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長谷川閑史経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨

日時 2011年12月20日(火)13:30~
出席者 長谷川閑史 代表幹事
前原金一 副代表幹事・専務理事

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冒頭、長谷川閑史代表幹事より、(1)社会保障・税の一体改革、(2)コーポレート・ガバナンス(社外取締役の義務化)、(3)65歳までの再雇用義務化、についてコメントを述べた後、前原金一副代表幹事・専務理事より「IPPO IPPO NIPPON」プロジェクト第1期活動の進捗について報告があった。その後、記者の質問に答える形で、(1)金正日朝鮮労働党中央委員会総書記の死去、(2)65歳までの再雇用義務化、(3)診療報酬見直し、(4)東京電力福島第1原発の原子炉冷温停止宣言、について発言があった。

長谷川閑史代表幹事によるコメント

まず、社会保障・税の一体改革の件で、消費税(増税を含む改革)については野田首相が不退転の決意で今年度中に案を固めるとされている。一方、巷間の論議で「歳入増を図るだけではなく歳出削減をまずやるべき」「マニフェストで謳われたことが実現されていないのは問題である」と言われており、それは指摘の通りである。しかし、ここでプロセスの後先論を言っても仕方がないので、政権・与党に対しては、少なくとも(歳入増と歳出削減の)同時並行で実施するか、そのコミットだけはしていただきたいと言い続けたい。社会保障(制度改革)は、残念ながら今の内容では改革の名に値しない。党との折衝を続けた結果、消費税引き上げという前提条件付きではあるが、給付増についていくつかの明確な増強策がとられている。また、(歳出)削減の中で、物価スライド部分(の特例措置)による2.5%、累積で7兆円になる金額を3年間で解消しようという話は、自民党政権ができなかったことであり、実現すれば当然のことではあるが一歩前進になる。ただ、70~74歳の医療費窓口負担20%が法律で定められているにも関わらず、暫定的に定められた10%が法改正もなく臨時措置のまま維持されており、今回もそれが据え置かれたことは極めて遺憾である。また、高額医療負担軽減のために、窓口で100円を徴収することについても、結局見送りになった。さらには、世代間格差についてはまったく触れられていない。これらの問題を抜本的に解決しない限り、(歳入と歳出の)差は広がるばかりである。100兆円を超える社会保障(給付)費に対して、給付者負担は60%しかなく、残り40%を赤字国債で埋めている状態であり、これが持続可能でないことは明白である。累積債務、債務危機といったすべての問題に直結しているので、ここにメスを入れていただきたい。

次に、コーポレート・ガバナンスについて、オリンパスや大王製紙の問題から、会社法改正による社外取締役の義務化が検討されているが、今回の不祥事と義務化とを直接結び付けることには無理があるのではないか。社外取締役が在る方が良いことについては異論を挟む余地はないが、時間軸もないままに法的に義務付けることには少し問題を含んでいるように思う。オリンパスを例に挙げれば、3名の社外取締役が起用されていたにもかかわらず、機能しなかった。今回の件では、複数の歴代の経営幹部が関与していたと言われているが、この特殊な状況では、複数の社外取締役が在っても、あるいは他にガバナンスを強化しても防ぐことは難しい。最大の抑制は、経営トップが不正を働いていないことが大前提ではあるが、後継者を選ぶ際に、決してそういうリスクのある人を選んではいけない。さらに、監査法人がきちんと指摘をし、本来の役割を果たすことが、このような局面では大事になってくる。

最後に、65歳までの再雇用義務化について、労働側は希望者全員の再雇用を義務付けるよう要求している一方で、日本経団連(雇用側)は現状のままが良いとしている。経済同友会ではこれについて意見を出していないが、私はどちらかといえば経団連に近い。その背景は、日本では労働法制上、解雇権が非常に制限されている中で、企業には60歳という節目で(雇用・雇用条件を)見直しできる機会が与えられている。希望者全員(の義務化)という条件は、その機会が失われることになるので、雇用側の立場としては飲みにくいと言わざるを得ない。

