下げていただきたいとこれまでも再三述べてきた。一度は政府も合意したが、震災復興のため3年間の実施延期となり、ますます日本がこういった(法人税制)面でもガラパゴス化していることが改めて確認されたと言っても間違いではないだろう。

最後に、貿易自由化や経済連携に関するEPA/FTA・TPPについて述べる。経済同友会の(本件についての)カナダにおけるカウンターパートであるCCCE(Canadian Council of Chief Executives: カナダ経営者評議会)からカナダ大使を通じて働きかけがあり、本日、TPPと同時に二国間の経済連携協定(EPA)についても進めていくべきとの共同声明を発表する。最近はTPPの話題があまり表面化せず、「アメリカは医療制度の抜本的な改革は求めていない」「軽自動車の特別の取り扱いを求めてくると思われていたが求めてこない」などの報道が散見されるが、政府が具体的に発表する状況には至っていないと理解している。一方で、二国間での交渉も進んでおり、例えばオーストラリアとの二国間EPA締結交渉など、どうも議論がちぐはぐな感じがして懸念している。TPPについては、政府が内閣府に一本化して交渉すると認識しているが、二国間交渉については外務省が窓口となって各省庁が実施しているようだ。特に、TPPでも最大の課題となるであろう農業問題について、オーストラリアとの協議は全く進展していないと聞いている。政府としても、TPPを本気で進めるならば、オーストラリアもTPPの参加国であるので、TPPという9カ国・グループの部分と二国間の部分との平仄を合わせて取り組むべきであり、国家戦略会議でも要請していきたい。

質疑応答

Q: エルピーダの会社更生法申請に関連して、半導体の供給源として、今後、取引先企業やグローバルおよび日本のサプライチェーンに与える影響をどのように考えるか。

長谷川: (今回の会社更生法申請とは)裏腹の関係にあるが、それだけ供給競争が激しいということである。日本にとっては極めて残念ではあるが、エルピーダが会社更生法適用になったとして、最終的にどこがどのような形で救済をするか、政府は、民間は民間で、と述べられているようであるし、(救済が)あるとしてもそういう方向になるだろう。しかし、その間の供給が途絶えるとか、それによって大きな問題になることはあまりないのではないかと理解している。

Q: エルピーダの今後の再建の見通しについて、所感を伺いたい。

長谷川: DRAMを中心とした製造に、より大規模かつより低コストで既に関わっているところが、エルピーダの能力や顧客に価値を見出して組むような形が望ましいのではないか。

Q: エルピーダについて、一言で言えば残念であり、環境等で仕方がなかったのかもしれないが、厳しい言い方をすれば、政投銀が出資する形で公的資金が入っており、280億円程度が国民負担になるのではないかと言われている。政府の支援のあり方や国民負担が発生することについて、所感を伺いたい。

長谷川: 藤村官房長官が、いみじくも(今日の会見で)当時の政府の資金投入の判断は間違っていなかったと発言されている。各社のDRAMを中心とした半導体の製造について、ナショナル・チャンピオンをつくり、世界の競合と戦える体制をつくろうということで、それを政府も後押しした。結果としてこうなったことについて、事業なので失敗があってはいけないにしても、だからと言って今ここで政府の責任を問うことは、少し無理があるのではないかと感じる。

Q: エルピーダに関連して、複数の大手電機企業の不振に陥った部門、例えば半導体や携帯電話などを集約して立て直そうとするが、米アップルや韓国サムスン、あるいは別の新興国のメーカーとの競争もあって難しい状況である。集約型(立て直し)の良し悪しについて所感を伺いたい。

