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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年02月14日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)東京電力への政府出資・議決権の保有、(2)復興庁発足、(3)2011年度第3四半期速報の実質GDPマイナス、についてコメントを述べた後、前原金一副代表幹事・専務理事より「IPPO IPPO NIPPON」プロジェクトについて活動報告があった。その後、記者の質問に答える形で、(1)東電への政府出資・議決権の保有、(2)社会保障・税一体改革、(3)金融政策、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、東電への公的資本注入に伴う議決権の保有について、政府による出資は、結局、国民の税金を使うことであるから、当然、政府および東電には、国民が納得できるような説明責任があると考える。今の段階で説明責任が果たされているとは言い難く、経済産業大臣としてそれ(説明責任)が担保されるまで決定権の保持を主張することは理解できる。3月末までに原子力損害賠償支援機構と東電がまとめる予定である「総合特別事業計画」で、その内容にどこまでの幅が定められているかは定かではないが、狭義では事故賠償および廃炉費用等、広義では発送電分離や販売などへの社内カンパニー制度導入による事業再編や系列(会社)に偏る高コスト調達の見直しなど様々なことが考えられる。枝野経産相もコメントしていたが、これらが国民の目から見て納得できる形で説明されるかどうかを見守りたい。また、現在、国会で論議されている社会保障・税一体改革で言われている「国民に痛みを求めるなら、まず国会議員として自ら身を切ることを実行すべき」という国民感情(の議論)と同様に、顧客に値上げを要請するならば、まず自らできるリストラや資産売却を徹底的に実現した上で、値上げやむなしとする理由を丁寧に説明し、理解を求める努力が必要と考える。なお、経産相は、りそな銀行の(経営)再建の例を引かれているが、普通株(などで議決権の)72%(を取得し)、議決権の3分の2以上を保有したケースもあり、結果として今ではほぼ再建も終わりつつある。その間に、相当数の方が立場を変えたこともあったと聞いており、(経産相は)様々な過去の例を見て引用されたのではないか。

次に、2月10日に発足した復興庁については、いささか遅きに失した感はあるが、いずれにせよ被災地の復興がこれを契機に大きく前進することを期待する。これまで国・国の出先機関、県・県の出先機関、そして市町村と(窓口が多いことが)構造上の問題と言われていた。(今回の復興庁発足により、)さらに東京の復興庁や各県の復興局ができることで、それぞれ(の機関)と手続きや交渉をしなくてはいけなくなることは本末転倒である。復興庁には、このようなことが起きないよう、すべてを復興庁および復興局で解決もしくは交通整理を進めることを強く要望する。さらに、(様々な政策について)復興庁や現地の復興局で使い勝手の良さを確認しながら、必要であれば修正を行っていくことも期待する。また、民間人の多様な知見や知識・経験・ノウハウを活用することも重要であるが、せっかく民間人を活用するのであれば、必要に応じて適切なライン職の責任ある立場に就け、民間人の知見・知識・経験・ノウハウが十分に活かされ、存分に力を発揮できるような形にしていただきたい。

最後に、(2011年)第3四半期実質GDPマイナスや、前回の定例会見で述べた貿易収支の赤字転落など、このところ日本経済のネガティブなニュースが出ている。確かに、一般的な見方としては、経済は踊り場にあるのではないかと言われており、また数字もそれを具体的に示している。一方で、この四半期(1-3月期)から復興のための第3次補正予算の執行が本格的に始まると言われており、それが日本の景気浮揚に少しでも貢献することを期待したい。大方の民間の予測によると、今年は(実質)2%程度の成長が可能ではないかと言われている。この成長が復興のための資金が終わった段階で尻すぼみにならないよう、次の安定的な成長に結び付ける形で追加的に施策を打っていくことが必要であるし、国家戦略会議議員の一人として安定的な成長に少しでも貢献できるようベストを尽くしたい。一方で、世界には様々な不安定要因がある。アメリカは少し上向きの様相が出て来つつあるかもしれないが、ヨーロッパでは、ギリシャの国会で財政再建のための緊縮予算の承認は得られたものの、まだそれに対する国民の不満は相当募っており、騒然とした状態である。また、世界の化石燃料の過半を占める中東における情勢が、ますます不安定化しているようであり、残念ながら(世界全体としては)安定化の方向にまだ進んでいない状況である。あるいは、これまで成長を牽引してきた新興国、なかでも中国は、500兆円程度のGDPのうち30兆円を超える部分をヨーロッパへの輸出で稼いでいた実態などもあり、少しマイナスの要素があると思われる。これらの不安定要因はあるものの、一般的に世界全体の中で見ると、アジアは比較的安定して成長が見込める状況にあるのではないかと感じる。アジアが(世界経済の)下支えをすることによって、世界経済が少しでも早く回復し、安定的な成長に向かうことを望み、日本も(アジアの成長に)貢献するというよりはついていく形で経済が安定的に成長することを我々(経済界)としても確かなものにしていきたい。

