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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年01月31日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)、(2)31年ぶりの貿易収支赤字、(3)社会保障・税一体改革、についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)東京電力電気料金値上げと一時国有化、(2)社会保障・税一体改革、(3)キヤノン御手洗会長の社長復帰、(4)Facebookの上場と日本市場、(5)議事録未作成問題、(6)東京大学の秋入学検討、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、今年のダボス会議は、参加人数は過去最高と聞いており、話題の中心は欧州のソブリン債務危機だった。中国は、春節や今秋指導者の交代が起こる関係があるかもしれないが、首脳級のプレゼンスが極めて低かった。一昨年は次期首相の有力候補と言われている李克強副首相、昨年は陳徳銘商務部長が参加していたが、今回はそういったクラスの参加がなかった。また、ロシアも、昨年はメドベージェフ大統領が参加していたが、主要閣僚の参加がなかった。さらに、インドも主要閣僚級の参加がなく、その意味で、新興国の参加が例年になく少なかったという印象を受けた。会議では、ユーロ・ゾーンにおけるソブリン債務危機の問題が主要テーマとなったが、内在している本質的な問題解決の難しさが浮き彫りになった。一般的に、Up North、Heading towards Northと表現されるように、北側地域が比較的勤勉で生産性も高く、南側地域はそうではないと言われており、一国の南北問題でその国内で補い合える場合はこれで納得できる。しかし、同じユーロ・ゾーンでも国が異なり、本質的に生産性が異なる部分を補っていくことについては、なかなかコンセンサスが得られない。また、同じユーロ・ゾーンの中でも、国が違うがゆえに、北側の国では経済も安定していて調達金利も安いが、南側では一時期スペインなどで見られたようにインフレ気味になっていて、北側で(相対的に)安くユーロを調達して南側で投資をすれば(実質的に)金利差が稼げるといった、一国内ではあり得ない状況もある。一部の国が財政規律を緩ませてしまったために、このような事態に陥ってしまったという内在している本質的な問題の解決は難しいと思う。このこと自体がEU全体の大きなリスクとなっており、解決のために様々な試みがなされている。基本的には、メルケル独首相とサルコジ仏大統領が共同で取り組んできたが、サルコジ仏大統領は、大統領選挙を間近に控えており、今回のダボス会議には参加せず、一方で国債の格下げもあった。今やドイツ一国に期待が集中しているが、国内の国民感情などもあり、直ちにEU全体を安定させるような対応が取りにくく、結果として“too late, too little”になっている感は否めないという状況である。もちろんダボス会議はそのようなことを決定する場ではなく、メルケル独首相は「とにかくユーロ・ゾーンを復活させるには時間がかかる」と話していた。(ダボス会議の)直後に開かれたEU首脳会議で、欧州安定メカニズム(ESM)設立の一年前倒しや、財政規律強化のため財政赤字が一定以上の国への罰則(新財政協定)を合意した。これはマーストリヒト条約でも制裁は規定されていたが、今回はこのような面(財政赤字が一定以上になった場合、自動的に修正することを各国で法制化していない際の罰則)でも適切に実行するということだろう。かつ、各国が平等の投票権を持ち、すべての国が合意しないと議決できない仕組みについても、(今回の財政協定で)ユーロ圏17カ国のうち7割の12カ国が賛成すれば発効できたように、少しは前進していると感じるが、まだ時間がかかると思う。

次に、(2011年)貿易収支が31年ぶりに赤字になったことについて、昨年を考えれば(東日本)大震災におけるサプライ・チェーンの大きな障害、タイ洪水の日本からの輸出への影響、(また、)東電の(電気料金)値上げもこれが大きな要因の一つだが、原発事故での原発稼動停止による化石燃料輸入の大幅増など、さまざまな特殊要因があった。一方、ますますフラット化する世界の中で、(国内に)いろいろなコスト高要因を抱えることが生産拠点のオフショアリング(海外移転)を促していることも事実である。貿易収支の赤字は、短期的、例えば今年や来年は(貿易)収支黒字に復活するだろうと思うが、長い目で見れば、これをどこまで維持できるかを予測することは難しい。今のところ所得収支(の黒字分)で補うことで経常収支の黒字を確保しており、これ自体が国内における国債の消化能力、安定性の担保の一つにもなっている。経常収支黒字を何としても維持しなくては、日本の将来に大きな危機をもたらすし、ましてや累積債務問題、財政規律回復の目処も立たない状況の中で、経常収支の赤字にまで至ってしまうと日本にとって本当に大変なことになるという懸念を持つ。産業界の責任も大きく、政府と協力しながら、貿易収支の黒字化を早期に実現し、それをできるだけ維持していくと同時に、成熟した社会のあり方(を検討・実現する)、あるいは国際化がますます進む中で、所得収支においても経常黒字の維持に貢献するための方策をとっていく必要があると考える。