長谷川: 先般も(東芝、日立製作所、ソニーの子会社が)液晶パネル事業を産業革新機構が中心となり集約していくことが具体化された。国内の産業としては、競争力が劣化した分野について、資産を集約して競争力を高める試みはなされて然るべきだと思うが、一方で、今回の(エルピーダの)結果を踏まえて、中長期で見て事業を集約するやり方が本当に競争力強化と事業の継続に繋がるのか、もう一度厳しい目で見直し、慎重に判断する必要がある。その上で、事業集約を選択するのか、事業をシャットダウンするのか、あるいはナショナル・チャンピオンができないのであればグローバルに強い企業と共同して進めるのか、このような選択肢を慎重に問い直すための教訓にする必要があると思う。

Q: AIJ投資顧問で、2,000億円程度の運用資金が消滅した。企業年金を任せる企業の立場からは由々しき問題だと思うが、これについて所感を伺いたい。

長谷川: そもそも(年金運用を受託する)会社が登録制で開業できることに対して、第三者による会計監査も義務付けられていない。報道から理解している範囲では、(今回の問題は)第三者からの通報があり、証券取引等監視委員会が査察に入った結果明らかになったようだ。いくら登録制とはいえ、本来であれば、受託者としての責任が担保される形を、規制当局としても明確にする必要がある。通報があって、調べて(今回のような)結果になるのは極めて遺憾である。特に、AIJに資金運用を委託していたのは中小企業が多いと理解しているが、自社に資金運用や投資のノウハウがない企業が、相対的に見れば運用利率の高いところに委託し、それがこのような結果になったことは極めて遺憾である。(金融庁は)全投資顧問会社を監査するようであるが、少なくともそういう事業を行っているところには、安心して運用を委託できる形を、規制当局として担保されることを強く望む。

前原: 規制が厳しい時代に厚生年金(基金運用)を受託していた立場であるが、このようなことはあってはならないと考えている。本件は、受託者側の倫理観に大きな問題があり、法的整備も必要になるのではないか。現状は、結果的に社会的コストを高くしてしまっており、問題である。また、委託者側には善管注意義務があるが、現実には(委託者側の)運用担当者が必ずしも運用のプロでないことにも問題がある。さらに、厚生年金基金の場合、仕組みの問題がある。(一つは、企業側の)予定利率が高いまま修正できていないことで逆ザヤになり、資産は放っておいても劣化する。加えて、複数企業が集まっている(厚生年金)基金は、日本全体でもそうだが、衰退の局面を迎えるとどんどん(基金から)抜けていき、資産を払い戻すために劣化していく。この二つの面での構造的な問題があり、これらを含めて解決する必要がある。なお、今回の問題は、格付投資情報センターが2009年の顧客向けニュースレターで既に指摘していたようだ。

Q: AIJ投資顧問の年金消失問題について、2009年に(格付投資情報センターが発行した)ニュースレターで(「不自然な安定配当」をする会社として)取り上げられるが、その前年には顧客満足度1位になっている。当時、企業で年金を運用する担当者はプロフェッショナルではない上に、全く違う情報が出てきてかなり混乱したと認識している。一方で、金融庁は五味長官の時代にできるだけ事後(監視型)行政に移し、あまり(事前)規制はかけないという方針に舵を切った結果という見方もある。今後、企業の年金(運用)と行政や投資顧問などのあり方はどういうあるべきと考えるか。

長谷川: 金利が高く、運用実績が良いので顧客満足度が高くなるのは当然であるが、それは虚偽であった。登録制までを見直すかは別として、他人のお金を預かって資産運用し、リターンをもたらす組織なので、虚偽の報告で委託者を欺くことが絶対にできないようチェックし、規制する必要がある。その第一歩は、第三者の会計監査あるいは運用監査をしっかり行い、レポートとして発表することであり、それは当然かつ必要なことと思う。少し偏見を持って言えば、ケイマン諸島を通じて運用していたこと自体、今の世間常識からすればあまり信頼性が高いとは言えない。