前原金一専務理事による「IPPO IPPO NIPPON」第1期活動終了報告

「IPPO IPPO NIPPON」は第1期活動が終了し、2月20日から第2期活動を開始する予定である。第1期の活動概要としては、全国から212社・個人18名の参加があり、3億4,000万円を超える寄附をいただいた。支援内容は、職業高校への実習機材の提供を中心に、国立大学による復興事業への支援、あるいは震災遺児・孤児の支援基金への寄附を実行した。

5年間10期にわたって実行していくプロジェクトであり、2月20日から開始する予定の第2期活動でも、全国の企業・法人・個人の皆様に協力いただき、援助を続けていきたいと考えている。

質疑応答

Q: 東電の経営問題について、議論も大詰めにきており、議決権の割合をどのくらいにするかが焦点になっている。3分の1、過半数、あるいは3分の2と、いろいろな案があるが、議決権の割合についての所感を伺いたい。

長谷川: 先述の通り、3月末に提出される予定の総合(特別)事業計画が、どこまで国民の納得を得られる内容になっているかによる。その内容が国民の期待や納得にかなうものでなければ、政府として権限を行使する必要が出てくるかもしれず、その時のために現段階では、経産相が「留保しておきたい」と述べられるのは理解できる。それ(議決権)が、3分の1なのか過半なのか3分の2なのかについては、(計画の)中身による。あまり政府の介入を受けず、自ら(国民が)納得できるような抜本的な改革(となる)事業計画案が出されることを期待したい。

Q: (議決権の)割合については、特に言及しないということか。

長谷川: その通りである。

Q: 東電に対する枝野経産相の対応について、日本経団連の米倉会長は「枝野経産相は国有化について勘違いしている」と批判したが、代表幹事は、実質国有化の是非も含めて理解しているということか。

長谷川: 枝野経産相の対応については、理解している。りそな銀行の例を見ても、国有化したが、国が経営した訳ではない。(経産相の発言は)抜本的な再建案を作るための権利を担保しておきたいという趣旨だと理解しているし、そういう点は理解できる。国が経営する訳ではないと理解している。

Q: 3月に総合特別事業計画が出されても、その後も経営していくことになるが、それも含めて、一定の権限を国が行使できるようにしておきたいということか。

長谷川: 今の段階では、その(計画)内容が画期的で素晴らしく、皆が納得できるものであれば、それで良しとなるかもしれないし、そうでない場合には、国民の税金を使って支援する以上は国民がきちんと納得できる形になっていなくてはならないと(経産相が)考えるのは理解でき、そのための権限を留保したいというのも理解できる。

Q: 国が過半数や3分の2を持つこともあり得ると示すことに対して理解できるということか。最終的にはどのようにすべきと考えるか。

長谷川: (前者の質問に対しては)その通りだ。今の段階では、最終的にどのような計画が出てくるか分からないので、何パーセント(国が)持つべきかを判断できる状況にはないと考える。

Q: 事業計画がすべて出てからの話かもしれないが、勝俣会長の退任と後任人事が取り沙汰されている。経済同友会は、比較的民主党政権に近く、また人材輩出の宝庫とも見られているが、代表幹事に然るべき筋からの打診や人選に関する相談はあったか。

長谷川: まったく関知していない。

Q: 一般論として、東電の経営トップには、どのような人材が相応しいと思うか。

長谷川: 東電のような事業体の経営を知悉しているわけではなく、難しい質問である。ケースはそれぞれ違うが、日本航空やりそな銀行などいろいろな再建があり、その都度相応しい経営者を然るべきプロセスを経て決めたと思うので、私が現時点でどういう経営者の方が良いとは、軽々には述べられない。ただ、やはり今置かれている状況からすれば、大変なリーダーシップ、決断力、行動力、そして政権との信頼関係も必要であり、なかなか簡単に見つかる人材ではないと思う。

Q: 普通に考えて、経営者には、会社を経営する上で、(会社を)大きくしたいとか儲けたいという基本的なインセンティブがあるかと思う。しかし、この先(東電の)経営を引き継いだところで、(会社が)大きくなるとか儲かるということは、ほとんどあり得ないだろう。それでも本当に経営を担いたいと考える経営者はいるか。

長谷川: それは、どういう仕組みにするかということになる。極めて公共性の高い事業ではあるが、例えば、事業の効率化を進めた場合、その努力の成果をインセンティブで認めるというやり方もあるだろうし、これからのやり方次第だろう。ある程度の期間を決め、その最初の部分をやる方は、過去のケースからも自分の利害得失を抜きに尽力される方は多いと思うが、事業会社として継続していく上では、幹部のモチベーションが上がるようなメカニズムがないと持続性(を担保すること)は難しいだろう。何らかの形で考えねばならないが、あくまでも極めて透明性の高いインセンティブのシステムを考えることが必要だと思う。今回の値上げ(要請)について、いろいろなところから懸念や不満の声が上がっている。原子力発電(所)はほとんど稼動できない、あるいは目途がつかない状況で、(電力の)安定供給という観点から、火力発電、それも古いもの(発電所)まで含めて、再稼動やフル稼働をしなければいけない中で、比較的高い化石燃料を使うことからコスト増になることは、もちろん理解はできる。しかし、やはり顧客であるユーザーにきちんと説明を尽くし、納得を得る努力をするということは、ビジネスとして当然やっていただきたいと強く思う。