「IPPO IPPO NIPPON」プロジェクト 第一期活動の進捗報告

全国の経済同友会では、10月より、東日本大震災からの復興支援の一環として、中長期(2011年10月~2016年9月の5年間)にわたる「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト」(共同委員長:長谷川閑史、滝 茂夫)を実施している。現在は、人づくりと産業活性化という視点から、地場産業の将来を担う若者を育てる職業高校に津波等で損傷した実習機材類を提供するほか、震災により保護者を亡くされた子供たち、震災復興に取り組む国公立大学などへの資金援助を中心として、第1期活動(2011年10月~2012年2月)を行っている。第1期活動では、180法人および17名の個人から参加申し込みがあり、330,408,947円(12月16日現在)の寄附をいただく見込みとなった。お預かりした寄付金は、真に必要な方々へできる限り迅速にお届けするという観点から、11月16日より順次、支援先への物品の贈呈を行っている。「IPPO IPPO NIPPON プロジェクト」の趣旨および概要を理解いただき、第2期、第3期へと続く本活動について、広く支援を賜りたいと考えている。

質疑応答

Q: 北朝鮮の金正日総書記の死去における、日本経済への影響をどのようにお考えか。昨日の報道後には、有事のドル買いで円安となり、本日は1ドル78円近辺で推移している。行き過ぎた円高が改善されることは日本にとって良いことかもしれないが、一方で韓国ウォン安が進んでいる。さらに有事が続けば、さらなるウォン安が懸念され、日本経済への影響も出てくる可能性があるのではないか。

長谷川: 日本経済への影響については、極めて限定的と見ている。ウォン安そのものは、今回の訃報以前から進んでいた。一時は、韓国にとって輸出促進効果があるということだったが、韓国も日本同様資源が少ない国で化石燃料等を輸入しなくてはならないし、工業製品でも日本からかなりパーツを輸入しなくてはならないという構造上の問題から、これ以上のウォン安は望まれていなかっただろう。そのような中での今回の訃報で、有事のドル買いや隣接している韓国のウォンが売られる状況になり、相対的に見れば、一時的に相場が動くことはあるだろう。北朝鮮における権利の継承がどうなるかによって趨勢は決まってくると思うが、世界中の誰も朝鮮半島の不安定化を望んでいない。コメント「金正日 朝鮮労働党中央委員会総書記の死去について」で述べた通り、これまで六カ国協議を推進してきた各国が連携を取って当面の安定化を図ることで、一時的な反動を早く収める方向に持っていっていただき、日本もこれに積極的に協力することで少し落ち着かせることが可能ではないか。それを期待している。

前原: 10数年前になるが、住友生命総合研究所の社長時代に、北朝鮮の問題がリスクになると思い、韓国への経済的影響を試算したことがある。東西ドイツ(統一のケース)と比較すると、(北朝鮮が民主化されて南北統一がなされた場合、韓国の負担は)西ドイツが(東西ドイツ統一で)負担した数倍の重さになるという結果だった。日本も北朝鮮の経済発展のために貢献するとしたら、相当な負担になる。

Q: 金正日総書記の訃報は、昨日12時の放送で国民に知らされたが、当時、野田首相は新橋での街頭演説に向っていた。また、山岡国家公安委員長には(安全保障会議への)召集の連絡がつかなかった。早速、自民党から現政権に対して、(気が)緩んでいるのではとの指摘があるが、どのようにお考えか。

長谷川: 質問にあった事実を把握していないが、もし、緊急事態に国家公安委員長に連絡が取れなかったとしたら、それは問題であろう。特に、閣僚の中で重要なポジションにいる方は、いつ何時でも、24時間連絡が取れる体制を整える必要があり、連絡が取れないということは起こらないようにしていただきたい。