前原: 情報公開を求め、チェックすることは絶対に必要である。今回の(AIJの)運用はブラックボックスになっていた。しかも、当初からAIJは運用のプロとは言い難い方々が運用しており、日経平均などのオプションを売却してプレミアムを稼ぐという単純(で危険)な手法を繰り返していた。最初から損が出ていたのに、自転車操業をしていたというのが実態のようだ。しっかりと情報公開をさせ、委託側も(きちんと確認する)努力が必要ではないかと思う。

Q: ケイマン諸島との情報のやり取りなども、ハードルは高いだろうが、国として取り組んだ方が良いと考えるか。

前原: そうだろう。ただ、(金融庁による)検査が殆どされていないことも問題かもしれない。投資顧問会社は金融庁の検査対象だが、年に15社しか実施されていない。通常、保険会社や信託銀行等は頻繁に検査を受けており、それによって担保されている面もある。投資顧問会社については、(検査の頻度が)ゆるく、認可もゆるいところに問題があったのかもしれず、特に年金運用は社会的責任も重いので、考え直すべき時期ではないか。

長谷川: ケイマンの問題は、もちろん要求はしなければならないだろうが、指摘の通りハードルが高い。まずは国内で、運用実績について第三者による監査を受けた上で常に公表させるなどの対応をすべきだろう。

Q: 先日発表した新卒採用に関する提言に関連して、昨日、日本経団連の米倉会長は、現行の採用活動時期の設定を見直す必要はないとコメントした。経団連と経済同友会の意見に隔たりがあるようだが、今後どのように理解を求め、調整していくのか。

前原: 2月23日に(提言を)発表した直後に、就職問題懇談会座長の濵口名古屋大学学長から意見書が提出された。これによると、まさに経済同友会の提言に賛成するとのことであった。意見書に参加しているのは、国立大学協会、公立大学協会、日本私立大学団体連合会、全国公立短期大学協会、日本私立短期大学協会、国立高等専門学校機構、全国公立高等専門学校協会、日本私立高等専門学校協会である。ほぼすべての学校が網羅されており、(実現に向けて)努力したい。

長谷川: 大学側がそのように要望しており、せめて3年生までは勉学に集中させたいとの趣旨は理解できるので、提言で採用活動時期を設定した。先日、日本貿易会の槍田会長が発表した提言に関しても話し合いを持ち、日本貿易会のみならず色々な業界団体で賛同し実行できるところからでも実行していこうという形で取り組んでいる。日本経団連と対峙をするつもりはないが、それぞれの企業なり団体なりができることからやっていくことで、学校側の要望に応えていくことを粘り強く進めていきたい。実際に、日本の大学の新卒採用については活動時期が定められているが、留学生や日本人で海外に留学している学生、あるいは海外の大学の卒業生については、通年採用になっているので、そこ(日本の大学生)だけを一斉に大学3年の途中から採用活動しなければ良い人が採用できないと考えること自体が、今の時代からすれば、必ずしも実態にそぐわないという認識を持っている。そうであれば、実際の活動は4年(生)になってからで問題ないのではないか。

Q: 代表幹事の会社でも、来年度から今回の提言のスケジュールで実施するのか。

長谷川: そうである。所属する製薬協(日本製薬工業協会)で(採用活動時期について)申し合わせをしている。

Q: 日本経団連の倫理憲章とは別の動きで行っているということか。

長谷川: そういうことになっている。

前原: (採用活動時期を)早めると問題だが、遅らせる分には良い(問題ない)。

長谷川: 学生の立場からすると、活動期間が限られると(気持ちが)焦ったり、従来のように機会が均等でないなど、いろいろとあるだろう。しかし、少しそういう状況に(活動期間が短く)なれば、(就職希望先に)優先順位をつけ、慎重に選択をして、ターゲットを定めることを考えるだろうし、必ずしも、学生が不利になるとは考えていない。万一、そのような(不利になる)ことがあれば、(実態を)フィードバックしてもらい、そういうことがないように、企業側でも対応していかなければならない。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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