Q: 日本経団連の米倉会長の考え方は、賠償など今回の一連の事故についてはそもそも国が見るべき話で、東電の経営とは切り離すべきという出発点であるため、枝野大臣と噛み合わないようだ。最初の原賠法の解釈をめぐる議論も曖昧のまま来ているが、これはやむを得ないと考えるか。枝野大臣は、仮に東電が望むような民間の経営権を貫くのであれば、民間がお金を集めて必要な1兆円を支えられるのであればそれでもいいと発言されたようだ。これについては、どのように考えるか。

長谷川: 何度も述べたように、国が資金的に支援をするということは国民の税金を使うということであるから、当然、政府もそれを受ける東電も(国民に)納得のいく説明をする必要がある。現状では最終的な解決になっていないとこれまでも述べて来た。今後についてはいろいろなやり方があるが、原発そのもののあり方をどうするのかについても決めていく必要があるだろう。そのような点が煮詰まらない状態で、このまま進むことには少し無理があるように感じている。一つの参考例となるのはフランスの原発(を所有する電力会社)で、実質国有、民間運営という形になっている。

Q: 社会保障・税一体改革について、先週、民主党が将来の財政試算を公開した。最低保障年金に基づく試算であり、遠い将来だが、2075年に消費税率が現在提案されている10%に加え7.1%必要としており、物議を呼んでいる。最低保障年金については、マニフェストにも掲げているが、野党と協議するのであれば、もう少し別の方法があるのではないか、考え方の変更が必要なのではないかという疑問がある。また、試算をこの段階で出して、本当に議論が進むのかに不安もある。協議のプロセスの進め方について、所感を伺いたい。

長谷川: 一点目は、(試算を)出すのであれば初めから出せば良く、(周囲に)言われてから、さらに(党内で)揉めてから出すというのは、私の感覚から言えば、あまり上手いやり方ではない。二点目は、昨年末に(社会保障・税一体改革の)素案がまとめられたが、民主党は基礎年金をベースにした中長期の新しい年金制度を抜本改革と呼び、この案を法案として国会に提出すると書かれている。そうであれば、それを守らなければいけないかもしれないが、成長見込みや人口推計といった前提条件も変わってきている。こういった(大きな)問題については、民主党の案を基に国会で論議する方法もあるが、やはり社会保障全体を協議する機関あるいは全体会議を作り、そこでしっかりと案を作って、国民の認を取りながら最終的にまとめていくという、スウェーデンが実施したようなプロセスを日本もきちんととる必要があるのではないか。むしろ、その方向を与野党で合意して実施すべきだろう。福田内閣で(野党に協議を)呼び掛けた際に、(民主党は)自らの抜本改革案があり、その案でやるという理由で、(その提案を)蹴ったというケースが過去にあるが、過去は過去である。これから国民の負託にどう応えるかを考えれば、社会保障(制度)を抜本改革するための国民会議のようなものを作り、そこで議論していくことを望む。

Q: 金融政策について伺いたい。GDP悪化の発表に伴い、日本銀行が追加金融緩和を発表した。基本的なこととして、この20年のデフレの原因はどこにあったかを伺いたい。

長谷川: 原因が分かれば対策も打てるので、それが分かれば苦労しない。私も色々な人に聞いているが、これだという解は見つかってない。一つの見方として、量的緩和を長期間続けること(に要因があるかもしれない)。アメリカもFRBが2014年末まで(事実上のゼロ金利を)続けることを発表し、欧州もそういう(低金利の)状況である。検証されてはいないが、これ自体がデフレを招くという解釈もあるようである。当面の景気をある程度刺激するための量的緩和は、中長期的に見ればデフレに貢献しているかもしれない。難しい問題で、今のところ答えはないだろう。

Q: 足下での産業の空洞化もデフレ方向に傾かせるのではないか。こうした中での金融政策はどうあるべきかを伺いたい。

長谷川: 空洞化の問題を金融政策で解決するのは極めて難しいのではないか。一部には、必ずしも優良企業に必要な資金がまわっていないという見方もあるようだが、今懸念されるのは、平成の徳政令(と呼ばれる中小企業金融円滑化法)が、実施かつ延長されるとなると、当面の資金繰りを助けられて復活する企業もあるだろうが、なかなか(再建の)目処が立たない企業を延命することもあり得るだろう。政策には常にポジティブとネガティブがあるので、同じようなことをいつまでも続けるのではなく、タイミングを見てメリハリをつけた政策の転換を図ることも必要ではないか。

前原: 破綻した企業の整理をせずに温存させる、ということをかなりやった。これが逆に健全な企業の競争力を奪ってしまい、デフレにつながってしまった面もあるのではないかと感じている。また、この20年の評価として、最近の海外の論文では、日本はあの大金融恐慌とデフレの中でよくやってきている、という論調も出始めている。われわれも冷静にこの20年の分析をする必要があるのではないか。

長谷川: ニューヨーク・タイムズでもその論調の記事が出ている。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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