Q: 12時から北朝鮮の特別放送で重大発表があると11時30分に連絡が入っていながら、街頭演説に向かおうとした野田首相の対応については、どのようにお考えか。

長谷川: 詳細な事実を把握していないので、コメントは差し控えたい。

Q: 65歳までの再雇用義務化について、厚労省は(老齢)年金が65歳(からの支給)になるので、その間は誰かが埋める必要があるという発想だと思う。また、中小企業では再雇用の実績があるが、大企業の(再雇用の)比率が低いことを問題視している。再雇用の義務化について、納得し難いということであったが、実際に65歳が定年と固定化された場合、どのように国民の老後の安心を維持すれば良いと考えるか。

長谷川: 現時点で、大企業において希望者の再雇用を断るケースは2%程度と承知しており、これで問題ないとは言わないが、ほとんどの希望者については再雇用しているという実態がある。また、年金の支給(開始)年齢が上がることを想定して、(現在の定年である60歳と年金支給開始の)「つなぎ」を企業側に要請することは理解できるが、現在の年金制度にも少し問題がある。例えば、年金がもらえる年齢で働いている場合、(収入に応じて)年金がほとんどもらえないか減額されると認識しているが、その点については、ある程度(国が)年金を負担してでも働いていただくことも、行政側で考える必要がある。それと同時に、長い目でみれば、「つなぎ」をどうするかについて、経営者側もできるだけの協力を考えていかなければならない。現状、雇用延長の場合は、そのままの賃金ではなく、労使の話し合いでの合意の範囲で、(それまでの)75%や50%程度の報酬、時間などもフレキシブルな勤務体系にするなど、柔軟な対応ができている。現行のフレキシビリティを持ちながら、再雇用を進めていくことが妥当だと考える。

Q: 診療報酬について、財務省は本体部分と薬価の両方(の水準)を引き下げたいという考え方である。それに対し、厚労省は薬価を下げることは賛成するが、本体部分は引き上げを要求しており、(財務省と厚労省が)衝突しているが、この問題についての見解を伺いたい。

長谷川: 医薬品系企業の社長なので微妙な立場ではあるが、薬価については、メカニズムとして自動的に下がる。ただし、2年前から特例制度が試行され、薬価と実際の納入価(との乖離率)が(全製品の)加重平均(乖離率)以内に留まっている特許期間中の製品は下がらない仕組みである。それもまったく下げないのではなくて、8掛けにするという予算上の調整がある。おそらく試行をさらに2年延長することで、今のところ落ち着くのではないかと見られている。一方で、診療報酬については、一つはデフレとの関係をどう考えるかということと、もう一つは個人の開業医と勤務医との労働の負荷と対価のバランスの問題をどう調整していくかをよく考え、一番ニーズが多くて負荷が軽減されるべき所に持っていくなど、メリハリを付けることを考えるべきである。最終的にプラス改定になるかについては、今の財政や物価の状況を考えると、そう簡単に承認されることは難しいのではないかと考える。

Q: 先週、(福島第一)原子力発電所のステップ2として冷温停止状態を宣言したが、これについて見解を伺いたい。

長谷川: 原子力の専門家でないが、現象面だけをとらえれば、炉内の温度が100度以下に安定的に推移するようになったということを以って冷温停止状態を達成したと言っても間違いではないと思う。一方で、報道や専門家の指摘にあるように、炉の中がどうなっているかが分からない、あるいは再臨界の可能性がゼロではない、という論議についても、根拠がないわけではない。しかし、最終的に、時の最高責任者が専門家の意見を十分に聞いた上で判断したことであり、それが避難区域の除染を含めた復帰に向けて、次のステップに進むひとつのきっかけにもなる。少し経緯を見なければならないにしても、総合的に考えれば、政府の判断はそう非難されるものではないと思う。

以上

(文責:経済同友会事務局)


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