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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2012年01月17日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)野田改造内閣、(2)東京電力の企業向け電気料金値上げ、(3)自衛隊によるソマリア沖海賊対策、についてコメントを述べた後、記者の質問に答える形で、(1)電気料金値上げ、(2)ねじれ国会の打開策、(3)中国のGDP、(4)ユーロ安、(5)世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)(1/25 29開催予定)、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、野田改造内閣について、私流には「背水内閣」と考えている。(かねてより)「首相ご自身はブレておられないと思う」と述べ続けてきたが、本年に入ってますますその姿勢が鮮明に打ち出されているように感じる。首相も何度も「国家的命題の解決には一刻の猶予も許されないので、政治生命をかけて、不退転の決意で(臨む)」と述べられており、その心意気で、具体的にどう決着をつけられるかを見守りたい。ねじれ国会における参議院の否決がボトルネック(進行の妨げ)のひとつになりかねない状況を懸念しており、一刻の猶予も許されないような国家的命題については、与党と野党第一党(責任野党)は、必要に応じて小異を捨てて大同につく(形で)、いかに妥協点を見出すかの解決策を、知恵を絞って実現していただく必要がある。仮に総選挙によって第一党が代わったとしても、(参議院選挙で圧倒的な多数党にならない限り)参議院におけるねじれ状態は変わらない。これを解決しない限り、緊急の国家的命題について政局から弄ばれる可能性が残ることは極めて遺憾であり、それを解決する方法を賢明な国会議員の皆様にお考えいただきたい。ようやく社会保障・税の一体改革に書き込まれ、また一体改革・行政改革を担当される岡田副総理も述べられている通り、国民と約束した自らも痛みを感じる改革、すなわち行政改革および政治改革についても、少なくとも同時並行的に実現されることは、それによる財政の改善効果以前に、国民に対する姿勢として必要なので、強く要望したい。

次に、東京電力による(企業向け)電気料金値上げについて、本日15時より東電の西沢社長が記者会見で説明されると聞いている。報道によると、10%台後半、17%程度(の値上げ)になるのではないかとのことである。一つは、(電気)料金を値上げする背景は分からなくはないが、算定根拠や期間などについて、利用者の視点に立ってきちんと説明される必要があると考える。同時に、(東電の経営の)合理化・効率化目標をどのように考え、料金に反映されるのかについても、顧客側の立場で説明される必要があるだろう。二点目に、「自由化部門」とは企業などの大口需要先のことだと理解しているが、実質的には(利用者側に)選択肢がない中で「自由化」と呼ばれることに、個人的にはいささか違和感を持たざるを得ない。事業者は、規制当局あるいは利用者と十分に納得のいく話し合いをした上で、料金設定を進める必要があるのではないか。企業とは(電気料金を)交渉して相対契約で決めているケースも多いと聞いているので、そういうこと(納得のいく話し合い)は行われるのかもしれないと想像するが。同時に、政府に対する要望としては、原発の再稼働問題をどのように実現していくかについて、この機会に国民に説明する必要があるのではないか。私としては、これを機に、蓄電池を、例えば国家戦略として研究・開発し、夜間の電力を蓄積して昼間のピーク時の電力消費量を少なくするなどといったこともぜひ考えていただきたい。さらに、利用者側が電力料金の差や(消費の)ピークを理解し、賢い使い方ができて節電にもつながるようなスマートメーターについても、資金的な負担の問題等も言われているが、考える時期ではないか。いろいろな工夫をして、家庭や事業所などの消費者が、どうすれば節電やコスト削減、電力料金の抑制を図れるかを判断できるようにすることも考える時期に来ていると考える。

最後に、個人的な関心になるが、ソマリア沖の海賊対策について、2009年に海賊対処法(海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律)が成立し、これに基づき昨年7月に自衛隊の活動拠点がジブチに設立された。海上自衛隊は船舶の護衛活動、陸上自衛隊は拠点整備活動、海上自衛隊と陸上自衛隊の統合部隊は哨戒警戒などで非常に活躍されており、国際的にも高い評価を得ていると、知人からのメッセージで学んだ。国内問題、特に東日本大震災での10万人にも上る自衛隊の多大な貢献については十分報道いただいているが、こういった点(海外での貢献)についても周知されることは、決して悪いことではないと思う。