最後に、社会保障・税一体改革について述べる。消費増税による当面の社会保障費増加分の穴埋め、あるいは法律で定めた(基礎)年金の税(国庫)負担(割合)を1/3から1/2にすることについて、今年までは埋蔵金などで埋めてきたが、来年度以降はそれもかなわず当面は交付国債でまかなう形になる。年間一兆円を超える社会保障費の増分を何とかまかない、かつプライマリー・バランス(黒字化)を少しでも早く実現するためには、(消費増税は)やむを得ないことは理解する。しかし、次のステップとして、(年間)一兆円を超える(社会保障費の)自然増をどう抑制するのか、本格的なメスを入れない限り改革とは言い難い。同時に、年金の新制度をどのような形にするのか(という課題がある)。一律7万円(の最低保障年金)の問題について、どの所得レベルまで支払うと財源がいくら必要かなど、厚生労働省が作成した試算があるようだ。それを公開するか民主党も揺れているようだが、私としては堂々と公開して議論を行ってほしいと述べている。一方で、こういった問題は、時の政権与党あるいは野党の政争の具とするのではなく、福田政権の際に一度試みられたが、その際は残念ながら野党だった民主党の反対もあって機能しなかった社会保障国民会議のような会議体できちんと議論すべきだろう。スウェーデンが現行の年金制度に移行した際には、そのような協議体を作り、十分に時間をかけて国民のコンセンサスも得ながら与・野党一体となって実現したと理解している。年金制度改革は、中・長期に国民生活にも影響を及ぼす大きな問題であるので、このような仕組みを考える必要があるだろう。

質疑応答

Q: ダボス会議で、欧州債務危機が話題の中心とのことだが、日本の財政状況に対する関心はどうだったか。

長谷川: そのような話題はほとんどなかった。

Q: 古川経済財政担当相が、東電の電気料金値上げに関してマクロ経済に悪い影響が出るのではないかということで東電側の考えを聞く方針だが、これについて所感を伺いたい。

長谷川: (東電が電気料金)値上げの発表をするだろうという日に(定例会見で)事前にコメントしたが、ビジネスにおいては当然、消費者・利用者に、なぜこれだけの値上げが必要なのか、その前提条件や根拠は何かなどについて、きちんと説明があって然るべきと考えている。枝野経済産業相も納得のいく説明・根拠が必要と述べられており、古川大臣がそのような考えを述べられるのも現時点では妥当だと思う。

Q: 「現時点では妥当」とのことだが、どういう時点だと妥当ではないのか。

長谷川: そういう(時点が正しい正しくないという)趣旨ではない。原点は、B to C、ビジネス(事業者)は顧客・消費者に対して、例えば値上げなど何らかの(変更があった際)、特に公共性が高く、地域の需要を一手にまかなっている状況で、化石燃料の輸入が圧倒的に増えるなどやむを得ない事情があり、価格に転嫁したいという気持ちは十分に理解できるが、その根拠や前提条件について、できる限り丁寧な消費者への説明があって然るべきではないかという意味である。

Q: 東電側からすると、値上げの発表時点でも一定程度の式や根拠を示したつもりでいると思われるが、どういう点が説明不足だと思われるか。

長谷川: IAEAが今般のストレステスト(の検証で結果)は妥当と判断し、原子力(安全・)保安院に報告した。これから保安院が原子力安全委員会へ報告するというプロセスが進むようである。これと直結するものではないが、例えば、もし原発が再稼働するとどうなるかといったこともこれから考えていかなくてはならない問題だろう。現時点では述べにくいだろうが、前提がどうなっているのかなど、できる限り丁寧に説明されることが望ましいのではないか。

Q: 東電に対して国の出資で一兆円の増資をする方向だが、一つの論点として議決権を国が持つかという議論がある。優先株にするか、普通株にするか、あるいはその中間もあるかもしれない。当然、東電は経営の自由度を主張するが、枝野経産相は一時国有化もあり得ると話している。経営者の立場からはどちらが良いと考えるか。

長谷川: (東京電力は)私企業であるから、私企業の経営者の立場からすれば、経営の自由度が担保される方が望ましいと考えるのは当然である。一方、国の立場で議決権について述べるのであれば、今の(東電の)状況のどこが問題で、自分たちが議決権のある株式を持つことで何をしようとしているのか、その結果どのように改善するのかをはっきりさせる必要があり、現時点ではどちら(が良い)とも言えない。現象だけを見て判断はできない。ビジネスは、目的があるから何かをするのであり、それを決めた責任者は結果責任を問われる。何かをしようとするなら、目的を明確にして始めなければいけない。

Q: 消費増税について、まず2015年までに10%に引き上げるという計画が示されている。それだけでは財源が足りないということで、最終的には10%半ばや20%台までといった最終的な姿を国民に示すべきとの意見も出ている。また、社会保障制度の改革をどのように進めていくのかも肝心であると思うが、これらについて所感を伺いたい。

長谷川: 先般(1月23日)の安住財務相および財務省幹部との意見交換会の時にも述べたように、昨年末にまとめられ(年初に閣議報告し)た素案では、抜本改革について、2013年には正式な(新年金制度の)法案を提出し、2016年(を目処)に(今後の改革)実施を目指すことが記載されていると理解しているので、今のところはそのタイミングで実施されるのだろうと思っている。二つ(問題が)あり、(最低保障)年金を一律7万円(とするのか)やどこで足切りをするのかといった問題については、(制度の)切り替えは40~50年のスパンで実施するものであり、今すぐに財政的な影響が大きく変わるものではない。中長期で見れば大きく影響するということになるだろう。それより、例えば一兆円の毎年の(社会保障費の)自然増をどうしていくのか、どこでどう切り込んでいくのかなどについて述べることが、当面の目先の問題として重要なのではないかと考える。

前原: 昨年、経済同友会では「2020年の日本創生」を発表し、この中で(将来的には消費税を)17%位にしないともたないだろうと試算したが、これはかなり妥当な線だと思っている。

Q: キヤノンの御手洗会長が社長に復帰するという発表があった。会社を立て直すためには必要なのかと思う反面、経団連会長まで務め、また76歳の方が社長に戻られることに個人的には違和感がある。武田薬品でいえば、武田國男氏が社長に復帰するようなものではないか。裏を返せば、若手が育っていないとも言えるのか、所感を伺いたい。

長谷川: 個別企業の人事について申し上げるような知識も見識も持っておらず、私自身としてはニュートラルである。ただ、ビジネスの世界では結果がすべてなので、御手洗さんが社長に復帰され、報道では長くても2015年までとされていたように記憶しているが、その結果、中期経営計画の目標達成などいろいろな課題をより実現に導いていかれるのであれば、(評価は)ステークホルダーが判断することで、第三者がとやかくいうことではないと思う。後継者については各社の事情であり、私自身も苦労しており、他社のことを言える状況ではない。

Q: アメリカではFacebookが明日にも上場申請するというような報道があり、超大型上場ということで期待が高まっているようだ。翻って日本の市場を見ると、ITを含む新規企業の上場は少なく、また、市場の低迷が反映され証券業界の業績が軒並み悪化している状況だ。根本的には欧州の債務問題などの大きな問題もあるが、改めて日本の市場の現状をどのように見ているか、経済界から市場への注文があれば伺いたい。またFacebook上場について個人的見解があれば伺いたい。

長谷川: 偶然にもFacebook副社長(Chief Operating Officer)のSheryl Sandberg氏がダボス会議の共同議長の一人だった。CNBCで報道されたと思うが、最終日の共同パネル・ディスカッションで、私も含めた6人の共同議長が登壇した。聞いてはいけないという事前の打ち合わせがあったにも関わらずモデレータが(上場について)聞き、(Facebook副社長に)はぐらかされていた。これだけ噂があるということは(上場申請が)近いだろうとの個人的な感覚は持った。

日本の株式は、リーマン・ショック以降の各主要国のトレンドを見ても、最も値下がりが大きく、市場そのものが活気を失っているということは極めて残念に思う。個人的感想はどうであれ、市場のことは市場に聞かないといけない。ビジネスの個々の経営者およびビジネス・コミュニティとしては、五重苦であろうが六重苦であろうが、業績を維持・向上させ、これをもって株主あるいは市場の信頼に応えることで活性化を促していくしかない。如何ともし難いのは円高という要素で、日本に投資をしても将来円安が進めば、株価が上がっても帳消しになる場合がある。海外の投資家は、例えばグロース系の長期の収益を目指しているような投資は、今はやりにくい環境にあるのではないか。少し円安に振れるなどの状況がある程度見えてくれば、(海外の投資家も)また目を向けてくれるのではないか。売買の点では、海外の投資家が相当大きなウエイトを占めていることで、市場の活性化にかなり影響を与えていると思う。

Q: 政府の原子力対策本部の議事録が残っていなかったことが国会で問題になっている。これについての見方や感想を伺いたい。

長谷川: 日本は法治国家であり、法律で定められていること、例えばどういう会議ではどういう記録を残すということは、公文書管理法(「公文書等の管理に関する法律」)で決まっているのではないか。その範囲で定められているものが実際に記録されていないということであれば、責任を問われて然るべきであると思う。一方、法そのものに対して、一般的な国民の目から見て欠陥があると思う部分は無きにしも非ずだからと、法律に定められていないものまでこの機に「あれもない、これもない」というのもいかがなものかと思う。あくまでも原点に立ち戻り、法律に基づいて、記録を作成し、保存されるべきである。原発事故の際の記録について、記録を残すものと法律で定められているかどうかを十分に理解していないが、そうであれば問題だと思う。

Q: 東京大学における秋入学の方針に対する評価と、経済界としてどのように協力するのかを伺いたい。

長谷川: 1月25日に開催された国家戦略会議には、ダボス会議の共同議長を務めていたため欠席したが、その際の議事録にこの話題が出ていた。経済界としても政府としてもサポートするというポジティブな意見であった。私自身は数カ月前に報道された時から「大いに結構である」と述べている。ようやく日本の大学も国際競争という観点から、どう自らを改革していけば良いかを真剣に考え、具体的行動に結び付けようとする動きが出てきていることについて、大いに結構なことだと思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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