質疑応答

Q: 東電の電気料金値上げが日本経済に与える影響について、見解を伺いたい。

長谷川: 個別企業によって電力(料金)のコスト(全体)に占める割合が違うので(影響は)それぞれ異なると理解するが、需要者側からすれば決してプラスには働かないと言わざるを得ない。

Q: 元々日本の電気料金は、韓国などと比して高いと言われており、さらなる20%弱の値上げは上げ幅も大きい。東電からすれば、コスト負担のために理解してほしいということかもしれないが、企業経営に与えるマイナスの影響を伺いたい。

長谷川: 個別企業によって異なる。電力多消費型の産業では影響は非常に大きいし、そうでない産業にとっては少し軽減されるだろうが、おしなべてコスト増に直結することは間違いない。先述の通り、原発再稼動の問題(解決)や蓄電池の研究・開発、スマートメーター導入による消費者側での節電、コスト低減・削減の模索などを考える必要があるだろう。

Q: 現在でも海外に転出している企業が多いが、今回の電気料金値上げによって、さらなる(国内の産業)空洞化の懸念はないか。

長谷川: 空洞化のもっとも大きい部分は第二次産業であるが、過去10年にわたって(第二次産業の)雇用が縮減している実態は傾向としてある。(今回の電気料金値上げが)多少の拍車をかける可能性はあるだろうが、(空洞化の要因は)円高の定着化やユーロ高などもあり、それがコスト要因にもなるし、輸出の価格競争力の低下にもつながる。

Q: 電気料金の値上げについて、事故を起こした責任は東電にあるが、政府も財政不安から回収できる資金でないと貸したがらず、金融機関も融資した資金は返済が前提なので値上げを要求する。政府と金融機関に締め上げられた結果としての値上げという見方もできるが、政府や金融機関の姿勢について所感を伺いたい。

長谷川: (今回の経緯で)どのような形で話し合いがなされているかを十分に捕捉していない。しかし、電気料金の値上げを要請する立場としては、大口需要家向け、企業向けは、経産省の許認可事項ではないにしても、各電力会社からの資金を基に原賠(支援)法などが成り立っているような状況を考えると、規制当局、あるいは需要家、こちらは先述の通り相対の契約のケースが多いようなので結果としては実行されるだろうが、できるだけ透明性の高い形で実行すると同時に、当面どのくらいの期間を想定しているのか、またその理由、あるいは(経営の)合理化・効率化をどのように実行しており、今後どうしていくかなど、できるだけ消費者の納得を得やすいような形で説明されることが必要である。債権の保有先が回収を考えるのは当然だろうが、東電問題が最終的にどのように解決の道筋をつけていくかについては、もう少し時間がかかるのではないか。あくまでも、今の形はまだ完全な解決の方向が示されているとは理解していないので、もう少し政府や電力業界および東電とで話し合いを進め、国民が納得できるような形を示す必要があるだろう。

Q: 電気料金が値上げされた場合、今の経済状態から見て、中小企業は商品に価格転嫁できるか。できないとすれば、どこにしわ寄せがいくか。

長谷川: 中小企業への影響は、個別企業が持っている、あるいは造っている製品の競争力にも関わるので、一概には言えない。一般論として言えば、部品メーカーのように大手企業に納入している企業は、大手企業も今は大変苦しんでいる状況のため、価格転嫁による値上げは極めて困難であろうと判断する。

Q: 原発の再稼動について、電力会社がストレステストの結果を次々と報告している一方で、福島(原発)の事故の原因究明ができなければ再稼働は難しいという地元の首長などの意見もある。再稼働の道筋について、どうすべきとお考えか。今、政府も東電も原因究明を行っており、国会でも評価が始まり、その報告を待つとすれば6月くらいまでかかるようだが、その報告を待って判断すべきか、それとも別の方法があり得るか。

長谷川: タイミングの問題を含め、地元住民の方々や自治体の長の納得が得られない限り、再稼働は難しいと思う。(納得を得られるために)何が必要かについては、原子力安全・保安院や政府、調査委員会など、直接関わっている組織が判断されることで、私のような利用者側の立場からは、できる限り迅速に進めていただきたいと希望するところである。

Q: 与・野党でいかに妥協点を見出すかについて知恵を絞るべきとのコメントがあったが、具体的な道筋についての考えはあるか。

長谷川: 例えば、アメリカの議会において上院と下院で意見が一致できなかった時には、それを解決するためのプロセスが明文化されている。日本にもないことはないが、結果として、非現実的で実行が難しい形でしかあり得ないので、もう少し具体的に一致点を見出せる、解決しやすい形に変えることも一つの方法として考えられるのではないか。どちら(の政党)が(与党・野党の)どちらになるかわからない時代において、どう「ねじれ」を克服して、国家的命題(を解決し)、国民の期待に応えるかを、優先的に心ある国会議員に考えていただきたいというのが私からのお願いである。

Q: 本日、中国のGDPが発表され、昨年の実質GDPが9.2%増と、2年振りの一桁成長だった。(中国経済の成長)減速について、所感を伺いたい。

長谷川: 9.2%(で減速)と言っても、元々中国政府の目標は8%である。また、今まで10%以上だった成長が9.2%に下がった要因の一つは、5%を超えたインフレの昂進をさまざまな手段で意図的に抑制した結果でもある。さらに、今年(中国で)権力の移行が行われるが、これを踏まえてか、先般、胡錦濤・温家宝体制は、今年の(成長)目標を7%台と、従来の8%から下げた形で示した。ベースを少し低くして、新政権が必ずクリアできるようにという配慮からだろうとの見解もある。目標が8%の時も、常に成長率9~10%を達成しており、今の政府は7%と言っていても必ず8%以上成長するだろうと、かなりの確信を持っていると推察する。その意味では、急速な景気の停滞を懸念するのは、いささか時期尚早ではないかと思う。

Q: ユーロ安が急速に進んでいるが、日本の実体経済への影響はどうか。

長谷川: 国際的基軸通貨としては、実質的にドル・ユーロ・円しかなく、その中でドル・ユーロが大きな問題を抱えている。当面の安全性・信用性から見れば、相対的に円が良いだろうということで円への逃避が起こっており、それが円高の要因の一つと考える。ヨーロッパでは、S&Pが(ユーロ圏9カ国の国債)格付けを引き下げ、フランスとオーストリアがトリプルAを失った。EFSF(欧州金融安定ファシリティー)の(発行体)格付けも下がったが、これに対するS&Pのステートメントによると、対応が遅いことが格付け引き下げの要因になっている。サルコジ仏大統領は「ムーディーズは下がってない」と述べているが、過去の例を見れば時間の問題かもしれない。このような状況下では、リーディング・カントリーであるドイツとフランスが、より緊密に協力し、より素早い、より強力な、マーケットをある程度納得させるような対策を講じることが、唯一の解決策ではないか。

前原: ヨーロッパが不安定なため日本にお金が集まり、(日本の長期)国債の利回りが低下しつつある。ただし、デュレーションを見ると、この数年間どんどん短期化しており、都銀はほとんど長期国債を保有していないのではないか。ある経済誌によると、11月の投資について、外国人の国債現物売りが全体の12%、現物買いが28%、短期買いが42%、そして先物と先物オプションは70%を占めているとのことだった。国際金融は偏微分の世界なので、国内で国債が消化されているから安心ということではなく、動いている部分の現実を見れば、例えばヨーロッパに大きな変化が起きるとあっという間に日本も(危機に)さらされてしまうことを示しているので、気をつけなければならない。代表幹事が述べた通り、(今は野党でも)次に政権をとった時にはさらに前進させなくてはならないので、よく考えていただきたい。

Q: 今月、スイスで開催されるダボス会議(世界経済フォーラム:WEF 年次総会)に出席される予定だが、野田内閣の現状について、世界に向けてどのように説明するか。

長谷川: 本来であれば、首相が(ダボス会議に)出席し、政権与党として累積債務問題に不退転の決意で臨むことを宣言・説明されることが一番良いと思う。しかし、(首相の出席が)叶わないようなので、政府の重要閣僚に出席、発信いただきたい。同時に、私も日本の経済界の代表の一人として、さまざまな場面でメッセージを送りたい。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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